魅力至上主義の教室   作:Mr.♟️

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部活動紹介と偽り

 

昼休みの地獄のような昼食──あの修羅場をどうにか乗り越え、ようやく放課後のチャイムが鳴った。

 

帰り支度を整え、鞄を手に取って教室を出る。向かう先は体育館だ。

 

すぐに帰るつもりはない。今日はこれから新入生向けの部活動説明会がある。参加しないわけにはいかない。

 

「──あ、神代くんも部活動説明会?一緒に行こうよ」

 

席を立ったタイミングで、網倉が気さくな声で話しかけてきた。

 

彼女の存在は非常にありがたい。

 

網倉が適度に絡んできてくれるおかげで、クラスの女子たちに対するいい牽制になっている。

 

まあ、網倉自身にそんな高度な計算は全く......いや、ほんの少ししかないだろうけど。

 

「ごめん、今回は1人でじっくりと悩みたいからさ」

 

少し申し訳なさそうな笑みを浮かべて断る。

 

「そんなこと言って、他のクラスの女の子と一緒に行くんでしょ。もう、とんだプレイボーイと同じクラスになっちゃったよ」

 

ジト目で僕を見てくる彼女の頭上には、【好感度:53】という数値が浮かんでいる。

 

ちなみに、お昼ご飯の前までは【60】だったから、昼休みの修羅場を見たことで結構下がっている。まあでも、まともな恋愛観を持っているようで、却って安心したよ。

 

これが別件なら網倉と一緒に行くのもやぶさかではないけど、今回ばかりはそうはいかない。

 

僕はこれから、『原作主人公』に会いに行くのだから。

 

 

 

 

 

体育館へと続く渡り廊下を歩く。

 

 

 

 

 

 

──運が良い。

 

僕の視線の先、体育館の扉の前で、入るかどうかを決めかねているように立ち尽くす男子生徒の姿があった。

 

原作主人公、綾小路清隆だ。

 

原作の知識通りなら、ここは鈴音が『友達作りに失敗する綾小路くん』を観察するために一緒に来ていたはずの場面だ。

 

しかし、彼の隣に鈴音の姿はない。やっぱり、全てが原作通りに進むわけではないらしい。

 

僕がこの世界に存在し、彼女たちに干渉している影響が少しずつ、そして確実にバタフライエフェクトとして表れ始めている証拠だ。

 

「入らないの?」

 

扉の前でうろうろと迷っている様子の綾小路くんに、僕は自然なトーンで声をかけた。綾小路くんとは、できるだけ早く接触しておきたかったんだ。

 

初期の綾小路くんは、圧倒的に世間知らずだ。人間関係の構築も探り探りで、ある意味では一番仲を深めやすい時期だと思う。

 

コンビニで鈴音に3枚刃のカミソリを勧め、どこを剃るのか問われた際に『下の......』と真顔で言いかけるくらいには、一般常識が欠如していてコミュニケーションが下手なのだから。

 

「迷っていたところだ。そっちは部活動説明会を聞きに来たのか?」

 

抑揚のない、平坦な声で彼が振り返る。

 

「うん、そうだよ。見たところ1人みたいだけど、誰かと待ち合わせでもしてるのかな?」

 

「いや、1人だ。そっちは誰かと待ち合わせをしてるのか?」

 

オウム返しのように問い返され、僕は柔らかい笑みを崩さずに答える。

 

「僕も1人だよ。よかったら、一緒に行かない?」

 

「......いいのか?」

 

「もちろん。お互い1年だし、仲良くしよう。あ、僕はBクラスの神代凪。君の名前は?」

 

僕が名乗ると同時に、彼の頭上に浮かんでいた【好感度:10】が【15】へと僅かに上がった。

 

僕の魅力値をもってしても、珍しく初期値が低めだ。やっぱり、女子みたいにチョロくはないか。

 

ちなみに、綾小路くんに限っては、ただ好感度を上げるだけじゃダメだ。

 

一般常識というものを少しずつ教えてあげる必要がある。彼にとっての『初めてのまともな友人』というポジションを確立できれば、僕を攻撃してくることはないはず。

 

いや、そのポジションになったとしても、攻撃されそうな気がして怖いけど。

 

「綾小路清隆だ。よろしく頼む」

 

