前話で出したサンデーサイレンスなんですけど
リスク側、母ヴィルシーナ→ディープ→サンデーサイレンス
ライト側、母ラクアミ→ダイワメジャー→サンデーサイレンス
って感じで二人のご先祖なんですよね、流石日本競馬史上最高の種牡馬
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二人の願いは、どこまでも平行線だった。
ライトはリスクに走り続けてほしい。
リスクは走り続けることに限界を感じレースから離れたい。
どちらか一方の願いを叶えれば、もう一方が傷つく。
ならば――どちらの願いも叶えさせなければいい。
それが私がたどり着いた答えだった。
二人のどちらかを幸せにするんじゃない。
二人とも、自分の願いを叶えられないようにする。
そして有馬記念の勝者として二人に私のワガママを聞いてもらう、また仲のいい二人に戻ってほしい、そのための小さな不幸を受け入れてもらう
私は有馬記念には出られない、私一人では二人を止められない。
だから――
「で、ディナーの代わりにアタシが有馬を勝てばいいのね?」
「あぁ、ゴゥ一門の問題にピエロを巻き込んで申し訳ないが、二人を負かしてほしいんだ」
「いいのよ、アンタに頼るように言ったのもアタシだから」
「…でも、一つ気になるとしたら“負かしてほしい”なんてネガティブな言い方じゃなくて“有馬記念を勝ってほしい”って言ってちょうだい」
「元々アタシは有馬記念は勝つつもりなんだから」
「…あぁ、頼む有馬記念先頭でゴール板駆け抜けてほしい」
「ふん、それでいいのよ」
「じゃあ私はトレーナーが来るまでに、器具とかの準備をしてくるよ」
「待ちなさい」
トレーナー室を出ようとしたところ、ソファに座るピエロに引かれ隣に座る、そのまま頭を掴まれ膝枕の体制になる
「え?どうしたんだピエロ?」
「アンタ最近ちゃんと眠れてないでしょ、アンタろくにメイクしないからファンデーションで隈隠してるのもバレバレ」
「え、でも」
「いいの、トレーナー来るまで寝てなさい、準備なんてみんなでやればすぐ済むから」
ピエロがゆっくりと頭を撫でる、最近あまり眠れていない事もあり、睡魔に勝てなかった。少しずつ意識が微睡みに呑まれた
【《・》】
膝の上ですうすうと寝息をたてる後輩の髪を撫でる
いつもは大人びた物言いと、不意に出る男っぽい口調、普段着のセンスのせいでカッコイイ美人系だと思われているが、もとはかわいい系なのだ
「出会ってまだ半年、アタシってチョロいのかしら」
「それだけピエちゃんとディナーちゃんが真剣に付き合ってきたからじゃない?」
背後から聞こえた声に心臓が飛び出る、叫び声をディナーを起こさないように必死に飲み込んだ
「!?」
「い、いつ入ってきたの?」
「ん?ディナーちゃんを膝枕し始めたときくらいかな」
「け、結構前からじゃない、なんで声かけなかったの?」
「まぁディナーちゃんが寝れて無いってことは私もわかってたのと、二人で仲良くしてるのを邪魔したくないなって」
「あとすごく安心したの」
「安心?」
「うん、ピエちゃんお友達は多いけど、弱みを見せたり甘えたりする相手は、私くらいしかいなかったじゃない?」
「でも、ディナーちゃんとは本音でぶつかって喧嘩とかする時もあるけど、困っているときは手を差し伸べて助け合えるそんな人ができたことが嬉しいの」
トレーナーの話で自分の中にあったもやもや、ディナーとの関係が明確になった、彼女は十分私の“大切”なのだ、本気で喧嘩して、本音で語らい、本心から助け合うそんな関係
「トレーナーは、ゴゥの二人を止める話ディナーから聞いた?」
「うん、LAINの文面でだけどね」
「アタシ、有馬記念勝つわ。元々あの二人にリベンジするつもりではいたのだけど、ガツンと言ってやらなきゃいけないことができたの」
「だからお出かけもなるだけお預けで、今はあの二人に届くだけの刀を研ぎたいの、トレーニングお願いね」
「もちろん!」
正直癪だけどあいつにも協力してもらうか、勝つためにどんなものでも糧にすると決めたのだ、一瞬の恥なんて飲み込んで
【《・》】
11月、秋シニアの初戦、天皇賞・秋
ゴゥライトが先行策を打ち、最終コーナーから先頭へ抜け出すと2着とは三バ身の差をつけてゴールした
ゴール後、脚を少し気にする様子も見られた
