魅力至上主義の教室   作:Mr.♟️

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合鍵と昼食

 

朝5時。まだ薄暗い部屋の中で、私はアラームが鳴るよりも前にパッチリと目を覚ました。

 

そのままシャワーを浴びて、身支度を整える。

 

鏡の前で髪を梳かし、少しでも可愛く見えるように丁寧にセットした。

 

身支度を終えてから、いそいそと2人分の朝食を作り始める。好きな人のために朝食を作るのは、これが初めての経験だ。

 

エプロンの紐を結ぶだけで、胸の奥がじんわりと温かくなって、どうしようもなく鼓動が早くなる。

 

私の作ったご飯を食べて、美味しいって喜んでくれたら嬉しいな。

 

「ふふっ、凪くんはお肉よりお魚が好きだって言ってたよね」

 

昨日買っておいた魚をまな板の上に乗せ、ゆっくりと包丁を入れる。

 

家では昔から料理のお手伝いも率先してやっていたから、お魚だって綺麗に捌けるよ!

 

魚に軽く塩を振って塩焼きにしながら、並行してもうひとつのコンロで豆腐とネギの味噌汁を作る。

 

お魚だけだと少し寂しいし、朝から温かい汁物を飲んでホッとしてほしいからね。

 

昨日の夜に予約炊きにしておいた炊飯器がピーッと電子音を鳴らした。時計を見ると、時間は大体6時前くらい。

 

うん、朝食の準備もできたし、そろそろ行こうかな。

 

 

炊きたてのツヤツヤしたお米をタッパーに移して、焼き上がったお魚も崩れないように別のタッパーにそっと入れる。

 

んー、お鍋とタッパーを全部1回で持っていくのは、流石に難しそうかな。こぼしたら台無しだし、ここは慎重にいかないと。

 

最初は味噌汁が入っているお鍋を両手でしっかりと持って、凪くんが住んでいる部屋の前まで向かう。

 

男子寮と女子寮は分かれているけど、行き来することはできる。他の日にみつかったら、それはそれでいいしね。

 

ポケットに忍ばせた、冷たい銀色の『合鍵』をそっと取り出し、静かに扉の鍵穴へと差し込む。

 

合鍵は昨日のうちに管理人さんにちょこっとだけ関係性を盛ってお願いしたらすぐに貰えた。

 

起こさないように、カチャリという音すら立てないように細心の注意を払って扉を開ける。

 

玄関に入ってすぐのところに、味噌汁が入ったお鍋を音を立てずに置いて、扉を閉めてエレベーターに乗って自分の部屋に戻る。

 

戻ったあとは、用意しておいたタッパーに詰めているお米とお魚を両手に抱えて、同じく凪くんの部屋へと運ぶ。

 

玄関に入って、靴を脱いで、そーっと部屋の奥のドアを開ける。

 

隙間から覗くと、ベッドの上で穏やかな寝息を立てている凪くんの姿が見えた。

 

まだぐっすりと寝ているみたいだった。

 

私は足音を忍ばせ、そのままゆっくりと近づいて、ベッドの横にしゃがみ込む。

 

そして、凪くんの無防備な顔をゆっくりと覗き込む。

 

長いまつ毛、通った鼻筋、少しだけ開いた唇。

 

どれだけ見ていても全く飽きない、大好きな人。

 

 

 

 

ふふっ、また会えたね。凪くん。

 

中学時代。凪くんは1年、2年と、私と妹の誕生日をお祝いしてくれたよね。

 

私のことを『可愛い』って『綺麗だね』って、甘い声で何度も何度も言ってくれた。

 

だから私、そのうち凪くんと付き合えるって、凪くんの特別な存在になれるって、ずっと信じて疑わなかったんだよ。

 

それなのに、凪くんは3年生になる時、私に一言も──本当に何も言わずに突然海外留学に行っちゃったよね。

 

あの時は、目の前が真っ暗になって、息ができないくらい本当に悲しかったなぁ。

 

心にぽっかりと大きな穴が空いて、何をしていても凪くんのことばかり考えてしまって。あ、凪くんのことを考えてたのはいつもなんだけど。

 

いつ帰って来るか聞くために、凪くんのお家に押しかけたい気持ちを必死に頑張って我慢した。

 

そして、次に凪くんがもう一度学校に来た時、私から真っ直ぐに告白しようって決心してたんだよ。もう2度とどこかに行かないように、ね。

 

 

 

 

 

 

......凪くんは、結局卒業式にさえ来てくれなかったけどね。

 

