ジェダイの掟ですか?そこに無ければ無いですね   作:モー=サン

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誤字報告、感想、評価、ここすきありがとうございます。

お恥ずかしながらここすきの集計結果を確認できる事を把握しておらず、先日発見しました。予想していたよりもたくさんのここすきがありまして、思わぬところから喜びをいただきました。改めて、ありがとうございます。


7話

 

 

 

コマリ・ヴォサを迎え入れたマスターは、俺が見たことがないくらい穏やかになった。そのくせして思想はどんどん鋭利になっているのだから、人は見かけによらない。

 

いつぞやのブレンダンくんに言った言葉が思い出される。本当にジェダイ、そして人は見た目に依らないなぁ…。

 

あんな和やか爺さんがダークサイド研究と民族自決による共和国の縮小を願ってるとか、今のジェダイオーダーで信じる人間は誰一人としていないだろう。信じるとしたら異端組の3人*1と兄弟子のラエルぐらいだろう。

 

その4人であっても、あそこまで具体的な共和国の体制についての明確な思想を持っているとは思わないだろう。

 

そしてコマリ・ヴォサ、彼女については普通に容赦なくボコボコにしている。

 

初めは俺のことを少々侮っていたのか、慢心を見抜いたマスターからはテレキネシスとモリクロを使えと言われた。

 

そう、容赦なく実戦形式でボコボコにするように言われた。どうやら彼女は思った以上にマスターに思い入れがあるらしく、この程度での仕打ちでは折れることはなさそうだった。

 

マスターもその想いを利用するつもりのようで、幼い頃から理不尽な戦い方と痛みに対する徹底的な耐性を身に着けさせるつもりらしい。大丈夫?これ修行の過程でダークサイドに逃げない?ジェダイの育成とは程遠いんだけど。

 

流石にモリクロを使い過ぎると衰弱死されてしまうので、体の動きが多少鈍る程度に抑えてはいる。それでも簡単にテレキネシスで体の制御を奪えるのだから、モリクロの凶悪さがよく分かる。

 

間もなくマスターは中断を宣言。コマリ・ヴォサの側に駆け寄ると、少々厳しい言葉をかけ始めた。要約すると実戦ではこのような理不尽が四方から襲ってくるため、どんな相手であっても慢心を捨て去れとの叱責が飛んだ。

 

内容は非常に真っ当なのだが、一歩も動く間もなく理不尽に抑え込まれた彼女にはキツイと思う。そして、コマリ・ヴォサから俺への視線の色は大きく変化した。

 

だが流石のマスターも鬼畜ではないらしく、一度目にライトセーバーを用いる暇がない惨敗を経験させるに留めた。以降はライトセーバーや戦闘中に無手でフォースを操るための修行を開始したが、基礎的なものは俺がいない時にやっているらしいので、とにかく実践形式の擬似戦闘が続いた。

 

彼女の才覚はマスターが言っていた通りで、経験を積み重ねる度に伸びていった。流石に毎回テレキネシスで拘束していたら実践の意味がないので、今は妨害を中心にテレキネシスを行使している。彼女の足場をそのまま動かしてバランスを崩させるとか。

 

だが彼女が弱音を吐くことはなく、滞在していた3週間の間に明確な成長を感じるほどだった。マスターはこの成長がお気に召したらしく、ご機嫌でコマリ・ヴォサのことを褒め称えていた。彼女も満更ではないようで、素直にマスターの褒め言葉を受け取って笑顔を見せている。

 

ん?その間に俺は何をしてるか?R2-E2に「同年代に容赦ないね」って言われて普通に喧嘩してるよ。こいつ、俺がちょっと改造してから生意気になったんだよな。家族で旅をしていた頃からの相棒なのだが、メモリを一度も消していないためか自我が強くなって来た。たまに腹が立つほどクソ生意気な野郎である。ちなみにR3-B6は会社で待機してる。あいつもアストロメクのリーダー格として、向こうも別のベクトルで調子に乗ってるんだよな。

 

そんなわけで師弟3人での無人惑星での修行は一旦終わりを迎えた。俺も二人もそれぞれ別にやることがあるしな。あと妹弟子からコマリと呼べと言われたので、以降はお願いされた通りに呼ぼうと思う。