レース後のインタビューでは、秋のシニア三冠制覇を目標に掲げた。一方、ゴール後に見せた脚を気にする様子については「シニア三冠を見据えて、少しトレーニングに力を入れすぎた」と説明。「ここからはゆっくり休んで、次に備えたい」と語った
放課後、ココネが昨日の天皇賞・秋についての新聞を広げ、一面のインタビュー記事を読み上げた
「やっぱりライトさんすごいね!このまま秋シニア3冠取っちゃうんじゃない?」
「わからないよ、有馬記念はリスクもでるし、私のチームからピエロも出る」
「わ!ディナー!これ見てこれ!」
ヴィブロスからウマホを押し向けられる
画面はネットニュースの中継のようでその内容は
「ゴゥリスク選手引退会見!?」
【《・》】
「本日は、お集まりいただき、ありがとうございます。私、ゴゥリスクは今年の有馬記念を最後にトゥインクルシリーズを引退することに決めました」
「理由としましては、私の限界、ピークを過ぎレースにおいて皆様のご期待に添える走りをすることが難しくなると判断し、この決断に至りました」
「凱旋門賞を勝つことができなかったことが心残りでは有りますが、トゥインクルシリーズ最後のレース有馬記念には万全を期し挑みたいと思っています」
「応援ありがとうございました」
【《・》】
画面の向こうでは質疑応答が続いていた
「リスクさん引退するんだ…ディナーちゃんは知ってた?」
「ま、まぁ相談とかは受けていたけど…」
「トレセンどうするんだろうね、このままドリームトロフィーリーグ行くのかな?」
引き続き、3人で会見を覗いた、大まかな内容としては、引退後のことをは、色々考えているがまだ未定、ゴゥ家のことも含めて話し合い今年度中に決定するということだった
吹き抜ける風が冬の気配を知らせる、“その時”が確実に近づいていることを嫌でも思い知らされた
【《・》】
その晩、自主トレの終わり際視線を感じ見回すと、制服ゴゥリスクがこちらを見ていた
「え、えっと、リスク先輩…」
「…その様子だと、会見は見たっぽいな」
「はい…ココネ達はすごく驚いてましたよ」
「ディナーは驚かなかったのか?ライトとの約束がまだなのにトゥインクルシリーズ引退を宣言したことについて」
「まぁ、驚きましたけど虹村トレーナーからもトゥインクルシリーズからの引退はするとは聞いていましたし」
「ライト先輩との約束は、レースを辞めてトレセンを去るか、走り続けるかですから」
「まぁライトは大荒れだったらしいけどな、ソウルの奴からLAINが鬼ほど来てるし」
カラカラと笑う横顔には、どこか後悔や迷い、葛藤が混ざり“戦鬼”の面影は薄れていた
その迷いを感じ取り、私は聞いてしまった
「リスク先輩は…ほんとはまだレースが好きで走りたいんじゃないんですか?」
口をついて出てしまった言葉に、気付いた時には遅く、リスクに胸ぐらを掴まれた
「そんなの!嫌いになれるわけないだろ!でも身体が応えてくれない!このまま!何もできないまま!トレセンにいても嫌いになる!自分も!レースも!」
「だから辞めるって決めたんだよ!私がレースから離されるよりも先に!私が自分の意志でレースから離れるために!」
凱旋門賞の後聞いた理由よりも、芯の深い本音が、堰を切ったように溢れ出ていた
レースを嫌いになれない、レースに関われず嫌いになりたくないという本音が
息継ぎもせずまくし立てたリスクはこちらを睨む、肩で息をしながら深呼吸し、冷静さを取り戻したようで手を離してくれた
「…悪いな、会見とか慣れねぇコトしてイライラしてた、…あの、ホープフルが初めてのG1なんだよな、無茶するんじゃねぇぞ、じ、じゃぁな」
「…あ、後有馬記念は誰を応援…いやいい、忘れてくれ」
リスクはバツの悪そうな顔で栗東寮の方へ走っていった、私はその後ろ姿を見て呆然と立ち尽くしていたが、程なくして寮の門限が迫っていることに気付き急ぎトレーニング場を後にした
【《・》】
翌日、トレーナー経由で段野トレーナーから手伝いを頼まれた
内容としては、昨日の記者会見を見て暴走して完全休養日だというのに、トレーニングをしようとするゴゥライトの監視だった
そして、こっそりトレーニング場へ向かおうとするライトを捕まえ、カフェテラスへ無理やり連れてきたのであった
「ライト先輩、駄目だろ完全休養日なんだからトレーニングしたら」
「今は休んでる暇なんてないんです、あの阿呆を叩きのめすために力を付けなければならないのです」
