ジェダイの掟ですか?そこに無ければ無いですね 作:モー=サン
ライトセーバーを用いた華麗な制圧…!を期待していたそこのあなた、残念でした。既に犯罪シンジケートの中核の制圧は済んでおります。ええ、はい。
素直になったブレンダンくんは把握している限りの癒着の証拠、そして上位の組織の拠点や幹部の集まる場所まで全部教えてくれた。そこからは虱潰しに拠点を制圧し、また現地の幹部から情報を搾ってを繰り返した。
その末に王室直属の軍の部隊に直接通報して逮捕してもらったわけだ。
幸いにも例の酒場の店長との縁が役に立った。彼からエウロペに連絡がいき、犯罪者達を回収する部隊の派遣をしてくれたのだ。おかげで大量に動けなくなった犯罪者の後始末に悩まなくて済む。
首領や関係組織の面々も直接制圧したらあっさり投降したので、今は司法軍の弱味を握るための証拠集めを着々と行っている。何かと渡航の邪魔をしてくることがあるし、この辺で何も干渉してこないようにしておきたい。特にこの辺の連中は。
あとブレンダンくんに関しては軍の到着後に司法取引ってことで、逮捕しない代わりに洗いざらい全部吐いてもらった。これからはこっちの言う事をよく聞いてくれることを願おう。
今は絶賛R3-B6がシンジケートの情報を全部抜き取っている。俺はその横でニコニコしながらブレンダンくんと雑談をしていたのだが、エウロピア軍に所属する将校が直ぐに入ってきた。
「犯罪組織の摘発への協力、誠に感謝する」
そこには30代くらいの男性が立っていた。顔つきは結構イカつい。寺院にいるイニシエイト達が見たら泣きそう。
「こちらこそ、無茶な要請にも関わらず迅速に協力頂きありがとうございます」
「構わんよ、命令に従い当然のことをしたまでだ。つかぬことを聞くが、制圧は全て一人で?」
「ええ。それが一番早いと思いまして」
「そうか…。それとな、そこまで畏まらなくてていい。君は恩人だからな。欲を言えば突入時に助力したかったが」
「じゃあ、遠慮なく」
俺が答えると将校はニヤリと笑った。申し訳ないが、不機嫌な時のメイス・ウィンドゥより威圧感がある。
「一人で紛れ込んだ方が警戒されないと思って、制圧後に各拠点に来てもらいました」
「全く、無茶をする…。ジェダイは皆君のような人達なのか?」
「…正面突破をする人は結構いるかもしれないですね。俺と同じ方法で制圧する人は稀でしょうけど」
「…あぁ。流石にあれは稀なんだな」
ちょっとだけ嫌そうな顔したぞこの将校。そら死角からモリクロで制圧し続けたけども。これ、俺の行動でジェダイへの印象が悪くなったのでは?…気のせいかな。
「聞けば、君は士官になる事も考えていたらしいな?」
「まぁ、そうですね。ジェダイになるなんて欠片も考えていなかったんで」
「今はもう、その気はないと?」
言われてみて、少し考える。そもそも、俺は特別ジェダイになりたかったわけでもない。今だって研究や修行が楽しくてやっているが、果たしてそれはジェダイじゃないと出来ないのか?