僕たちがそのまま2人並んで体育館に入ると、すでに多くの新入生が集まっていた。

 

壇上には生徒会長である堀北先輩の姿があり、開幕の挨拶から、各部活動の紹介へとスムーズに進行していった。

 


 

前言撤回する。

 

【好感度:35】

 

チョロっ。

 

思わず口に出してしまいそうになるほど、チョロすぎる。

 

体育館前で話しかけた時の初期値は【10】だったはずだ。それなのに、部活動紹介を一緒に見て、こうしてカフェに誘って少しばかり世間話をしただけで、この上がり具合だ。

 

あ、今はカフェにいるよ。部活動説明会が終わった後に、綾小路くんを誘ってケヤキモール内にあるカフェに来たんだ。

 

 

それにしても、警戒していたのが馬鹿らしくなってくる。

 

ホワイトルームで非人道的な教育を受け、最高傑作とまで呼ばれた彼も、こと『対等な友人との人付き合い』というジャンルにおいては、無知で初心だった。それに尽きる。

 

「神代は部活に入るのか?」

 

ストローでアイスコーヒーを啜りながら、綾小路くんが淡々とした口調で問いかけてきた。

 

「茶道部に入ろうと思ってるよ。あ、でも、言いふらしたりしないでね。僕目当ての女子が大量に入部したら困るから」

 

僕が冗談めかしてそう答えると、彼は表情一つ変えずに小さく頷いた。

 

「ああ、言いふらしたりはしない。それにしても、なんで茶道部なんだ?」

 

「さっきの説明会で配られたパンフレット、ちゃんと見た?」

 

「一通りは目を通したつもりだが」

 

「茶道部の部員数と男女比は?」

 

問いかけると、彼は少しだけ記憶を引っ張り出すようにして、正確な数値を口にした。

 

「......確か、6人で全員女子だ」

 

「そう。つまり、茶道部に入れば自動的に女の子に囲まれるってこと。どう?綾小路くんも一緒に入部する?」

 

軽いノリで誘ってみる。

 

とはいえ、彼が僕の誘いに乗らないことくらい初めから分かりきっていた。

 

「いや、俺は部活に入る予定はない」

 

予想通り、静かに首を横に振った。

 

「そうなんだ。まあ、気が向いたら来なよ」

 

「それに、俺が入部したら女子だけじゃなくなるぞ」

 

「友人と一緒に放課後、のんびりと部活に励むのも悪くないからね。それに、僕以外の男が同じ空間にいたとしても、狙った子は確実に落とせる自信がある」

 

ライバルの有無なんて些細な問題でしかない。ああ、もし綾小路くんが本気で来るならちょっとしんどいと言うか、勘弁して欲しいけど。

 

「自信家なんだな」

 

「そうだね。自信しかない」

 

余裕の笑みを浮かべてみせると、綾小路くんは『そういうものか』と呟き、再びアイスコーヒーに口をつけた。

 

僕が茶道部に入る本当の目的は、ゆったりとお茶を飲みたいとか、ただ単に女子に囲まれてちやほやされたい──なんていう浅はかな理由だけじゃない。

 

Cクラスの椎名ひより。

 

原作の知識が正しければ、彼女は茶道部に入部するはずだ。

 

彼女に自然な形で接触し、警戒されることなく落とすためには、茶道部はこれ以上ないほど最適な場所だ。

 

 

 

この後、僕は綾小路くんに対して、色々と都合の面白おかしく一般常識を吹き込んだ。

 

女子との自然なコミュニケーションの取り方、平凡な人間はハーレム構築を目指すこと、その他にも色々とね。

 

どこまで僕の言葉を真に受けたかは分からない。無表情の裏で、どれだけの計算を巡らせているのかも読めない部分がある。というか、ほとんど読めない。

 

 

 

 

 

「またね、綾小路くん。またそのうち、お茶でも飲もうね」

 

「ああ、誘ってくれてありがとう」

 

別れ際に確認した彼の頭上に浮かぶ【38】という好感度の数値が確かなら。

 

──今の彼にとって、僕は『初めてできた気のいい友人』というポジションに、見事に収まっているはずだ。

 

