ジェダイの掟ですか?そこに無ければ無いですね 作:モー=サン
腰痛の検査の待ち時間中に気分転換で書いたので、完全な見切り発車で続きません。
掟があまり好きじゃない。ルールを定めることは大事だと思うが、掟を遵守し過ぎるあまり思考停止で従い続ける人々が好きではなかった。
これは別に法律のようなものに対して言っているのではなく、戒律など宗教組織で定められた独自の規範を指している。なぜその戒律が必要になってしまったのか、その戒律が出来た当時と今の時代の違いはあるのか、果たしてその戒律は本当に必要なのか。
父や師匠が体制に少々批判的な姿勢なこともあってか、その考えはいつしか自然と自分の中に染み込んでいた。
12歳の誕生日を迎えた日、俺と姉は1人のジェダイマスターに預けられた。父の戦友であると聞かされた、ドゥークーという人物。彼は俺のマスターになる人でもある。
そんな彼に預けられた俺達姉弟は、ジェダイとなるべくコルサントのジェダイ寺院に送られたのだ。元々はアウター・リムを旅しながら修行を積んでいたが、父はジェダイオーダーに俺達のことを任せることを決めた。
既にジェダイのナイトになるのに十分な訓練を積んでいた俺達は、数ヶ月のジェダイ・イニシエイトの地位に別れを告げ、パダワンとして各マスターに仕えるようになった。
俺がマスタードゥークー、姉がマスタープロ=クーンのパダワンに。姉の方は知らないが、俺は最初の一年は兄弟子も含めてマスターと修行の旅に出るようになった。ちなみに兄弟子はラエル・アヴェロスとクワイ=ガン・ジン。
二人ともまだパダワンを迎えていないこともあり、旅をしていない時も暇がある場合は修行に付き合ってくれるいい人たちだ。兄弟弟子としてとてもいい関係を築けていると思う。
でも数ヶ月間寺院の中で厳しく仕込まれたジェダイの掟は、この三人衆の前では無用の長物らしい。全てを蔑ろにしているわけではないが、ラエルなんかは普通に修行の前後に娼館に出入りしてたりする。戒律通りなら感情や欲望を放棄させようとしているように感じられるが、ラエルは己の求める快楽にとても忠実だ。
マスターやクワイ=ガンに諌める気配はないため、これが平常運転なんだなと最初に呆気にとられたのを覚えてる。12歳の思春期の子供には少々刺激が強かったが、ラエルの助言に従って初めて行った娼館のお姉様が与えてくれた衝撃は格別であったため、今では彼との日々はとてもいい経験だったと思う。
いつか迎えるかもしれない俺のパダワンにはやらせないけど。
「モルガン、今日はこれだ」
さて、ここでは掟が無用の長物だと確信した一番の原因が登場した。
「マスター。そろそろクワイ=ガンにバレますよ?」
「大丈夫だ、あいつもダークサイドを制御する重要性を理解している」
そう言って如何にもマズそうな遺物を俺の前に置く中年オヤジ。御年51歳のマスタードゥークーである。
「でも俺を通して過去のシス達の技を学ぶとか、流石に限界がありません?」
「仕方がないだろう?現役の暗黒卿が見つからないのだから、今使える手段で学ぶしかない」
年甲斐もなく体から"ワクワク"といったオーラが漏れ出るマスタードゥークー51歳。俺のマスターになって4年が経つが、ここ3年くらいは2人でダークサイド研究がブームになっていた。終わりだよこの師弟。
それもこれも俺の持つ特性が原因だ。姉は未来視、俺は過去視を生まれつき持っていたのだが、母の種族に起因するこの能力は、自身が触れたものの過去を観る事が出来た。とは言っても本来は未来視が宿るのが普通で、過去視はかなり珍しいと聞いた。
そして以前に俺は誤ってマスターの持っていたシス関係の遺物に触れ、そこで過去のシスの技術について知ってしまったのだ。俺の変化に一瞬で気付いたマスターに問い詰められ、信頼して洗いざらい喋ったのが運の尽きだった。
はじめは自制していたマスターも、俺になんの悪影響もないと見るやどんどんシス関係の遺物を持参し始めたのだ。おかげで俺はその辺の適当なダークサイドの人間よりもダークサイドに詳しくなっていると思う。