答えは否である。もちろん、マスターの下じゃなければ、との注釈がつくが。でも今の俺が楽しんでいるのはマスターの下での生活なので、オーダーを去ったとしても同じ様に楽しい研究生活が待っているとは思えない。
「そうですね、今はオーダーでやる事があるので」
「残念だな…。君がいれば百人力だったが」
「オーダーを辞めるようなことがあれば、その時はエウロピアに帰ってきますよ」
「ではその時にまた誘うとしようか」
「当分辞めませんよ」
「せめて私の引退前に頼むぞ?」
「じゃあ50年くらいは待ってもらえそうですね」
「ハッハッハ!その時私は将官になってしまうから、君と同じ戦場に立つ機会は限られてしまうぞ」
「そもそも立つべき戦場が無いといいですが」
「違いないな」
結局名前は聞きそびれたが、階級章から彼が少佐であることだけはわかった。
にしてもブレンダンくん、少佐の笑顔が怖いからって気絶するのはどうかと思うよ。
◇
証拠の押収や犯罪者の護送などを見届け、用事もいくつか片付けた俺はそのままもう一度エウロピア・シティに戻ることにした。解放した拉致被害者は皆一箇所に保護されているので、大丈夫そうか顔だけ見に行きたい。
現地に着くと、直ぐに依頼を出していた傭兵達が出迎えてくれた。グリーグは俺の襲撃時に逃げた犯罪者の追跡で不在らしい。一通り犯罪者達から情報を搾ったので、警察や軍部がそれを基に残りの構成員の逮捕をしているのだ。
グリーグは傭兵の情報網で逃亡者を見つけたらしく、その追跡に向かったらしかった。
件の赤ん坊と再会出来たらなぁ、なんて思ってここに来た。だが残念ながら不在らしい。どうやら栄養失調気味なので、病院で治療を受けているようだ。
流石に病院まで突撃する気は起きなかったので、一通り被害者の人達を見て回ってから帰ることに。それにあの子供には、またどこかで会える気がするし。
仮にあの子供の前にもう一度立てば、俺の中で連れて帰らない選択肢はなくなる。それだけのモノを感じた。だが流石の俺でも 、あのような恐怖体験をしたばかりの若い夫婦から子供を取り上げる気にはなれなかった。
だから導きがあれば、また会えるだろう。あの子も熱心に視ていたし。
そんなわけでカリスさん達と酒場で少し楽しんだ後 、陰鬱なコルサントに向けて出発した。司法軍とシンジケートの癒着の証拠は少佐にも渡したし、俺個人としても直接常駐する司法軍の幹部とオハナシさせてもらった。
次代の司令とはいい関係を結べそうで幸いである。
ただ、面倒な事もある。司法軍の弱みを握る程度の認識でデータを回収したところ、中からは俺の想定以上の証拠の数々が出てくることに。おかげで今、俺は早くも佳境に立たされようとしている。
滅べ共和国!
◇
「…モルガン、お前は何をしてる」
帰ってきて早々、メイス・ウィンドゥにシバかれた。
「独断専行が過ぎるぞ。なぜ介入する前に評議会に連絡しなかった」
最初は具体的な内容を言われていないので、俺は苦し紛れに誤魔化していた。こいつに絡まれると結構めんどくさいんだよな。
21歳の新進気鋭のジェダイ・ナイトなのだが、次代の評議員には間違いなくこいつが入ると評判だ。15歳でジェダイ・ナイトになり、今はデパ・ビラバをパダワンに迎えた超有望株。老けて見えるが、意外にも俺との年の差は5歳だけ。もうこいつの見た目30半ばだよ。
そんな期待の若手の筆頭さんはかなり御立腹らしい。
「聞いたぞ?エウロピアで、お前の独断で海賊と犯罪シンジケートを殲滅したって!なぜそんな事案を自分の判断だけで推し進めた!」
「……」
「お前の独断は、共和国とジェダイの双方を危険に晒しているんだぞ!」
ブチギレたメイス・ウィンドゥが掴みかかってくる。手に余る事案を引き当てたため、結果的に今回は彼の言葉が正しかったと言わざるを得ない…。この石頭の言葉を肯定するのは癪だけど。
「…あとで直接評議会に報告するよ。今はまだ単なるナイトの君に審問をする権限はないだろ?」
「…そうか。ではお前はいつになったらジェダイ・コードに従うんだ」
これだ。躱したと思ったら別の追及が始まる。コードコードとうるさい頭の固い頑固野郎。それが俺の中でのメイス・ウィンドゥ像だ。悪いやつではないが、相性は少々よろしくないかもしれない。