スーパーで晩御飯の食材買ってから帰ろ〜っと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『部屋の前でAクラスの一之瀬がお前のことを待っているみたいだぞ』

 


 

放課後のチャイムが鳴り終わると同時に、私は誰よりも早く教室を飛び出した。

 

すぐに女子寮の自分の部屋に戻り、急いで制服を脱ぎ捨てる。

 

そして、凪くんに少しでも可愛いと思ってもらうため、それと同時に私を意識してもらうため、ラフな私服へと着替えてから、真っ直ぐに男子の部屋がある階層まで降りた。

 

現在、私は凪くんの部屋の前で、彼が帰ってくるのをずっと待ち続けている。

 

彼が今日、新入生向けの部活動説明会を見に行っていることは把握してる。説明会が終わり、彼がこの部屋に帰ってくるのは、多分17時過ぎになるであろうことも。

 

もしかしたら、どこかで寄り道をして、それよりもずっと遅い時間になるかもしれない。

 

そこまで予想できているのに、私がこうしてわざわざ凪くんの部屋の前で待っているのには、理由がある。

 

 

 

 

 

 

──外堀を完全に埋めるためだ。

 

学校という閉鎖空間において、周囲からの同調圧力は意外とバカにできない強力な武器になる。

 

周囲の生徒たちが勝手に『神代くんと一之瀬さんはお似合いのカップルだ』という空気を作ってくれれば、今後の関係を格段に進めやすくなる。

 

 

「え、なんで女子──って、一之瀬さん....!?」

 

廊下を通り過ぎる男子が、私の姿を見て驚いたように話しかけてくる。私はその度に、とびきりの笑顔で『彼氏の帰りを待つ健気な女の子』を演じきった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思ったよりも、凪くんがなかなか帰ってこない。

 

でも、そのお陰で、凪くんの部屋の前に私がいることを沢山の生徒に見てもらうことができた。

 

これが『一之瀬は神代の部屋の前で待つほど親密な関係らしい』という噂にでもなってくれれば、こうして廊下で立ちっぱなしで待っている時間も決して無駄じゃない。

 

ううん、そもそも、もしそんな噂にならなくても、大好きな凪くんのことを想って待っている時間そのものが、私にとっては無駄な時間なんかじゃない。

 

 

 

遠くから、また微かに足音が聞こえてくる。

 

今度は誰だろうか。さっきは、凪くんの足音かと思って期待して顔を上げたら、隣の部屋の生徒でひどくがっかりしてしまった。

 

期待しすぎないように、視線を流すようにそちらを横目で一瞥する。

 

その瞬間、私の心臓がドクンと大きく跳ねた。

 

 

──凪くんだ......!いつ見てもかっこいい....!

 

「......凪くんっ!」

 

嬉しさが爆発して、思わず声が弾んでしまう。

 

「連絡してくれたら早く帰ってきたのに。君をドアの前で待たせるなんて、僕が罪悪感で潰れそうだから次からはやめてね」

 

私に気づいた凪くんは、驚いたような顔を微かに見せた後、すぐに優しい声でそう声をかけてくれた。

 

 

凪くんはポケットから鍵を取り出して、玄関の扉をガチャリと開けて私に中に入るよう促してくれた。

 

「う、うん。ごめんなさい......」

 

上目遣いで彼を見つめ返す。そして、少しだけ頬を膨らませて、冗談めかしたトーンで口を開いた。

 

「あ、それなら、私にこの部屋の『合鍵』をくれたらすべて解決するんだけどなぁ〜......なんて」

 

今朝、無断で作った合鍵で勝手に侵入したことは、もちろん凪くんも知っている。そして、その合鍵は没収されてしまった。

 


 

「それで、どうして僕の部屋の前で待ってたのかな?特に約束はしてなかったと思うけど」

 

鞄を置きながら、凪くんは不思議そうに、とても優しい声で問いかけてきた。

 

私が部屋の前で待っていたのは、周囲へのアピールをして外堀を埋めるためだけじゃない。

 

どうしても凪くんに直接、彼の目を見て、顔を見て、確かめなければならないことがあったからだ。

 

「凪くんって、中学時代は携帯持ってなかったよね?持ってないから、連絡先も誰とも交換しないって言ってたよね?」

 

今日のお昼休み。

 