 

 

 

 

 

 

ポング・クレルには気に入らない女がいた。かつて同じクランに属していた、コマリ・ヴォサ。生来気性が荒い両者は、イニシエイト時代は互いに競うように訓練に没頭していた。

 

ここまでは同年代のライバルでしかなかったが、彼が明確に彼女を邪魔に思うようになったきっかけがあった。それはパダワンになる際に起こったことだった。クレルは武力の申し子だ。恵まれた体格と四本の腕を持ち、実践においては無類の強さを獲得するだけのポテンシャルを有している。

 

それでいて当時は自分を律する心を持っていたため、コマリ・ヴォサと比べて危険視される事もなく、非常に将来を渇望された少年だった。そんな力に呑まれない彼が望んだのは、マスタードゥークーに師事することだった。

 

現在のジェダイ・オーダー内で最も優れたジェダイの戦士の一人であり、多くの優れたジェダイを育て上げた手腕は高く評価されていた。彼の弟子の3人が現代の価値観では異端なジェダイに育ったのも、幼いクレルの心を揺さぶる大きな要因だったと言える。高潔で理想を掲げることを恐れず、常に次代のジェダイと共和国を憂うような言葉は彼の心を強く突き動かし、次第に彼の憧れにまで駆け上ることに。

 

そんな彼に選ばれるため、自身の傲慢さを律したクレル。だが皮肉なことに、ドゥークーが選んだのは精神面で未熟なコマリ・ヴォサだった。目の前で選ばれた同期。あの瞬間は彼の人生に永遠に刻まれるだろう。彼の懸命な努力が否定されてしまった瞬間だった。

 

だがポング・クレルは折れなかった。彼は誓ったのだ。自分はいつかドゥークーが欲するほどの戦士になってみせる、と。

 

その日以降、クレルは仮面を被った。その気性の荒さと傲慢さをひた隠し、ただ貪欲に技と力を求め、理想のジェダイのように振る舞った。あの高潔なジェダイに並び、いつか後継者のように側に控えられることを願って。

 

 

 

 

 

 

例の馬鹿馬鹿しい審問以降、俺の交友関係はわずかに広がっていた。

 

その最もな例が伯父弟子のマスターオポー・ランシセスだろう。以降はマスターランシセスと呼ぼうと思う。彼とはモリクロの修行なども含め、審問以降は頻繁に連絡を取り合うようになっていた。

 

この人は保守派の評議員なのだが、保守派は保守派でも、ハイ・リパブリックと呼ばれた数百年前のジェダイ基準の保守派である。そのため今のジェダイ評議会の進む元老院の下部組織という道を嫌っている人物でもあり、軍隊を創設してジェダイに軍権を持たせるべきだとかを内々に主張しているヤバい人である。

 

ジェダイ直属の軍備があれば、元老院の横暴にも抵抗できると考えているらしい。だから珍しい毛色の軍拡論者だが、評議会で主張しても追放が待っているだけってことで主張はしてらっしゃらない。

 

さて、なぜ俺がそんなマスターランシセス主張を知っているのか。いつそんなことを知ったのか?ご想像の通り、全てのきっかけは審問である。

 

あの後マスターサイフォ=ディアスの軍備拡張を共有された後、お礼も兼ねて高明な戦術家として有名なマスターランシセスを訪ねたわけだ。その時に辺境の治安維持のために軍隊が必要だと、俺の持論という体で相談をしたのだ。その結果がさっきの話に繋がったわけだ。

 

以降定期的に集まって話し合いを行なっている。今日はそんなマスターランシセスに呼ばれ、久しぶりにコルサントに来ていた。

 

「久しいな、モルガン。今日はお主に会ってやって欲しい者がいての」

 

蛇のような長い下半身を引きずりながら、俺の側に寄ってくるマスターランシセス。挨拶もそこそこに早速本題から始まった。

 

「会って欲しい人ですか。ジェダイですか?」

 

「元ジェダイ、とでも呼ぶべきかもしれんな」

 

「なるほど?」

 

そう言いながらも突き進むのはジェダイ・テンプルの廊下。周囲の視線を集めながら数分歩いた末に到着したのは、テンプル内に存在する研究所の一つだった。

 

「レオ、ワシじゃ。入るぞ?」

 

「あれ?久しぶりだね、マスター」

 

中に入ると、そこには一人の少女がいた。年の頃はコマリと同年代くらいだろうか?

