ジェダイの掟ですか?そこに無ければ無いですね   作:モー=サン

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2話

 

 

 

 

はいけい しんあいなるあねうえへ、いかがおすごしでしょうか?わたしはいま、よんかげつれんぞくでめいそうをくりかえすごうもんをうけています。これはじゃあくなたぐいのしすのあんこくきょうによるこうげきにちがいありません。たすけてください、あねうえ。このままだとぼくはかろうでくちはててしまいます。 けいぐ

 

 

 

 

前回、マスターは瞑想による過去視のヴィジョン共有を目指していると言ったな?あれは嘘だ!

 

あのワクワク中年オヤジ、俺のフォースの波長に合わせてテレパシーで過去視の映像化を成功させたのだ…!瞑想中に過去視を行う俺のフォースとテレパシーで繋がり、直接過去視を覗き込む反則的な事をやってきたやがった…。はじめからテレパシーで繋ぐ気満々だったらしい。

 

おかげで俺は4ヶ月間、食事と最低限の睡眠時間以外は全て瞑想と過去視に費やされている。最近では睡眠時間まで無意識に過去視に汚染され、瞑想中はマスターとシス及びダークサイドの研究を、睡眠中にはライトサイドと歴代ジェダイの過去視を行いバランスを勝手に取っている。

 

おかげでマスタードゥークーのダークサイドの研究はグングン進み、最近は誰にも邪魔されないように完全に無人の惑星で過去視に没頭している。幸いにも父と縁のある人物の保有する完全な無人惑星があったため、そこの一角を借り受けて研究に没頭している。

 

信じられるか、諸君。俺は今16歳で思春期全盛期のはずが、51歳の爺さんと二人きりで無人惑星のラボに引きこもっている。あの苦手なテンプルですら、火傷がしたいパダワン女子とお話しする機会があったのに…。

 

たちが悪いのは、過去視の精度を上げるほどフォースの扱いが上手くなっていくこと。曲がりなりにもこの拷問が俺にとっての修行となり、過去の偉人達の戦い方なども勝手に参考にすることが出来る。だからマスターと一緒に過去視をしたものの再現を試みたり、実際に使えるようになることもあった。正直、直接指導する相手がいないから効率は悪目だけど。

 

史上最悪の修行方法だとしても、確かに俺は成長していたのだ。今やすっかりダークサイドとライトサイドを使い熟すための修行に沼っているマスターは、俺をパダワンとして育てるという役目を忘れているかもしれない。そのくらい過去視のテレパシー接続にドはまりである。

 

ただ一番怖いのは、ここまでダークサイドを吸っても一向に転向する気配がないことだ。こんな濃密な邪悪を浴び続けているのに、マスターの軸がブレる気配は全くない。ただ純粋にダークサイドの力を制御しようとするだけ。

 

果てには自分の理想について語りだしたりしているし、いつか俺はマスターの弟子ではなく、彼の思想を具現化するための手足になっているかもしれないなぁ。死ぬまでこき使われそうだし、それだけは死んでも回避しなくては…!

 

だからマスター、現存するかも分からないシスの捜索に巻き込もうとするのは辞めてください。過去視ですら結構キモいのに、現役のシスと相対したら脳が腐るって。

 

 

 

 

 

 

さて、気分転換に少しうちの姉の話を少ししようか。ネウィン・ル・フェ。俺の双子の姉であり、同じくジェダイオーダーに属するジェダイである。

 

うちの姉は小さい頃から矢鱈と大人びており、父が1歳の頃から開始したジェダイとしての訓練にも熱中していた。姉弟である前に兄弟弟子として育てられた俺達は、日々切磋琢磨しながら互いの技を鍛えていたのだ。

 

だが姉は時折俺の顔を見ては、どこか気が沈んだような顔をすることが増えた。未来視で何かをみてしまったのか、はたまた別の要因があるのか。

 

父がジェダイに俺達を預けることを決めた時、 姉はやっとなのね!とか言って喜んでいた。だが無邪気に喜んでいた姉は、到着した引き取り手のジェダイマスターを見て完全に動きを止めた。マスタードゥークーを見た彼女は、あの時と同じ沈んだ表情を浮かべたのだ。

 

そのままマスタードゥークーのパダワンとなった俺は、自然とネウィンと関わる機会が減っていった。互いのマスターの行動範囲が全く被らなかったことも大きかったと思う。ジェダイ・テンプルやコルサントを中心に活動する彼女とは対照的に、俺はアウター・リム、コルサントなどの共和国の中核星系から離れた場所で活動している。

 

そこにダークサイド研究による過労もあり、いつしか彼女を思い出す機会はめっきり減ってしまった。

 

