オール・フォー・ワンから逃げきる方法について 作:ヒロアカは青春…?
短い期間の職業体験が終わり、無事に学校へと帰ってくることになった。
闇の仕事含めて様々なものを教わったし休みも多いしレポートも手伝ってくれて最高の職場体験だったと思う。
ヴィランなんだけど。
「ほらよ、賞金だ。テメェはあくまで助力したって状態だからな…金に関してはテメェの情報を売ったモンの横流し」
「お前ガチで売ったのかよ…まぁ、死なないことを祈るばかりしかないが」
「センセイが嫌じゃなきゃ定期的に見てくれよ。金は出すから…」
「アホが。休業状態で友人診るのに金は取んねぇよ」
少なからずガキなのだ。俺よか金を使ったほうがいいことはいくらでもあるのに、妙なところで義理堅い。そもそもあの時の高跳びのときに持っていた金だってまだ使い切れてない以上、荼毘からわざわざ取るマネはしない。
「どうしてもってなら義爛の依頼をある程度上げてやれ。そんくらいで充分だ」
「その言い方はズルいって、センセイ。まあもしかしたら今度会うかもしんないけどよろしくな」
荼毘からパシャっと写真を撮られる。咄嗟だったから思わず目を瞑ってしまった。
「こんにゃろ、やりやがったな!」
「ハハッ、いいだろ別に。そもそも勝手に消えたセンセイもセンセイなんだからさ」
「うっ…ま、連絡くれたらどこか行くから!」
このままここにいるとまたからかわれそうだから速く去る。もともとそんなに持ってきてなかったし、俺の衣服はちょっとボロボロになったので処分してくれた。
(ついでにもらった新しい服も個人的にはいいんだけどね…何やってんだろ、俺)
荼毘が教えてくれた服屋で色々着替えさせられ、好物の蕎麦屋まで教えてくれたのだ。神野に来る機会があったらもう一度利用させてもらいたいくらいにはいい店ばかりだった。
「まぁまだ案内し尽くせてないから今度も紹介するよ、センセイ」
「ん、よろしく」
そういってとっとと走り去る。不覚ながら男の荼毘にドキッとしてしまったのが恥ずかしい。
(アサシンのジャック・ザ・リッパーって幼女だったから父親っぽい奴に惹かれたのか…?いやでも、そもそも男じゃなくて母親しか認識してなかったような…?)
詳しいことを覚えていないので今度質問してみようかな、なんて思いながら義侠から足早に去った。
終わった後の初日。朝の学校に来てまず話しかけてこられたのはオールマイトだった。
「ハッハッハ!私が来たぁ!」
「帰ってください」
「君ひどくないか!??」
笑いながらこちらに来たオールマイトはやけにテンションが高い。そういや直接ガチンコバトルをしなきゃいけないんだっけか。
(どうせ誰とやるにしても対戦自体はそこまで不利にはならないだろうしなぁ…)
圧倒的な暴力で戦え、というならまだしも戦場が変わるなら問題はそんなにない。ジャック・ザ・リッパーの本質は暗殺なので直接的な邂逅だけ避けられれば割とひっくり返せるスペックはあるのだ。
「そんでオールマイト先生。なんでテンション高いんですかい?」
「ハッハッハ!期末テストの実技試験で私が君と緑谷少年を担当することになったから挨拶をね!!」
笑いながら行く手を阻まれた。相変わらずの超スピード過ぎて残像がギリギリ生まれるし、逃げようとしたらまた同じことの繰り返しだと否応なしに理解させられる。
「別にいいですけど…あの、また殺さないでくださいね?ただでさえあの時の怪我のせいでまともな運動がしづらくなったんですから」
「そ、そうだね!?その件についてはすまなかった…」
「時間がもしあるならお茶会でもしませんか?ちょっと聞きたいこともあるんで」
平和の象徴と話す機会が欲しかった、というよりは単なるロールプレイだ。オール・フォー・ワンの後継のフリ(一度殺害済み)という面倒なものであるし。
「聞きたいこと…かい?」
「ええ。俺を殺すほど激昂した理由もそうですし、俺からも言わなきゃいけないこともあるんで」
別に殺したこと程度はなんも思ってない、みたいな風を装うことでより罪悪感を相手に与える。義爛からちょくちょく教わった交渉技術だ。
