大変お待たせしてしまい申し訳ございません
感想、評価よろしくお願いします
6月中頃、ウマ娘達の春のレースの締めくくり〈宝塚記念〉毎年多くのウマ娘ファンが春のグランプリをその目に焼き付けようと阪神レース場に詰めかけるこの季節
一介のレースファンである私も阪神レース場に両の脚で立っていた、しかし少し特殊であるのがレース観戦のお客様ではなく、私がアルバイトで雇われた警備員であることだ、そんな警備員アルバイターはまだ伝説の目撃者になるとは思っていなかった
【《・》】
「いや~やっぱりすごい人ですね〜」
阪神レース場開場前、正面ゲートには人の波どころか人の壁ができていた
そんな様子を緑色の警備制服に身を包んだアルバイターウマ娘【モブケイビ】は眺めていた
「6月って言っても今日は結構暑いのにあんなに人が密集してると熱中症とかで倒れる人がいてもおかしくなさそう」
「それが今から場内に流れ込んでくるんだから、アタシらも気をつけないとね、ほら一応塩飴」
「うす」
元ばんえいレースウマ娘の先輩に塩飴を貰い、警備配置につく
モブケイビの今日の配置は、ファン投票券投票所周りの警備であったため、多くのファンが流れ込む前にマークシートの整理や、ペグシルの準備などをしていった
『ザー、阪神レース場25.午前8時開門時刻となりました、開門時異常なし』
『ザー、阪神レース場午前8時開門、開門時異常なし了解です』
\走らないでくださーい!!/ \ゆっくりとお進みくださーい!/
開門と同時にファン達が走り出す先輩が正面ゲートで走らないよう呼びかけをしている声が聞こえるが人の勢いにかき消されている
人、ウマ娘が混ざった波に飲まれ、G1レース〔宝塚記念〕の盛り上がりを感じながらモブケイビもゆっくりと移動するように呼びかけを始めた
【《・》】
時間は12時を過ぎ、午後のレースも盛り上がりを見せていた
朝になだれ込んだ人はそのままに、最寄り駅である仁川駅に電車が停まるたびに人が補充されていき、レース場内は人をかき分けて進まざるおえないほどだった
「あっちぃぜ、クーラーがホントについてるのかな?マークシートは補充したそばからなくなるし、無線にもお客様から暑いってマルキュー来てるらしいけどこんだけ人が多いから仕方がないよね」
マークシートを補充しファン投票券の書き方の説明、館内施設の案内などの業務をこなしていると
「すいません警備員さん」
「はい、どうされましたか?」
「今日のレース出走保護者、関係者受付ってどこから行けば良いん?」
ピンクがかかった金髪のギャルと銀髪ショートの外国人の金銀美人二人に話しかけられた
「え、えーと中央コンコースのエレベーターからい、行けます。えーとあ、案内しますね」
いきなりのゴールド・シルバービューティーサンドイッチに驚きながら先導して歩き出す
「ありがとうございます、大越さんもリニューアルしてから初めてだと言うのに私達を置いて先に行くんですから」
「まぁそんだけ楽しみだったってことっしょ☆ローザちゃんも3人のレースたのしみでしょ?」
「そうですけど…」
美人'sの会話に聞き耳を立てているとすぐにエレベーター前まで来た
「こちらのエレベーターから行けます」
「あ!警備員さんついでに飲み物とか買える売店ってあります?」
「えーと、関係者席の近くなら『To Days』って売店が近いと思います」
「あれこれ色々ありがとうございます」
「アレだったら今日の6Rとメインレースうちのコ達走るから応援してあげてね〜☆」
美人'sを見送り元の配置に戻る途中、二人の会話が引っかかった
『大越さんも〜』
「!?」
急いでレープロをめくり、阪神レース場の欄を開く
『6R メイクデビュー』
ゴゥディナー
『11R 宝塚記念』
ゴゥライト
︙
ゴゥリスク
「ってことは、さっきの二人は名門ゴゥ一門の美人秘書の…ヒョ〜〜」
声にならない悲鳴を上げつつ、ゆっくりと配置に戻る
