中学2年生に進級するタイミングで、僕はたった1人で残っていたバスケ部をあっさりと辞め、卓球部へと転部した。
正直なところ、この選択には少しばかり迷いがあった。
中体連の会場で出会ったなずな先輩と、もう一度会える可能性に賭けてサッカー部に入部するという選択肢もあったからだ。
でも、冷静に考えてみると、仮にサッカー部に入部して大会でなずな先輩と会うことができても、他校のマネージャーとゆっくり話す時間なんて取れるはずがない。
それに加えて、他にもマイナス要素があった。サッカー部の顧問に、僕は嫌われているのだ。
去年の暴力騒動の余波に加え、その顧問の授業で間違いを指摘したこともあって嫌われてる。
入部したところで、ベンチ要員としてスタメンに入れてもらえない未来が容易に想像できる。
とはいえ、先輩たちが引退して僕たった1人になったバスケ部で、虚しくドリブルの音を響かせ続けるつもりなんて毛頭ない。
そこで浮上してきた選択肢が、卓球部だった。
卓球は完全に個人競技であり、なおかつこの学校の卓球部は部員数が少ない。
面倒な出場枠の取り合いによる人間関係に悩まされることなく、入部さえすれば自動的に個人戦に出場することができる。
もちろん、卓球部には他にもメリットがある。
吹奏楽部や手芸部などの文化部に入るつもりはないけど、かといってバスケやバレーのような団体競技を避けたい......
そんな、団体競技から逃げたいタイプの女子が流れ着きがちなのが、卓球部なのだ。
だからこそ、意外と大人しめで、かつスタイルのいい隠れ美少女が在籍している確率が高い。その分その反対も多いけど。
なにより、女子のユニフォームが素晴らしい。
具体的にどこが、何が素晴らしいのかはここでは明言しないけれど、彼女たちの魅力をあれほど引き立ててくれるウェアは他にないと思っている。
今の僕の運のステイタスを考えれば、大会の会場で思わぬ原作キャラクターと巡り会える可能性も極めて高いはず。多分、きっと。
おっと、もうこんな時間だ。そろそろ部活に行こう。
鞄を手に取り、席を立ち上がろうとしたタイミングで、優しく元気な声が僕を引き留めた。
「なーぎくんっ、今日も部活終わり一緒に帰ろうね!」
振り返ると、帆波が僕の腕に自分の腕を絡ませ、豊かな胸を押し付けるようにして上目遣いで微笑んでいた。
「うん、いいよ」
僕は表情を崩すことなく、ごく自然に頷いてみせる。
去年の秋、僕の家に彼女を招いて勉強会をして以来、帆波の僕に対するアプローチは目に見えて激しくなった。
事あるごとにこうして密着して抱きついてくるし、何かと理由をつけては僕の家に来たがるようになった。
前者の過剰なスキンシップに関しては、別に悪い気はしないしデメリットもないので、特段拒否することなく受け入れている。
けど、後者の『僕の家に行きたがる』という要求に関しては、毎回適当な理由をつけてのらりくらりと断り続けていた。
彼女が僕の家に入りたがる理由が、痛いほど見え透いているからだ。
まだ中学生という幼さゆえか、それとも僕に対する好意が溢れすぎて制御できていないのか。
──彼女の奥底にある独占欲のようなものが、隠しきれずに表情や仕草に滲み出てしまっている。
申し訳ないけど、今の段階でベッドに押し倒されるようなことは避けたい。
「また後でね!」
嬉しそうに手を振りながら自分の席へと戻っていく帆波の背中を見つめながら、僕は小さく息を吐き出した。
彼女のアプローチがここまで急激に異常な熱を帯びた理由。
それは十中八九、あの日僕の部屋で、坂柳さんから送られてきた手紙の束を見たからだろう。
帆波が帰ったあと、本棚のケースを確認した時、すぐに異変に気がついた。
手紙の並び順が、ほんのわずかだが、確かに狂っていたんだ。恐らくそれが原因で、彼女の中にの独占欲と嫉妬心に火がついてしまったんだと思う。
あ、それと僕のお母さんの弁護士事務所に帆波のお母さんが入社したんだよね。
何故か僕がお母さんにお願いしたことがバレてたから、それも影響してるのかもしれない。
うっ、僕だってあんまりこういうことはしたくなかったけど、一之瀬家の経済状況改善のためにはこれしかなかったんだ。
それに、面接とか筆記試験をして問題ないって言ってたから、完全なコネってわけじゃない。
やっぱり権力のある親は最高だねっ。お母さんの法律事務所が全国にあって良かった。
とりあえず、帆波とプライベート空間で2人っきりになるのは避けようと胸に誓い、卓球部の部室に向かって歩き始める。
体育館にこもる蒸し暑い熱気。
ゴムの焼けるような匂いと、バッシュが床を擦るキュッという甲高い音が鼓膜を絶え間なく叩き続ける。
中体連の地区大会。俺の地区のじゃない、別の地区のだ。
なんで俺がこんなところまで来たのか。理由は単純だ。どうしても見たい試合があった。どうしてもこの目に焼き付けておきたい『アイツ』のバスケがあった。
なのに。
それなのに!