そんな姉を久しぶりに思い出しているのは、マスタードゥークーの計らいがきっかけだった。流石に4ヶ月も過去視に監禁するのはやりすぎたと思ったのか、1ヶ月の休暇とネウィンに会うアポをマスタープロ=クーンにつけてくれたらしい。だから俺は久しぶりにコルサントに来ていた。

 

予定の待ち合わせ場所でのんびりしていたが、ベンチの背もたれにもたれかかった瞬間だった。強烈な眠気が襲ってきて、このまま陽の光の下で眠れば気持ちいいんだろうなと考えてしまった。空気が絶望的に非常に不味いのは減点だが、日だまりでするお昼寝は最高だろうなぁ…。

 

 

 

 

私は弟のことが、少し苦手だった。日本で生きていた頃に好きだったスターウォーズの世界に生まれ、私にとっては毎日が刺激的で楽しい日々だった。初めて感じるフォース、あの不思議な感覚を忘れることは一生ないと思う。

 

幸いにも才能と指導者にも恵まれ、小さい頃から積んできた修行の甲斐もあって、私達姉弟は直ぐにパダワンに十分な技量を認めてもらえた。

 

マスターが分かれたことで関わる時間が減ったのは、ある意味自分にとってはよかったのかもしれない。モルガンはあのドゥークー伯爵のパダワンになった。シスの暗黒卿である、ドゥークー伯爵のだ。

 

あのパルパティーン最高議長の弟子で、分離独立派の首魁として戦争の指導者をしているシスの敵役。それが私の知るマスタードゥークーだ。

 

映画以外のスターウォーズにほとんど触れていない私には、ドゥークー伯爵がいつからジェダイを裏切っていたのかは分からない。もしかしたら最初からシスの関係者で、パルパティーンが仕込んでいる敵かもしれない。

 

そうだった場合が怖くて、パルパティーンの影から逃げるように私は弟を避けるようになった。未来視の中でモルガンがドゥークー伯爵の弟子になっていたのも、幼少期の時点で彼に苦手意識を持つ大きなきっかけになったと思う。

 

だからマスタープロ=クーンから弟との再会の場を作ってもらった時は、ありがた迷惑というのが正直な気持ちだった。このままお互いに関わることなく、徐々にフェードアウトしていけば…なんて酷いことを考えてた。

 

そもそもこんなに怖いのならジェダイになるなよ、って話ではあるんだけど。でもこの世界で生き延びるには、どうしても力が必要だし。それにはじめは将来を恐れる暇もなく、未知の体験を純粋に楽しんでいた。

 

私が明確に恐怖を感じ始めたのはコルサントに到着してしばらく経った頃。未来視やマスタードゥークーのパダワンになってからも、苦手意識はあっても実の弟に恐怖を抱くことはなかった。

 

でも弟がマスターサイフォ=ディアス、そしてマスターリーン・コスタナなどの急進派と呼ばれる人々と深く関わっていると聞いた時。朧気ながら思い出したのは、EP2でオビ=ワンがカミーノでクローン軍の存在を知った時のこと。確かその発注者はサイフォ=ディアスで、彼の発注した軍の行動でジェダイはトドメを刺されることになった。

 

パルパティーンと直接関わりのあるシスの暗黒卿、そしてジェダイを抹殺する軍勢の発注者。その両者と深く関わり、同じ派閥の人間として数えられている弟。その姿がいつしかパルパティーンに通じてるのではと感じるようになって、自分や親しくなった人々が殺されてしまう未来視が何度も繰り返されるようになった。

 

それからだ。弟が私の中で恐怖の対象になったのは。彼について考える時、必ず私の思考の端にパルパティーンが入り込むようになった。そんな私の恐怖を感じ取ったマスターは、私を気にかけ頭の中を切り替えられるよう試行錯誤をしてくれた。

 

皮肉にもその恐怖と今から会うように画策したのは 、他でもないマスタープロ=クーンなんだけど。

 

だから、現場に着くまで冷や汗が止まらなかった。変な被害妄想までするようになって、あるわけないのに殺されちゃったら…なんて考えが飛躍してしまっていた。

 

ただそんな極端な被害妄想も、久しぶりに直接会った弟の前では不思議と落ち着いた。  

 

モルガンは予定の時間より早く着いたのか、待ち合わせ場所の側にあるベンチの上で眠りこけてた。目の下には酷い隈があって、最近まともに休めていないのが一目で分かった。初めて見る弟の満身創痍な姿が、少しづつ私を落ち着かせていく。

 

それから30分くらい、モルガンが起きてくることはなかった。だから大人しく隣に座って、彼が起きるのを待ってみることに。

 

不思議だった。今のモルガンはお父さんと修行をしていた頃と一緒なように見えるんだから。もしかしたら、ドゥークー伯爵はまだシスにはなっていないのかもしれない。

 