\パーパーパーパ パッパパパ〜/
聞き慣れた曲とともにバ場にレースに出走するウマ娘たちが入場する
館内のモニターを見ると6Rとの表記があった
ペグシルを補充しながらモニターを眺めているとブロンドヘアのウマ娘がアップ気味に芝を走りだした
力強い蹴りと風になびく金色に心を奪われた
「すみません警備員さんマフラータオルってどこに売ってますか?」
「え!?あ!はい!イベント広場にて発売してます。案内しますね」
「あー!ありがとうございます」
【《・》】
「こんだけ人いると移動だけでも大変だわホントに」
お客様のマフラータオルの対処を終え、配置交代の時間となり詰め所に戻ったモブケイビは支給された麦茶を飲み干しパイプ椅子に体重を預けた
「こんな人数久々だぜ、六万人くらい来てるんじゃねぇか?」
「人多すぎて館内もクーラー聞いてないですもん」
「はぇ~そうかい、無線でも体調不良の報告来てるからなねぇちゃんも気をつけろ?ウマ娘だって暑さに強いわけじゃねぇだろ?」
「おっちゃんも気をつけてくださいよ?」
同僚のおっちゃんに暑さや人混みについて愚痴っていると詰め所のモニターからファンファーレの音が響いた
「お!メイクデビューか、いやぁこんな人が多い日にメイクデビュー走るたぁ緊張すごいだろうな」
「ホントですよね〜あ!」
ゲートに各ウマ娘が入る中、先程見惚れたウマ娘がいて、胸に4番のゼッケンをつけていた
「えーと、6R・4番は【ゴゥディナー】」
先程美人'sを思い出す
『うちのコ達走るから応援してあげてね〜☆』
ギャルの美人さんに言われたように、ブロンドヘアのウマ娘【ゴゥディナー】を応援しようとモニターに目を移すとゴゥディナーはゲートの中に入りスタートのその瞬間を待っていた
そして
ガコン!
ウマ娘達が一斉に飛び出した
ゴゥディナーは中団につけてレースは始まった、大きく逃げを打つウマ娘もいなければ、追い込みでひっくり返すため最後尾で様子をうかがういないため団子のままレースは進行していた
『おっとここで4番ゴゥディナーが動き出しました!』
実況が言うようにゴゥディナーが3コーナーに入る直前にも関わらず一人でスルスルと上がっていく
第4コーナーに入るときにはハナを奪い少しづつ差を広げていく
ゴゥディナーにつられペースを上げるウマ娘、様子をうかがいペースを維持するウマ娘に別れ結果的に団子はほどけていった
『最終コーナーを抜けてゴゥディナー最後の直線に入ります!後ろのウマ娘は追いつけるのか!』
様子をうかがっていた後方のウマ娘はペースを上げるも、ゴゥディナーは落ちてこず
追い掛けてペースを上げたウマ娘はスパートが思うように伸びない
『ゴゥディナー後方と4バ身、5バ身と差を広げる!これはセーフティリードだ!強い!強すぎる!ゴゥディナー今1着でゴールイン!タイムはなんと!1.56.9!ジュニアウマ娘のレコードを大きく塗り替えました』
『2着はレッドソール!3着はメイショウハナビが遅れてゴール』
「あの金髪のねーちゃんすげぇな!えーと?ゴゥディナーね、こりゃ来年のクラシックの目玉はあの子だろうな!」
金色がゴールを駆け抜けてから放心していた私は思い立ったように一心不乱に自分のウマホを操作した
「URAファンクラブ…URAファンクラブ…あった!ゴゥディナー!」
《ファンクラブに登録されました…ファンクラブNo.9》
「ぎ、ギリギリ一桁ゴール抜けて直ぐなのに」
「はっは!あんなすげぇ走りしたんだねぇちゃんみたいにファンになる奴も多いってこった。ほらもうそろ配置行くぞ」
「あ~あの人混みのかなに帰りたくないですよぉ」
「まだ6Rだぞ、9Rくらいが一番人が多いんだ気合い入れてけよ」
「はぁ~い」
【《・》】
休憩明けから、館内は戦場だった
人の波、質問の嵐、落とし物の地雷原に、迷子案内のトラップ