「......なんでいねぇんだよっ!」
壁に張り出されたトーナメント表を何度睨みつけても、結果は同じだった。
苛立ちに任せて声を荒らげると、周囲を歩いていた他中のやつらがビクッと肩を揺らしてこちらを振り返る。
なんだよ、見てんじゃねぇぞ!
クッソ!
トーナメント表を思い切り殴りつけたい衝動を必死に堪え、ギリッと奥歯を噛み締めた。
何度見直しても、上から下まで指でなぞってみても、俺が見たかったあの中学校の名前はどこにもない。
ふざけんな。こっちはお前のプレイを、お前のそのふざけた才能をわざわざ見に来てやってんのによ!
「あれ、今年は去年優勝した中学校出場しないんだ」
不意に、背後から緊張感のない間の抜けた声が聞こえてきた。
振り向くと、俺と同じようにトーナメント表を眺めている他中のやつらが、のんきに会話を交わしてやがる。
そうだ、なんでいねぇんだよ!俺が聞きたいのはまさにそれだ。
「あー、そうらしいよ。なんでも、残った部員が1人だけで、その子が辞めて廃部だってさ」
は?
辞めた?
廃部?
は?は?は?
思考が完全に停止した。耳に入ってきた言葉の意味が、脳内でうまく処理できない。俺がバカだからじゃねぇ。
「へー、勿体ない。去年優勝したなら、新入部員が入ってきただろうに」
「ふざけんなよ......!」
怒りで震える拳を強く握りしめた。短く切った爪が手のひらに食い込んで、鈍い痛みが走るけど、んなものはどうでもよかった。
アイツが辞めた?あの圧倒的な才能を持ったアイツが、バスケをあっさりと捨てただと!?
俺は、去年の都大会で見せたアイツのバスケが見たくて、わざわざ少ない小遣いから交通費をかけてまでここまで来たんだぞ......!自分の試合が終わってから速攻で来たんだぞ....!
なのに、辞めた......?
ふざけんな。ふざけんなよ、マジで。
去年の都大会。アイツのプレイを初めて見た時の衝撃は、今でも俺の脳裏に鮮明に焼き付いている。
ワンマンチームなんてありきたりな言葉じゃ表現できない。
アイツがコートにいるだけで、試合の空気が完全にアイツのものになっていた。
理不尽なまでのシュートセンス。相手の心をへし折るような冷徹なゲームメイク。
汗一つかかず、まるで息をするように他者を蹂躙していくその姿は──俺が血反吐を吐くほど練習しても絶対に届かないかもしれない『天才』だった。
あんなバスケを見せられたら、誰だって目に焼き付けたくなる。俺だって、悔しいけど認めざるを得なかった。
アイツのバスケはスゲェって。俺じゃ追いつけねぇって。
だけど、去年の大会は都大会の2回戦で、他の部員の体調が悪くなったかなんかでリタイアしやがった。
たった1試合しか、アイツのプレイを見ることができなかったんだ。
だから、今年は──今年は、アイツの全部の試合を見るつもりだったのによ!
アイツがどれだけ理不尽なプレイで相手を絶望させるのか。どんな常人離れしたプレイをするのか、それをこの目で確かめて、俺自身のバスケのモチベーションにするつもりだったのに。
「才能があるくせに......なんであっさり捨てやがるんだよ......!」
誰よりもバスケに本気で打ち込んでいる俺からすれば、アイツのその選択はバスケへの冒涜に等しかった。
たった1人で残ったから?廃部になるから?