ううん、でもいいんだ。そんなことはもうどうでも。再会できるのはわかってたし。

 

だって、私は凪くんがこの『高度育成高等学校』を受けるって知って、この学校を受験したんだもん。

 

職員室の先生の机の上に置いてあった進路希望調査表をこっそり見てこの学校を受けることを知ったんだ。

 

この学校を受験して合格した時、凪くんとの運命の赤い糸は、絶対に切れてなんかないって確信した。

 

だって、凪くんが落ちるはずないのは分かってたから。今度こそ、絶対に凪くんを逃がさない。

 

 

 

凪くんは知らないよね。

 

この学校に入学してから、私はずっと我慢してたんだ。凪くんがいることを知ってるのに、会いに行くことができなかった。

 

朝から凪くんの教室に押しかけるのは、目立って迷惑になるかもしれないからやめようって。

 

昼休みに食堂で見かけた時は──クラスの女の子たちに囲まれて楽しそうにしてたから、割り込みたい気持ちはあったけどクラスメイトとの交流の邪魔はしないようにしようって。

 

その代わり、放課後になったら、誰よりも早く真っ先に会いに行こうって思ってた。

 

 

 

 

ずっとずっと温めてきたこの想いを、凪くんに伝えようって。

 

それなのに。

 

──凪くんは、あの坂柳さんと一緒に並んで歩いてた。

 

一目見た時から嫌な予感はしてたけど、あの日、凪くんの部屋に隠されてた大量の手紙。

 

あの手紙のやり取りをしてた『坂柳有栖』さんだよね。 まさか、同じ高校で会うなんて思ってもなかったよ。

 

 

 

 

 

 

......ねえ。凪くんといる時の坂柳さんの態度を見てるとさ、坂柳さんって明らかに凪くんのこと好きだよね?

 

どうして、坂柳さんが凪くんの隣で当たり前みたいな顔をして笑ってるの?

 

ねぇねぇ、凪くん。もしかして、海外留学中も坂柳さんとの手紙のやり取りはずっと続けてたのかな?

 

私には、一言も何も言わないで勝手にいなくなったのに。

 

私には、携帯を持ってないって連絡先すら教えてくれなかったのに。

 

もしそうなら、少し許せそうにないよ。

 

凪くんのことじゃないよ?凪くんとずっと繋がった状態だった坂柳さんのことが。

 

昨日の放課後に、坂柳さんの部屋で何をしてたかは知らないけど、坂柳さんは絶対に凪くんに相応しくないと思うよ。

 

だって、身体だって貧相だし、胸もすごく小さいし。私の方が、凪くんを絶対に喜ばせてあげられるのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

──んんっ、ダメダメ。

 

こんなドロドロとした醜いこと考えてるのがもし凪くんにバレたら、重たいって引かれて、嫌われちゃうかもしれない。

 

坂柳さんのことはもうおしまい。同じクラスだから、今後関わることもあるだろうし──その時に分からせればいい。

 

凪くんには、私がいるってことを。

 

 

それにしても......凪くんの寝顔、本当にいつまでも見てられるなぁ。世界で一番綺麗で、愛おしい。

 

 

 

 

この無防備な顔を、写真に撮ってもいいかな?いいよね?

 

 

 

私は音を立てないように端末を取り出し、カメラを起動した。そして、凪くんに焦点を合わせ、シャッターを押そうとしたその瞬間──

 

パチリと、凪くんが鋭く目を開いた。

 

えっ、と思った次の瞬間には、私の視界が反転していた。

 

そのままベッドから飛び起きて流れるような無駄がない動きで、手首を強く掴まれ、私は床に乱暴に押し倒されていた。

 

 

 

 

 

 

 

「.....................夢、か?」

 

覚醒しきっていないのか、彼が低く掠れた声で呟く。押し倒した状態で私を見下ろすようなその体勢。

 

強く握られた手首は、ギリギリと骨が軋むように痛い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

痛いけど───悪くない。

 

ううん、むしろ、心の奥底がゾクゾクするほど嬉しい。凪くんに、逃げられないように力強く拘束されて、激しく求められている気がして。

 

「──ふふっ、夢じゃないよ。おはよう、凪くん」

 

私は彼を見つめ返し、この上なく甘く、とびきりの笑顔を浮かべた。

 

凪くん。

 

私はもう、我慢しない。

 

凪くんの隣に相応しいかは分からないけど、それでも──隣に立つのは私だから。

 

 

 

 

「...........えっ?」

 

 


 

「朝から疲れてない?もしかして、環境が変わったら寝つきが悪くなるタイプだったりする?」

 