私が両手を膝に当て項垂れるほどスペースが空いたのは、メイン11R 宝塚記念のバ場入場が終わりファン応援券の発売が締め切られお客様がレースを観戦するためにバ場前面に押しかけてからだった
「あぁ~あかんマジで死ぬ…これ時給に追加ボーナスかからんかな…」
本来はお客様エリアのためよくないのだかあまりの疲労から、記入台に身体を預けていると、ファンファーレの音とともにモニターが目に入った
「まぁお金貰いながらレース見れるってのがボーナスなんかなぁ?」
そんな愚痴を小声で流すと、目を覚まさせるようにゴールが空いた
《さぁ始まりました春のグランp【おおおぉ!!!!!!!!】》
バ場前面を各ウマ娘が通るときにお客様の絶叫で解説がかき消された
《割れんばかりの声援を背に各ウマ娘コーナーに入ります》
《ハナを取ったのは6番タンクフルーツ、その外続いて3番ティルタイム。先頭集団で様子を伺う2番人気1番ゴゥライト》
《中団にかけて固まっています…おっとここで少しづつ前に押しでるウマ娘が一人!3番人気8番ジュウリョクピエロ!ゴゥライトを逃さない積極的なレース展開に持っていくようです》
《そして最後尾!ゴゥリスクはこの位置です、全体の展開を読んでいるのでしょうか!》
向こう正面に入り肉眼ではウマ娘達は小さく双眼鏡などがなければ誰が誰だか判別つかないが場内の熱気は覚めることは無く、それぞれの想いをかけたウマ娘を応援していた
「落ち着け!リスク!グランプリはお前のもんや!」
「頑張ってライトさーん!」
「いいぞピエロちゃーん!」
「頑張れ!逃げろ!タンク!」
《各ウマ娘ペースを維持しもうすぐコーナーに!?動いた!ここで最後尾ゴゥリスク動き出した!第3コーナー侵入前にロングスパートをかけ始めた!》
《ゆっくりとしかし!確実に順位を上げる!ここでジュウリョクピエロもスパートをかけ始めた!スタミナは持つのか!》
《先頭集団が最終コーナーを抜け直線!ゴールを見据える!ここでタンクフルーツいっぱいになったか!ゴゥライトがティルタイムを交わした!》
《そのすぐ後方!ゴゥリスクとジュウリョクピエロが追い迫る!3人完全に抜け出した!人気上位3人の叩き合いだ!逃げるライト!追い掛けるピエロ!襲いかかるリスク!》
《しかし届かない!あと少しが届かない!今!今!ゴゥライト1着でゴールイン!ティアラ制覇の女王が!春のグランプリで復活の証明!!》
《2着ゴゥリスク!3着ジュウリョクピエロ!春のグランプリを締めくくるのは無敗の女王ゴゥライト!》
悲鳴にも聞こえる歓声が場内を支配する、ゴゥライトを称えるコール、2着以下のウマ娘に感謝やエールをかける声
そんな中私は今見た景色にあっけにとられていた
一流のウマ娘が極限のゾーンに入るとそれぞれ固有の心象風景が現れる事がある
それはそのウマ娘を中心に周りのウマ娘も巻き込むことがある
しかし先程のレースで私に一等星のキラメキと流星、サーカスのような景色が迫り広がった、しかし一等星の光が全てを押しのけその光の中からゴゥライトが突き抜けゴールを駆け抜けた
そんな景色を見た私はバ場前面から帰ってくるお客様の波にすら気づかず放心したままその後のバイトを切り抜けた
【《・》】
「たはー最後先輩に怒られちゃったや、でもあのレースすごかったなぁ」
「やっぱりシフト入れて正解だったかも」
5時過ぎ、まばらに残っていたお客様ともに伝説を観測したホクホクの優越感を胸に帰路に着くのであった
【《・》】
「ぇ゙!?駅の外まで人の列!?電車乗るのいつになるんだよぉ!」
やっぱりちょっと後悔もした
《キャラクター紹介》
モブケイビ
走ることが好きではあるか得意ではなかったため普通の高校に進学し、普通の大学に通う一般ウマ娘
レースファンであったためたまたま見つけたレース場の警備員のバイトに応募し無事合格毎週楽しくバイトをしている
今回固有領域を観測したのはたまたまで彼女に才能があるわけではない
警備員のちょっとした描写や動きなどは作者の体験に基づいています