異世界TSギャルおじさん ~エルフになって好き放題やる~ 作:アスタロット
ガタガタと身体が激しく揺れる。
私は暗闇の中で目覚めた。
目隠しをされ、猿ぐつわを噛まされ、手足は硬く縄で縛られている。
全身の肌が空気に触れるのが分かる。
たぶん、全裸だ。
私はそのまま、荷台のような場所に転がされていた。
(……は?何これ……マジで?)
記憶一気に頭の中に流れ込んでくる。
金融マンだった頃のクソみたいな毎日。
ギャルとして二度目の青春を生きて、仲間を守って拉致られた事。
あの後私はどうなったんだろう。
死ぬほど痛かったけど、助かったのか?
半グレどもに売られたのか?
「ふごっふごっ…ふごっ(三度目……か……)」
猿轡のせいでまともに話せず、フゴフゴと声を上げることしかできない。
荷車の外から、男たちの声が聞こえてきた。
「このダークエルフ、目覚めたばかりで魔力が不安定だったからな。首輪と目隠しを付けるのが大変だったぜ」
「女は特に需要があるから丁寧に扱えよ。ダークエルフに呪文を唱えられると厄介だからな。猿ぐつわと拘束は絶対に外すな」
「そんなに怖いなら舌でも切り落としちまえば良いのに…」
「だからよお、いつも傷つけんなって言ってんだろ?」
(は?え、なに?ダークエルフ?舌切り落とす!?何それ!?ここどこ!?)
会話内容に驚きつつ、状況は最悪だとすぐに悟った。
誰かに捕まったらしい。
珍しいダークエルフ?として高く売られるつもりだ。
いや褐色ギャルだからダークエルフのコスプレは出来そうだけど。
わざわざ人を拉致しておいて、ロールプレイとか手が混み過ぎだろう。
(やばっ…どうなるのかな……最悪……)
絶望が胸に広がりかけた瞬間、私は格言を思い出した。
ポジティブ思考はギャルの鉄則!
(まあいいか……なんとかなるよー!)
すると突然、荷車が横転した。
「んごぉっ!?」
私は頭を荷車の床にぶつける。
とても痛い。
外で金属音と、怒鳴り声が響く。
何者かが謎の誘拐犯を襲撃したらしい。
私は縄に縛られたまま床に叩きつけられ、必死にもがいた。
やがてベキベキと木材が強引に破壊される音がした。
そして目隠しを外され、猿ぐつわも取られた。
目の前にいたのは、一人の少年だった。
黒髪の細身の少年。
可愛い。
超マブい。
周囲にはたくさんの、男の死体が無惨に転がっている。
私は息を飲み、死体の山を見て一瞬固まった。
しかし、努めてすぐに明るく笑った。
「あ、あたし、蘭寿……ランジュっていうの!助けてくれてマジあざまる!!マジで助かったよぉ! あれ!キミかっこいいじゃん!やばっ、激マブ!あ、そうだ!君の名は?」
「あざ…まる?……まぁいい、僕はマオだ」
彼は血のついた剣を握ったまま、じっと私を見つめていた。
「皆殺しで引くと思ってたのに、すぐに感謝するの?捕えられていた割に冷静だね、お前」
私は首を傾げて笑った。
「えへへ……助けてもらったんだから、感謝すんのが安定じゃん!あたり前すぎて草だよね!」
マオは少し眉をひそめたが、何も言わずに縄を切り始めた。
私は解放された体を軽く伸ばし、改めて自分の状態を確認した。
「すっごーい! 耳ながーい! お肌もナチュラル褐色ぅ!!え、どうなってんの!?」
「そりゃお前がダークエルフだからに決まってるでしょ」
「デジマ!?」
「その意味不明な方言で喋るのやめてくれない?」
「方言ぢゃないし!ってかここはどこ!?私はだあれ!?貴方はザビエル?」
「ここはエリュシオンだ。そんな当たり前の事も知らないの?やっぱりダークエルフって引き篭もり種族なんだね」
「ヒッキーぢゃねーし!!ガールズバーでちゃんと働いてるし!!い、一応、金融リテラシーもあるし!!」
「がーるずばーと、きんゆうりてらしーが何かは知らないけど、今から君は僕の戦利品だ。言っておくけど拒否権は無いよ」
マオは私に無邪気な笑顔を向けた。
「は、はぁ!?イミフなんですけど!え!?激マブショタの奴隷になる系?」
「奴隷…まあ有体に言えば、そうだよ」
「ふぅーん………いいよー」
「…は?」
二つ返事に、彼は驚いた。
どうやら抵抗されると思って警戒していたようだ。
マオは剣を収め、冷たい目で私を見下ろした。
「……随分と素直だね。まあいいや、じゃあ服は…コイツらのからマシなの見繕って着て」
「りょー」
今は頼れるのがこの人しかいない。
私を助けてくれたし、たぶん良い人でしょ。
知らんけど。