あの坂柳さんから、まるで自分の方が凪くんの特別であるかのように突きつけられたマウント。

 

『なんでも、その携帯には私と家族の番号しか登録していないと言ってましたが──家族ぐるみで交友のあった一之瀬さんの番号も登録されていたのでしょうか?』

 

あの言葉が、私の頭の中で呪いのように何度も何度もリフレインしていた。

 

凪くんが私に嘘をついて、坂柳さんと連絡先を交換して夜な夜な通話をしていたなんて、絶対に信じたくない。信じられない。

 

「え、うん。あー、でも、海外留学の前に買ってもらったかな。海外で連絡手段がないのは流石に危険だから」

 

「......ふーん。そうなんだ」

 

私の微かな期待は、彼のあっさりとした肯定によって無残にも打ち砕かれた。

 

信じたくなかった坂柳さんの言葉が本当だったと、そう認めざるをえない。

 

彼が嘘をついていたわけじゃない。ただ、留学前に買ったことを私に『教えてくれなかった』だけ。

 

でも、それがひどく私の胸を締め付ける。私はこんなにも凪くんのことが大好きなのに。

 

「中学の時、1回も帆波に電話しなかったから拗ねてるの?可愛いなぁ」

 

「っ......!」

 

凪くんが少し悪戯っぽく笑いながら私の顔を覗き込んでくる。その甘い声と、頭を撫でられそうな距離感に心がザワつく。

 

「もうっ、凪くん私の番号知らないでしょ。連絡先交換してないんだから」

 

だって、私には海外留学に行くことも、携帯を買ったことも、何一つ教えてくれなかったんだから。

 

私から電話をかける術なんて、どこにもなかった。坂柳さんにはあったのに。私の方が坂柳さんよりも、凪くんの事が大好きなのに。

 

「知ってるよ。帆波が中2の時に教えてくれたじゃないか。僕が携帯を買ったら、すぐに電話をかけてねって」

 

「え、うん......!私、携帯を買ってもらって、お母さんの次に凪くんに電話番号伝えたんだっ......!」

 

そうだ。あの時、凪くんはまだ携帯を持っていなかったけど、私は嬉しくて真っ先に自分の番号を彼に教えた。

 

いつか彼が携帯を持った時、絶対に一番に私に電話してほしいからって。

 

「そうそう。だから知ってる。あ、連絡先に登録して欲しかったの?んー、でも、忘れようのない番号をわざわざ登録する必要なくない?」

 

「凪くんっ......!」

 

その瞬間、私の頭の中で燻っていたどす黒い靄が、彼のたった一言で嘘みたいに綺麗に吹き飛んでいった。

 

そうだったんだ。凪くんは、私が口頭で伝えただけの番号を、ずっと忘れずに覚えてくれてたんだ。

 

それに、『忘れようのない番号』だって。

 

坂柳さんの番号を端末に登録してるってことは、逆に言えば、あっちの番号は『忘れる可能性があったから登録した』ってことだよね?

 

 

 

私の方が、ずっとずっと凪くんの中で特別な存在なんだ。

 

 

 

 

 

 

あれ、それならどうして......電話をかけてくれなかったんだろう。坂柳さんとは電話してたのに。

 

 

「むしろ、僕は帆波から電話をもらえると思ってたよ。1回も連絡が来なかったから、帆波は僕に電話するのが嫌なんだと思ってた」

 

凪くんが、ほんの少しだけ寂しそうな、シュンとした表情を作る。そんな顔をさせたいわけじゃない。違うの、誤解だよ!

 

「私だって、凪くんと話したかったよ。でも、凪くんが携帯持ってたなんて教えてもらってないし、電話番号も知らないし──海外留学に行くことも......何も教えてくれなかった」

 

また悲しさが込み上げてきて、私は俯いて唇を噛んだ。

 

凪くんの電話番号を知ってたら、毎朝毎晩電話したよ。

 

海外留学に行くって知ってたら、絶対に会いに行って告白したよ。大好きだって、行かないでって、たくさんたくさん伝えたよ。

 

「.........ん?教えたよ。手紙、見てない?あんなに仲良くしてくれたのに、何も言わずに海外留学に行くなんて、そんなの人のやることじゃないよ」

 

私の言葉に、凪くんは心底不思議そうに首を傾げた。

 

手紙......?そんなの、私もらってないよ?