「それで怪我してりゃ世話ないだろ、今月末にジャパンカップが控えてるし、その後も年末に有馬だろ?レースに勝てる実力があってもでれなきゃ意味ないし、怪我したら元も子もない」
「それでも、リスクがいなくなるのは嫌なのです…」
落ち着くために紅茶をのむライト、そんな姿を見ながらふと気になったことを問いかける
「ライト先輩って友達いるの?」
「ゑ!?」
「いや喧嘩する前は、休養日とかってリスク先輩とよくお茶してただろ?」
「今回の監視も、私でもいいが、私じゃなくてもいい。なんなら、遊びに行かせるっていう名目をつけれる」
「い、いる、いるに決まっているでしょ」
震える手でティーカップを置き、指を折りながら数え始める
「ジェンティルさんやラモーヌさん、リバティさんとは、よくおしゃべりしますし、スティルさんやタクトさんは差し入れを持ってきてくれます。アイさんやアパパネさんとゲームだってしたんですよ」
「それ全部3冠間での話だろ?」
「あ、アパパネさんとはお買い物にも行きました」
「それも3冠間用の買い出しだろ確か、あとアパパネはちょっとずるだろ、トレセンの生徒全員と友達みたいな人だし」
「え、えっと、います!いるんですよ!?」
「一番の大親友が、リスクだろ?」
「っ!」
ライトが息を飲む、そして観念したようにポツポツと話し始めた
「そう…ですわね。リスクが一番いえ、唯一と言っていい友人ですわ。」
「幼い頃から、私の世界が広がるのはいつもリスクに手を引かれてでした。音楽や本、ゲームなど趣味がすべて合うと言うわけではありませんが、彼女にいろんなことを教えてもらいました。もちろんレースのことも」
「でも、自分が引き込んだのに、自分だけ先に引退することを怒ってるわけじゃないんだろ?」
「いえ、それも少しありますわ。いつも隣で走ってくれる相手がいなくなるのも嫌ですもの、でも一番の原因はリスクが何も言わずに一人で諦めたことよ」
「私だってわかっているの、いつかは走れなくなる、引退する時が来るって、でもまだ私は、リスクにいろんなものをもらった私は、何も返せてない…」
ポロポロと涙を流しながら、凱旋門賞のあの夜と同じように本心からの言葉が漏れ出す、しかしあの夜と違うのは、涙だけではなかった。込められた思いは冷たい激情ではなく温かい想いが込められていた
「私はただ隣にいてほしかった、友人として家族として何も言わずに離れていくのが許せなかった」
「だから…勝手にサヨナラなんて言わせない、隣で走るために私は有馬記念を勝つ」
「ち、ちょっと!?今日は休養日だって!」
涙を拭き立ち上がるライトを静止する
「わかっています、有馬記念を勝つためにも休まなければならないと。ですので息抜きにクッキーを焼きます。もちろんディナーにも手伝っていただきますよ」
「…はい、了解しましたお嬢様」
「フフッ、ありがとうディナー、今日はいいお休みになりそうです」
「しっかり休んでくださいよ、ホントに」
「…ところでディナーは有馬記念誰を応援するのですか?」
「………」
「…言わなくて構いませんわ、私でもリスクでまた別のどなたかでも、勝つのは私です」
「でもやっぱり、私を応援していただけるのなら嬉しいわ」
ライトは身を翻して歩き始めた、その足取りは今朝よりも軽くなっていた
【《・》】
12月下旬、中山レース場
10月の決裂から約3カ月に決着をつける有馬記念当日
そして、初めてのG1ホープフルステークス当日でもあった
そしてその戦場に私は一歩踏み出した
『続いての出走ウマ娘の登場です』
『無敗でたどり着いたG1の舞台、これが伝説への一歩となるか三枠6番 《ゴゥディナー》です!』
〈頑張って!!〉〈応援してっぞー!〉〈頑張れー!〉
今まで見たこともない観客の数と声援に少したじろぐ、グランプリレースである有馬記念と同日同場ということもあり溢れんばかりの観客が押し寄せていた
心臓が跳ねる、こしょばい緊張が体を駆ける、意識を尖らせゲートに入る
『さぁ中山レース場2000m一周強のレースの幕開けです!』
ゲートが開く、多くの声援を身に浴びて走る
負けていいレースなんてあるわけがない、今日までのレースも、これからのレースも
それでも、譲れない、今日だけは
ライトのためではない、リスクのためでもない、自分の代わりに手を伸ばしてくれるピエロへのバトン
自分のエゴを突き通すため、コンマミリだって譲ってやれない!
