ジェダイの掟ですか?そこに無ければ無いですね 作:モー=サン
感想、誤字報告ありがとうございます。
実はずっと悩んでいる事が一点あります。マスターコスタナの名前をレーネで表記すべきか、リーンで表記すべきか。最近はレーネ派に傾いているのですが、皆さんはどう思いますか?
「ジェダイの力は蹂躙するためのものではない。今回、モルガン・ル・フェの独断専行はジェダイオーダーの存在意義に大きな危機をもたらしている。これを赦してしまえば、今後似たような事をしでかす者が続きかねないぞ」
「やるにしても、慎重に事にあたらねばならなんだ。あやつは自分の力を過信し過ぎているぞ…。その傲りは非常に危険だ」
「自分の立場への自覚が足りていない」
「…だが数百人の奴隷が、そして原因が共和国の軍備の無力さにあるのも事実ぞ?」
「そうだ、やり方に多少の問題はあったかもしれない。だがそこは若いが故の過ちだ。今後は我々が指導し規律面などを伸ばしていけばいいのでは?ここで罰すれば共和国民を救ったことが悪になってしまう」
「なればこそ評議会に相談するべきだったのでは?」
「そうだ。この件は一介のナイトの領分を遥かに凌駕している」
「…ですが証言によると、彼は海賊に包囲された時に奴隷の存在に気付いたとあります。果たして彼に評議会と連絡をとる余裕はあったのでしょうか?」
「最悪、彼は目の前の奴隷を無視するべきだった。先に評議会に連絡し、然るべき人員を派遣して対処するべきだったのだ」
「一人で対処するのではなく、応援を呼んで確実に対処すべきだった。結果的に上手くいったが、次もこうとは限らんぞ?」
「然り。今回は上手くいったが、これに味をしめられても、他の者が真似をして困るのは我々だ」
「…彼がその間に殺害されていた可能性もあります」
「無責任に聞こえるかもしれんが、それはありえんだろう。海賊は件のナイトを奴隷にしようとしていたのだ。奴の力量なら奴隷となっても自力で評議会に連絡する事が出来ただろうさ。彼にその程度の実力がないとは言えんだろう」
「過剰評価では?彼はまだ16歳ですよ?」
「持論だが、強さに年齢は関係ない。彼からはフォースとの強い繋がりを感じるし、現に彼は単独で当該シンジケートを相手に大立ち回りを演じておるではないか」
「失礼を承知で言う。マスターヤドル、彼があなたの弟子の子供だから過剰に庇い立てようとしているのではないか?」
「私が私情に流されているとでも?」
「…いいや。だが件のナイトには、結果論だとしても何かしらの罰を下す必要があると私は判断している。たとえ、それが除名であってもだ」
どうも、こんちにはこんばんは。わたくしは今眼前で繰り返される評議員同士の言い合いを無言で眺めてます。ちなみに任意の発言権はありません。ハイ。
俺に喋る権利がないってマジですか?いる意味あります?もう評議員の気分次第で終わりじゃないですか…なんて思っていたが、予想以上に俺の擁護をしてくれる評議員がいた。
マスターヤドルと、マスターオポー・ランシセスの師弟。そしてマスターヤレアル・プーフの3人が比較的俺の擁護をしてくれている。ここにマスタードゥークーとマスターサイフォ=ディアスを加えた5人が俺の擁護派だ。
そして俺を糾弾するのが4名、マスターヨーダを含む3名が沈黙を守っている。
かれこれ3時間くらい議論が堂々巡りをしているのだが、元老院議員の圧力もあって早々に決着が付くことはなさそうだ。ヴァローラム議員との取り決めもあり、俺がこの場で証拠を全て提示するわけにもいかないし…。そもそも発言権ないけど。
だから発言を許されても、特に何か有効な言い訳が出来ない。本当にフォースに従って誘導に従ったら、その先に奴隷にされた人々がいたとしか言えない。そもそも証拠があっても、それは結果だから独断先行が赦されたかは不明だけど。
でも奴隷見捨てろって面と向かって言うってマジ?概ね正論で殴られてるから余計頭にくるんですけど…。
そのように辟易とし始めた時、マスターヤドルに関する爆弾が投下された。俺が彼女の弟子の息子?初耳もいいところなのだが?
