昭和十九年三月。
ラバウル。
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畑のサツマイモは少しずつ育っていた。
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兵士たちは交代で水を運ぶ。
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搭乗員も。
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整備兵も。
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士官も。
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皆同じだった。
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◇
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かつて敵空母を追っていた男たちは、今では畑の雑草を抜いている。
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誰も想像しなかった未来だった。
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◇
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しかし。
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その平穏は突然終わる。
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◇
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地下司令部。
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神崎、佐伯、鬼塚、そして残存航空隊の搭乗員たちが集められた。
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司令官の顔は険しい。
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◇
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「命令を伝える」
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室内が静まり返る。
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◇
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「敵輸送船団を発見した」
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◇
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全員の目が見開かれる。
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輸送船団。
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久しぶりに聞く言葉だった。
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◇
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「規模は不明」
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「ただし、敵上陸部隊への補給物資を積載している可能性が高い」
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◇
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地図に赤い印が付けられる。
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ラバウル東方海域。
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◇
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「これを叩く」
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◇
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沈黙。
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そして理解する。
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最後の反撃だ。
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◇
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飛べる機体は十機にも満たない。
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燃料も不足している。
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弾薬も少ない。
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それでも出る。
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それが命令だった。
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◇
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会議終了後。
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神崎は愛機を見上げる。
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零戦二一型。
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もう原形を保っているのが不思議なほどだった。
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主翼も。
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胴体も。
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補修跡だらけ。
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◇
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「まだ飛ぶか」
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神崎が呟く。
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◇
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村田が工具箱を閉じる。
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「飛ばします」
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「無茶言うな」
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「今さらですよ」
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◇
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二人とも笑った。
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もう何度目か分からない会話だった。
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◇
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翌朝。
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まだ暗いうちから準備が始まる。
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燃料は最低限。
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弾薬も最低限。
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飛行可能機。
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零戦七機。
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九九艦爆二機。
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合計九機。
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これが。
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かつて数百機を誇ったラバウル航空隊の全戦力だった。
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◇
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鬼塚大尉も参加する。
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完全には回復していない。
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それでも乗る。
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◇
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「隊長、本当に大丈夫ですか」
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神崎が聞く。
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◇
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鬼塚は笑った。
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「最後かもしれんからな」
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◇
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誰も反論しなかった。
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◇
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午前五時。
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発進。
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◇
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九機の航空機がジャングルの上を飛ぶ。
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朝日が昇る。
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海が輝いている。
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◇
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美しい景色だった。
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戦争さえなければ。
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二時間後。
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敵船団発見。
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◇
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神崎は息を呑む。
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輸送船。
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駆逐艦。
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護衛艦。
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確かに存在していた。
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◇
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数は多くない。
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だが守りは堅い。
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◇
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「攻撃開始」
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鬼塚の声。
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◇
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九機が急降下する。
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◇
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敵艦隊も気付いた。
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対空砲火。
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無数の曳光弾。
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空が赤く染まる。
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九九艦爆が突入。
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爆弾投下。
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◇
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命中。
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輸送船中央部で爆発。
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炎が上がる。
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◇
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「やった!」
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佐伯が叫ぶ。
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◇
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だが。
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次の瞬間。
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艦爆一機が被弾。
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黒煙を吹く。
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海へ墜落。
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大きな水柱。
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帰ってこない。
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◇
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神崎は歯を食いしばる。
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それでも攻撃を続ける。
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◇
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零戦隊が護衛艦へ機銃掃射。
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橋楼へ弾丸が突き刺さる。
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甲板が混乱する。
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◇
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鬼塚も攻撃に加わる。
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傷だらけの機体。
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傷だらけの搭乗員。
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それでも戦っている。
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◇
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やがて。
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敵船団は散開を始めた。
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輸送船一隻炎上。
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護衛艦一隻損傷。
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大戦果とは言えない。
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だが。
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確かな打撃だった。
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帰路。
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全員が疲れ切っていた。
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燃料も限界。
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神崎は編隊を見る。
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出撃時九機。
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帰還は八機。
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また一人。
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仲間が減った。
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◇
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ラバウルへ戻る。
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畑が見える。
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焼け跡の飛行場が見える。
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ジャングルが見える。
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◇
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そして神崎は思う。
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これが本当に最後の反撃かもしれない。
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もう大規模攻撃を行う力は残っていない。
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着陸後。
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村田たち整備兵が迎える。
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皆、少しだけ笑顔だった。
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久しぶりに戦果があったからだ。
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◇
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夜。
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焚火の前。
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鬼塚が静かに言う。
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「よくやった」
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その言葉だけだった。
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だが神崎には十分だった。
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◇
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遠くで砲声が響く。
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敵軍はまだいる。
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戦争も終わらない。
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しかし。
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ラバウル航空隊はまだ生きていた。
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たとえ翼を失っても。
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たとえ栄光が消えても。
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まだ終わっていない。
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◇
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その頃。
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敵軍司令部では新たな作戦が準備されていた。
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ラバウル内陸部への総攻撃。
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要塞そのものを潰すための攻勢である。
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そして神崎たちは、ついに空だけでなく地上でも戦うことになる。
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