「ええと…そうだな、昼休みに応接間に来てくれ。その時なら私も空いているはずだからね」
「わかりました。それじゃあよろしくお願いします」
ペコリ、と一礼して一瞬で学校の教室まで駆け寄る。最高速度でぶち抜くわけじゃないけど、死角をついて動き続けることはできるようになった。
「おはよう、皆…っと」
「あ、おはよう雪和くん。職場体験どうだった?」
「んーそんな。雄英高校の襲撃してきたようなヤツと戦ったり犯罪者確保したりってところ。ちゃんとヒーローから許可は得てるぞ?」
「そんなですましていいことなの?そこそこ凄くない」
緑谷は驚いているようだけど、多分ヴィラン側のブローカーがよこした依頼にしては本当に簡単な部類の依頼だろう。
「ほれ、あんたらのステイン戦よかましだよ。五体満足…ってわけにゃあいかなそうだけどよく逃げたな」
「そ、そうだね。僕も運が良かったと思うよ」
「だな。プロが遅けりゃ全滅もあり得た」
ウンウン、と頷く轟。少しだけ動揺したし間違いなく原作通りの流れになったのだろう─せっかくだしちょっとしたいたずら心が俺の行動を変えた。
「あとさ、緑谷。昼休みにオールマイトに呼ばれてっから一緒に来てくんないか?」
「え?いやいいけど…なんで僕?」
「別に深い意味なんてねぇよ。不安だから一番オールマイトと仲良さそうなお前に頼んだってだけ」
今度学食奢るからさ、と軽い調子で頼む。おどけた態度だしこういうノリなら来てくれるはず。
「うん。僕でいいならよろしくね」
「っしゃあ!」
喜んだところでチャイムが鳴る。授業を受けるため、大人しく席についた。
「…きつかったねえ。よし緑谷、行くぞ」
「え?あ、うん!」
そんなこんなであっという間に昼休み。背面をとってオールマイトに話しかける。
「こんにちは。ええ、殺そうとしているわけじゃないですからね?」
「あぁ。緑谷少年は…」
「せっかくなので。俺のことについて話す─ってわけではありますが、そこそこワン・フォー・オールについても関わってくる話なんでね」
シーっとわざとらしく人差し指を立てて落ち着かせるジェスチャー。オールマイトにとっても緑谷にとっても恐ろしいはずだ。
「君は、何を?」
「何度も言いますけど生き残ってしまったクソガキですよ。貴方の脇腹を刺した父親がいる程度の、ですが」
殴られそうになる際にそっと緑谷の肌にナイフを沿わせる。もちろんびっくりナイフのように押したら刃が引っ込むタイプ。
(やべ、上手くロールプレイできるかな。オール・フォー・ワンの後継者にしちゃ大胆に動きすぎか?)
冷や汗が出ながら堂々と大袈裟に振る舞う。ジャック・ザ・リッパーが役者ならこうしただろう─なんて、個性を使ってしまうと死ぬかもしれないので無個性で。
「下手にあの時あなたを気絶させなかったらもっと酷い怪我を負ってましたよ。『だから次代の後継者に
そもそも初めて神野で活動してたなんて知りましたけど。
そう締めくくれば大体のところは理解してくれたようだ。そもそも5年前のことをしっている人間がいなさすぎる、というのもダメ押しだっただろう。
(全部嘘だってわかることはないんだけどなぁ…)
問題は本当のお孫さんである弔がどう思うかだが…まあ、クローンかなんかだと言えば納得されるだろう。
「君は…そうか…」
「父について詳しくは知りませんけど、俺はあんたらに協力するつもりです。もちろん殺そうとするならちっとばかし荒らしますけど」
「雪和くん…もしかして本当の名前か何かでもあるの?」
「ヤブから棒になんだよ。んなもんねぇ」
「俺はワン・フォー・オールの引き継ぎを円滑に進めるための存在とでも考えてくれ。扱い方はご自由に─それじゃ、話は終わりなんで」
『自分はジャック・ザ・リッパーである』
『ジャック・ザ・リッパーは女性のところへと一瞬でたどり着く』
『自分もまた目当ての女性の位置へと移動できる』
響香お姉ちゃんのところへと瞬間移動して後ろで眠る。流石にこの説明で誤魔化すことはもう必要ないだろうけど、これで大体理解してくれただろう。
そう願い、俺は束の間のうたた寝を楽しむことにしたのだった。
タイトルつけるの難しすぎない?