そんなの、アイツの実力ならどうにでもなったはずだ。
アイツがその気になれば、いくらでも新入部員を集めてチームを引っ張ることだってできたはずだ。
なのに、アイツはそれすら放棄して、いとも簡単にバスケのコートから降りた。
胸の奥で、やり場のないどす黒い怒りが渦巻いている。
バスケを真剣にやってる俺たちが馬鹿みたいじゃねぇか。
あんな才能を持ったやつが、なんの執着もなくあっさりとボールを手放すなんて。コートから降りるなんて。
「クソが......!」
誰もいなくなったトーナメント表の前で、俺は一人、ただ虚しく悪態をつくことしかできなかった。
あの理不尽な才能とコートで交えることはない。その機会さえ与えられることはないんだからよ。
その事実が、怒りとは別の、形容しがたい重い喪失感となって俺の胸に重くのしかかっていた。
ハレルヤ!.....なんてね。
いやー、いいね。地区予選の会場は、正直なところ『ううん......』と首を傾げたくなるような女子のレベルだったけど、さすがは都大会ともなると規模が違う。
広い体育館には何十台もの卓球台がずらりと並び、ピンポン球が跳ねる軽快な音と、床を擦る鋭い音が絶え間なく響き渡っている。
たまに得点を取った選手たちの遠吠えも。まあ、それは置いておこう。
んー、会場内には可愛い子がチラホラ存在しているのが素晴らしい。これだけでも、バスケ部を辞めて卓球部に転部した甲斐があったというものだ。
そして、僕にとっての最大の収穫──原作キャラを2人も見つけることができたのだ。
1人目は、まあどうでもいい。山内だ。
原作の知識を照らし合わせても、特段興味を惹かれるような相手ではない。
まあ、卓球の大会は地区によっては出場枠が広かったりするし、彼程度のモブが都大会の会場に紛れ込んでいてもおかしくはない。
きっと、団体戦の補欠メンバーとして、ベンチを温めるためだけに連れてこられたのだろう。
問題は、2人目──山村美紀。
事前に確認した女子の個人戦トーナメント表に彼女の名前はなかったから、おそらく学校の団体戦のメンバーとしてこの会場に来ているんだと思う。
まあ仮にベンチだとしても、ここまでこれるのがすごいよ。うんうん。
そんなことを思いながら、僕は少し離れた客席から彼女の姿を静かに観察する。
仲のいい友人がいないのか、それとも居場所がないのか。
彼女はチームメイトたちの輪から少し離れた客席の端で、ポツンと1人で膝を抱えるようにして座っていた。
原作でも『影が薄い』『気配がない』と描写されていた彼女だけど、実際にこうして見ると、その美しさは隠しきれるものじゃない。
透き通るような白い肌に、どこか儚げで守ってあげたくなるような細い線。
こんなにも整った顔立ちの美少女が誰にも注目されずに放置されているなんて、この会場にいる男子生徒たちは全員目が節穴なんだろうか。多少幸薄な顔ではあるけども。
まあ、そのおかげで僕が独占できるんだから、感謝すべきかもしれない。
「ちょっと他のチーム偵察してくるね」
同じ学校のメンバーに声をかけてから、僕は座っている山村さんがいる場所へと足を進めた。
僕が歩くたびに、試合をしている選手たちよりも、客席にいる女子や暇そうにしている男子の視線が僕に集まっている気がする。
まあ、分かるよ。僕みたいなイケメンがいたら見てしまうよね。
いずれにせよ、注目されることにはもう慣れた。周囲の視線は一切気にせず、僕は彼女の隣へと真っ直ぐに向かった。
「隣、座ってもいいかな?」
できるだけ声のトーンを落とし、優しく穏やかな響きを意識して声をかけた。
【好感度:30】
【状態:警戒・不安・歓喜】
僕の声にビクッと肩を揺らす。声をかけられるなんて思っていなかったんだろう。
警戒と不安、そして歓喜。
突然見知らぬ男子に──それも、おそらく彼女から見ても顔の整った男子に声をかけられたことへの純粋な『歓喜』。
しかし、それと同時に『なぜ自分なんかに声をかけてきたのか』『何か裏があるのではないか』という自己肯定感の低さからくる『警戒』と『不安』。
原作の知識通り、ひどく内向的で自虐的な性格が如実に表れている。
