ラバウルの鷹   作:UMC OGASOU

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第十二話 ラバウル空襲

 

 

 昭和十八年六月。

 

 ラバウル。

 

 南東方面最大の要塞。

 

 日本海軍が誇る航空基地。

 

 数え切れないほどの航空機。

 

 巨大な港湾。

 

 修理施設。

 

 補給基地。

 

 多くの将兵たちは信じていた。

 

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 ラバウルは落ちない。

 

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 ラバウルは安全だ。

 

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 最前線ではあるが、ここには大勢の味方がいる。

 

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 そんな空気が、まだ残っていた。

 

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 だが。

 

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 戦争はその思い込みを容赦なく砕こうとしていた。

 

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 ある日の早朝。

 

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 飛行場。

 

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 神崎隼人は村田と話していた。

 

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「最近、敵機を見る機会が増えたな」

 

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「偵察機ですよね」

 

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 村田が工具を置く。

 

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「前はこんな奥まで来ませんでした」

 

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「そうだな」

 

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 神崎も違和感を覚えていた。

 

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 敵は近付いてきている。

 

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 確実に。

 

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 その日の昼。

 

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 異変は突然起きた。

 

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 サイレン。

 

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 そして通信兵の怒号。

 

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「敵大編隊接近!」

 

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 飛行場全体が凍りつく。

 

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「大編隊?」

 

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「何機だ!」

 

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 怒鳴り声が飛ぶ。

 

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 通信兵が叫んだ。

 

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「百機以上!」

 

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 一瞬。

 

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 誰も言葉を失った。

 

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 百機。

 

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 今までとは桁が違う。

 

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「全戦闘機発進!」

 

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 鬼塚大尉の声が響く。

 

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 搭乗員たちは走った。

 

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 神崎も愛機へ飛び乗る。

 

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 エンジン始動。

 

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 プロペラ回転。

 

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 滑走路へ。

 

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 次々と零戦が離陸する。

 

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 神崎。

 

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 佐伯。

 

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 鬼塚。

 

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 そして数十機の迎撃機。

 

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 ラバウルの空へ上昇する。

 

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 高度六千。

 

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 そこで神崎は見た。

 

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「なんだ……あれ……」

 

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 思わず声が漏れる。

 

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 空が埋まっていた。

 

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 爆撃機。

 

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 爆撃機。

 

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 爆撃機。

 

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 そして護衛戦闘機。

 

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 延々と続く編隊。

 

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 まるで空そのものが敵になったかのようだった。

 

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「これが……米軍か……」

 

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 佐伯の声も震えていた。

 

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 今まで何度も戦ってきた。

 

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 だが。

 

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 こんな規模は初めてだった。

 

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「迎撃開始!」

 

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 鬼塚の命令。

 

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 零戦隊が突撃する。

 

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 神崎は爆撃機編隊へ向かった。

 

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 敵もこちらに気付く。

 

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 護衛戦闘機が飛び出してくる。

 

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 ヘルキャット。

 

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 何機もいる。

 

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 以前より増えていた。

 

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 空戦開始。

 

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 神崎は一機と交戦する。

 

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 旋回。

 

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 急上昇。

 

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 急降下。

 

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 だが敵も簡単には引っかからない。

 

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 むしろ冷静だ。

 

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 無理な旋回戦を避ける。

 

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 速度を活かす。

 

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 訓練されている。

 

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 神崎はようやく敵機の背後を取った。

 

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 発砲。

 

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 命中。

 

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 敵機から煙。

 

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 撃墜。

 

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 しかし。

 

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 周囲を見る。

 

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 敵はまだ何十機もいる。

 

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 その時。

 

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 遠くで黒煙が上がった。

 

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 ラバウルだった。

 

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 爆撃機が突破したのだ。

 

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「まずい!」

 

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 神崎が叫ぶ。

 

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 飛行場。

 

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 港湾。

 

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 燃料庫。

 

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 重要施設が並んでいる。

 

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 次の瞬間。

 

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 爆弾投下。

 

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 地面が揺れる。

 

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 巨大な爆発。

 

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 黒煙。

 

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 炎。

 

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 神崎は思わず言葉を失った。

 

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 今まで守られてきた基地。

 

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 最強だと思っていた要塞。

 

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 そのラバウルが燃えている。

 

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 空戦は続く。

 

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 だが。

 

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 敵の数が多すぎる。

 

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 全ては止められない。

 

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「被弾!」

 

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 通信。

 

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 誰かの声。

 

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「助けてくれ!」

 

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 別の声。

 

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 空は完全な混戦になっていた。

 

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 神崎は必死に戦った。

 

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 一機。

 

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 二機。

 

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 敵を追い払う。

 

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 しかし次々に現れる。

 

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 終わりが見えない。

 

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 やがて。

 

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 敵編隊は離脱した。

 

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 爆弾を落とし終えたからだ。

 

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 迎撃隊も追撃できない。

 

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 燃料が限界だった。

 

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 帰投。

 

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 神崎はラバウル上空で息を呑む。

 

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 煙。

 

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 煙。

 

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 煙。

 

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 基地のあちこちから黒煙が上がっている。

 

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 燃料施設。

 

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 倉庫。

 

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 滑走路。

 

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 多くが損傷していた。

 

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 着陸後。

 

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 飛行場は地獄だった。

 

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 救護班が走る。

 

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 消火班が走る。

 

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 負傷者が運ばれていく。

 

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 破壊された航空機も見える。

 

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 飛ぶ前にやられた機体もあった。

 

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 村田の姿を探す。

 

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 神崎は走った。

 

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 格納庫。

 

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 整備区画。

 

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 どこにもいない。

 

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 胸が冷たくなる。

 

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 嫌な予感。

 

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 だが。

 

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「神崎さん!」

 

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 聞き慣れた声。

 

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 振り返る。

 

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 村田だった。

 

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 煤だらけになっている。

 

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 腕には包帯。

 

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 しかし生きていた。

 

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「無事か!」

 

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「なんとか!」

 

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 二人は思わず笑った。

 

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 その瞬間だけは。

 

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 戦争を忘れられた。

 

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 しかし。

 

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 被害報告がまとまるにつれ。

 

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 現実が見えてくる。

 

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 航空機損失。

 

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 施設損傷。

 

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 死傷者多数。

 

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 決して小さな被害ではなかった。

 

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 夜。

 

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 作戦室。

 

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 鬼塚大尉は地図を見つめていた。

 

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「敵は来られるようになった」

 

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 誰も反論しない。

 

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 事実だった。

 

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 以前のラバウルは遠すぎた。

 

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 だが今は違う。

 

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 敵は届く。

 

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 そしてまた来る。

 

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 神崎は窓の外を見る。

 

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 まだ煙が上がっている。

 

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 去年。

 

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 ラバウルへ来た時。

 

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 この基地は不沈要塞に見えた。

 

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 だが今は違う。

 

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 敵は確実に近付いている。

 

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 戦争は確実にこちらへ向かってきている。

 

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 そして数か月後。

 

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 ラバウルはさらに激しい空襲を受けることになる。

 

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 飛行場は穴だらけになり。

 

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 熟練搭乗員は減り続ける。

 

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 補給も細くなる。

 

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 南海の要塞は。

 

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 ゆっくりと。

 

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 しかし確実に。

 

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 孤立への道を歩み始めていた。

 

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