というかそれが事実な場合、同じく彼女の弟子であるマスターオポー・ランシセスも父の兄弟弟子ということになる。父が師匠の一人である俺にとっては、ある意味では大師匠と伯父弟子になるわけだ。
…今までの議論の内容が消し飛ぶほどの衝撃である。
二人もモリクロを使えたりするのだろうか。使える場合はアドバイスとか欲しいなぁ、なんて。その前にここを生きて切り抜けないとダメなんだけど。
どうしよう。俺全く挨拶とかしてないんだけど?二人とも今日が初対面に近いかもしれない。なんなら今でも喋ったことすらないし。
除名の危機などの問題を忘れ、俺の頭の中はモリクロの技術の発展の可能性で占められる事になった。
◇
とある資産家は焦っていた。趣味の狩りに使う獲物の仕入れ先が潰され、自分の購入履歴も押収された可能性が非常に高い。このまま自分の奴隷売買の証拠が白日の下に晒されれば、資産の凍結と投獄は間違いない。
せっかくここまでのし上がったというのに、あの程度の問題で全てが水の泡になるなど耐えられなかった。
聞けば、押収したのは若いジェダイらしい。であれば、口を封じる事も出来るやもしれない…。
そう考えた彼は、自分の言いなりになっているジェダイ評議員に連絡をとった。
目的は件のジェダイの除名と殺害、そして証拠の破壊だ。
高齢の長命種の姿が、ジェダイ評議員のホロクロンに映し出される。
審問の数日前の出来事であった。
彼のような例が多く確認されたことが、共和国の現状を雄弁に語っているだろう。
そして、それをみてほくそ笑む影がふたつ。
◇
「…全く。父親に似て衝動的に動く所は欠点ですね」
所変わってジェダイ・テンプルの一室。結局審問の結果は出ることなく、翌日への持ち越しが決まった。
今はマスターヤドルに呼ばれ、2人で向かい合って話す機会を得ていた。
「マスターヤドルが父のマスターだったなんて知りませんでした」
「彼は自らオーダーを去りましたからね。恐らく過去のことは話したくなかったのでしょう」
そう言って理解を示すマスターヤドル。俺としてはマスタードゥークーに姉弟の引き取りを呼んだ時点で早急に伝えて欲しかったんですけどね。
「審問の際は、ありがとうございます」
「いいえ、元はといえば現地の司法軍の責任です。あなたが気に病むことはありません。ですが少々踏み込みすぎましたね」
「…はい。まさかあそこまで大事になるとは思わず」
「アウター・リム・テリトリーは中央の監視の目がほぼ行き届いていません。必然的に不正の温床になるのも、想像に難くないでしょう…。嘆かわしいことです」
遠い目をしたマスターヤドル。彼女が一体どこまで今回の件を把握しているのか、今の俺には分からない。そもそも審問ではこの件の前提条件の確認すら行われなかったし、問題の争点すらコロコロ変わっていく始末。
果てには議論には明確な情報として出てないはずの「元老院議員の不正」と、それに伴うアウター・リムの独立運動を示唆するような主張をする評議員もいた。
そもそも今回の件、表向きには「犯罪組織を勝手に摘発したジェダイ・ナイト」くらいの情報しか出ていない。司法軍の癒着の証拠、そして資産家や元老院議員の奴隷売買などの取引関係については一切情報が出ていない。
先程のマスターヤドルの言葉を見ると、彼女は司法軍の癒着を確信している様子はある。だが実際には司法軍に癒着の可能性があることは示唆されているが、評議会で明確な証拠が提示されていないので、その点は今回議論の的にはなっていない。
それなのにも関わらず、4人の評議員が俺の除名を声高らかに叫んでいるわけだ。正確には2人が強硬に除名を主張し、2人がそれに同意を示している形だが。
この情報しか無い状況下で、俺に対する処分が謹慎や降格ではなく除名なのがわけがわからない。そもそも今回は殺さずモリクロで衰弱させただけだし、1週間もすれば治るような対処をした。無闇に使うなと言われれば、その通りですとしか言えないが。
だが現状はまるで無抵抗の人間を殺害したかのような非難の嵐。果てには目の前にいた民間人を見捨てるべきだとか言われるし、件の評議員はどれだけ必死なんだろうか…。タチが悪いのは、除名を除けば主張自体は概ね真っ当なところだろう。