「......どうぞ」
彼女は僕の顔を直視することなく、少しだけ身を縮こまらせながら、か細い声で答えた。
可愛い。この小動物のような怯えた反応は悪くない。
「初めまして。僕は神代凪。君の名前は?」
隣に腰を下ろし、適度な距離感を保ちながら自己紹介をする。
「山村です」
【好感度:20】
彼女は短く苗字だけを答えた。
「下の名前は?」
もう一歩だけ踏み込んで聞いてみる。
「......山村美紀です」
少しの躊躇いの後、彼女は困惑しながらもフルネームを口にした。
「美紀、いい名前だね。君にピッタリだ。これから名前で呼んでもいいかな?」
彼女の瞳を真っ直ぐ見つめ、軽く微笑みかける。
「好きにしてください」
相変わらず目を合わせてはくれないけど、その声から警戒心が少しだけ緩んでいるのが感じ取れた。
「ありがとう。僕のことも、気軽に名前で呼んでね」
「はい」
これから更に距離を縮めようと話しかける前に、会場のスピーカーから、試合の進行を告げるアナウンスが響き渡った。
『第5コート。神代凪選手、至急コートに入ってください』
ああ、もう僕の番か。個人戦の初戦、相手はそこまで無名校の選手だったはず。
「呼ばれちゃったなぁ」
僕はゆっくりと立ち上がり、コートへ向かう前に彼女を見下ろした。
不安げに上目遣いでこちらを見上げてくる彼女に向かって、優しく微笑む。
「行ってくるよ。サクッと試合を終わらせて、すぐ戻ってくるから待っててね、美紀」
そう言い残し、僕はコートへと続く階段へと向かう途中──改めて美紀のいる場所を見つめて好感度を確認する。
【好感度:60】
「......っ」
僕は危うく、階段を踏み外しそうになった。
たった数分、ほんの少し言葉を交わして名前を呼んだだけだ。それなのに、この異常なまでの数値の跳ね上がり方はなんだ。
自己評価が低い反動なのか、驚異的な上がり方だ。
「まあ、悪い気はしないけどね」
口角が吊り上がるのを感じながら、僕はラケットを手に取り、対戦相手が待つコートへと足を踏み入れた。
周りは熱心に応援する生徒たちばかりで、チームメイトの輪からも外れ、ポツンと一人で座っている私の存在なんて、まるで背景の一部のように誰の目にも留まりません。
そう、いつも通り。私は誰の記憶にも残らない、影の薄い存在のはずでした。
それなのに。
広くて騒がしいこの会場で、わざわざ私の隣に腰を下ろし、優しく声をかけてきたのは、私とは正反対の存在でした。
どこにいても目を引くような、目立ってキラキラしていて、圧倒的にかっこいい他中の男子生徒。
神代凪くん。
彼がコートでの試合をあっという間に終わらせ、観客席の階段を上ってくるのが見えました。
そして、迷うことなく、真っ直ぐに私の所へ戻ってきたのです。
「お待たせ、待っててくれたんだね。ありがとう、美紀。ただいま」
息一つ乱していない汗ひとつかいてない涼しげな顔で、彼はふんわりとした笑顔を向けてきました。
......待っているもなにも、ここは私が元々一人で座っていた場所です。
だから、彼を『待っている』も何もありません。私はただ、行く場所がなかっただけなのですから。
ですが、そんなひねくれた本音も、彼の綺麗な笑みを向けられたら、わざわざ口に出すことなんてできませんでした。
それにしても、『ただいま』と言われましたが、こういう時はなんて返すのが正解なのでしょうか?
私のような人間が、出会ったばかりの彼に『おかえり』と親しげに返すのは、なんだか図々しくておかしい気がします。
かといって、何も返さないのは明確に無視していることになり、人として論外です。
頭の中でぐるぐると考えを巡らせた結果、私の口から出たのは、ひどくありきたりで、小さな声でした。
「......おかえりなさい」
小さくてほとんど発していないくらいの声だったのに、彼は嬉しそうに軽く頷いて、当たり前のように私のすぐ隣に座りました。
先程まで激しいスポーツをしていたはずなのに、彼からは汗の嫌な匂いなど一切せず、むしろ微かに爽やかな香りが漂ってきて、私の心臓をドクンと跳ねさせます。
.....心臓が跳ねる?どうして?
