ウルトラクロスロード ~銀河に輝く星々の宿命~ 作:通りすがりの大学生
(=◎ω◎=)<バトルパートは前回で終わりましたので
(=◎ω◎=)<今回はその事後処理的なお話となります
(=◎ω◎=)<あと、リヤンゴンのやつが余計な事をしてくれたので
(=◎ω◎=)<それによる「面倒事」も発生中
(=◎ω◎=)<具体的な内容は本編をどうぞ!
(=◎ω◎=)<それでは、ゆっくりして行ってね!
三体のスフィア合成獣が爆散するのを見届けたあと、80は再び両隣に立つ頼れる仲間達を見渡す。その顔には無事に勝利できた事への達成感や、これ以上被害を拡大させずに済んだ事への安堵感が表れていた。
どちらも感情を持たない機械の顔だが、80にはそうした様々な感情が内側から湧き上がって来ているように感じられたのだ。
一緒に戦い抜いてくれた事に対する感謝を込めて、テラフェイザーに大きく頷きかけ、ギャラクトロンMK2とハイタッチを交わす。そして、軽快な声と共に80はその巨躯を大空へ飛翔させ、甲高い飛行音を響かせて空の彼方へ飛び去って行った。
あとに残された二体のロボット怪獣は、こちらも視線を絡ませて頷き合うと、テラフェイザーは空中を旋回するスカイハイヤーのコックピットに座るオオヤマへ向けて美しい敬礼のポーズを取り、ギャラクトロンMK2は右手で自身の胸を軽く叩くと地上にいるハラダとタジマにサムズアップをして見せる。
まるでそれが、土壇場で援護射撃によるフォローを入れてくれた事への感謝の印のように見えて、オオヤマ達は知らず知らずのうちに頷き返していた。
——《ウルトライブ、
ともに戦ってくれた戦友達に言葉ではなく行動で礼を伝えた章大と瑠偉は、それぞれの怪獣達の内部でギンガスパークのトリガーを押し、変身を解除する。
二大ロボットの巨躯が無数の光の粒子となって解けるように消滅し、元の人間の姿へと再構築されて近くの道路上に降り立った。
「早くしないと、リヤンゴンがSDを取り返しに来るかも知れない! 急ぐよ、章大!」
「分かってんよ! 太郎さん! スフィアザウルスのSDが転がってんのはこっちの方角で合ってるか!?」
『バッチグーですぞ、章大くん! こちらのモニターでもSDの反応をばっちし検知してますからな! そこまでぬるっとエスコート致しますんで、お二人は安心してボクの言葉を聞いてくださぁい!♪』
「「頼んだ!」」
ウルトライブの解除と同時に太郎と通信を交わしながら、章大と瑠偉は同時に駆け出した。
これから回収しに向かうスフィアザウルスのSDは、先ほど太郎が言っていた通りまさしく「宝の山」だ。二種類のスフィア合成獣の体細胞情報のダウンロードに伴う、亜空間バリアー発生能力の移植と付与。SDの製作者である頌栄ですら、未だ研究の途上にある技術を、リヤンゴンは一足先に実現させて実証実験にまで漕ぎ付けている。
本物の「
リヤンゴンも、手塩にかけて改造したSDをそう簡単に手放すとは思えない。そうでなくても、章大達に回収されればそこから様々な情報が彼らの手に渡り、今後の戦略において不利に働く事は、ヤツ自身も理解しているはずだ。
三体のスフィア合成獣が倒された場面はヤツも見ていたと思われるため、急いで取り戻しに来る可能性は大いに考えられる。
つまり、これは一種のSD争奪戦。
リヤンゴンよりも早くスフィアザウルスのSDが落ちていると思しき場所へ行き、探し出して回収しなくてはならない。
逸る気持ちを抑えながら、二人は瓦礫が散乱するオフィス街の中を全速力で走った。
◇
変身を解除した双子が降り立った場所から、スフィアザウルスが爆散した場所までは直線距離で数十メートル。
目と鼻の先の距離ではあるが、崩壊したビル群と立ち上る黒煙が二人の行く手を阻む。足場の悪い場所で瓦礫の山をいくつも乗り越えるのは一苦労だったが、日々鍛えた脚力と太郎のナビゲートを頼りに全速力で駆け抜けた。
