ウルトラクロスロード ~銀河に輝く星々の宿命~ 作:通りすがりの大学生
(=◎ω◎=)<今回は予習回
(=◎ω◎=)<これから戦いへ向かうUGMのみんなに向けて、双子から情報提供です
(=◎ω◎=)<実際の戦闘でどこまで活かし切れるかは不明ですが
(=◎ω◎=)<知っているのと知らないのとでは雲泥の差がありますからな
(=◎ω◎=)<それでは、ゆっくりして行ってね!
その後、三人は桜ヶ岡中学校の教職員専用駐車場に停めてあった猛の私有車に乗り込み、一路、スフィアザウルスが出現して暴れているという世田谷地区のオフィス街へ向かった。
席順は運転席に章大、後部座席に猛と瑠偉の並びとなっている。
本来であれば車の持ち主である猛が率先して運転すべきところなのだが、今回は瑠偉から出現した怪獣に関する情報提供をして貰い、受け取ったそれらをUGMのオオヤマ達にも伝える必要がある関係上、章大が猛から車のキーを借りて運転する形を取っていた。
情報提供には瑠偉が持っているタブレット端末を使わなければならないため、もしも猛に運転を任せた場合は、彼に脇見運転をさせてしまったり集中力をかき乱してしまったりする可能性が高い。
そうなれば、正確な情報がUGMに伝わりづらくなり、結果としてオオヤマ達を危険に晒してしまうだろう。いくら緊急事態の只中であっても、UGMの隊員で中学校教諭でもある猛に堂々と危険運転をさせる訳にはいかなかった。
そうした諸々の事情から、運転手の役割は章大が買って出たのだった。
ちなみに、日本の車は1983年頃までは
猛の私有車もその例に漏れずMT車で、運転するにはMT・AT両用の「第一種運転免許」が必要になる。瑠偉はAT限定の免許だが章大は両用の免許を取得しており、MT車を運転するのに何の問題も無い。その点も、彼が運転手に名乗りを挙げた理由の一つだった。
なお、章大がMT込みで第一種免許を取った理由は「クラシックカーを乗り回してみたかったから」らしい。
閑話休題。
「先生、こちらを」
タブレット端末を取り出して高速で操作していた瑠偉がそう言って、隣に座る猛に手渡す。
画面に表示されていたのは、不気味で禍々しい威容を誇る一体の巨大怪獣だった。
有機的な怪獣と無機質なクリスタルが融合・合体したとでも言おうか。その異形のフォルムは、猛が今まで出会った怪獣達とは明らかに雰囲気が違っていた。
何よりもまず目を惹くのは、異様なまでに肥大化・巨大化した前足だろう。白い鉱石状の肌から無数の青いクリスタルが突き出たかのような形状をしており、下部には太くて赤い四本の爪が、上部には黒いひび割れ模様が入った白いクリスタルがそれぞれ生えている。
この腕一本だけで、怪獣自身の背丈と同等近い大きさがあった。
鋭い歯がずらりと並んだ口は耳まで大きく裂けていて、青白く輝く双眸や頭部から前方に大きく突き出る大剣のような赤い一本角と合わせて凶暴凶悪な性質を醸し出している。
背中には腕の上部に生えているものと同じクリスタルが突き出し、さながら小さな山が動き出しているかのようだ。
これこそが、「精強融合獣 スフィアザウルス」。
全宇宙に散らばるスフィアの母体にして元凶であり、時空を超えて存在する謎の生命体「マザースフィア」が、地球と同化して自身の中に取り込む事を目的とし、その下準備を行うために地球に送り込んで来たスフィアソルジャーの司令塔にして尖兵だ。
「これは……!?」
「スフィアザウルス。先ほどオオヤマキャップから連絡があった『街に出現した怪獣』の正体です」
見た事も聞いた事も無い未知の怪獣の姿に猛が息を呑む中、瑠偉は端末の画面を指で示しながら淡々と説明を続ける。
「中学校を襲った緑色に光る奇妙な球のような生物、スフィアの司令塔的な役割を持つ怪獣で、仲間のスフィアを次から次へ呼び寄せて来ます。こいつがいる限り、いくら倒してもキリがありません」
「スフィアザウルス……UGMの記録には無い名前だ。キミ達は一体、どこでこの情報を……?」
「さっきも言ったマルチバースに関わる話さァ。俺達の住んでる宇宙の地球じゃ、先生以外にも色んなウルトラマン達の活躍が物語になって出回ってんだ。その中に、スフィアザウルスやスフィアと戦うウルトラマンの話もあってよ。そっから持ってきた情報ってワケ」
車を運転しながら返って来た章大の答えに、猛は「なるほど」と納得した。
自分やUGMの仲間達の戦いが一つの物語になっているのなら、過去に活躍したウルトラ兄弟の兄達や、あるいは猛も知らない未知のウルトラマンの戦いも、同じような物語になっていたとしても何ら不思議では無い。
