もう1回の先へ   作:めりゅちゃむ

2 / 2

早くも1話です。

AIというものは便利ですねぇ、、
骨格を作って地道に修正して貰うだけで、こんな文章作れるんですから



1話 『はじまりの蝶』

 

 「……やっとここまで来た」

 

 

 中央トレセン学園。新しく与えられたトレーナー室で、俺は改めてトレーナー証へ目を落とした。

 

 地方から中央へ。口にするだけなら簡単だが、ここへ来るまでにはそれなりの時間がかかっている。

 

 地方トレセンで積み上げた実績。担当たちと積み重ねたレース。そうしてようやく掴んだ中央への切符だ。嬉しくないと言えば嘘になる。

 

 だが───。

 

 

 「さて」

 

 

 感傷に浸る暇はない。中央には中央のレベルがある。地方で通用した理論が、そのままこの最高峰の舞台で通じる保証などどこにもないのだ。

 

 俺は荷物を置くと、まずは現状の情報をアップデートするべく、学園近くの大型書店へ向かった。

 

 レース理論、栄養学、スポーツ医学、解剖学、メンタルトレーニング。気になった最新の専門書を片端から手に取っていく。

 

 気付けば、腕の中にはずっしりとした小さな本の山が出来ていた。

 

 

 「買いすぎか……?」

 

 

 そう呟いたものの、棚に戻す気にはなれない。知らないことは、まだまだ無限にある。中央という勝負の世界で戦う以上、準備に終わりなどないのだ。

 

 ふと、顔を上げる。店内のモニターでは、学園関係者向けの配信番組が流れていた。映し出されていたのは、かつてトゥインクル・シリーズを席巻した伝説のウマ娘───シンボリルドルフだった。

 

 

 『GⅠ七勝を超えるには、ですか』

 

 

 インタビュアーが核心的な質問を投げる。画面の中のシンボリルドルフは、少しだけ考えるようにその鋭い目を細めた。

 

 

 『私にはわかりません。なぜなら、私はそこへ辿り着けなかったからです』

 

 

 店内が少しだけざわつく。謙遜ではない。冷徹な事実だ。

 

 七冠、無敗三冠、歴史に残る絶対的な偉業。それでもなお、彼女はその先の領域を知らない。

 

 

 『ですが』

 

 

 シンボリルドルフは、静かに、けれど確信を込めて続けた。

 

 

 『それを成し遂げる者ならば───自然と、その先を知っているのでしょう』

 

 

 画面が切り替わり、番組は次のコーナーへ移っていった。

 

 

 「GⅠ八勝、か……」

 

 

 思わず自嘲気味に苦笑する。一勝を挙げることすら奇跡に近い世界だ。

 

 七勝すら歴史の特異点のような偉業だというのに、その先など想像もつかない。

 

 だが、もし。もし本当にそんな、絶対の壁を超える存在がこの世界に現れるのだとしたら、それは一体、どんなウマ娘なのだろう。

 

 そんな、小さな好奇心を頭の隅に浮かべながら、俺は店を後にした。

 

 帰り道。河川敷へ続く堤防の上を歩いていると、一匹の蝶が視界を横切った。

 

 ふらふらと頼りなく飛んでいる。初夏の風に流されるような、どこか不安定な羽ばたき。

 

 なんとなく気になって、その軌跡を目で追う。蝶は堤防の下へ、高架下の影へと吸い込まれていく。

 

 俺も誘われるように、自然とそちらへ足を向けていた。

 

 そして───。

 

 

 「はぁっ!」

 

 

 突如として、熱を孕んだ風が爆発するように走った。思わず目を見開く。

 

 薄暗い高架下、土のトラック。ひとりのウマ娘が、猛烈な勢いで走っていた。長い髪をなびかせながら。力強く、しなやかに。ただ前だけを凝視して。

 

 

 「はぁっ! はぁっ!」

 

 

 速い。だが、それだけなら驚かない。中央には速いウマ娘など、それこそ腐るほどいる。彼女が異質なのは、そこではなかった。

 

 フォームの美しさや脚運びといった、数値化できる理論を超えた何かがそこにある。

 

 走ることそのものを楽しんでいるというより、何かを追いかけているように見えた。

 

 まるで───目に見えない何かを、力づくで掴み取りに行くみたいに。

 

 

 「───ふぅ」

 

 

 ようやく走りを止め、荒い呼吸を整えた彼女が、こちらの人影に気付く。そして、ぱっと花が咲くように無邪気に笑った。

 

 

 「あっ、こんにちは!」

 

 

 その笑顔は、どこにでもいる普通の少女のように驚くほど自然だった。

 

 だが、俺の目は釘付けになっていた。

 

 何より、その瞳だった。

 

 美しく、大きく開いたその両眸の奥には、言葉にしづらい熱があった。

 

 勝ちたい。ただそれだけを真っ直ぐ見つめているような、不思議な目だった。

 

 

 「こんにちは」

 

 

 気圧されそうになるのを抑え、思わず返事をする。彼女は俺の胸元、金色に光るバッジへ視線を向けた。

 

 

 「そのバッジ……トレーナーさんですか?」

 

 「ああ。今日から中央で働くことになった」

 

 「そうなんですね!」

 

 

 楽しそうに声を弾ませ、それから彼女は誇らしげに胸を張った。

 

 

 「わたし、アーモンドアイです!」

 

 

 その名前を。

 

 その美しくも不思議な瞳を。

 

 その時の俺は、まだ知らない。

 

 彼女がどれほど勝利を求め、貪欲に「もう一回」を繰り返す存在なのかを。

 

 ───あの日、鈴鹿の130Rで止まったままの俺のラップタイマーを。

 

 再び動かす存在になるということを。

 





如何でしたでしょう


実は4話以降文字起こししてないので契約結んだら独自路線になりそうです。

キューまるのクイズの話、入れたいけど、、
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。