何なら最近はマスターリーン・コスタナ(以降はマスターコスタナと呼ぶ)とマスターサイフォ=ディアスとかいう、巷ではオーダー屈指の異端児と評される方々までこれに加担する始末。マスタードゥークーはかつてはマスターコスタナのパダワン志望だったらしく、今や一緒にダークサイドを研究するお仲間のような関係になっている。
これ、誰かに勘付かれたら俺は監獄行きでは?最近はビジョンに囚われたと解釈されたジェダイが放り込まれる監獄まであるし、俺のこれもダークサイドへの転向として処断されたって文句は言えないかもしれない。
そんなシスの如き所業にジェダイオーダーの最高意思決定機関である評議会の評議員2名が嬉々として参加しているのだから世も末だ。
ただこの研究、普通に楽しい。シス同士の殺し合いの多さには辟易とするが、欲望に忠実に研鑽を積んだ彼らの技は非常に優れたものが多い。未だに俺が習得しているモリクロの誕生の起源には疑問が尽きないが、様々なシスの使うフォースの技をこの眼で見続ける日々は非常に刺激的であった。
また古すぎるものだとジェダイとシスの分岐以前や、分岐後に発生した各分派への枝分かれの過程などもみてきた。ある意味史学の研究をしているような気分だ。過去の絵面はサイコホラーだが。
4年も肉親と連絡を取らず、高齢者と中年マスター達とひたすらにダークサイド研究を重ねる日々。そんな日々を経て、いつしか俺はジェダイオーダー内の急進派と位置づけられる面々の一員となっていた。
ちなみに主要なメンバーはマスターコスタナとマスターサイフォ=ディアス。うちのワクワク中年オヤジことマスタードゥークーはその名を連ねていない。何故だ、あの人が一番アカン方向に研究を推し進めてるのに。ジェダイオーダーは目が曇ってやがるな…。
何故か俺が二人といる目撃証言はよく上がるのに、マスタードゥークーだけは上手くそこを躱して研究を進めている。本人は特に意図していないらしいが、無意識に政治家のような危機察知能力が働いているのかもしれない。
おかげでただでさえ同年代の友人がいない俺は、オーダー内の危険な急進派のレッテル貼りを受け同年代との関係は絶望的。なので開き直って修行と研究を進めるため、アウター・リムにて遺物捜索を行う旅に出ている。
急進派と位置づけられる前にジェダイ・ナイトになった俺は、なんだかんだジェダイ基準ではエリート街道をひた走っていた。今はダークサイド研究会とかいうディストピアの中核にいて投獄一歩手前だが、本来なら歴代最年少記録に並ぶ年齢でのナイト昇格。少しはチヤホヤされたっていいと思うんだよね、俺。チヤホヤされる前にレッテル貼りを受けて風聞は壊滅的だけど。
「何を考え込んでいるんだ。ほら、はやく始めるぞ!」
興奮しながら俺の肩を揺らすマスタードゥークー。多分クワイ=ガンが今のマスターを見たらビックリするだろうな。顔は平静なのに声はウッキウキしていやがる。
「…わかりましたよ、みてくるんで待ってて下さい」
マスタードゥークーから遺物を受け取り、そのまま瞑想の体勢に入る。過去視が行えるのは瞑想をしている時、もしくは眠っている時に限られる。
瞑想の体勢に入ったまま前方をみると、そこには同じように瞑想を開始しようとするマスタードゥークーの姿があった。いつかフォースを通し、俺の過去視をヴィジョンとして共有出来るようになれば…!とか言って一緒に瞑想をするようになった。
是非とも実現しないで欲しい。じゃないと俺は年中無休で瞑想をする修行僧みたいな生活を送るハメになる。既にこの人とその弟子の思想に毒された俺には、ジェダイが美徳とする清貧で無欲な生活は耐えられないのだ。瞑想のみの人生なんて以ての外。
そんなわけで目の前で一緒に瞑想をされるのは非常に嫌だ。絶対聞き入れてもらえないけど。願わくば過去視を共有できる日が一生来ませんように。
…じゃあ、はじめるか。
◇
55BBY
現在では分離主義運動を独立星系連合に纏めたことで知られるドゥークー伯爵が、モルガン・ル・フェをパダワンに迎えた年である。この師弟はジェダイオーダーが壊滅後も活動を続け、現在アウター・リムに存在する「アウター・リム西星系団連合」の軍部に深く関わっていることでも知られている。