 

「......手紙?」

 

「うん。月曜日に飛行機に乗る予定だったから、前日の日曜日に学校に忍び込んで、帆波の教室の机の中に置いたんだけど──もしかして、捨てた?」

 

「捨ててないっ!」

 

私は反射的に大声で否定していた。

 

私が、凪くんからの手紙なんてそんな大切なものを捨てるはずがない。

 

もし受け取っていたら、綺麗に保存して、私だけのお宝箱に入れて、凪くんの匂いと一緒に一生大切に保管する。

 

「もしかしたら、先生が月曜日の朝にゴミかなにかと勘違いして捨てたのかもね。帆波から連絡が来なかった理由を知れてよかったよ」

 

「うん!凪くんの電話番号を知ってたら、毎朝毎晩電話してたよ!絶対に!......あ、でも、凪くんが私に用意してくれた手紙......読んでみたかったかも」

 

本当に悔しい。誰かは知らないけれど、凪くんの私への想いが詰まった手紙を捨てるなんて、絶対に許せない。

 

私のことを想って書いてくれた言葉があったはずなのに。

 

それを読んでいれば、私はこんなに悲しい思いをすることもなかったのに。

 

「内容は覚えてるから、もう一度書いてあげようか?時間がある時に。あ、毎朝毎晩の電話はやめてね。帆波に負担をかけたくないから」

 

凪くんが優しく微笑んで、私の頭をポンポンと撫でてくれた。

 

「本当に?いいの?凪くん大変じゃない?」

 

「君のためならその程度の労力惜しくないよ」

 

「凪くんっ......!」

 

限界だった。

 

私はたまらず、凪くんに飛びつくように力強く抱きついた。

 

彼の匂いを胸いっぱいに吸い込みながら、できるだけ私の身体を彼に押し付けて、そのまま押し倒───流石に、押し倒すことはできなかった。

 

凪くんは体幹も強くて、私が全体重をかけてもビクともしない。本当にかっこいい。

 

 

 

 

 

「───ありがとう、凪くん」

 

えへへ、坂柳さんよりも私の方が大切にされてるんだから。

 

 

 


 

「......ふぅ」

 

どうにか言いくるめて部屋に帰した。

 

僕は一人になった部屋で、冷めたお茶を一口飲みながら深く息を吐きだす。

 

はぁ、それにしても助かった。

 

綾小路くんをカフェに誘って交流を深めたことが功を奏した。

 

あのまま真っ直ぐに寮へ帰って帆波と鉢合わせていれば、彼女の嫉妬と疑問に対する完璧な言い訳を組み立てる余裕はなかったかもしれない。

 

綾小路くんからのメッセージを確認して、帆波を納得させるためのストーリーを構築する時間が出来て本当に良かった。

 

『帆波の番号は、登録するまでもなく覚えている』

『留学前に、日曜日の誰もいない教室の机に手紙を入れた』

『先生に捨てられたのだろう』

 

どれもこれも、僕が適当に作り上げた都合のいいでまかせだ。

 

日曜日に学校に手紙を置いたと言えば、目撃者がいない理由付けにもなる。

 

誰かに捨てられたということにすれば、手紙が存在しない理由も説明できる。

 

そして何より、僕が彼女に何も告げずに消えたという『裏切り』を、『不運なすれ違い』へと見事にすり替えることができる。

 

仕方ないじゃないか。

 

中学時代に告白なんてされたら、高育でハーレムなんて作れない。帆波には黙って海外留学に行くのが僕にとって最善だった。

 

まあ、そのせいで覚醒してるみたいだけど。

 

 

「.....それにしても、坂柳さんと帆波がマウント合戦してるなんて、Aクラスは物騒だなぁ」

 

僕が中学時代に携帯を持っていたことは坂柳さんしか知らない。それを帆波が知ってたってことは.....つまり、そういうことだ。

 


 

待ってる一之瀬さん

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




話を先に進めたいけど、ヒロインが1日たりとも神代くんを放置しないだろうから全くスキップ出来ない。。。

無自覚ハーレム主人公ではなく、自分の意思でハーレムを作ろうとしている主人公がクズじゃないわけがない。

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