オール・フォー・ワンから逃げきる方法について   作:ヒロアカは青春…?

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轟く噂とてんやわんや

轟。炎と氷を使用する大概チートみたいな能力だが、父親に対するトラウマから炎に対する忌避感を抱いて炎を絶対に使用しない。

 

(まあ最もその片側の能力だけで充分凶悪なんだが…)

 

原作で見せた大氷結を考えると、一瞬で会場半分を凍らせるような恐ろしい動きを見せた。ノーモーションだったことを踏まえると、避けることはほぼ不可能ということだろう。

 

付け加えるなら、騎馬戦の時のような軽くしてから解除という戦法にすると容易に負ける。炎ならともかく冷気なら下に下がるから寧ろ俄然不利になっていく。

 

だからといって負けるつもりはさらさらないし、対応策がないわけでもない。要するに当たらなければどうということはない。

 

「さぁて、いっちょ勝ちますかぁ」

 

愛用のククリナイフと投げナイフを六本。全てに刃がついている、実戦のために作ってもらった特注品。

 

他人を砕く分には充分だろう。

 

 

 

 

『さぁさぁ第2回戦!勝ったらベスト4進出がかかる大一番の最初のマッチはコイツラだぁ!』

 

『可愛いツラして中身は最強!曲芸からサマーソルトまで新しい仕掛けや技を次々に繰り出すのはこの男だー!』

 

『赤コーナー!雪和ァー!』

「…これ何回も繰り返すんだ。嫌なの」

 

毎回毎回自分の功績を誇るようなものは試合になると必ず起きるのだが、ちょっと何回もやられるのは厳しいものがある。

 

(せめて次からはもっとマシな状態にしてこう…上手くなんとかならない?)

 

無理な願いとは知りつつ、そう祈らずにはいられない。

 

『対するは地味に雪和に迫り続けていた氷結使うクール男!一回戦と同じように速攻で終わらせるか?それとも今まで1位を狙えなかった鬱憤を晴らすか?直接敗北するかは誰にもわからない!』

 

『青コーナー!轟ィー!』

 

「…安心しろ。速攻で終わらせてやる」

「わたしたちの地獄はここからだよ?」

 

互いに挑発(?)して位置につく。

 

『用意、スタート!』

 

言葉が言われた瞬間に大氷結が迫りくる。原理についてはよくわからないが避け続ければいい。3回目からはもう何となくで空に飛べば避けれるようになった。

 

『氷を積み重なっても…崩れなーい!どこまで頑丈な氷結の波状攻撃に雪和もついに敗北を喫するか!?』

「…え?」

 

一瞬だけ反応が遅れる。悍ましい愛を向けられた方向を見る余裕はないが、確実に知っている気配が俺へと注がれていた。

 

(いやまぁ、挑発というか脅迫はしたけど来るとは思わないじゃん!?原作だと来てなかったよね?)

 

しかも当然ながら一人だけにしか粘ついた視線を送ってないのでオールマイトも気づけるはずがない。そもそもオール・フォー・ワンの外見を言ったところでヴィランとは結びつかないだろう。

 

「余所見とは余裕そうだな」

「逃げる場所を考えてただけだよ、っと!」

 

既に低いところでも六メートルもある氷壁は、当たらないでただ積み重なっていただけの結果。落下することそのものすらちょっと躊躇するし、一歩でもズレたら体に大怪我を負う。

 

(正直あんまりやりたくないんだけどねぇ…)

 

出し惜しみしていたら勝てないのも事実だが、どう頑張っても千日手になるなら俺のほうが圧倒的に有利でもある。

 

「…だがそれを許さない事情がある、と。なんでこうも面倒なことしてくんのかねぇ」

『おっと轟アイスクライミングをし始めた!なにげに初の接近に雪和はどう応じる!?』

 

迷っている時間はない。轟もすぐ来るだろうし、オール・フォー・ワンも俺から視線を切ることはしない。

 

「…来たぞ、雪和」

 

体から冷気を漏らしながら近づいてくるその姿は、もう既に冷え切っていることを意味している。どちらが体力があるかはわかるが、弱点を踏まえたら勝てるかどうかで言ったら微妙だろう。

 