リヤンゴンに先を越されまいとする焦燥感を覚えながら、穴だらけのアスファルトを蹴り飛ばして走り続ける事、およそ一分。
二人はようやく、目的地であるオフィス街の一角に辿り着いた。
『スフィアザウルスのSDの反応はまだ消えていませんし、動いてもいません。目的地付近にリヤンゴンの反応は無く、データ上は章大くんと瑠偉くんの同着一番乗りです。ただし、相手は宇宙を股に掛ける海賊。どんな手を使ってでも目的を果たす、奇襲不意打ち何でもござれの悪党です。周辺への警戒はくれぐれも怠らないでください』
「「了解」」
珍しく悪趣味な冗談も何も無い、真面目なオペレーターとしての警告に、章大と瑠偉は緊張感を孕んだ真剣な表情で異口同音に応じた。
念のため、アイテムボックスからスパークライフルを取り出してSDと接続し、章大が前方、瑠偉が後方を警戒する、アメリカ海兵隊さながらのフォーメーションを組む。
いくつものビルが崩壊し、大小さまざまな瓦礫が落ちている街は身を隠す場所だらけだ。全方位を警戒し、すべての物陰をチェックするには時間も労力も足りない。二人は互いの背中を預け合い、太郎のナビを頼りに一直線に突き進む。
そして、警戒を続けながら更に歩く事二分。
二人は遂に、目的のブツであるスフィアザウルスのSDを回収する事に成功した。
道路にぽっかりと開いた大きなクレーターの中心に転がっていたSDは、多少砂埃で汚れているものの、それ以外は保管庫内で最後に確認した時と寸分違わない綺麗な形を保っている。
無事に回収したSDを持ち、速やかにその場を離れてまだ無事な建物の陰に身を隠したあと、章大は息を整えながら取り戻したスフィアザウルスのSDを改めて隅々まで観察してみた。
先ほどの戦いの中で、ウルトラマン80のムーンサルトキックを浴びて圧し折られた角も、瑠偉がウルトライブしていたテラフェイザーのTRビーム砲で破壊された片足頭頂部のスフィアクリスタルも、何事も無かったかのように元の状態へ戻っていた。
これは、頌栄が創り出したSDとギンガスパークの仕様に由来するものだ。
ギンガスパークを通じてSDから実体化させた怪獣の肉体は、特殊なエネルギーによって構成されている。これにより、怪獣が受けたダメージはすべて「エネルギーの損耗」という形に置き換えられ、エネルギーの残存量が基準値を下回ると強制的にSDへ戻るようになっているのだ。
この「受けたダメージ」の中には部位破壊や四肢欠損などの大怪我も含まれており、例え角が折られようが腕が千切れ飛ぼうがSDそのものに影響は出ない。
SDの怪獣達を一つの尊い命と見做し、末永く共に戦い、在り続けるためにと頌栄が組み上げた、優しさと親心に溢れた設計なのである。
ただし、ウルトライブしている人間には相応の痛みがフィードバックされる仕様にもなっているため、相手の攻撃を無視した安易な捨て身戦法は厳禁であった。
「……うん? あのコソ泥宇宙人があとから付け足したバリアー発生器官は見当たらねぇな……戦闘中にぶっ壊してやったから、SDに戻った時にそのまま消えちまったのか……?」
巨大な両腕の陰で確かな存在感を放っていた、あの亜空間バリアー発生器官が、SDに戻ったスフィアザウルスの体のどこにも確認できない。
一体どういう事だと首を捻る章大に、スパークライフルを構えて周囲の警戒を継続していた瑠偉が、視線を街に向けたまま声を掛けた。
「あるいは、実体化した時にだけ見えるようになってるか、だね。いずれにしても、一度フォートレスに持ち帰って、徹底的に調べてもらうしか無いと思う。ここじゃ、あいつの施した改造を調べようにも設備も何も無いからね」
「あ~、そうだな……。しっかしこいつ、さっきからやたら手の中で暴れてるっつーか、80と再戦したがってて元気っつーか……何にせよ、不満タラタラって感じだな」
章大が苦笑いしながら手元を見下ろすと 、先ほど回収したスフィアザウルスのSDが、何かを主張するかのように青白い双眸をしきりに明滅させていた。