話を聞く限り、彼らはそれらの物語の愛読者のようだし、スフィアザウルスを始めとする様々な怪獣の情報に明るいのも当然と言えた。
一方の瑠偉は、ついつい難しい過程を省いて物事を考えてしまう兄らしい、簡潔でかいつまんだ説明に思わず苦笑しつつ、猛の目を真っ直ぐ見ながら手元にある端末をスワイプする。
「先生、この怪獣は巨大な両腕を通じて地球そのものからエネルギーを吸収する能力を持っているので、実質的なエネルギー切れはありません。長期戦はこちらに不利です。また、この両腕は見た目にそぐわず頑丈さとパワーに秀でています。怪獣本体の知能も高く、正面から攻撃しても防がれてロクにダメージを与えられないでしょう。攻撃する場合は、なるべく側面や背後から狙ってください。顔の周辺や腹部は狙いづらいですが、クリスタルのような甲殻が薄いのでダメージが通りやすい部位になります」
瑠偉が持ち込んだタブレット端末は、太郎が管理している「ワールド・エンド・ハウンド」とシステムで繋がっており、どこの多次元宇宙にいても使用可能な優れモノだ。
現地で防衛隊のデータベースには無い種類の怪獣と遭遇した場合、素早く情報を調べて共有し、対抗策を練られるようにと、太郎が気を利かせて用意してくれていたのである。
「タブレット端末がまだ存在しない時代に現物を持ち込んで良いのか」という技術的な懸念はあったものの、話し合いの末に管理体制を徹底する事と現物を見せる相手は最小限に留める事を条件に、メンバー全員が納得していた。
「ただし、スフィアザウルスは背中から生えたこの白っぽいクリスタルから、あらゆる電子機器をダウンさせて使用不能にしてしまう特殊な電磁波を広範囲に放って来ます。シルバーガルやスカイハイヤーで接近して攻撃する場合は、この電磁波による影響に最大限警戒してください。スフィアザウルスが電磁波を放射する際には背中のクリスタルが緑色に輝くので、それを見たら全速力で距離を取るように。浴びたら一巻の終わりです」
(冷静だ……まるで、この怪獣と何度も戦った事があるかのような、的確で淀みの無い口ぶり……)
実際、彼らは
有言実行で自分達の持つ情報を惜しみなく提供してくれる双子に、猛は驚きつつも微笑んで礼を言った。
「………なるほど、どうやら今回は僕達が教わる事の方が多そうだ。ありがとう、瑠偉くん、章大くん。キミ達のおかげで、この怪獣とどう戦えば良いかが分かったよ」
「どういたしまして」
「へへっ、これぐらいお安い御用だぜ!」
尊敬するウルトラマン先生に本心からお礼の言葉を貰って、瑠偉は穏やかに微笑み、章大は照れくさそうに鼻の下を指で擦る。礼を言われた時の仕草にも、双子それぞれで性格の違いが出ていた。
「キャップ、聞こえますか? 同行している民間の協力者から、出現した怪獣に関する重要な情報が入りました!」
『何? 民間の協力者だと? 矢的、それはどういう事だ?』
「そのあたりの詳しい説明は、また後ほど伝えます! まずは……」
事前に双子と取り決めていた通り、猛は通信機で彼らから齎された情報を出撃中のオオヤマ達に伝達した。
瑠偉の説明を頭の中で反芻し、彼から借りているタブレット端末の画面に表示されている内容を目で追いながら、可能な限り重要な部分を簡潔に纏めて話す。それを、オオヤマは聞き返したり疑問を口にしたりする事無く、ただ静かに聞いていた。
時折、ハラダやタジマから「その情報は本当に信用できるのか」「ここまで詳しい事を知っている『民間の協力者』とは何者なのか」と言った疑問の声が上がりかけたものの、それらはすぐにオオヤマによって窘められる。
オオヤマ自身、猛を通じて得た情報を一〇〇%信用している訳では無く、できれば今すぐにでもその情報源の信頼性や正確性について問い質したいはず。今この場でそれをしないのは、一刻も早く怪獣に対処し、街や一般の人々への被害を最小限に留める事が最優先であるからだ。
それに、これから実際に現場に到着すれば、本部の司令室で待機している城野に怪獣の解析と分析をさせる事になる。猛の得た情報が正しいかどうか、その情報を齎した「協力者」が信用できるかどうかは、その時に否が応でも判明するのだ。
信頼する部下が手に入れてくれた情報だからと過度に信じず、頭の片隅で必ずもしもの場合を想定しておく、隊長としての冷静な判断であった。
『………分かった。報告ご苦労。だが、矢的!