「網倉みたいな美人が子守唄でも歌ってくれたら、寝付きが良くなる気がするんだけどなぁ」

 

机に突っ伏したまま、冗談めかしてそう返した。

 

実際、今日の僕は朝から本当に、文字通り精神をすり減らして疲れている。原因はもちろん、帆波だ。

 

早朝、目覚めたら不法侵入した帆波がいた。彼女を自分の部屋に帰らせるのと、合鍵を回収するのが大変だった。朝食は美味しかったけども。

 

彼女を帰してから急いで管理人に連絡して、僕の部屋の合鍵を勝手に渡さないよう強めのクレームを入れた。

 

そもそも、入居初日で合鍵を簡単に渡してしまうこの寮のガバガバなセキュリティはどうなっているんだ。しかも、これで解決したわけじゃない。

 

管理人は『もう1つ誰かに合鍵を渡したけど、誰かは覚えてない』などと恐ろしいことを口走った。

 

昨日、初日だからという理由で、管理人室に鍵を取りに行った生徒は1年生全員に及ぶ。そこから犯人を絞り込むのは至難の業だ。

 

鍵穴を変えてもらえないか相談したけど、ポイントを払えとのこと。管理人が無能すぎて困る。まあ、悪意がある相手ではないだろうからしばらく放置しておこう。

 

どの道、いずれ誰か分かるはずだ。

 

「そんなこと言って、私が本気にしたらどうするの」

 

網倉の少しだけ上擦った声で、意識が現実の教室へと引き戻された。

 

「本気にしてくれないの?」

 

僕が顔を上げ、彼女の瞳を真っ直ぐに見つめながら微笑んでみせると、網倉はパッと顔を赤くして言葉を失い、見事に固まってしまった。

 

網倉の好感度は【好感度:45】か。

 

ふと視線を感じて振り返ると、網倉の後ろの席に座っている姫野が、チラチラとこちらを窺っていた。

 

流石に僕たちのやり取りを気にしすぎじゃないかな。というか、まだそこまで話してないのに好感度が【好感度:51】と高い。

 

「姫野はどうかな。落ち着く声してるし、子守唄にちょうど良さそう」

 

僕は標的を変え、少しだけ意地悪なトーンで彼女にも問いかけてみる。

 

「......どうかなって。私が肯定したらどうなるの」

 

いきなり話を振られたにも関わらず、姫野からはすぐに言葉が返ってきた。

 

警戒しているような表情を作りつつも、言葉の端々にはほんの僅かな熱がこもっている。もしかして、僕から話が振られるのを密かに期待していたりしたんだろうか。

 

「僕の部屋は402号室だよ。夜は鍵を開けておこうか?」

 

余裕の笑みを浮かべてそう返すと、姫野の動きもピタリと止まった。

 

まさか、自分の少し強気な問い返しに対して、僕が返す言葉に困るとでも思ったのかな。だとしたらあまりにも甘い。この程度の駆け引きなら片手間でもできる。

 

顔を真っ赤にしてフリーズしてしまった姫野と網倉を交互に眺めながら、僕は最後に念のために釘を刺しておく。

 

「......まあ、実際に来られたら困るから鍵はかけておくね」

 

今の冗談めいたやり取りを、彼女たちがそのまま真に受けることはないと思う。けど、本当にこられたら困るからさ。念の為ね。

 


 

「神代くん、お昼一緒にどうかな?Dクラスの子から、紹介して欲しいって言われててさ。あ、嫌だったら全然断ってね」

 

午前中の授業が終わり、昼休みのチャイムが鳴った直後の教室。

自分の席で伸びをしていた僕に、網倉が少しだけ申し訳なさそうな表情で声をかけてきた。

 

Dクラスの女子。

 

入学して間もないこの段階でクラスの垣根を越えて他クラスの生徒と交流できる人間なんてそう多くはない。

 

僕の予想が正しければ、その人物は十中八九、桔梗だ。彼女のコミュニケーション能力なら可能だろう。多分。

 

「いいよ。網倉の顔を立ててあげるよ」

 

「ふふっ、ならご飯代くらいは私がだすね」

 

「君と一緒にご飯を食べれるだけで充分だよ。どこで待ち合わせしてるのかな?」

 

網倉との他愛のない戯れはこのくらいにして、そろそろ行こうか。

 

「Bクラスまで来てくれるから、廊下で待つ?」

 

「そうしようか」

 

あ、なんだ。わざわざ迎えに行く必要はないんだ。

 

