オール・フォー・ワンから逃げきる方法について   作:ヒロアカは青春…?

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響くオトこそ香りけれ

「子供を拾ったから」

 

両親と仲良く過ごしていた家に彼がやってきたのはそんな唐突な言葉がセットだった。ウチたちが普段使っていた音楽室の隣に新しく誰かが来るだろう部屋は、どこか寂しげ。

 

「弟ができたようなものだよ、響香」

「サンタさんが連れてきたの?」

「そうよ」

 

3人だけしかいない家族の中に誰かが入ることに、10歳のウチは不思議と喜んでいた。誰かのそういう兄弟の話を聞く度に、自分にもいたらなぁと何回も思っていたのだ。

 

そんなウチの考えに衝撃を与えるような見た目だったのは、しょうがないことだと言えよう。

 

「はじめまして。えっと、よろしくお願いします…?」

 

うんしょうんしょとダボダボの袖を引きずってペコリと一礼する白髪の少年。体に巻き付けられている紐はプレゼントが見えるようになのか、頭の上に結び目がある以外は殆ど彼を隠していない。

 

雪の降りしきる夜の日だからかそれとも白い息を吐いているからなのか─彼は白い雪の妖精に思えた。

 

「名前は…ええと、ないので決めてほしいです」

 

こちらを見上げる上目遣い。どこか犯罪的な可愛さに何かが歪む音がしながら、両親に助けを求める。二人は柔らかく笑ってポンと手を叩いた。

 

「響香、君が決めていいよ」

「えっ」

「できれば呼びやすい名前がいいわね…ええ、それくらいかしら」

「えっえっ」

 

尚も混乱しているウチの背中を押すように、彼の純粋な瞳がじっと見つめてくる。へにゃりと力の抜けたように笑いかけてくる彼からどうにも目が離せない。

 

(ええと…呼びやすい名前、だったよね)

 

どこか子供らしいけどそれ以上に鋭そうな雰囲気を感じる。ウチよりも変な人生を歩んできたのに信用してくれている無垢な瞳。

 

触れたらすぐに消えそうな彼のほっぺたはふにふにとしていてとても触り心地がいい。不思議そうにしていても一緒にいるだけで頬が緩むのかとても嬉しそうだ。

 

 

「─雪和(せつな)

 

 

思わず口から出た名前に、少しパチクリとした彼は理解した瞬間に抱きついてくれた。ペロペロと舐めてないだけで犬みたいだ、なんて他人事みたいに思いながら雪和を撫でる。

 

「えへへ、やっぱり人から呼ばれる名前は嬉しいです」

 

「その、さ。ウチは響香って言うんだ。あなたのお姉ちゃん」

 

喜んでいる彼に名前を呼んでもらいたくて、ついそんな風に水を差す。でも家族として見てもらいたかったし、どこかムクッと膨れちゃうようなヤキモチをやいていたのかもしれない。

 

「よろしくね!響香お姉ちゃん!」

 

彼に信頼されて名前を呼ばれる─突如として、ウチの中にどこか変な気持ちが芽生えた。ふわふわして、叫びたくて甘酸っぱい気持ちになる。

 

(お姉ちゃん、かぁ。こんな可愛い弟をちゃんと守れるようにならなきゃね)

 

手の中で目を細める彼を撫でているのを両親にずっと見られており、しばらく生暖かい視線を向けられたのは恥ずかしかった。

 

 

 

 

 

 

それから2年後。雪和は私から離れることはなくて後ろをヨチヨチとついてきてくれていた。

 

「コラコラ、一緒に入らないと溺れちゃうよ?」

 

雪和は一度目を離した隙に風呂に入ろうとするけど、いなかったときに溺れかけたのでウチが一緒に入らないといけないのだ。

 

(同年代だし姉だから遠慮しなくていいのにね)

 

ずっと一緒に入ってきた家族だというのに不思議なことだった。ピューッと走り去る前に服の裾を掴んで逃げられないようにする。

 

「響香お姉ちゃんが抱きしめてくるから溺れるんじゃ…」

 

「お姉ちゃんがいないときに溺れてるんだから文句言わないの」

 

生意気なことを言う弟を強く抱きしめて、耳の中にプラグを差し込んでいたずらをする。カリカリと彼の繊細な耳を弄ると途端に動きが遅くなる。

 

「ほら雪和、ちゃんとやるよ」

「はぁい…」

 

観念してくれてされるがままになった彼を裸にして風呂場につれていき、丁寧に体を洗う。2年前に来てから変わらない弟の体は洗ったところで変わらないかもだけど、しっかり洗いたくなる。

 

「にしても本当にアンタは変わらないねー。個性がこうやって変わらないことだからとかなんじゃないの?」

 

お湯をかけていると雪和の背筋が伸び、ついでちょっと慌てた風に否定が入る。

 

「そんなわけ無いじゃん。こんなちっちゃな体のままだとなんの役にも立ててないもん」

 

ぷいっと短髪を振って顔をちょっと背ける雪和に音を通す。少し蕩けた声になってきたときに強く抱きしめれば更に喜んでくれる。

 

「お姉ちゃんの心の支えだから十分だよ」

「ふにゅう…」

 

どこか考えられなくなっている雪和をお風呂に入れて、鎖骨の部分へと顔を埋める。普段のシャンプーの匂いとは違って彼本来の匂いはちょっとだけウチの頭をクラクラさせる。

 

(ふふ、かわいいなぁ)

 

これでウチの弟じゃなくて他人だったら間違いなく恋人にしているのだが、そうじゃないのだから人生はままならない。

 

「お姉ちゃんと一緒にいてくれるよねー?」

 

「ぅ…うん…お姉ちゃんと…いっしょ…」

 

のぼせかけている弟をお風呂から出し、頭を撫でてキスをする。

 

…ずっと一緒にいられたらいいのになぁ。

 




ASMR洗脳(無自覚)
響香ちゃんは弟のことを弟ではないと認識したらタガが外れます
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