マオに言われるがまま、獲ったクソデカ猪の処理を手伝った。
「ヘタクソ」
捌く手際が悪く、マオに怒られた。
こちとら狩猟&解体経験ゼロじゃい。
助けてもらった恩人だけど、「セックスが下手」みたいに言うからムカつくわ。
「仕方ないぢゃん!……あ゛ーッ!ほんっとクッサい!!マヂ無理!!何コレ!?ぜんっぜん刃が通らんし!!もうやだー!ってか、マダニとか大丈夫!?ねぇっ!?マオっち!?」
「マダニ?なんだそれ?そんな無駄口叩く前に手を動かしてよ」
「もうやだぁー…臭いし硬いし汚れるし…ガン萎えぇ……ぴぇん」
「じゃなメシ抜きだね」
「ひーん」
背に腹はかえられぬ。
私はマオに尻を叩かれなが、クソデカ猪の処理を続けた。
ーギャル猪解体中ー
悪戦苦闘する事しばらく。
勇敢なる奮闘の結果、クソデカ猪は何とかバラせた。
ようやく食事にありつける。
近くから枝やらを拝借し、マオが火を起こす。
すると次第にパチパチと薪が音を立てて弾けだし、火が昇りはじめる。
その側に肉を突き刺して待つ。
その焚き木を、ジュワジュワと音を奏でる肉が囲う。
やっと、肉が、食える。
「マオっち!マオっち!はっ…はっ…はっ…!も、もういい!?もういい!?もうペコ!完全にペコ!リアルにペコなんですけど!!食べて良い!??!」
「待て、僕が先………はむっ…むしゃむしゃ」
このショタものすごいドSやで。
私の目の前で、肉を美味そうにかぶり付きやがって。
「うっ…うぅ…マオっちひどい!お腹ペコ過ぎてぇ!アタシ激おこぷんぷん丸なんですけどぉ」
私は涙目になりながら、空腹をマオに訴えた。
「食べてヨシ」
「いいの!?やったぁー!!いただきマンモス(死語)!」
火が通っていそうな部分を、豪快に噛みちぎる。
がぶり
もきゅもきゅ
ごっくん
「………ぅめぇ…うめぇ…野生味がメイラード反応で一変ッ…薪の香りも合わさって、香ばしい匂いが鼻に抜けるゥッ!!」
よく分からんクソデカ猪は最高に美味かった。
「そんなに美味い?」
「バカウマっしょ!!最高!肉を噛み締めると…肉汁がお口の中でウマアジが…じゅん…じゅわぁ…」
こんなにワイルドな肉が美味く感じるなんて、初めての経験だ。
「ダークエルフには肉がご馳走って聞いてたけど、本当みたいだ。良かったね」
「いや肉は正義だし…ウンメェ!」
なんか生暖かい目線が気になるけど、空腹を満たすのが先だ。
・
・
・
目覚めてから初めての食事。
夢中で食ってたから分からなかったけど、残ってた大量の肉が消えていた。
その食べ切れなかった、肉や皮はどうしたと思う?
答えはこれだ。
「マオっち、残った肉とか何処やったの?無いんだけど?」
私が肉に齧り付いている間に骨や皮、他の部位やらが忽然と消えていたのだ。
「収納したに決まってるでしょ」
「え?しまったの?どこ?マオっちのお腹に?もう、ペコリンちょの食いしん坊だなぁ」
「いや食べてないから!魔法で影に収納したの!」
「マジ?ほんと!?」
「そうだよ」
「………すッゲェ!!!!影魔法スッゲェ!!マジパネぇっす、マオっちさん!!やりますねぇ!」
「ウンソウダヨ」
マオの返事が段々と、いい加減になってきた気がする。
それにしても気になる事が多すぎる能力だ。
「その能力ってどんなの!?収納容量は?大きさの上限は?重量制限は?沢山入れて重くない?生モノはダメにならない?」
「いっぺんに質問するな!!まあ、食料の保存は効くな。大体の物は入るし、重くなったりも無いよ。容量は分からないね…限界になった事ないし」
「マジか…チートやん…」
欲しい、その能力…何としても欲しい。
狩りの時に使ってた魔法も凄かった。
黒い影が棘みたいになって、猪に突き刺さるんだ。
カッコよかったなあ…あれは使ってみたい。
「おせーて…影魔法おせーて!!アタシにも、そのクソ便利な影魔法おせーて。めっちゃ欲しい」
「教えない」
「やーだー!クソ便利魔法、使いたい!使いたい!使いたい!つーかーいーたーいー!!!」
餓鬼のように手足をばたつかせて、駄々を捏ねる。
人生三回目ともなれば、恥も外聞も無いのだ。
「影魔法は誰でも出来る訳じゃないんだぞ」
「えー!無理系?アタシも影魔法使いたい、無理系?」
「無理」
それからお願いしては断られる、というやり取りが何回か続いた。
「……そっかぁー無理系かぁー…じゃいいや…」
「やっと納得したか…これ以上執拗だったら処していたところだよ」
「え、処す?処すって………ま?…………ま、まあねー…?マオっちが使えるな別にいらんし」
「納得したなら、さっさと寝て。体力を回復してよ。まだまだ先は長いんだから」
「そう言えば聞いてなかったけど、アタシら何処行くの?」
「街だよ」
「あー…ブクロみたいな?アタシ渋谷とか六本木派なんですけど」
「そんな名前の都市はない」
「そこに行ってマオっちは何すんの?」
「……手に入れたモノを売る」
「へー!なら、その影魔法で売れるモンを色々と収納してんでしょ!マジで羨ましいなぁー!」
「もう良いから、寝てくれない?」
「はーい」
貸してもらった外套に包まり寝転がる。
身体は痛いし、地面が体温を奪う。
柔らかいベッドが懐かしいなあ。
やっていける自信が無いよ。
いやいや、ダメダメ!
ネガティブ思考は禁止!
これギャルの鉄則!