オール・フォー・ワンから逃げきる方法について   作:ヒロアカは青春…?

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虐げる者の景色。霧の森にて人は死ぬ。

「…いえ、どうしたものですかね」

 

爆豪を吊るした後、どうしたものかと考える。雄英高校の生徒ならともかく、他のヴィラン陣営はこの程度じゃ出てこないのは確定している。

 

(そもそも爆豪だって出てくるだろうしな…もがき抜け、か…)

 

暴れている最中にジャック・ザ・リッパーの手袋をつけて個性の爆発で自死させてもいい。流石にそんな悠長なことをしていられるとは思えないのだけれど。

 

「こっち!今かっちゃんの悲鳴…が…」

「おや、雄英高校の皆さんですか。揃って登場していただいて光栄です」

 

一礼するのも忘れない。剣にも鋏にもなる凶器を構え、紳士然として立ちはだかる。爆豪を吊るしている事情を話してしまうと殺人鬼ではなくなってしまう。

 

(こんな緊急事態で不審者と見知った友人を見たらどっちを助けるかは明白だもんな)

 

ぶっちゃけ爆豪については「男」である以上死ぬことはない。ジャック・ザ・リッパーは女性しか殺さなかった─どうであれ、この伝説そのものは事実なのだから。

 

「第一幕は上々─続いて、第二幕と参りましょう」

「人の命をなんだと思っているんだ!?」

「それは質問としては成り立っていませんよ、緑谷少年」

 

一斉に飛び出すための合図。察するに今いるのは緑谷、障子、常闇、轟。原作のときと同じだが誰も傷ついていない。

 

「命の価値とはえてして曖昧なものです。ましてや殺人鬼なら─Mr.ステインでさえもそうなのですから」

「…ッ轟くん!」

 

やろうとしていることは一瞬で作る大氷結。なるほど、確かに初見殺しの性能は高いし爆豪の安全まで考えたら引き離すためには最適だろう。

 

(体育祭のときの獲物なら勝てなかったがな)

「防がれた…?」

 

ナイフではなくハサミ─間合いが足りたので全てを綺麗に切り裂ける。ダイヤモンドダストが一瞬で作られ、緑谷たちとの間に空間ができる。そのままちくっとだけ小さいフックを刺す。

 

「【Brevity is the soul of wit.(簡潔こそが叡智の真髄である)】。大袈裟すぎるものは却って相手の目眩ましとしても使われてしまいますよ」

「させんぞ」

 

後ろから現れる常闇。ダークシャドウを避けられる距離ではないし、そもそも彼の苦手な近距離戦まで近づいているなら俺のほうが有利なはず。

 

(そう思わせるのが目的、かな)

 

後ろから掴もうとしてくる複腕。常闇にも小さなフックを取り付けて首元まで体を持ち上げる。見た目に反して軽やかな動きでそこまで到達すると、フックを突き刺してから走り抜ける。

 

「…おやおや、まさか欺こうとは。ヒーローたるもの正々堂々が常だと思いましたが…」

「非常事態に正々堂々も何もあるまい」

「Sir…おっしゃる通り」

 

ただ避ける。こちらから能動的に仕掛けていないこともあるが、相手側に恐怖を与えることが目的だった。

 

勝てるとは思えない化け物─そして、そこから殺人鬼であるジャック・ザ・リッパーの本領が発揮される。

 

「ふふ、ヒーローの卵とは恐ろしいものですね。勇気に免じて返して差し上げましょう」

「っ!?」

 

丁寧に固定されたフックを切り離し、握るところにも小さなフックをつける。そして緑谷のところへと大きく蹴飛ばす。勢いに任せて大きく爆豪が出血するが男であるなら死なないのでセーフ。

 

(ジャック・ザ・リッパーの空間内では「女以外は殺さない─逆説的に、『俺の傷が最後で死ぬことはない』」と解釈できる。そして下準備も終わった…っと)

 

最後に大きく体の距離を取る。ギリギリ自身のメスの射程─ジャック・ザ・リッパーとして、最も得意な逃亡の体勢。

 

無論瀕死ではあるので動くことはできない─そうなるように体を傷つけた。喋る前に肺から血が出るし、呼吸することすら不可能だと思える。慌てて緑谷が抜いたのを見ると同時に万能感が発生する。

 

「おや?生きてはいるはずですが…」

 

一瞬で詰めてきた緑谷の大振り。かかっている負荷と強さを理解した瞬間、獰猛な笑みを浮かべて腕を前に突き出す。

 

「カッチャンを─傷つけるなぁ!!」

 

100%。間違いなく全力で振り抜こうとした拳は妙な位置で跳ね返る。本来なら当たっていたはずのソレを奇妙な目で見つめる。

 

「【|You gods, will give us. Some faults to make us men.《神は我々を人にするために何らかの欠点を与える》】…無論私にもありますが、それは今は言うべきことではありません」

 

リーンゴーン、カーンコーン。

 

驚愕した緑谷の脇腹を貫き、殆ど動けなくする。無理に動けば内臓がぐちゃぐちゃになってしまうはずだ。

 

「動かなければ皆様のことは治療しますよ」

「うるさい。お前をここで止める…」

 

氷結。先程よりも小さいが、かといって拘束するには速度も威力も何もかも足りない。細かなメスを投げて最小限の傷で轟を止める。

 

「麻痺毒も何も塗っていませんよ。後遺症も残らないので安心して眠ってください」

 

リーンゴーン、カーンコーン。

 

鐘のなる音がどんどん響き渡る。本来ならあり得ない暗黒が辺りを包みこんでいく。常闇の能力を強化してしまうが、別に問題でも何でもない。

 

「純粋な力などこの世界では無意味ですよ…もう少し狡猾に、それでいて優雅にいなければ(カラス)にはなれません」

 

板を倒してスタン。本体を気絶させれば動けない…つくづく強い個性である。何度も何度も頭を殴りつけようとも思ったが、そこまでするほどのものでもないと自重。

 

(というよりもともと時間稼ぎだしねぇ…他の人たちは大丈夫なのか?)

 

勢いに任せて全員気絶させたが殺したいわけではない。

 

一人で勝手に気まずくなったその空間は、どうにも離れがたい血の匂いでむせ返りそうだった。

 




前回の感想でめちゃくちゃ泣きました。元ネタわかる人と話せることが嬉しい理由がやっとわかった()

ちなみにゲーム風に言えば今回雪和についていたのはとあるトーテムパークです。
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