この町は、春になると決まって手紙が届く。町の人々はそれを「ハルレター」と呼ぶ。内容を要約すると、今年の春に起こる大きな出来事が書かれている。
最初に届いた時こそ誰も信じなかったが、毎年決まって内容通りになるため、そのうち町の一大イベントになった。
豊作など吉となる出来事があれば祭りの準備を、災害など不吉な出来事があれば厄払いのお祈りをする。
だが、毎度実現してしまうので、お祈りに意味がないと言う者もいる。
今年もハルレターが届いた。
どうやって町の家全体に届けているのか、なぜ何の痕跡もないのか全く分からないが、毎年続いている上内容が内容なのでもはや誰も気にすることはない。
町の集会が開かれた。ハルレターの内容確認と、それを踏まえてこれから行うことを決める話だ。
基本ハルレターはその時全員で確認することになっている。住民をまとめ上げ、混乱を防ぐためだ。
「それでは、ハルレターを確認する!」
町長がハルレターを開封する。今年は何が起こるのだろう。
皆一斉にハルレターを開いた。
『………』
皆に沈黙が広がる。
「どういうことだ…これは…」
町長が呟く、それもそうだ。なぜならハルレターの中身は…
"空白"だったからだ。
皆がざわめき出す。それには不安と困惑、さまざまな感情が入り乱れていた。
「皆よ!落ち着け!」
町長が呼びかけると、ざわめく声はひとたび収まった。
「困惑するのも無理はない、だが、焦っても何も変わらない!今こそ町民一丸となって、この問題について考えるべきだ!」
そうして集会は終了した。
町の人々は混乱を隠せない様子だった。
当たり前だ。ここ数年、ハルレターを頼りに過ごしてきたからだ。
観光業もハルレターを使って集めていた上、行事もハルレター頼りに組んでいる。
道しるべを失った町の人々は、路頭に迷っていた。
その時、町に一人の男が現れた。
町長の家を訪れ、こう名乗る。
「私はハルレターの差出人です。」
町長は信じていない様子だったが、彼が今までの全てのハルレター、届いた日付、そしてこの村で起こった大きな出来事の全てを知っていることを聞き、信じざるを得なくなった。
町長が要件を聞くと、男はこう答えた。
「このままだとこの町と住民は消えるでしょう。」
町長はその発言に理解が追いつかなく、しばらく頭が真っ白になっていた。
思考を取り戻した町長が、どうすれば防げるのかと聞く。
男は答えた。
「基本、その運命は避けられないものですが、私は差出人です。ひとつの条件を満たせば、変えることができますよ。」
「町の子供全員を私に預けてください。」
町長は迷わず答えた。
「それはできない。」
男は聞く。
「なぜですか?町が消えてしまうのですよ?」
それでも町長は答える。
「見知らぬ男に、町の子供、未来を預けることなどできるわけがないだろう。お前が本当にハルレターの差出人だとしてもだ。」
「そうですか…」
男は微笑み、町から去っていった。
翌日、町長の家だけに手紙が届いた。
差出人は書かれていないが、それが誰から届いたかは、内容を見れば察することができた。
そこには一言。
「合格です。」
町にハルレターは届かなくなったが、不思議と以前より活気が増していた。