「試合、見てくれた?」
「はい」
見ようと思わなくても、彼の試合から目を離すことなんてできませんでした。
その整った容姿と、纏っているオーラ故か、会場中の視線が自然と彼の一挙手一投足に引き寄せられていたのです。
私もその中の一人に過ぎません。
相手を全く寄せ付けず、圧倒的な実力差を見せつけた試合は、わずか10分もかからずに残酷なまでに終わってしまいましたが。
「かっこよかった?」
悪戯っぽく、私の横顔を覗き込みながら問いかけてくる彼。
私は思わず熱くなった顔を逸らして、なんて答えるべきかを必死に考えました。
.....なぜ顔が熱く?
かっこよかったかと聞かれれば、それはもう、疑いようもなくかっこよかったに決まっています。誰もが認める事実です。
でも、それを私の口から直接彼に伝えるのは、身の程知らずな気がして、ひどく恥ずかしくて憚られます。
それでも、嘘をつくことはできなくて、私はギュッと自分の膝の上で手を握り締めました。
「......かっこよかったです」
絞り出すように伝えた言葉。すると彼は、嬉しいといわんばかりに、目を細めて笑ったのです。
「ありがとう。君みたいな美人にそう言われると、やる気が出るよ」
──え?
その瞬間、私の思考は完全に停止しました。
美人?誰が?私が?
心臓が嫌な音を立てて冷たくなっていくのを感じました。
罰ゲームの嘘告白の対象に、何度も何度もされてきた私が、美人......?
クラスの男子が緊張した顔つきで近づいてきて、告白された記憶が、断った時の屈辱的な言葉が、脳裏にフラッシュバックします。
『......お前みたいな暗い女、別に好きじゃねぇよ。勘違いすんな、ブス。本気じゃないから。はいはい、これ嘘コクの罰ゲームだから』
そう言った彼は、背後のお友達と去りながら行っていた嘲笑が、今でも私の耳にこびりついて離れません。
だから、私は目立たないように、誰の視界にも入らないように、息を潜めて生きてきたのに。身の程を弁えて生きてきたのに。
神代くんの言葉は、嘘偽りのない純粋な称賛に聞こえました。
でも、私の過去の経験が、それを素直に受け取ることを激しく拒絶します。
こんなにキラキラした彼が、私なんかのことを本気で『美人』だなんて思うはずがありません。
これも何かの悪ふざけなのでしょうか?それとも、誰にでもこんな甘い言葉を吐く人なのでしょうか?
混乱で頭の中が真っ白になり、私はただ震える唇を噛み締めることしかできませんでした。
「僕は嘘はつかないよ。君が何を考えてるか分からないけど──君は綺麗だ。自信を持ちなよ、美紀」
手を──手を握られました。額がくっつきそうなくらい近くに、彼の顔が──顔が......あります。
今までにないくらい顔が熱をもって、何も考えることが....出来ません。なんなんでしょう。心臓が早鐘を打ってます。
初めての経験で.....初めて言われた言葉で....
.....分かりました。きっとこれは。
──恋に落ちた。
私はきっと、今日初めて出会った10分も話していない彼に、心を奪われてしまった。
「大会は終わったし、シングルスで優勝もした。次回は全国大会なんだけど....」
この大会の参加者を蹴散らしても、身体能力の数値が大して上がらなかった。やっぱり、ステイタスを上げるには能力の高い人間と戦わないといけない。
それはそれとして........山村美紀。君も少しばかり、いや──帆波以上にちょろすぎる。成人しても今世ではホストに行かない方がいい。
【好感度:86】
「お父さん。僕、3年に進級したら受験日以外は海外留学したい」
このまま今の学校で3年になってからも過ごすと、高校に上がってからも帆波を優先せざるをえない雰囲気になる。
そうならないためにも、帆波から一旦距離をとる必要がある。
山村さんユニフォーム姿
一之瀬さん
次回は、堀北さんと櫛田さん。
主人公以外の一部キャラの話と、中学卒業に伴う天使面談です。
中学編を──終わらせに来たっっっ!ドンッッ!!
中学は.....?
-
一之瀬さんと一緒
-
軽井沢さんと一緒
-
山村さんと一緒
-
椎名さんと一緒
-
松下さんと一緒
-
小野寺さんと一緒