シスは二人しか存在できない戒律があるし、今はダース・モールがパルパティーンの弟子なはず。ドゥークー伯爵も映画で見た時よりも若い。具体的に何年なのかも分からないけど、この前たまたま出会ったオビ=ワンは6歳の少年だった。当然ながらナブー危機が起こっていないから大規模な分離独立運動も起こっていないし、ジェダイオーダーで本格的な軍拡を叫ぶ人も今のところはいない。

 

もしかしたら…。自分は未来視のビジョンに囚われて、過程をすっ飛ばして怖がってしまっていたのかもしれない。確証はないけど、今はまだそうなのかも。

 

いつの間にかモルガンの手を握っていたけど、そのせいで起こしちゃったみたい。目をこすりながら大きな欠伸をしている。目が合うことはなかったけど、モルガンは別の方向を見ながら話しかけてきた。

 

「…なんか、久しぶり」

 

「…うん、4年も会ってないしね」

 

「そんなに、経ってたっけ」

 

「…うん」

 

「そう、かぁ」

 

そこで会話は止まってしまった。私から話を切り出そうにも、こんな場所で話せる話題なんて持ち合わせていなかった。モルガンの方も眠気と気まずさが強いのか、何かを話し始める気配はない。

 

こうして4年ぶりの私達家族の再会は、私が想像していたよりも穏やかで、そしてとても気まずい始まり方をした。

 

 

 

 

目が覚めたら知らない女性が俺の手を握っていた件。あれぇ?異変があったら直ぐ起きるように仕込まれているはずなのだが…。

 

落ち込みかけて女性の顔を自然な仕草で盗み見ると、そこで初めて彼女が姉のネウィンであることに気が付いた。いや、流石に12歳から16歳に変わった女の子を見分けるのは難しかったよ…。なんか化粧もしてるし。

 

そんなわけで久しぶりに会話したが、絶望的に弾まない。お互いに話題がないから一向に会話が再開される気配がない。おかしいな、マスターと徹夜で瞑想を続けてた時の方が楽しいぞ。

 

「あー、マスタープロ=クーンの教えはどんな感じ?」

 

「そうね、とにかく凄いかな。お父さんとは違ったベクトルで毎日学ぶべきことばっかり。でも楽しいよ、毎日新しい事を吸収してる実感があって」

 

「じゃあ、毎日充実してるんだ」

 

「充実…。そうね、充実した日々かも。モルガンの方はどう?マスタードゥークーってすごい人な印象があるけど」

 

姉の充実したパダワン生活を想像して気が遠くなっていると、唐突に記憶がダークサイドで埋まることになった。きっかけはもちろんネウィンの問いかけに起因する。

 

「間違っても刺激には事欠かないね。あと剣術と同時に無手でフォースを操ってくるから、気付けば打ち合い中に呼吸できなくなってたりする」

 

「そう、なのね?スパルタな修行なんだね」

 

「…高等技術のオンパレードで学び甲斐はあるかな」

 

思わず死んだ魚のような目になった。うちのマスターはたまに研究者や政治家のような講釈をたれてくる事はあるが、その実はバリバリの武闘派に属する腕利きのジェダイだ。初老に差し掛かる年齢になっても、そのセーバー捌きの技が錆びつく気配はない。

 

瞑想の気分転換にやるのがフォースを用いた模擬戦や根比べなのだから、あのマスターの体力の有り余り方をよく示していると思う。大量の岩などを同時に持ち上げるのはマストだし、最近はマスターがモリクロにまで関心を持ち始めた。ここまで来ると子弟ではなく共同研究者のような関係な気がするが、悲しいかなマスターとパダワンの階級の壁が埋まることはない。

 

「マスタードゥークーはマスターヨーダの最後のパダワンらしいしね」

 

「…はい?」

 

「ん?どうかした?」

 

思い浮かべるのは小さな緑のジェダイと、うちのワクワク中年オヤジ。こいつらが子弟で、しかもその弟子が今ああなってるってマジ?世も末だな。ライトサイドの固まりを生み出したマスターヨーダの弟子が、今やシスとダークサイド研究の影の第一人者になっているとはなぁ…。

 

「世の中、どうなるか分かったもんじゃないなって」

 

「…そうね。たくさん、そんな事があるわ」

 

マスターの意外な過去を知ってしまった。そして適当に吐いた誤魔化しの言葉は、どうやらネウィンに心にクリーンヒットしたらしい。何かを憂うような表情で明後日の方を向いてしまった。

 

彼女の未来視はフォースのビジョンよりも正確で鮮明に描写されるとは聞いたけど、もしかするとそれが関係しているのかもしれない。元来互いの見た未来、過去について共有していないので詳細は分からない。

 

父は無闇矢鱈に広めるものじゃないと諌めていたし。

 

…マスターとやってるテレパシーは、内容だけを見れば両親の失望を買いそうな内容だな。いつかどこかで理解を得られることを願おう。

 

というか姉上は未来視で俺がダークサイド研究をしている事とか知れるのだろうか?下手すると俺の人生がそのまま終わりそうなんだけど。マスターはどうせ上手く躱せるだろうけど、俺は告発されれば一巻の終わりなんだが?