網倉と一緒に教室の扉を開け、廊下へと足を踏み出した。そして──僕は思わず、その場で足を止めそうになった。

 

 

 

 

そこには、僕の予想していた桔梗の姿があった。

 

だが、問題はそこではない。

 

彼女の隣──いや、彼女を取り囲むようにして、見知った顔がさらに2つ、険悪な空気を漂わせて立っていたのだ。

 

桔梗に鈴音と波瑠加。何故か、その3人が廊下のど真ん中でバチバチと火花を散らしている。

 

「ついてこないでくれるかしら。私、あなたのこと許していないのよ」

 

氷のように冷たく、見下すような鈴音の声が廊下に響く。その手には、可愛らしい包みで包まれた2人分のお弁当箱がしっかりと握られていた。

 

「自意識過剰すぎ、堀北さんについてきてるわけじゃないよ。それに、許して欲しいなんて微塵も思ってないから。ねぇ、ついてこないでくれる?」

 

対する桔梗も、原作のクラスの天使とはかけ離れた若干の苛立ちを含んだトゲのある言葉を投げかけている。

 

「なーくんに会うつもりでしょ。抜け駆けとか絶対にさせないから」

 

その横から、波瑠加が桔梗を睨みつけながら参戦している。

 

「は?忘れられてるかもしれないって、怖くて1人で会いに行こうともしなかった癖に?」

 

「べ、別にそんなこと思ってないから。なーくんは絶対に私のこと覚えてるし」

 

「......はぁ。あなたたちと一緒に行動してると思われたくないわ。少し距離をとってくれるかしら?」

 

......なんだろうか、この地獄のような光景は。

 

孤高の存在であるはずの鈴音が、誰かのためにお弁当を作り、わざわざ他クラスまで足を運んでいる。

 

誰にでも優しいはずの桔梗が、完全に悪魔の顔を覗かせて他の女子を威嚇している。

 

クールな一匹狼であるはずの波瑠加が、意地になって桔梗の後をつけてきている。

 

冷静に状況を整理しよう。

 

鈴音は多分、純粋に僕と一緒にお昼ご飯を食べようと誘いに来ただけだ。

 

網倉が約束をして、僕を紹介してもらう手筈を整えていたのは間違いなく桔梗。

 

そして、その桔梗が僕に会いに行くのを察知して、抜け駆けを阻止するために波瑠加がついてきた。

 

多分、そんなところだろう。

 

......今日は朝から帆波の合鍵事件で疲れてるのに、昼休みすら平穏に休めそうにない。

 

 

 

 

 

あ、バレた。

 

 

 

言い争っていた3人の視線が一斉に、扉の前に立つ僕へと突き刺さった。

 

「......!神代くん、これからお昼よね?あなたの分のお弁当を作ってきたの。その......だから、一緒に」

「あ、凪くん......!私のこと覚えてるよね?再会できて嬉しいよ......!」

 

鈴音が不器用に、けれど必死に言葉を紡ごうとしている最中にも関わらず、桔梗が強引に会話に割り込んできた。

 

原作の彼女からは考えられないような行動だ。

 

いや、根本的な性格が違うわけではない。ただ、誰にでも優しい櫛田桔梗ではないというだけだ。

 

網倉が『えっ、えっ?』と隣で戸惑っている。無理もない。

 

とりあえず、ここは順番通り、最初に言葉を発した鈴音から対応しよう。

 

ふと『慧眼』のスキルで彼女の頭上を確認する。【好感度:92】か。ん......?以前よりもさらに高くなってる?

 

あ、もしかして、会えない空白の期間が逆に愛を育むっていう、あれだろうか。

 

「ごめん、実は今日は網倉と先約があるんだ。でも、鈴音の手作りお弁当、すごく食べたいからさ──もし良かったら、2人っきりじゃないけど一緒に食べない?」

 

少しだけ申し訳なさそうな声で提案すると、鈴音はあからさまに不満そうな表情を浮かべた。

 

「それは、櫛田さんもいるということかしら?」

 

彼女の視線が、横に立つ桔梗を鋭く射抜く。

 

「......ダメ、かな?」

 

一歩距離を詰め、お弁当箱を持っていない彼女の空いている左手をそっと握りしめた。指先を絡め、彼女の瞳を真っ直ぐに見つめ下ろす。

 

鈴音の頬が一瞬にして朱に染まり、彼女は小さく、ゆっくりと頷いた。

 

よし、第一関門突破。

 

ただ、その代償として、背後から桔梗と波瑠加の鋭い視線が僕の背中を貫いているのを感じる。

 