『最終コーナーを抜けて先頭はレッドマスク!ここで!大外回してゴゥディナー!ぐんぐん上がってくる!レッドマスクはいっぱいか、ハーブブック、スーパーセル逃げ切れるか』
『ゴゥディナー!追いついた!追い抜いた!突き抜けた!突き抜けた!』
『ゴゥディナー!先頭で今ゴールイン!同門ゴゥリスクへの手向けになったか!G1初制覇!』
壁のような音の声援が、自分の勝利を称えていた
ポニーテールを結んでいた勝負服と同じ意匠のリボンを右腕に巻き突き上げる
自身の勝利の嬉しさと、ピエロへバトンを渡せる安堵が少しずつ身体に染み渡った
ウィナーズサークルへ入ると多くの報道陣が押し寄せた
「月刊トゥインクルです!初のG1制覇ですが今のお気持ちは!」「スポーツ誌のTHE.レースです!無敗でホープフル制覇ですがやはりクラシックも無敗の3冠を目指すのですか!」「太陽新聞です!次のレース、有馬記念記念では誰を応援するのですか!」「私はウマ娘誌の…」
多くの質問が飛んでくる中、私は一つだけ返した
「バトンは託しました、ただ祈ることしか私にはできません」
「「「………」」」
「そ、そのバトンを託した方とは!」「やはりゴゥリスクさんですか!?」「やはり、無敗のゴゥライトさんが有馬記念を勝つと思うのですか!」
火に油を注いだように、報道陣がヒートアップする
「質問等は後ほどインタビューの場を設けます!次のレースは有馬記念のため迅速に撤収、準備をおねがいします!」
URAの職員が私と報道陣の間に入り呼びかけを行う、それに乗じて私は控室へと帰った
控室にはトレーナーの姿は見えず、ピエロだけがモニターを眺めいてた
「まずはおめでとう、とてもいいレースだったわ」
「次はピエロだぞ、…頼む」
「…ディナーが巻いてよ、アタシの腕にほどけないようにね」
渡したリボンを受け取らず、こちらに右腕を伸ばすピエロ。ヒラヒラとして邪魔にならないような右腕に何度か交差させリボンを結ぶ
「…んありがと、レース前最後にアタシに何か言うことある?」
突然の問いかけに少し驚いたが、ピエロの真剣な目を合わし言った
「有馬記念、必ず先頭で帰ってこい!ジュウリョクピエロ!」
「当たり前じゃない、偉そうな口使ってんじゃないわよ!ゴゥディナー!」
右手と右手のハイタッチをするとピエロは振り返ることも無くパドックへと歩き出した
私はジンジンと痛む右手を握り、祈るしかなかった
リスクとライト二人の決着はジュウリョクピエロへ託された
ウマソウル紹介
〈ゴゥリスク〉
父フランケル 母ヴィルシーナ
〈ゴゥライト〉
父グレンイーグルス 母ラクアミ
〈ゴゥディナー〉
父ゴゥリスク 母ゴゥライト
なお、この交配はゲームウイニングポスト10にて行ったものです