手の平から伝わる幽かな振動とともに、あの生物離れした鳴き声が悔しそうに小さく響く。元は狂暴なスフィア合成獣だが、こうして頌栄の手でSDとして具現化され、人間と共に数多の修羅場を潜り抜ける中で、彼らなりの純粋な感情が表に出ているのかもしれなかった。
それを見た瑠偉も思わずクスッと笑ってしまう。
「きっと、さっきの戦いはスフィアザウルスにとって不完全燃焼だったんじゃないかな。三対三の大乱闘だったし、80と戦ってはいたけれど僕達も横から色々と介入しちゃってたからね。スフィアザウルスとしては、誰かと正面切って最後まで戦いたかったのかも」
「要は心行くまで
『GIIIIIOOOO!!』
ジト目になった章大がそんな事を言うと、すかさずスフィアザウルスのSDからどこかむくれたような抗議の声が上がった。それはまるで「タイマンを邪魔させないために呼んだんだよ! それぐらい察しろ!」とでも主張しているかのようで、章大と瑠偉はお互いに顔を見合わせ、同時に苦笑した。
「分かった分かった。次はちゃんと正面から受けて立つよう80にも伝えとくし、何ならリベンジマッチもセッティングしとくよ。だから今は、大人しくしててくれよな。どうせ、撃破された上にぶっ壊された角とかクリスタルとかの修復でエネルギーがほぼ持ってかれてんだ。当分は変身も実体化もできない『
『GIIIOO……』
そう言いながら章大がぽんぽんとSDの頭を優しく撫でると、スフィアザウルスもどこか納得したように双眸を強く輝かせ、やがて静かになった。元は狂暴凶悪なスフィア合成獣であっても、共に死線を潜り抜けた事で培われた不器用で確かなコミュニケーションがそこにあった。
「太郎さん、リヤンゴンの反応は?」
『レーダーから綺麗さっぱり消失しました。途中まではSDの元に接近して来てたんですが、章大くんと瑠偉くんがSDを回収した事を察知したか、あるいは見ていたのか、しばらくの間立ち止まってジッとしてましたねぇ……。ダークロプスゼロの実体化およびワームホールの発生は確認できておりませんので、ヤツはまだこの宇宙にいると見て間違い無さそうですが……できれば今回の作戦で、首根っこを引っ掴んで手に
「その逃げ足の速さと危険察知能力に優れていたからこそ、今まで海賊稼業を続けられて来られたとも言えるんじゃないかな。まぁ、今回は逃げられたんなら、また次のチャンスを待つだけさ」
「そうだな。戦う前はまさか、敵が増援を呼び寄せるなんて誰も思わなかったしさ。別の宇宙に逃げてねぇならそれで良い……次こそは必ずふん捕まえてやる!」
リヤンゴンを取り逃がしてしまった事を太郎から知らされ、双子は次に訪れるであろう機会に向けて気を引き締めた。
星都が得た情報では、80が活躍していた時代で、SDを使用したものと思しき事件があと一回は起きる事になっている。ここまではその情報通りに事態が推移しているため、よっぽどの不確定要素が介入でもしない限り、リヤンゴンはこの時代で再び何らかのアクションを起こすはずだ。
ヤツの喉元まで迫り、打ち倒して逮捕するチャンスは必ずやって来る。それまでは、下手に騒ぐよりも静かに牙を研いで待つべきであった。
『資料には事件が起きた正確な日付も記載されていますが、流石にそこまで信じ切る訳には行きません。お二人とも、いつ何が起きても対処できるよう、覚悟だけはしておいてくださいね。一先ず、そちらの世界に最低でも一か月程度は滞在して頂く事になりますんで、その間の仮住まいとか色々準備しに行きましょう! 衣食住は基本の「き」ですぞ!』
「滞在すんのは別に構わねーけど、なんで一か月? そっちだって人手不足だから、もっと短い方が何かと都合が良いだろ?」
明確に滞在期間を区切って来た事に双子が首を傾げる中、あっけらかんとした口調で太郎が爆弾を落とした。
『だって、次に
「「……………はい!?」」
瓦礫の街に、双子のハモった絶叫が虚しく響き渡った。
予想の遥か斜め上を行くとんでもない宣告に、章大と瑠偉は揃って瞠目したままピシリと硬直する。