間もなく到着したマスターに救い出されて事なきを得たが、あのままメイスに捕まっていたら干からびていたと思う。あいつの前では変な汗が出るんだよな。
言ってることは正しいのに、聞く気が起きないのが彼の言葉だ。俺がひねくれているだけかもしれないけど。
「全く、休暇をやったら直ぐにこれだ…」
「すみません、故郷を想うと深入りしてしまいました」
「別にやったことは構わん。ただ中央は今辺境での問題に敏感だからな、それもあって注目度が上がっている」
「司法軍と政治家の怠慢が原因なのに、そいつらに責められそうってわけですね」
「お前の行動が司法軍と元老院の面子を傷つけているからな」
まぁ、件のシンジケートは共和国の元老院の議員が子供や奴隷の購入に使ってたみたいだし?中にはお気に入りの奴隷の供給源を失ったことで、結構お怒りの資産家や議員などのお偉方がいるだろう。
顧客リストに結構な数の元老院や企業国家の関係者がいたので、俺が入手した証拠を提出しないか戦々恐々としていることだろう。議員達からオーダーに圧力がかけられても驚かないし、今のジェダイオーダーは言いなりになり得るだろう。
そんなわけでうちのマスターを全力で説得しないといけない。あんな事をしていても、うちのマスターは7年前からジェダイ評議会の評議員なのだ。俺に対する審問が行われる際も、判断する側の一人として座っているだろう。
「数百人単位の民間人が奴隷にされてたので、思わず体が動いてしまいました。その後のシンジケートに関しても、尋問した海賊が大量の奴隷を移送したと言っていたので衝動的に…」
「だろうな。だがお前が考えなしに突っ込むとも思えんのだが?」
「司法軍の弱みを握ろうとしたら、思ったよりも大きな魚が釣れてしまいました」
「そもそも何故司法軍の弱味なんて欲したんだ」
「…汚職ばかりの割にうるさいので」
「弱味を握っても汚職は減らんぞ」
容赦のない正論が襲ってくる。いやそうですけど、弱味を出汁に仕事させられないかなとか思った側面もありますやん?なんて言ってみても、どうせまた繰り返すぞと言われれば「ハイ。」としか言えない。
今回のやり口は結構マスターにはお気に召さなかったらしい。やるなら改革を推し進め、組織の体質そのものを改めないと…などの説教を受けた。でもマスター、俺は体質改善のための改革をする事が可能な組織におらんのです。どないしましょ。え?代わりに改革してくれる人脈を作れ?そんな簡単に言わないで下さい。
…最終的にマスターは俺の援護に回ってくれる事にはなった。幸いにも現着した軍人、そして傭兵達への根回しは行っている。ブレンダンくんも忠実になってくれているし、現状エウロピア方面で表現可能な人間は皆抑えていると言える。
あとは握ってしまった奴隷売買を含む元老院議員とシンジケート、そして司法軍との癒着の証拠の使い方に悩む時間となった。下手に出してしまえば、どんでもないスキャンダルとして政界に激震が走ってしまうだろう。
ただでさえ辺境の星系が中央に反感を強めているのだ。それなのに中央でこんな政治スキャンダルが出てしまえば、徐々に水面下で進みつつある、共和国からの分離独立を目指すアウター・リムの活動家達の言説が正しい事を証明することになる。
そんな事態はジェダイオーダー、そして共和国としても絶対に避けたいところだろう。
さて、この場合一番手っ取り早いのはなんだろうか?そう、隠蔽である。今回の件を無かったことにするわけだ。今独立運動の機運がさらに高まれば、下手をすればそれは戦争の到来を意味する。共和国が構成地域の離脱を許す訳もないし、その大義名分を与えるつもりも一切ないだろう。
つまり今の俺はジェダイオーダー、そして共和国の元老院の一部にとって非常に邪魔な存在になってしまったのだ。ここでマスターサイフォ=ディアスやマスターコスタナに売られれば、普通にダークサイド研究を口実に除名後変死待ったなしである。
それを避けるためにマスターに泣きついたのだが、このまま証拠だけ握って雲隠れすればよかったなんて思い始めた。まじ共和国クソ。
最終的に政治関係の話し合いに疲れた俺達師弟は「研究って楽しいね」に行き着いた。脳死の思考停止である。もういざとなったら脱走して顔が怖い件の少佐の部下にでもしてもらおう。
マスターは?どうせ外聞を整えたまま好き勝手やるでしょ。
