オール・フォー・ワンから逃げきる方法について   作:ヒロアカは青春…?

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優雅に善を成すことなかれ

体育祭とはどう頑張っても全力を尽くさなければならない。

血湧き肉躍る闘争と表現する体育会系もいるし、チワワとして端で逃げ回るインテリもいるし、意中の相手に告白するために努力する男女もいる。

 

「…流石に盛り上がり過ぎでは?」

 

そんな体育祭のイメージが出した理由は簡単。今立っている場所が明らかにソレとは異なるくらい大きすぎる。なんでこんなドーム広いし屋台が夏祭り単位で出てんだよおかしいだろ。

 

「サポート科とか含めたらマンモス校だからね。雪和がいないときに喧嘩ふっかけられて大変だったんだよ?」

「まーその時はちゃんと飯田あたりがまとめてくれてたでしょ」

 

緩く喋りながら無人の中を手を繋ぎながら歩いていく。まだ生徒しか入っていなからなのだろう道は、会場までに様々な通路が伸びている。大通りをこうやって通れるのは生徒ならではの特権、ということだろう。

 

「にしても雪和が無事でよかったよ。ウチはほら、撃っちゃったし…」

「だから気にしなくていいって。個性の暴走なんだから事故みたいなもんだって」

 

襲撃に関する見解は『実験動物として作られたヴィランが襲撃してきたため殺害した。結果として一人が軽い怪我を負った』ということになっている。

まあ内臓が破裂してないから大丈夫、ということだろう。

 

「それだったらお願いがあるんだけど…」

「雪和のお願いならウチがなんでも聞いたげるよ?」

 

どれ食べたいの、と無人の屋台を笑いながら指している。彼女が強がっていることはなんとなく察せるから、ちゃんとこれで貸し借りをなくしておこう。

 

「…騎馬戦、二人だけで組みたい。ダメかな?」

「いいよ。もし上がれたらってことでしょ」

 

お姉ちゃんはウインクして絡んだ手を離し、ビシッと指を向けてくる。

 

「必ず二人で上がろ、雪和。負けても恨みっこなしね」

「もちろん。お姉ちゃんこそ途中で負けないでよ?」

 

個性があっても勝ち上がるのは難しい。少なからず襲撃で話題になったA組ともなれば否応なしに狙われる。最も狙われやすいのは俺だが、それでも彼女を狙う人間がいないわけではない。

 

「ハハッ、言ってろ」

 

爽やかに笑う彼女の顔には、どこにも憂いがない。何はともあれ全力で戦ってくれそうなら何よりだ。

 

「じゃ…いや、先に行ってて。ちょっとトイレ行ってくる」

「…………わかったけど…遅れないでよ?」

 

冗談めかして彼女を先に行かせて俺は後ろの路地に入る。トイレなんてものが方便であることにお姉ちゃんも気づいていたはずだ。

 

(…あぁ、やっぱりそうか)

 

後ろから感じたその視線は、やはり青山のようだ。わざわざこちらを尾行するような形でついてきていたのを見るにオール・フォー・ワンの手先なのは間違いない。

 

「…はい。雪和は体育祭本戦で参加するつもりです」

「おん、尾行しないでもらっていいか?」

「!?」

 

驚かれているところにナイフを投擲。動かないからいいものの、足の隙間へと全力で投げる。クルクルと手の中でもて遊べる大きさのナイフ─当然、凶器になり得る。

 

「あぁ、ご、ゴメンよ。雪和くんを怪我させたことを両親も心配してたんだ」

「ふーん…随分と恵まれてんな。個性を調節するベルトだってもらったんだろ?」

 

指さす先にあるベルトは、親が作ってくれた特製のベルト─もちろん、個性に関しての話題を今出すことの意味を彼は充分に理解しているだろう。

 

「…パパンとママンからもらった5歳の誕生日にもらった贈り物さ」

「個性ごと、か。青山の家系でそんな能力を持ったやつはいなかったのに随分と用意周到だなぁ!?あぁ!?」

 

裏切りと判断されることを恐れた青山が切ろうとしたスマホを奪い、通話が途切れていないことを確認する。誰とつながっているかなんて聞くまでもないし、チンピラだとしてもメッセンジャー程度の役割は果たすだろう。

 

「…いくらなんでも襲撃のときに引き金を引かないような胆力のあるやつとは思えなかった。つまり、少なくとも俺の獲物が紛れ込まれた餌ってことだ」

「君は…なにを…いってるんだ…?」

「今はテメェの大好きなパパンとママンからの通話ってことにしといてやるよ。…じゃ、アイツに伝えとけ」

 

携帯に爆弾くらいつけていてもおかしくない。やるなら徹底的に壊したほうがオール・フォー・ワンへの牽制にもなるだろう。

 

今度こそお前を殺す

 

言い切った直後に塵になるまで刻む。朝の光に反射したところで何もわからなくなった破片が俺と青山の間へと降り注ぐ。

 

「さて、とっとと行こうぜ。揃って遅刻なんて恥ずかしいったらありゃしねぇ」

 

パンパンと手を叩いて意識を戻させ、俺は会場へと急ぐ。自分も意識の切り替えをしなきゃ彼を殺してしまいそうになるから。

 

(…やらなきゃいけないことは全部やらないとな)

 

スレ民からの言葉。オール・フォー・ワンにだけしか注いではいけない殺意。

霞がかっている暁に、もうそろそろ朝日が昇ろうとしていた。

 

 

─体育祭が、始まる。

 




オール・フォー・ワンからの好感度は青天井
青山からの恐怖心はもうカンスト
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