ラバウルの鷹   作:UMC OGASOU

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第十四話 空母機動部隊来襲

 

 

 昭和十八年十一月。

 

 ラバウル基地。

 

 夜明け前。

 

 まだ空が薄暗い頃だった。

 

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 神崎隼人は飛行服のまま簡易寝台で眠っていた。

 

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 ここ数か月、まともな睡眠など取れていない。

 

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 空襲。

 

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 迎撃。

 

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 訓練。

 

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 また迎撃。

 

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 その繰り返しだった。

 

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 そして。

 

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 その日が来た。

 

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 基地全体にサイレンが鳴り響く。

 

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「総員起こせ!」

 

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「敵艦隊発見!!」

 

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 怒号が飛ぶ。

 

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 神崎は飛び起きた。

 

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 作戦室。

 

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 鬼塚大尉の顔は今まで見たことがないほど険しかった。

 

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 地図の前には参謀たち。

 

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 全員の顔色が悪い。

 

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「敵空母機動部隊確認」

 

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 室内が静まり返る。

 

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「ニューアイルランド島東方海域」

 

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 誰かが息を呑む。

 

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 近い。

 

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 近すぎる。

 

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「敵の目的は?」

 

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 神崎の問い。

 

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 参謀が答える。

 

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「ラバウル攻略の前段階だ」

 

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 ざわめき。

 

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 攻略。

 

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 その言葉は重かった。

 

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 空襲ではない。

 

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 嫌がらせでもない。

 

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 ラバウルそのものを奪う。

 

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 そういう意味だ。

 

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「敵は上陸を狙っている」

 

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「我々をここから追い出すつもりだ」

 

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 部屋の空気が凍り付く。

 

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 ラバウルは最後の砦だった。

 

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 失えば南方戦線は崩れる。

 

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「全航空隊出撃」

 

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 鬼塚が命じた。

 

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「空母を叩く」

 

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 飛行場。

 

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 零戦。

 

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 九九艦爆。

 

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 一式陸攻。

 

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 ありったけの航空機が並ぶ。

 

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 まるで総力戦だった。

 

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 村田が神崎の機体を叩く。

 

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「燃料満載です」

 

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「ありがとな」

 

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「帰ってきてくださいよ」

 

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 神崎は笑う。

 

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「お前も死ぬなよ」

 

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 エンジン始動。

 

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 轟音。

 

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 数十機。

 

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 百機近い航空機が次々と飛び立つ。

 

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 ラバウル航空隊の総反撃だった。

 

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 二時間後。

 

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 敵艦隊発見。

 

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 神崎は絶句した。

 

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 海を埋め尽くす艦艇。

 

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 空母。

 

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 戦艦。

 

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 巡洋艦。

 

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 駆逐艦。

 

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 その数は日本艦隊を遥かに上回っていた。

 

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「なんて数だ……」

 

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 佐伯が呟く。

 

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 その時。

 

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 敵戦闘機隊が現れる。

 

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 ヘルキャット。

 

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 数十機。

 

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 いや百機近い。

 

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「来るぞ!!」

 

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 鬼塚の声。

 

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 空戦開始。

 

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 空は地獄になった。

 

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 機銃弾。

 

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 爆発。

 

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 黒煙。

 

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 至る所で航空機が燃える。

 

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 神崎は敵戦闘機を追う。

 

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 一機撃墜。

 

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 二機目。

 

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 だが敵は減らない。

 

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 次から次へ現れる。

 

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 その最中だった。

 

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「鬼塚大尉被弾!!」

 

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 通信が飛ぶ。

 

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 神崎は振り向いた。

 

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 鬼塚機。

 

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 炎を引いている。

 

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 左翼が吹き飛びかけていた。

 

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「隊長!」

 

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 神崎が叫ぶ。

 

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 鬼塚機の後ろにはヘルキャット二機。

 

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 追撃している。

 

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 神崎は全速力で突っ込んだ。

 

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 距離が縮まる。

 

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 機銃発射。

 

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 命中。

 

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 一機撃墜。

 

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 もう一機離脱。

 

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「隊長!」

 

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 通信。

 

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 雑音。

 

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 そして。

 

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「まだ生きてる」

 

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 神崎は思わず笑った。

 

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 鬼塚らしい返事だった。

 

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 しかし状況は最悪だった。

 

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 鬼塚機は燃えている。

 

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 操縦系統も損傷。

 

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 ラバウルまでは遠い。

 

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「飛べますか」

 

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「飛ぶしかない」

 

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 鬼塚は機体を水平に保つ。

 

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 炎。

 

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 煙。

 

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 それでも飛ぶ。

 

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 帰路。

 

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 誰も喋らない。

 

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 神崎は鬼塚機の横を飛んでいた。

 

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 いつ墜落してもおかしくない。

 

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 一時間。

 

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 二時間。

 

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 長い帰路。

 

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 そして。

 

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 ラバウルが見えた。

 

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「見えたぞ」

 

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 神崎が叫ぶ。

 

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 鬼塚は返事をしない。

 

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 燃料も限界。

 

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 意識も朦朧としているのだろう。

 

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 滑走路。

 

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 鬼塚機が降下する。

 

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 脚が出ない。

 

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 油圧喪失。

 

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「胴体着陸だ!」

 

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 地上が騒ぐ。

 

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 火花。

 

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 轟音。

 

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 機体が滑走路を滑る。

 

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 数百メートル。

 

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 ようやく停止。

 

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 神崎は着陸すると同時に駆け出した。

 

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 鬼塚機。

 

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 機首は潰れている。

 

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 主翼も半壊。

 

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 だが。

 

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 風防が開いた。

 

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 鬼塚大尉が這い出してくる。

 

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 血だらけだった。

 

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 それでも立った。

 

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「隊長!」

 

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 神崎が駆け寄る。

 

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 鬼塚は苦笑した。

 

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「まだ死なん」

 

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 周囲から安堵の声が上がる。

 

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 誰もが駄目だと思っていた。

 

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 だが帰ってきた。

 

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 奇跡的に。

 

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 しかし。

 

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 その日の戦果報告は厳しかった。

 

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 敵艦隊への損害は限定的。

 

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 こちらは多数の航空機を失った。

 

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 そして。

 

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 敵輸送船団が確認された。

 

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 つまり。

 

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 敵は本気だった。

 

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 ラバウル占領作戦。

 

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 それはまだ始まったばかりだった。

 

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 夜。

 

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 神崎は病室を訪れる。

 

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 鬼塚は包帯だらけだった。

 

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「どうです」

 

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「飛べる」

 

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「嘘ですね」

 

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 鬼塚は笑った。

 

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 その笑顔の裏で、誰もが理解していた。

 

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 次の戦いはもっと厳しい。

 

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 敵は空襲だけでは終わらない。

 

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 近いうちに。

 

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 上陸部隊が来る。

 

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 ラバウル攻防戦。

 

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 その幕が静かに上がろうとしていた。

 

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