昭和十七年八月。
ラバウル基地。
早朝。
まだ太陽も昇り切っていない時間だった。
神崎隼人は飛行服に着替えながら違和感を覚えていた。
基地の空気が張り詰めている。
何かが起きた。
それはすぐに分かった。
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食堂へ入ると、いつも騒がしい佐伯が珍しく黙っていた。
「どうした」
神崎が尋ねる。
佐伯は顔を上げた。
「敵が上陸したらしい」
「どこに」
「ガダルカナル島」
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その名前を聞いても、神崎にはピンと来なかった。
南太平洋には無数の島がある。
その一つに過ぎない。
だが周囲の将校たちの顔色は違った。
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「飛行場を建設していた場所だ」
鬼塚大尉が説明する。
「完成すれば南東方面防衛の要になるはずだった」
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神崎は理解した。
敵はそこを狙ったのだ。
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「奪い返すんですか」
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鬼塚は即答した。
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「当然だ」
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◇
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その日の午後。
作戦会議が開かれた。
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壁の地図にはソロモン諸島が描かれている。
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ラバウル。
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ブーゲンビル。
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そして。
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ガダルカナル。
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距離は約千キロ。
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遠い。
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非常に遠い。
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だが零戦なら飛べる。
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ぎりぎりだが。
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「我々は攻撃隊の護衛を行う」
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鬼塚が地図を指した。
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「往復二千キロ近い飛行になる」
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部屋が静かになる。
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それがどれほど過酷か全員知っていた。
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戦闘だけではない。
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燃料との戦いでもある。
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被弾したら帰れない。
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道に迷っても帰れない。
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エンジン故障でも帰れない。
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海に落ちれば終わりだ。
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◇
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翌朝。
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神崎たちは出撃した。
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零戦二十機。
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九九艦爆。
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一式陸攻。
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大編隊だった。
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青い海の上を延々と飛ぶ。
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雲。
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海。
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雲。
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海。
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景色はほとんど変わらない。
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それでも緊張は増していく。
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燃料計が少しずつ減っていくからだ。
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「まだか」
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佐伯が通信で呟く。
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「黙って飛べ」
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鬼塚の返答。
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だが誰もが同じ気持ちだった。
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遠い。
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とにかく遠い。
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◇
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数時間後。
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ついに目的地が見えた。
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ガダルカナル島。
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緑の島。
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そして。
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飛行場。
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「敵機発見!」
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見張りの声。
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神崎は空を見上げた。
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敵戦闘機。
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十数機。
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こちらへ向かってくる。
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「来たぞ!」
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空戦が始まった。
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◇
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神崎は急上昇した。
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敵編隊へ突っ込む。
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交差。
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一瞬。
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機銃弾が飛び交う。
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敵も強い。
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今までとは違う。
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動きが洗練されている。
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熟練者だ。
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「神崎!」
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佐伯の声。
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敵機が後ろについた。
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神崎は急旋回。
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零戦が悲鳴を上げる。
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敵も食らいつく。
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だが。
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旋回性能なら零戦だ。
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じわじわと位置を変える。
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そして。
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敵機の背後へ。
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「もらった!」
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発砲。
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二十ミリ弾が命中。
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敵機が煙を吹く。
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さらに追撃。
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今度はエンジンへ命中。
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炎。
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撃墜。
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◇
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しかし。
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その直後だった。
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「被弾した!」
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通信が響く。
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若い搭乗員の声。
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神崎は振り向いた。
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一機の零戦が煙を吐いている。
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主翼に穴。
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燃料が漏れていた。
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「帰投します!」
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「急げ!」
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鬼塚が叫ぶ。
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だが神崎には分かった。
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厳しい。
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ここはガダルカナル。
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ラバウルではない。
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帰るには千キロある。
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燃料漏れでは持たない。
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◇
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戦闘終了後。
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編隊は帰路についた。
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しかし。
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被弾した零戦の姿は途中で消えた。
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誰も何も言わない。
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通信もない。
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ただ海が広がっている。
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それだけだった。
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◇
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ラバウル帰還。
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夕暮れ。
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滑走路へ降り立った神崎は周囲を見回した。
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一機足りない。
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二機。
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三機。
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何度数えても足りない。
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整備兵たちも気付いていた。
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帰ってこない機体がある。
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帰ってこない仲間がいる。
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◇
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夜。
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宿舎。
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静かだった。
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数日前までの明るさはない。
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佐伯が天井を見上げる。
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「初めてだな」
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「何が」
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「帰ってこない奴を見送るの」
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神崎は答えなかった。
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今までも戦死者はいた。
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だが。
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今回は違う。
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昨日まで話していた仲間だ。
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同じ食堂で飯を食った。
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同じ空を飛んだ。
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その人間がいなくなった。
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あまりにも突然だった。
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◇
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翌日。
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鬼塚大尉が言った。
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「覚えておけ」
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飛行隊全員が集まる。
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「ガダルカナルは今までと違う」
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誰も反論しない。
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「敵も本気だ」
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「俺たちも本気で戦う」
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「だが」
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鬼塚は一瞬言葉を切った。
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「生き残ることを忘れるな」
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神崎はその言葉を胸に刻んだ。
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この戦いは長くなる。
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そんな予感がしていた。
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そしてその予感は正しかった。
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ガダルカナル。
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その島を巡る戦いは、これから何か月も続く。
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多くの艦を失い。
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多くの飛行機を失い。
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多くの仲間を失う。
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ラバウルの栄光が少しずつ削られていく戦いの始まりだった。
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そして神崎たちはまだ知らない。
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数か月後。
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彼らが「東京急行」と呼ばれる過酷な補給作戦と、その護衛任務に関わることになるのを。