あれを真似してしくじるジェダイは絶対にいるし、変に影響されて犯罪組織に特攻するバカが出て来ても困る。俺も真正面から突っ込めば普通に死にかねない。非常に正論だし、俺も頷かざるを得ない。やったの俺なんだけど。
だからこそ理論武装をしているはずの彼らが、強硬に除名を主張する理由がわからない。罰の内容が除名以外なら、マスターヤドルなんかも擁護の余地も少なかったと思うんだが。
もうヤダよジェダイオーダー。マスターヨーダも無言で目瞑ってるだけだし…。絶対評議員からの圧力と工作に屈してるやついるし。無言の連中も日和見みたいで腹立ってきたわ。
◇
ダース・プレイガスは非常に機嫌がよかった。
影響下にある元老院議員が泣きついて来たことで今回の件を把握した彼は、新たな弟子候補を発見することに成功した。それはモルガン・ル・フェ。隠しきれないダークサイドの気配を漂わせた、未熟でありながらも強力な力を有したジェダイだ。シスであるからこそ分かる、彼とダークサイドの密接な繋がり。
二人の掟など眼中にないプレイガスにとって、モルガンの存在は非常に喜ばしい発見であった。次の弟子として彼を迎えれば、間違いなくシス帝国の復権と発展は約束される。確証はないが、長年培った経験と勘がそう告げていた。
実際にモルガンには過去視があるわけなので、彼の持つシスの情報と組み合わせれば、不死となるための方策だって見つけられる可能性もあるだろう。…手段を選ばなければ。
図らずして人生の本懐を遂げるピースを見つけたプレイガスだったが、まだその事実を理解出来てはいなかった。
今はまだ観察の時期であり、プレイガスの方から動くつもりはない。勘は彼の暗黒卿への道を奨めていても、慎重なプレイガスがそのまま流されることはなかった。
だから彼はモルガンの周囲に目を向けることにした。
行方不明な元ジェダイの父、詳細が一切不明な母、改革派のマスター、有望なジェダイの姉…。更に調べれば付け入る隙も、影響を与えることだって容易になる突破口を発見できるかもしれない。だからまずは彼を識るフェーズである。
銀河屈指の資産家でもある彼は、既に共和国の各所を影響下においていた。その中には間接的にジェダイオーダーも含まれ、その根絶とシス帝国の復権、不老不死などなど。彼の目的のために様々な人間と組織が知らぬ間に利用されていた。
そんな暗黒面の妖怪は次の駒を見つけたわけだ。その能力とポテンシャルを思えば、シスにとってそれはまさに福音に思えた。
◇
結局俺に対する審問は、除名派の評議員の態度の急変によって処分なしでの終幕を迎えた。翌日になると、昨日まで強硬だった評議員達は、まるで厳し過ぎましたと言わんばかりに、俺の状況に同情できる点がある事と、自分達の問題視する主張が今後の俺の民衆に対する姿勢を変えてしまうのは良くないと詫びて来た。だが同時に、今回の件で箝口令を出し、模倣犯の出現の是正を強く求められた。
件の奴隷売買に関わった議員も該当者の内9名は自殺、7名が病気を理由に議員を辞任、6名が詳細は不明だが急な変死を遂げた。これには流石のヴァローラム議員も困ったらしく、敵対派閥を追い落とすための攻撃手段が消えることになってしまった。
だが議員達の急な引退や訃報は大きくは話題にならなかった。代わりに有名なプロスポーツクラブの会長の不正と、タイトル剥奪の可能性が世間の注目を集めた。報道機関もコルサントにいる数千億人のファンの注目を集めるため、連日この件を全面に打ち出して報じた。自殺した議員も「共和国への不忠」を詫びるとして自害したとの遺書が発見された。またヴァローラム議員の属する党の党首、スコー・カルパナ氏から今回の件を公表する事を全力で止められたらしい。おかげで何も表に出る事なく、ただ議員が入れ替わるだけで今回の件は終わった。
気持ちの悪い終わり方をしたが、今は自分の身の潔白を喜ぼうと思う。大師匠の存在など予想外の収穫もあったし。
ただ除名派の評議員や、その周囲のジェダイの動向を注視する必要ができてしまった。ぶっちゃけ、非常にめんどくさい。
◇
あの日以降、評議会に出席するマスターの顔には苦難の色が浮かんでいた。どんどん疲弊していく姿には、たまに顔を見せるクワイ=ガンまでもが心配をするようになっていた。