次は、桔梗だ。僕は鈴音の手を優しく離し、桔梗へと視線を移した。

 

「──覚えてるかって?覚えてるに決まってるじゃないか。より綺麗になったね、桔梗。ショートも似合うよ。前はロングだったよね」

 

「もーっ、凪くんってば、相変わらずなんだから」

 

桔梗は一瞬だけチッと舌打ちしそうな顔をしたものの、すぐにいつもの愛らしい笑顔を浮かべた。

 

「ははっ、一応言っておくけど本音だよ。本当に、以前にも増して綺麗になったね。いつまでも見てられるよ」

 

......このくらい大袈裟に褒めておかないと、さっき目の前で鈴音の手を握っていたのを見られているから、絶対に納得しない。

 

というか、彼女に根に持たれたら、後々ひどく面倒なことになる気がする。気をつけないと。

 

「......もうっ」

 

桔梗は照れ隠しのように、ぷいっと顔を背けた。

 

『慧眼』で確認すると、頭上に浮かぶ好感度の数値が【90】から【91】にわずかに上がっていたため、心の中で安堵の息を吐く。

 

よしっ、これで最後は波瑠加だ。

 

少しだけトーンを落とし、彼女へと優しく語りかける。

 

「波瑠加は、僕と話してくれないの?ああっ、もしかして僕のこと忘れちゃった?」

 

わざとらしく、少し落ち込んだような表情を作ってみせる。すると、波瑠加は慌てて身を乗り出し、必死に否定してきた。

 

「ちがっ......!ただ、久しぶりで、何を話せばいいか迷ってただけ」

 

「迷う必要なんてないよ。思ったことをそのまま口に出せばいいんだから。それにしても......すごく大人っぽくなったね、波瑠加。今も昔も、君は綺麗だよ」

 

「......うん。なーくんも、かっこよくなったよ。本当に、見惚れちゃうくらい」

 

顔を真っ赤にして俯きながら、それでも紡がれた波瑠加の純情な言葉。

 

クールな外見とは裏腹に、褒め言葉に弱い。ちなみに慧眼で確認した好感度は【90】だった。

 

 

......それにしても、入学早々休まる暇がない。なんでだろうか。不思議なこともあるもんだなぁ。

 

 

 

 

 

 

まあ、全部僕が悪いんだけど。

 

「とりあえず......食堂行こう?」

 

網倉の言葉が合図になり、僕たちは食堂へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──私は凪くんの部屋に朝ごはんを作りに行く仲なんだよね。中学の時は私と妹の誕生日を一緒に祝ってくれたりして、家族ぐるみで仲良くしてるんだよね〜」

 

「そうですか。その程度のことでそんなに喜べるなんて、羨ましい限りです。私は彼と──っ、言いふらすようなことではありませんでした。忘れてください」

 

「....そこでやめられると、気になっちゃうな〜」

 

「そうですか?それでは1つだけ。一之瀬さんは過去の話が好きなようなので、私もそれに習いましょうか」

 

「私は彼と幼い頃から文通で心を通わせ、中学3年生の時には頻繁に電話をするようになりました。なんでも、その携帯には私と家族の番号しか登録していないと言ってましたが──家族ぐるみで交友のあった一之瀬さんの番号も登録されていたのでしょうか?」

 

 

 

 

 

 

(.....こんな綺麗な人たちも神代くんに好意を。1度会ったことがあるだけの影の薄い私のことを、彼は覚えてくれてるでしょうか。いえ.....忘れられてたとしても、お守りがあるのでそれで充分です)

 

(神代くんの後をつけている一之瀬さんを尾行して正解でした。お陰で彼の部屋の合鍵が手に入ったんですから)

 


 

櫛田桔梗

 

承認欲求の塊ではあるものの、有象無象から褒め称えられるよりも質を求めるようになった。

 

小学校時代に神代に褒められ続けたことが癖になり、中学時代にストレスを抱えながら有象無象の信頼を得て心理的なマウントを取ることよりも、容姿が整っていて才も秀でている神代からの言葉の方が余っ程満たされることに気がついた。

 

とはいえ、有象無象からの評価もあれば尚良。だが、ストレスを溜めてまで得る必要はないと考えている。

 


 

照れ顔長谷部さん

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

ぷいっと櫛田さん

 

 

【挿絵表示】

 

 

お弁当もち堀北さん

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

押し倒された一之瀬さん

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

 




どうするんだよこれ.....

話の進むペースが遅いぞ....

Bクラス or Cクラス

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