ラバウルの鷹   作:UMC OGASOU

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第十三話 削られる翼

 

 

 昭和十八年八月。

 

 ラバウル基地。

 

 空襲から二か月。

 

 基地は表面上、平静を取り戻していた。

 

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 滑走路は修復された。

 

 格納庫も再建された。

 

 燃料庫も応急修理が終わった。

 

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 一見すると以前と変わらない。

 

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 だが。

 

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 神崎隼人には分かっていた。

 

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 見えない部分が壊れ始めている。

 

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 飛行場。

 

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 朝の点呼。

 

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 神崎は並んだ搭乗員たちを見回した。

 

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 知らない顔が多い。

 

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 新人。

 

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 新人。

 

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 また新人。

 

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 去年なら考えられなかった。

 

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 飛行隊の中心はベテランだった。

 

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 中国戦線経験者。

 

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 真珠湾攻撃参加者。

 

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 珊瑚海帰り。

 

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 歴戦の猛者たち。

 

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 だが今は違う。

 

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 若い顔ばかりだった。

 

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「神崎さん」

 

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 新人の一人が話しかける。

 

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「零戦って本当に世界一なんですか?」

 

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 どこかで聞いたような質問だった。

 

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 以前にも誰かが同じことを聞いた。

 

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 森山だったかもしれない。

 

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 神崎は少し考えて答えた。

 

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「優れた戦闘機だ」

 

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「はい!」

 

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「だが万能じゃない」

 

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 新人は不思議そうな顔をした。

 

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 まだ理解できないのだろう。

 

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 戦場を知らないから。

 

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 その日の午後。

 

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 訓練飛行。

 

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 新人たちを引き連れて飛ぶ。

 

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 神崎は驚いていた。

 

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 技量差。

 

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 それがあまりにも大きい。

 

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 昔の新人も未熟だった。

 

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 しかし。

 

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 今の新人は訓練時間そのものが少ない。

 

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 燃料不足。

 

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 教官不足。

 

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 航空機不足。

 

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 全てが影響していた。

 

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「もっと旋回を意識しろ!」

 

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 神崎が通信で叫ぶ。

 

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「はい!」

 

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 返事は元気だ。

 

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 だが機体はふらついている。

 

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 鬼塚大尉もそれを見ていた。

 

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 着陸後。

 

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 飛行隊本部。

 

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「厳しいな」

 

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 鬼塚が呟く。

 

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「ええ」

 

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 神崎も頷く。

 

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「悪い連中じゃありません」

 

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「分かっている」

 

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「だが時間がない」

 

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 その言葉が全てだった。

 

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 時間がない。

 

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 育てる時間が。

 

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 経験を積ませる時間が。

 

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 九月。

 

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 空襲はさらに激しくなった。

 

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 敵爆撃機。

 

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 敵戦闘機。

 

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 毎週のように現れる。

 

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 時には毎日のように。

 

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 迎撃。

 

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 また迎撃。

 

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 さらに迎撃。

 

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 神崎たちは飛び続けた。

 

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 ある日の戦闘。

 

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 神崎は新人の後ろについていた。

 

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 十八歳。

 

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 名前は伊藤。

 

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 まだ配属一か月。

 

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「伊藤、上だ!」

 

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 神崎が叫ぶ。

 

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 だが遅かった。

 

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 ヘルキャットが急降下する。

 

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 機銃掃射。

 

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 伊藤機の尾翼が吹き飛んだ。

 

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「うわあああ!」

 

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 通信機越しの叫び。

 

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 零戦が制御を失う。

 

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 回転。

 

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 降下。

 

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 神崎は追いかけた。

 

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 だが追いつけない。

 

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 どうすることもできない。

 

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 海面へ落下。

 

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 白い飛沫。

 

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 それだけだった。

 

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 帰投後。

 

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 飛行隊は静まり返る。

 

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 伊藤は昨日まで生きていた。

 

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 食堂で飯を食っていた。

 

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 笑っていた。

 

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 それが今日はいない。

 

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 佐伯が煙草をくわえる。

 

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「最近、多いな」

 

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「何が」

 

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 神崎は聞き返した。

 

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「新人の戦死だ」

 

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 神崎は答えられなかった。

 

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 事実だからだ。

 

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 昔なら数年かけて育てた搭乗員。

 

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 今は数か月で前線に送られる。

 

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 そして。

 

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 消えていく。

 

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 十月。

 

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 さらに悪い知らせが届く。

 

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 敵の新型爆撃機。

 

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 敵の新しい基地。

 

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 敵の新しい艦隊。

 

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 報告は尽きない。

 

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 一方のラバウル。

 

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 補給船は減る。

 

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 航空燃料は減る。

 

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 予備部品も減る。

 

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 それでも戦わなければならない。

 

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 ある夜。

 

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 村田が神崎へ言った。

 

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「最近、部品が来ません」

 

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「そんなにか」

 

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「共食い整備が増えてます」

 

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 共食い整備。

 

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 飛べなくなった機体から部品を外し、別の機体へ取り付ける。

 

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 苦しい時の手段だった。

 

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 以前なら考えられない。

 

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「でも飛ばしますよ」

 

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 村田が笑う。

 

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「皆さんを飛ばさないといけませんから」

 

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 神崎も笑った。

 

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 だが胸は重い。

 

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 誰もが限界へ近付いている。

 

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 十一月。

 

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 ラバウル上空。

 

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 また大編隊接近の報告が入る。

 

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 しかし今回は違った。

 

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 数。

 

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 その数が異常だった。

 

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 百機。

 

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 二百機。

 

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 いや。

 

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 それ以上。

 

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 作戦室。

 

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 鬼塚大尉は静かに言った。

 

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「本格的に来るぞ」

 

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 誰も言葉を発しない。

 

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「今までとは違う」

 

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 その声には緊張が滲んでいた。

 

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 神崎は嫌な予感を覚える。

 

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 戦争の流れが変わる時の空気。

 

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 それを何度も見てきた。

 

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 そして昭和十八年十一月。

 

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 ラバウルは史上最大規模の空襲を受ける。

 

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 数百機の米軍機。

 

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 艦隊空母から飛来する戦闘機隊。

 

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 大量の爆撃機。

 

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 南海の要塞ラバウルを無力化するための大攻勢。

 

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 神崎たちは、その嵐の中へ飛び込むことになる。

 

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 そして。

 

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 その戦いで。

 

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 鬼塚大尉の運命が大きく動き始める。

 

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