そんな日々が続き、ついにマスタードゥークーはジェダイ評議員を辞任した。審問から僅か数ヶ月後の出来事だったが、熟慮した結果なので何も言えなかった。完全に嫌気がさしてしまったらしい。マスターは今回の件で癒着の証拠などについても把握しているため、事態が急変した裏に誰かの影響力を感じていた。
それはジェダイ評議会にまで影響力を持ち、今回は少なくとも3分の1がそれに同調していた。この事実はマスターの最後の希望を打ち消してしまった。またマスターヨーダの傍観するような姿勢も、マスターにとってはジェダイの堕落を象徴する出来事だと感じてしまったようだ。
ジェダイオーダーの最高幹部と呼ぶべき最高議会の評議員。その3分の1が誰かの影響下にあるという事は、その下には更に大量のジェダイが同じような立場にいる可能性がある。
改革派が非常に少ない中、そんな相当数のジェダイを抱えた状況では、マスターの望むようなジェダイの改革は不可能だと語られてしまった。自分がマスターの最後の希望を消すきっかけを作ってしまった事実は、俺の肩に重くのしかかる。
この事はマスターの親友であるマスターサイフォ=ディアスや、もう一人の師とも言えるマスターコスタナ、そして愛弟子のクワイ=ガンにも内密になっている。ある意味互いの致命傷を握っている者同士、今後の身の振り方についても考える事になった。
あの日からマスターのダークサイド研究は苛烈さを増し、俺の不在下でも関係なく研究を推し進めるようになっていった。師弟関係には今も一切問題はないが、以前とは少し何かが変わってしまったと感じている。あれからマスターは熱心に共和国体制の限界について語り、研究するようになっていった。
多分、研究が進めば主張する側に回るんだろうな、なんて考えている。その先については、今は考えたくない。
マスターコスタナは、マスタードゥークーの心を心配する機会が増えた。今も共にダークサイド研究を行うが、評議員を辞めて以降の研究への没頭ぶりはこっちでも心配になるほど。マスターを子供の頃から知っているマスターコスタナであれば、尚更心配するだろう。だから俺にもよく支えてやって欲しいとお願いされた。
マスターサイフォ=ディアスとは軍拡の方法について話し合うようになった。だが公的な軍の拡張が望めない中、どの様にして大規模な軍隊を設立出来るか。残念ながらこの点を解決する画期的な案が浮かぶことはなかった。
そしてマスターサイフォ=ディアスは何か焦っており、二人での話し合いの際には、性急な軍備の拡張が必要だと頻りに主張するようになっていった。流石に現実的ではないため諫めているが、代わりに企業の私設部隊を装ってアウター・リムに軍事組織を作る事を提案した。
この軍事組織を使ってアウター・リムの特定領域で治安維持が出来れば…。そう思って提案したが、そこまで心を動かせなかったらしかった。ただ打開案がないのも事実なので、エウロピアなどを中心に候補地を探すところから始めることになった。
あの事件以降、周囲が明確にきな臭くなったのを感じる。最近はすっかり賞金稼ぎに命を狙われることも増えたし。
だから俺はエウロピアの無人惑星に引き籠るようになった。ここで研究を進めながらも、マスター達がいないときは一人で考える時間が増えていた。最近はここを私設軍の活動拠点に据えることも考えているが、そこは惑星の所持者であるエウロピア王家の許しを得ないと不可能だろう。
いっそのこと、エウロペを説得して治安維持組織の設立だと言ってみるか?向こうも公的な軍部拡張ができない中、司法軍の無力さもあって困り果てているわけだし。エウロピアの国有企業の私設部隊として立ち上げれば、国王陛下も納得してくれるかもしれない。
だがそれは、共和国のための軍隊なんだろうか?
…いや、今の俺は共和国の前にエウロピアの治安のことを考えるべきだろう。自分の精神衛生上、今は共和国全体よりも故郷のことを考えたい。いつか共和国やジェダイの現状についても考える必要があるが、自分の頭の中を整理するためにもエウロピアを優先する。
今後の活動の道筋が見えたことで、少しだけ頭が軽くなった。
俺はアストロメク・ドロイドの二人を連れ、そのままエウロピア・シティに向けて飛んだ。数ヶ月ぶりのエウロピアだ。
ここから、全てを始めようと思う。