ラバウルの鷹   作:UMC OGASOU

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第八話 新たな敵

 

 

 昭和十七年十一月。

 

 ラバウル基地。

 

 森山が戦死してから二週間が過ぎていた。

 

 飛行隊は相変わらず出撃を繰り返している。

 

 敵が来る。

 

 迎撃する。

 

 帰る。

 

 また飛ぶ。

 

 戦争は、誰か一人が死んだからといって止まったりはしない。

 

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 しかし神崎には分かっていた。

 

 何かが変わり始めている。

 

 森山の死だけではない。

 

 もっと大きな何かだ。

 

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 その日の朝。

 

 作戦室では地図を前に搭乗員たちが集まっていた。

 

 鬼塚大尉が腕を組む。

 

「敵航空戦力の増強が確認された」

 

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 ざわめきが起きる。

 

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「新型機か」

 

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 誰かが呟いた。

 

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 鬼塚は頷く。

 

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「詳細は不明だ」

 

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「だが今までの敵とは少し違うらしい」

 

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 神崎は顔をしかめた。

 

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 戦争が始まってから、日本軍搭乗員たちは何度も新しい敵と戦ってきた。

 

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 しかし。

 

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 最近は嫌な話ばかり聞く。

 

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 敵機の性能向上。

 

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 敵搭乗員の練度向上。

 

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 敵艦隊の増加。

 

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 どれも良い話ではない。

 

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 数日後。

 

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 神崎たちはガダルカナル方面への護衛任務に出撃した。

 

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 天候は快晴。

 

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 雲が少ない。

 

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 空戦には最悪の条件だった。

 

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 隠れる場所がない。

 

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 見つかれば正面から戦うしかない。

 

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「敵機!」

 

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 見張りが叫ぶ。

 

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 神崎は反射的に空を見上げた。

 

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 遠く。

 

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 高空。

 

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 複数の機影。

 

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 こちらへ向かってくる。

 

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 だが。

 

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「何だあれは」

 

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 佐伯の声。

 

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 神崎も違和感を覚えた。

 

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 形が違う。

 

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 今まで戦ってきた機体とは。

 

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 機首が長い。

 

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 大きい。

 

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 そして。

 

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 速そうだった。

 

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「全機警戒!」

 

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 鬼塚の声。

 

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 敵機が急降下してくる。

 

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 速い。

 

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 明らかに速い。

 

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「くっ!」

 

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 神崎は反射的に旋回した。

 

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 敵機が一瞬で横を通り過ぎる。

 

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 その速度に驚いた。

 

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 今までの敵機なら、もっと旋回戦になった。

 

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 だが違う。

 

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 敵は高速で突っ込み、高速で離脱していく。

 

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 そしてまた上昇する。

 

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「神崎!」

 

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 鬼塚の声。

 

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「追うな!」

 

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 神崎は我に返る。

 

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 危なかった。

 

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 いつもの癖で追いかけるところだった。

 

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 だが相手は違う。

 

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 速度がある。

 

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 無理に追えばこちらが不利になる。

 

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 空戦は混乱した。

 

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 敵機は一撃離脱を繰り返す。

 

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 近づけば速い。

 

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 離れればもっと速い。

 

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 まるで捕まらない。

 

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「なんだこいつら……」

 

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 佐伯が悪態をつく。

 

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 神崎も同じ気持ちだった。

 

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 今までの敵とは戦い方そのものが違う。

 

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 だが。

 

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 零戦もまだ強かった。

 

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 一機の敵が旋回戦へ持ち込まれた。

 

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 神崎はそこを逃さない。

 

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 旋回。

 

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 さらに旋回。

 

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 零戦が得意とする戦いだ。

 

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 徐々に背後へ回る。

 

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「取った!」

 

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 発砲。

 

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 命中。

 

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 敵機の翼から煙。

 

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 さらに追撃。

 

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 敵機は降下しながら逃げていく。

 

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 撃墜までは確認できなかった。

 

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 だが手応えはあった。

 

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 戦闘終了後。

 

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 飛行隊は帰投した。

 

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 損害は軽微。

 

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 しかし誰の顔も晴れなかった。

 

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 作戦室。

 

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 鬼塚が黒板の前に立つ。

 

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「今日の敵機について分かったことがある」

 

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 全員が注目する。

 

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「米軍の新鋭戦闘機らしい」

 

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 ざわめき。

 

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「名前はまだ確定していない」

 

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「だが速度性能が高い」

 

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「今後増える可能性がある」

 

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 会議後。

 

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 神崎と佐伯は飛行場を歩いていた。

 

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「嫌な感じだな」

 

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 佐伯が言う。

 

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「ああ」

 

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 神崎も頷く。

 

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「強かった」

 

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「今までの敵よりな」

 

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 その時だった。

 

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 格納庫の向こうで騒ぎが起きる。

 

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「輸送機だ!」

 

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「本土からか?」

 

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 皆が空を見る。

 

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 一機の大型輸送機が着陸してきた。

 

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 飛行場に止まる。

 

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 扉が開く。

 

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 中から降りてきた男たちを見て、神崎は思わず目を見開いた。

 

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 空母航空隊の搭乗員だった。

 

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 いや。

 

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 正確には。

 

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 元・空母航空隊だった。

 

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 彼らは疲れ切っていた。

 

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 制服も汚れている。

 

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 表情も暗い。

 

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 だがその目だけは鋭かった。

 

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 歴戦の搭乗員たち。

 

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 空母を失い。

 

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 仲間を失い。

 

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 それでも生き残った者たちだった。

 

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 その中の一人が神崎たちを見る。

 

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「ラバウル航空隊か」

 

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「はい」

 

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 神崎が答える。

 

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 男は苦笑した。

 

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「羨ましいな」

 

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「え?」

 

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「まだ大勢仲間がいる」

 

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 その言葉に神崎は返事ができなかった。

 

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 夜。

 

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 歓迎会が開かれた。

 

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 だが宴会というより報告会に近かった。

 

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 そこで神崎たちは初めて聞く。

 

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 ミッドウェー海戦の詳細を。

 

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 炎上する空母。

 

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 次々と失われる飛行甲板。

 

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 帰る場所を失った搭乗員たち。

 

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 そして。

 

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 失われたベテランたち。

 

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 部屋は静まり返った。

 

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 元空母搭乗員の一人が言った。

 

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「戦争は変わった」

 

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 誰も反論しない。

 

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「俺たちはまだ戦える」

 

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 男は続ける。

 

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「だが敵も強くなる」

 

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「これからが本当の勝負だ」

 

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 その夜。

 

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 神崎はなかなか眠れなかった。

 

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 窓の外には南国の星空。

 

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 ラバウルの夜は静かだった。

 

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 しかしその静けさの向こうで。

 

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 戦争は確実に大きくなっている。

 

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 そして翌月。

 

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 ガダルカナルを巡る戦いは決定的な局面へ向かう。

 

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 神崎たちもまた、その激流へ飲み込まれていくことになる。

 

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 戦争はまだ始まったばかりだった。

 

 

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