ラバウルの鷹   作:UMC OGASOU

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第五話 ガダルカナル

 

 

 昭和十七年八月。

 

 ラバウル基地。

 

 早朝。

 

 まだ太陽も昇り切っていない時間だった。

 

 神崎隼人は飛行服に着替えながら違和感を覚えていた。

 

 基地の空気が張り詰めている。

 

 何かが起きた。

 

 それはすぐに分かった。

 

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 食堂へ入ると、いつも騒がしい佐伯が珍しく黙っていた。

 

「どうした」

 

 神崎が尋ねる。

 

 佐伯は顔を上げた。

 

「敵が上陸したらしい」

 

「どこに」

 

「ガダルカナル島」

 

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 その名前を聞いても、神崎にはピンと来なかった。

 

 南太平洋には無数の島がある。

 

 その一つに過ぎない。

 

 だが周囲の将校たちの顔色は違った。

 

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「飛行場を建設していた場所だ」

 

 鬼塚大尉が説明する。

 

「完成すれば南東方面防衛の要になるはずだった」

 

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 神崎は理解した。

 

 敵はそこを狙ったのだ。

 

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「奪い返すんですか」

 

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 鬼塚は即答した。

 

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「当然だ」

 

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 その日の午後。

 

 作戦会議が開かれた。

 

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 壁の地図にはソロモン諸島が描かれている。

 

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 ラバウル。

 

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 ブーゲンビル。

 

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 そして。

 

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 ガダルカナル。

 

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 距離は約千キロ。

 

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 遠い。

 

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 非常に遠い。

 

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 だが零戦なら飛べる。

 

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 ぎりぎりだが。

 

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「我々は攻撃隊の護衛を行う」

 

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 鬼塚が地図を指した。

 

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「往復二千キロ近い飛行になる」

 

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 部屋が静かになる。

 

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 それがどれほど過酷か全員知っていた。

 

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 戦闘だけではない。

 

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 燃料との戦いでもある。

 

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 被弾したら帰れない。

 

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 道に迷っても帰れない。

 

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 エンジン故障でも帰れない。

 

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 海に落ちれば終わりだ。

 

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 翌朝。

 

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 神崎たちは出撃した。

 

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 零戦二十機。

 

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 九九艦爆。

 

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 一式陸攻。

 

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 大編隊だった。

 

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 青い海の上を延々と飛ぶ。

 

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 雲。

 

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 海。

 

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 雲。

 

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 海。

 

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 景色はほとんど変わらない。

 

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 それでも緊張は増していく。

 

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 燃料計が少しずつ減っていくからだ。

 

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「まだか」

 

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 佐伯が通信で呟く。

 

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「黙って飛べ」

 

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 鬼塚の返答。

 

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 だが誰もが同じ気持ちだった。

 

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 遠い。

 

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 とにかく遠い。

 

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 数時間後。

 

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 ついに目的地が見えた。

 

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 ガダルカナル島。

 

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 緑の島。

 

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 そして。

 

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 飛行場。

 

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「敵機発見!」

 

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 見張りの声。

 

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 神崎は空を見上げた。

 

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 敵戦闘機。

 

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 十数機。

 

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 こちらへ向かってくる。

 

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「来たぞ!」

 

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 空戦が始まった。

 

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 神崎は急上昇した。

 

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 敵編隊へ突っ込む。

 

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 交差。

 

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 一瞬。

 

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 機銃弾が飛び交う。

 

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 敵も強い。

 

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 今までとは違う。

 

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 動きが洗練されている。

 

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 熟練者だ。

 

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「神崎!」

 

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 佐伯の声。

 

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 敵機が後ろについた。

 

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 神崎は急旋回。

 

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 零戦が悲鳴を上げる。

 

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 敵も食らいつく。

 

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 だが。

 

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 旋回性能なら零戦だ。

 

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 じわじわと位置を変える。

 

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 そして。

 

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 敵機の背後へ。

 

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「もらった!」

 

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 発砲。

 

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 二十ミリ弾が命中。

 

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 敵機が煙を吹く。

 

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 さらに追撃。

 

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 今度はエンジンへ命中。

 

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 炎。

 

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 撃墜。

 

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 しかし。

 

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 その直後だった。

 

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「被弾した!」

 

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 通信が響く。

 

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 若い搭乗員の声。

 

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 神崎は振り向いた。

 

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 一機の零戦が煙を吐いている。

 

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 主翼に穴。

 

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 燃料が漏れていた。

 

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「帰投します!」

 

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「急げ!」

 

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 鬼塚が叫ぶ。

 

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 だが神崎には分かった。

 

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 厳しい。

 

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 ここはガダルカナル。

 

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 ラバウルではない。

 

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 帰るには千キロある。

 

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 燃料漏れでは持たない。

 

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 戦闘終了後。

 

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 編隊は帰路についた。

 

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 しかし。

 

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 被弾した零戦の姿は途中で消えた。

 

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 誰も何も言わない。

 

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 通信もない。

 

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 ただ海が広がっている。

 

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 それだけだった。

 

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 ラバウル帰還。

 

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 夕暮れ。

 

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 滑走路へ降り立った神崎は周囲を見回した。

 

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 一機足りない。

 

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 二機。

 

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 三機。

 

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 何度数えても足りない。

 

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 整備兵たちも気付いていた。

 

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 帰ってこない機体がある。

 

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 帰ってこない仲間がいる。

 

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 夜。

 

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 宿舎。

 

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 静かだった。

 

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 数日前までの明るさはない。

 

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 佐伯が天井を見上げる。

 

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「初めてだな」

 

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「何が」

 

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「帰ってこない奴を見送るの」

 

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 神崎は答えなかった。

 

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 今までも戦死者はいた。

 

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 だが。

 

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 今回は違う。

 

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 昨日まで話していた仲間だ。

 

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 同じ食堂で飯を食った。

 

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 同じ空を飛んだ。

 

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 その人間がいなくなった。

 

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 あまりにも突然だった。

 

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 翌日。

 

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 鬼塚大尉が言った。

 

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「覚えておけ」

 

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 飛行隊全員が集まる。

 

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「ガダルカナルは今までと違う」

 

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 誰も反論しない。

 

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「敵も本気だ」

 

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「俺たちも本気で戦う」

 

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「だが」

 

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 鬼塚は一瞬言葉を切った。

 

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「生き残ることを忘れるな」

 

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 神崎はその言葉を胸に刻んだ。

 

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 この戦いは長くなる。

 

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 そんな予感がしていた。

 

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 そしてその予感は正しかった。

 

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 ガダルカナル。

 

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 その島を巡る戦いは、これから何か月も続く。

 

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 多くの艦を失い。

 

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 多くの飛行機を失い。

 

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 多くの仲間を失う。

 

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 ラバウルの栄光が少しずつ削られていく戦いの始まりだった。

 

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 そして神崎たちはまだ知らない。

 

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 数か月後。

 

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 彼らが「東京急行」と呼ばれる過酷な補給作戦と、その護衛任務に関わることになるのを。

 

 

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