ラバウルの鷹   作:UMC OGASOU

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第十一話 ヘルキャット

 

 

 昭和十八年五月。

 

 ラバウル基地。

 

 朝から雨だった。

 

 南洋特有の激しいスコールが滑走路を叩いている。

 

 格納庫の屋根に当たる雨音は、まるで機銃掃射のように響いていた。

 

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 神崎隼人は整備中の零戦の脇に座っていた。

 

 手には一枚の写真。

 

 実家から送られてきたものだった。

 

 故郷の風景。

 

 田畑。

 

 山。

 

 そして家族。

 

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 気が付けば一年近く帰っていない。

 

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 戦争が始まった頃は、こんなに長くなるとは思っていなかった。

 

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「見てたんですか」

 

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 村田が覗き込む。

 

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「たまにはな」

 

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「帰りたいですか?」

 

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 神崎は少し考えた。

 

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「帰りたいな」

 

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「ですよね」

 

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 村田は笑った。

 

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 だが、その笑顔も以前ほど明るくはない。

 

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 整備兵たちも疲れていた。

 

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 昼頃。

 

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 雨が止む。

 

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 その直後だった。

 

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 サイレンが鳴り響いた。

 

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「総員配置!」

 

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「敵機接近!」

 

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 飛行場が一瞬で動き出す。

 

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 神崎は飛行服を掴み、愛機へ駆けた。

 

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 数分後。

 

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 零戦隊発進。

 

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 神崎。

 

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 佐伯。

 

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 鬼塚。

 

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 そして新人たち。

 

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 雨上がりの空へ上昇していく。

 

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「敵編隊確認!」

 

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 高度六千。

 

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 前方に機影。

 

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 爆撃機。

 

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 そして護衛戦闘機。

 

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 神崎は双眼鏡を覗いた。

 

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 その瞬間。

 

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 違和感を覚える。

 

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「なんだ……?」

 

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 大きい。

 

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 敵戦闘機が大きい。

 

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 今まで見た機体より一回り大きく見えた。

 

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 機首も太い。

 

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 胴体も厚い。

 

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 そして。

 

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 どこか不気味だった。

 

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「全機警戒!」

 

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 鬼塚の声。

 

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「報告にあった新型かもしれん!」

 

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 敵戦闘機が降下してくる。

 

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 速い。

 

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 明らかに速い。

 

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 神崎は即座に旋回した。

 

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 だが。

 

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 敵はさらに速かった。

 

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 横を通過した瞬間。

 

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 猛烈な弾幕が飛んでくる。

 

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 零戦の主翼を曳光弾がかすめた。

 

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「くっ!」

 

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 神崎は思わず叫ぶ。

 

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 今までの敵機とは火力が違う。

 

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 空戦開始。

 

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 神崎は敵機を追う。

 

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 だが。

 

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 距離が縮まらない。

 

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 敵は上昇する。

 

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 零戦も追う。

 

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 しかし追いつけない。

 

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 以前ならあり得ないことだった。

 

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 零戦は世界最高クラスの戦闘機だった。

 

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 少なくとも開戦当初は。

 

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「神崎!」

 

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 佐伯の声。

 

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「上だ!」

 

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 神崎は反射的に操縦桿を引く。

 

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 次の瞬間。

 

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 敵機が急降下してくる。

 

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 恐ろしい速度だった。

 

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 そして射撃。

 

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 弾幕。

 

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 零戦の左翼へ数発命中。

 

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 機体が震える。

 

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「被弾!」

 

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 神崎は歯を食いしばる。

 

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 まだ飛べる。

 

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 まだ戦える。

 

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 だが敵は離脱していた。

 

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 もう遥か上空だ。

 

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 追えない。

 

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「なんなんだあいつら……」

 

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 誰かの声。

 

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 恐怖が混じっていた。

 

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 無理もない。

 

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 今まで経験したことのない戦い方だった。

 

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 その時。

 

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 鬼塚が敵機一機を旋回戦へ引き込む。

 

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 さすがだった。

 

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 歴戦の技量。

 

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 徐々に背後を取る。

 

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 敵機も苦しそうに旋回している。

 

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「取った!」

 

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 鬼塚の射撃。

 

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 命中。

 

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 敵機から煙。

 

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 撃墜。

 

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 だが。

 

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 鬼塚は通信で叫んだ。

 

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「覚えておけ!」

 

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「旋回戦なら勝てる!」

 

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「だが速度戦に付き合うな!」

 

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 その言葉は重要だった。

 

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 零戦の強み。

 

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 敵の強み。

 

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 それを理解しなければ生き残れない。

 

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 やがて敵編隊は離脱した。

 

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 迎撃成功。

 

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 爆撃被害も軽微。

 

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 数字だけ見れば勝利だった。

 

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 しかし。

 

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 帰投した搭乗員たちの表情は暗い。

 

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 作戦室。

 

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 分析会議。

 

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 壁には敵機の特徴が書き込まれていく。

 

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 大型。

 

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 高速。

 

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 重武装。

 

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 頑丈。

 

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 鬼塚が言った。

 

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「おそらくヘルキャットだ」

 

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 誰も喋らない。

 

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 その名前を初めて聞く新人も多かった。

 

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「覚えておけ」

 

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 鬼塚は全員を見回す。

 

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「零戦より強い部分がある」

 

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 部屋が静まり返る。

 

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 日本海軍航空隊で、その言葉は重かった。

 

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 零戦より強い。

 

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 かつてなら考えられなかった。

 

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 夜。

 

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 宿舎。

 

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 佐伯が天井を見つめていた。

 

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「時代が変わるのかな」

 

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 ぽつりと言う。

 

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「何がだ」

 

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 神崎が聞く。

 

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「零戦の時代」

 

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 神崎は答えなかった。

 

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 答えられなかった。

 

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 今日の戦闘で感じたからだ。

 

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 敵は確実に強くなっている。

 

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 そして。

 

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 こちらは疲れている。

 

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 消耗している。

 

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 その事実を。

 

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 その頃。

 

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 アメリカでは新しい空母が次々と完成していた。

 

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 新しい戦闘機も。

 

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 新しい搭乗員も。

 

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 一方。

 

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 ラバウルでは部品不足が始まりつつあった。

 

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 補給船は減る。

 

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 燃料も以前ほど潤沢ではない。

 

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 まだ深刻ではない。

 

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 だが確実に兆候は現れていた。

 

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 そして六月。

 

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 神崎たちは新たな任務を命じられる。

 

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 ラバウル防空。

 

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 敵がついに、この要塞そのものを狙い始めたのだ。

 

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 南海の要塞ラバウル。

 

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 その空を巡る戦いが。

 

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 さらに激しくなろうとしていた。

 

 

 

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