「一応さ、轟。今そこいらの英雄(ヒーロー)と同じって言われてるよね」

「そうだが…それがどうした?」

「わたしたちは(ヴィラン)、炎、雨。捕まえられると思わないで」

 

『自分はジャック・ザ・リッパーである』

『ジャック・ザ・リッパーは逃走する際に足場を崩すこともしていた』

『故に自分も足場を崩すことができる』

 

 

5本のナイフを割れ目ができるように下に投擲。持っていたククリナイフで地面に強く一差しして氷を割る。粗雑に作られているからか一瞬で割れ、二人が乗っている地面が崩れる。

 

「流石に全体を凍らせるようなことはできないでしょ…!」

「やってくれるな…!」

 

当然転がる寸前に俺へと氷結をするために黒いボロを狙われるが、もともと上から羽織っているだけの外套は簡単にすっぽ抜ける。

 

(ついでに氷の破片で首にかすり傷を負うようにして…っと)

 

彼の転がりに追従することはせず、ナイフの刃が自分に向くようにして投擲。最後の柄の一押しがぶっ刺さった以上、勝ったのは言うまでもなかった。

 

 

 

 

「ん、おつかれ。炎使われてたら負けてたよ」

「そりゃただの詭弁だろ。最初のタイミングから迫ってくりゃすぐに終わってたようなもんだしな」

 

身も蓋もない話だが、轟の個性は氷が溶ける溶けないを自動調節できない。火でこうやって炙っている中、アフタートークをするために隣でそっと寄り添う。

 

「んーそんな炎を使いたくない理由があんのか、ってのはあんま聞かないけど」

「聞かないのか」

「痣が関係していることは聞かなくてもわかるけどね。俺とて触れられたくない過去しかないし」

 

溶ける前に外套を回収してまた首元に羽織る。傷のついた部分が隠れるようにすると、どこか悲しそうな顔をされた。

 

「別に氷だけでも殺せるならいいんだけどさ、使えるもんはなんでも使いな」

「そうか…」

「単純に俺は手段を選べないくらい必死だったってだけだよ。あんたらみたいに生まれつきいいとこにいた訳じゃないってだけ」

 

ふぅ、と凍えて白くなった息を吐く。あの視線が消えたように思えるが、どうせまた戦闘になったら見えたり見えなかったりするだろう。

 

(まあ次からはわかっている以上動揺しませんよっと)

 

手持ちに戻ったナイフをくるくると回しながら、先ほどの視線を感じた方向を見やる。ポツンと一つだけ空いた席が、誰かが興味を失って帰ったことを証明していた。

 

 

 

 

 

 

「え?本戦前に辞退?」

「ええ。なんでも家族がヴィランに襲われたとか…もちろん死んではいませんが、余談を許さないそうでして」

 

その言葉を聞いてベスト4が確定したと同時に、飯田の兄を救えなかったことがわかった。

 

(まあ原作通りに進んだほうが飯田も緑谷も成長するからなぁ…今度忍び込んで治せるかだけやってみるか)

 

ジャック・ザ・リッパーの医療技術はアホほど卓越している。どこまで行けるかはわからないが、もしかしたらやれるのかもしれない。

 

「…取り合えず俺も辞退しましょうかね。これでも3位になりますよね?」

「は、はい。しかしいいんですか?もしかしたら1位を取れるかもしれないのに…」

 

スタッフの人が心配そうに聞いてくるが、自分でわかっていることがあるので戦えない。少なくとも勝つことが不可能くらいはわかるのだ。

 

「常闇の黒影(ダークシャドウ)も響香お姉ちゃんの攻撃も防げないんですよ。かたや自分が虚をつけるとはいえ2対1。かたや音で反応不可能なダメージ。個性を使わないと勝てません─ってか個性を使っても勝てる気がしないです」

「なるほど…ではそのようにプレゼントマイクさんに伝えておきます」

 

そもそもこれ以上やったところで無闇に手札を晒すだけだ。順位を上げるのは高望みだろう。

 

「…後はインターンがどうなるか、だねぇ」

 

この後の講評もある。少しくらいはヒーロー事務所の幅があるとありがたいかな、なんて思った。

 




「…やっと見つけた」
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