そんな現実逃避に必死な危機的状況の中、俺に接触をしてくる元老院議員がいた。なんとまさかのフィニス・ヴァローラム議員である。…普通に知らなかったけど。あの(?)ヴァローラム家の当主の地位をこの間継承したばっかりの有名人らしい。
彼は汚職議員の追い落としの機会を求めているらしく、どこから聞きつけたのか俺に接触をしてきた。ただ彼自身も今すぐに証拠を表に出すのは得策だと思っていないらしく、目下最大の目標は俺と証拠の無事を確保する事だと力説してくれた。
多分ジェダイオーダー内に従順な手駒が欲しいんだろうな。不穏分子として消される可能性のある俺を助け、同時にジェダイ評議員であるマスターにも恩を売る。そして政敵のスキャンダルまで確保…!やるなヴァローラム議員。貪欲な政治家で尊敬するぜ。
でもマスター、普通にこの政治家の方が同じジェダイの評議会より頼りになりそうなんすけど。泣いてもいいですか?俺の知るジェダイオーダーが情けなすぎて悲しいんです。
そんなわけでヴァローラム議員が「任せてください」と言って出て行ったのだが、自派閥の議員と共にジェダイオーダーに上から働きかけるつもりらしい。
…でもこれすごーく嫌な展開。ただでさえ終わってる俺の風聞がまた一段と暴落しそうな予感がする。「あいつ元老院議員に尻尾振ってるぞ!」って。でも手伝ってもらわないと除名の可能性もあってジェダイ人生詰みそうな状況だし。
クソッ、俺だって隠れて同い年の美人ジェダイと恋愛とかしたいんだけど。普通に同年代の連中は隠れてイチャラブしてやがんのによ…!
なんで俺はジェダイなのに、楽しくダークサイド研究しながら政治闘争に巻き込まれて除名の危機に瀕しているのでしょうか…!本当にネット掲示板にあった平和の守護者(笑)になっちゃうよ俺。
しかもこれキッカケが辺境における公権力と犯罪組織の癒着、ならびに非合法な奴隷市場に売り飛ばされかけてた民間人の救助を発端としてるからな。字に起こすと最悪なんだわ。
調子に乗ってR3にシンジケートの記録を全て記憶させたのが間違いだったかもしれない。流石にあんな爆弾が眠ってるなんて思わんじゃないですか…。
でもやっぱ奴隷助けた結果がこれはクソですわ。滅べ共和国。生まれ変われジェダイオーダー。
◇
「て、
「ふむ…。分かった、今回はお前の援護に回ろう」
マスターと分かれた俺が向かったのは、マスターサイフォ=ディアスのところだった。正直ダークサイド研究について密告されるとは思っていないが、それでも今回の件についての詳細と援護の要請をする必要はあった。
マスターサイフォ=ディアスも思うところがあったのか、考え込んだ後に援護の約束をしてくれた。
これでダークサイド研究に絡むジェダイ評議員2人の支援を取り付けたわけだ。…この流れでマスターコスタナも評議員なら都合良かったんだけどなぁ。
「時にモルガン、お前は現状の共和国の軍備についてどう思う」
「軍備ですか?アウター・リムの治安を維持するための武力は足りていないと思いますが…」
「お前もそう思うか。私もジェダイと僅かな司法軍のみでは、この広大な共和国の銀河を防衛するのは不可能だと思っている」
「それはまぁ、そうですね」
「…これを機に、私は軍備の拡張を唱えようと思っている」
「はい?」
「今回の発端となった海賊の民間人拉致、そして海賊によるハイパースペースの占領。これらの問題は辺境域を維持する軍備の不足に起因する問題だと思っている」
そこから止まることなく持論を展開し始めるマスターサイフォ=ディアス。
「現状共和国がアウター・リムの星系の軍備拡張を牽制しているのは、その辺境が拡張した軍備に対抗するだけの戦力を、現状の中央政府が持ちあわせていない事も大きく影響していると思う」
「だからこそ新たな精鋭の軍を増設し、同時にジェダイも送れば確固たる戦力となるだろう。だが通常の指揮官が兵士を使えば、数億人の軍を擁しても完全に足りることはないだろう」
「だからこそ我々は数と質の問題を解決する方法を探さなくてはならない。大量の優秀な兵士を確保する方法を。」
「だからモルガン。今回は当事者の君だから伝えたが、この事はまだ内密にしておいて欲しい。いいね?」
「共和国には、軍隊が必要なんだ。…そして、ジェダイにも」
…喋る隙が、ありませんでした。
でも同意はしますよ、マスターサイフォ=ディアス。ジェダイに軍隊が必要なのかは知りませんけど。