 

気まずさと疲労、眠気でふにゃふにゃだった頭が急激に冷えていくのを感じる。完全に忘れていたが、これ結構不味いのでは?普通に俺がシスとして極刑になる未来しか見えないんだが?

 

マスターコスタナのやってるような収集で済まされる話ではなく、本格的なダークサイドの技術や歴史含め様々な分野を学んでいってる。なんなら記録化してしまっているので、普通に世に出れば反逆罪で除名の上死罪待ったなしだ。

 

それを平気でやらせてるマスター、結構頭ヤバいやつでは?それに文句も言わず付き合ってる俺、かなり危ういのでは?バレたら人生終わりやんこれ…。

 

最悪の可能性が頭をよぎり、4ヶ月の研究詰めで疲労困憊な頭では最適解を導き出すことは出来なかった。諦めた俺は、姉を信じて賭けに出てみることにした。

 

いきなり百面相ばりに表情を変え続けた俺は、姉からはかなり愉快に見えていたと思う。唐突な変化に戸惑っていたネウィンだったが、俺が真っすぐ向き直ると、そのまま彼女も俺と目を合わせてきてくれた。うーん、うちのオヤジは絶対面食い。

 

「……姉さん、契約しない?」

 

「はい?契約?何よ急に」

 

「未来視で色々と見て疑われる前にさ、先に俺のやってる事を伝えておこうと思って。弱みの開示、みたいな?」

 

「何でそれで契約を結ぶことになるのよ」

 

「…俺、学問として非合法な分野の研究をしてるんだよね」

 

「…なんでそれを私に言うの」

 

「肉親に隠し事はしたくないのと、出来ればオーダー含め外部には内密にしてもらえたらなぁ…なんて」

 

「…内容によるかな」

 

「俺、ダークサイドの研究やってるんだよね」

 

「はい?」

 

「だから、ダークサイドの研究をやってるって」

 

「…モルガン、冗談でも言っちゃいけないことがあるわよ」

 

「冗談で投獄されたらたまったもんじゃないね」

 

「本気で言ってる?」

 

「過去視を使ってなんとかやりくりしてるよ」

 

「……」

 

「ダークサイドに堕ちないためには、まずダークサイドが何なのかを知らないとね。自分の弱さでもあるわけなんだし」

 

少し考え込んだ後、意を決した様子のネウィンはこちらに向き直る。

 

「ふぅん?わかった、黙っててあげる。その代わり、私のお願いは全部聞き入れること」

 

「範囲は?」

 

「文字通り、全部かしら」

 

「じゃあ死ねって言われたら俺は死ねと?」

 

「私がそんなこと言うと思う?」

 

わぁ。こんなバカな俺にも未来視があればなぁ。どんなに瞑想しても俺は未来のヴィジョンみれないんだけど、ほんとなんで?

 

「…文字通り無制限って事はわかったよ」

 

「心配しなくても、死ねだなんて言うことになる未来は避けるわよ」

 

「わぁ、今程自分に宿ったのが過去視であることを悔いたことはないよ」

 

「ふふっ、本当に心配しなくてもいいわよ。でもちょっと安心したかも」

 

弟の弱味を握って安心する我が姉。ストレスで心が疲れ切っているのでは?荒んでるよ君。

 

「肉親のジェダイがダークサイドの研究をしてて安心、か…。今度マスタープロ=クーンに抗議しに行く必要があるかもね」

 

それからは少し空気が軽くなり、なんて事のない雑談が始まった。内容は兄弟弟子やマスターに関しての話や、お互いのマスターの方針の差などについて話した。

 

やはりマスタープロ=クーンの方針はマスタードゥークーとは全く異なるようで、その指導の方針や理念には少しばかり驚くこともあった。ただ話を聞く限りいい子弟関係を築いているらしい。

 

俺から伝えたこと?ダークサイドの話を伏せた上でスパルタな指導のみについて話したので、彼女の中でマスタードゥークーはスパルタなおじさんになっていると思う。

 

少なくとも弟子に熱心なシスの研究をさせている、なんて評判より大分マシだよな?

 

あとやたらとクワイ=ガンについて聞かれたけど、姉さんまさかうちの兄弟子にほの字なの?

 

 

 





作中時間軸は現在51BBY。
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