「ちょっ、聞いてた話と全然違うじゃねぇか!? 出発前、『ポータルのエネルギーが貯まるまで時間が掛かるから、大体一週間程度は現地に滞在して貰う事になる』って言ってただろ!? それがなんでいきなり一か月にまで爆延びしてんだよ!?」
『ステイステイ! 章大くんステイ! 落ち着いてくだされ! ポータルの再使用に必要なエネルギーチャージにつきましては、事前にお伝えしていた通り一週間もあれば大丈夫です。問題はポータルそのものではなく、そこに搭載しているシステムの方なんですよねぇ……』
そう言うと太郎は、手元のモニターに映し出されたデータを見ながら事情を語り始めた。
曰く、リヤンゴンがスフィアザウルスを通じて別の次元宇宙から大量のスフィアソルジャーを呼び寄せた影響で、「80」の時代を覆う次元世界の壁に不規則な揺らぎが発生してしまい、双子がいる時間軸の座標を固定する事が難しくなっているらしい。
不可能では無いが、無理やり座標を割り出してポータルを使用した場合、双子の身にどんな悪影響が出るか分からず、安全性を十分に担保する事ができないとの事であった。
転送中は通信が途絶してしまうため、仮に何らかの異常事態に見舞われてもフォートレス側からの手助けや救助といった干渉は不可能。未来ある若者であり、大切な家族である章大と瑠偉をそんな危険に晒す訳にはいかないというのが、頌栄達「技術開発チーム」の出した結論である。
彼らの話では、一か月あれば安全性を保つための
『作業自体は結論が出てからソッコーで始めてます。状況が許せば、一か月を待たずに帰還コマンドを実行する事だってできるかも知れません。全力で鋭意取り組んでおりますんで、申し訳ありませんがそれまでの間、お二人にはそちらの世界で待機して頂く事になります』
一瞬、二人の間に呆然とした沈黙が流れた。
本来なら「本当に無事に帰れるのか」と不安に押し潰されそうな重大なトラブルだ。申し訳なさそうに通信の向こうで縮こまる太郎の気配が伝わってくる。
しかし、章大と瑠偉の顔に、そのような陰りの色は一片たりとも存在しなかった。
「なるほど……つまり、こっちじゃなくそっちで不測の事態が起きちゃったって事だね。技術的な安全確保のため、か……」
「まぁ、そういう事なら仕方ねぇよな。今すぐはどーにもなんねぇんなら、俺達がここで文句言ったって意味ねぇし。今は、太郎さんや親父達が意地でも道を抉じ開けてくれるのを信じて待つっきゃねぇ」
互いに顔を見合わせた二人の瞳には、寧ろ抑えきれない興奮の色が灯り始めていた。
「それに、これはこれで僕達にとっては良い事かも知れないよ、章大。一か月もあれば、80……矢的先生やUGMのオオヤマキャップ達と、間近で沢山交流できるじゃない。特撮ファンを名乗る者の一人として、こんな嬉しいチャンスが他にあると思うかい?」
「へへっ、確かにな! まだスマホもネットもねぇ時代の日本の生活をガチで体験できて、しかも先生やUGMの手伝いまでできるかも知れねぇなんて、一生に一度あるかないかのすげぇ機会だ! 案外、最高に楽しい滞在任務になりそうだぜ!」
スパークライフルを握り直し、眼鏡の弦を指で押し上げながら瑠偉が言うと、章大も鼻の下を指で擦りながら、二ッと前向きで頼もしい笑顔を見せた。
こうして、トラブルすらも最高の冒険へと塗り替えてしまう双子の、予期せぬ「長期滞在」がスタートしたのだった。
(=◎ω◎=)<如何でしたでしょうか?
(=◎ω◎=)<ここまで読んで頂き、誠にありがとうございます!
(=◎ω◎=)<はい、という訳で
(=◎ω◎=)<一九八〇年の日本にしばらく長期滞在する事が決まりました
(=◎ω◎=)<だって帰れないんだもん、仕方ないよネ
(=◎ω◎=)<滞在期間中にどんな事をするのかは次回以降で!
(=◎ω◎=)<次回の更新は十一月十三日(金)予定
(=◎ω◎=)<お楽しみに!
(=◎ω◎=)ノシ