「了解! 情報提供者には僕から伝えておきます!」
『頼んだぞ!』
凛とした声でオオヤマからの指示と注意が飛び、通信が一旦途切れる。その後、猛は頼れる協力者となってくれた双子に向けて申し訳無さそうに目尻を下げながら言った。
「すまない、瑠偉くん、章大くん。聞いていたとは思うが、キミ達のくれた情報をすぐに受け入れる訳には……」
「なぁ~に言ってんだよ、先生! アンタが謝る事じゃねぇさ! 俺達だって、端から全部信じてくれるなんて思っちゃいねぇよ。なぁ、瑠偉?」
「フフッ、そうだね。章大の言う通りだ。見ず知らずの部外者の言葉をほいほい信じていたら、防衛隊としての資質そのものが疑われるところだよ。ですから、矢的先生。すぐには受け入れられなかったからと言って、僕達が機嫌を損ねるような事はありません。オオヤマキャップの判断は、防衛隊UGMとして当たり前の考えです。戦いが始まれば、僕達の情報の真偽は嫌でも明らかになります。今はただ、オオヤマキャップ達に情報が正確に伝わる事こそが重要。知っているのといないのとでは、その後の対処の仕方に雲泥の差が出ますから」
双子から返ってきた反応が予想外で、猛は思わず目を瞬かせた。
これほどの重要な情報を惜しげも無く提供しておきながら、その狙いは信じて貰う事ではなく疑われていようとなんだろうと予備知識として耳に入れておく事だと言う。
一般的には、自分が必死になって集めた情報を信じて貰えなかった場合、大なり小なり不満に思って不貞腐れたり、信じなかった者に対して悪態を吐いたりする事が多い。猛だって、もしも自分が掴んだ情報に疑いの目を向けられたら不満を感じずにはいられないだろう。
しかし、目の前にいる双子は不満に思うどころか、それを当たり前の事として最初から想定していたのだ。その上、想定通りの展開になった事で逆にオオヤマ達に対して信頼の度合いを深めている節すらある。
防衛隊員としての実力もさる事ながら、物事に対する姿勢や考え方はもう既に立派なベテランのそれだ。これほど現場慣れした実力者が諸手を挙げて協力してくれているという事実に、猛は幸運であると思わずにはいられなかった。
「……ありがとう、二人とも。そう言ってくれると、僕も肩の荷が下りた気分だ。お礼と言ってはなんだけど、あとでキャップ達に二人の事を話す時は、僕も全力でキミ達の味方をさせて貰う。間違ってもキミ達の不利益になるような事はしないし、させないから、安心してほしい」
運転席に座って真剣な眼差しでハンドルを握る章大と、落ち着いた手つきで端末を操作する瑠偉の姿を見つめながら、猛は胸の奥で温かな感慨を抱いていた。
(命を懸けて街を守ろうとする彼らのためにも、僕自身がもっとしっかりしなければ……)
ウルトラマンとして、そして防衛隊「UGM」の一員として彼らの身の安全をも背負おうとする猛だったが、その肩に重くのしかかる「教師」と「隊員」の二重の重圧を、瑠偉は静かな眼差しで見逃さなかった。
「……宜しくお願いします、先生。ただ、そのためにもまずは、暴れているスフィアザウルスを倒して街の平和を取り戻さなくてはなりませんね。章大、現場まであとどれくらいで着きそう?」
「このまま順調に行きゃ、大体あと七分か八分ってところか。ただ、段々すれ違う車の数が増えて来てっから、どっかで大通りから脇道に入るか、最悪車から降りて徒歩で行かなきゃなんねぇかも」
予想外の交通量の増加については、瑠偉にも心当たりがある。
世田谷地域に出現したスフィアザウルスの暴威から逃れようと、車で避難する人々の一部が主要道路を通って北沢地域へ流れて来ているのだ。
そしておそらく、現場付近の道路では主要・脇道を問わず渋滞が発生しているはず。
「迷ってる暇は無いかな……章大! 今は一分一秒が惜しい! 行けるところまでで良いから突っ走って!」
「おう、任せな! 瑠偉! 矢的先生! しっかり掴まってろよ、飛ばすぞッ!!」
瑠偉の頼みにニヤリと不敵な笑みを浮かべて頷くと、章大は流れるように鮮やかな手付きで素早くシフトレバーを操作し、アクセルペダルを限界まで思いっきり踏み込んだ。
咆哮の如きエンジン音を轟かせ、三人を乗せた車は避難する車の波を縫うようにして猛スピードで突き進む。
目指すは、幽かに黒煙が上がる
異様な気配が漂う世田谷の中心部に、三人は飛び込んで行った。
(=◎ω◎=)<如何でしたでしょうか?
(=◎ω◎=)<ここまで読んで頂き、誠にありがとうございます!
(=◎ω◎=)<今回の予習はこのような内容となりました
(=◎ω◎=)<オオヤマ達がすぐには信じてくれない事は予想済みだったので
(=◎ω◎=)<双子も全然動じていません
(=◎ω◎=)<寧ろ、「流石はUGM!」と感心すらしています
(=◎ω◎=)<彼らもプロの防衛隊員の端くれなので
(=◎ω◎=)<考え方もこんな感じになってますよ
(=◎ω◎=)<今回でpixiv版の第十二話が終了
(=◎ω◎=)<pixiv版の投稿は十月二十五日(日)投稿予定
(=◎ω◎=)<ハーメルン版の続きは十月二十六日(月)投稿予定
(=◎ω◎=)<お楽しみに!
(=◎ω◎=)ノシ