 

「紹介しよう、弟子のレオナルド・ダ・ヴィンチだ」

 

「どうも、ダ・ヴィンチちゃんだよ。しがない元ジェダイのパダワンさ!」

 

「初めまして、モルガン・ル・フェだ。よろしく」

 

そのまま少女と握手をかわすと、彼女は俺の周囲をまわって観察し始めた。

 

「マスター、この人が前に除名騒動になった人?」

 

「そうだ。今はすべて解決したがな」

 

「除名騒動?」

 

「知らないのかい?パダワンやナイトの間では結構話題になってたよ。奴隷にされた共和国民を助けたのに除名するべきなのかって」

 

全くの初耳なんだが。そもそもジェダイ・テンプルが苦手で避けていたのに、そこで流れている噂や話題を把握できるわけもないか…。ここにくる途中に感じた視線も、もしかすると騒動に起因する話が原因だったのかもしれないな。

 

「初耳だな。全く知らなかったよ」

 

「そうなんだ?まぁ、確かにテンプルで見かける印象はないしね」

 

「モルガン、お前さんは少々有名人になっておるぞ。最年少でのナイト叙任で知名度はあったが、あの審問を機に今も議論の的じゃ」

 

これは、喜ぶべきなんだろうか?

 

「話が逸れたな。今日お主らを引き合わせたのは、2人がよき協力者になれると思ったからじゃ」

 

「協力者?」

 

「左様。そこのダ・ヴィンチは変わり者でな?自身の好奇心に従って、研究を進めるためにジェダイを辞めるような輩でのぉ」

 

「なんだい?マスターだって好きにすればいいって言ったじゃないか」

 

「まぁ、今更言っても変わらん…」

 

「それで、協力者ってのはどういうことです?」

 

「此奴は多才なのだが、少々金使いが荒くてな。パトロンがいないと首が回らんのじゃ」

 

「え、彼が前に言ってたパトロン候補?そんなぁ、ジェダイだとお金持ってないじゃないか!」

 

「やかましい!だから此奴がお主に協力する代わりに、少し研究資金の援助をしてもらえれば…と考えたわけだ。以前に話していた構想には、此奴はうってつけの人材じゃしの」

 

そのままダ・ヴィンチさんの前で彼女の紹介を連連と続けていくマスターランシセス。途中までは不満そうにしていたダ・ヴィンチさんも、次第にマスターの態度をみて静かになった。

 

とりあえず、彼女が俺にとって一番欲しい人材の一角であることはよくわかった。

 

だが一番の問題がある。さっきダ・ヴィンチさんも言ったとおり、普通のジェダイはお金なんて大して持っていない。それなのに研究の資金を俺が払えると思われてるのは何故なんだろうか?

 

「それで、どうかの?」

 

「一点だけ確認したいのですが、俺はどこから研究の資金を捻出すれば?」

 

「おっと…。すまないモルガン、まずお主に謝るべきことがあったのを失念していた…。」

 

「謝るべきこと?」

 

「実はな、私の友人に賭け事が好きな輩がおるのじゃがな?彼がとんでもない実力の相手がいると言っていたのだが、其奴がフォースなどを使って不正をしていないか確かめて欲しいとお願いを受けたことがあるんじゃよ」

 

…なるほど。

 

「まさか対戦相手がお主だとは思わなんでな…。ああ、不正がないことは証明してあるから安心してくれ。」

 

「…まさかバレているとは思いませんでした」

 

「ああ、だから勝手ながら多少の財産はあるんじゃないかと思ってな。以前話していた構想を実現させる場合、此奴は大いに助けになるだろうと思い先走ってしもうたわ…。すまないな、モルガン」

 

「…いえ、自分の未熟さが原因なので。ですが俺をパトロンに推す理由は分かりました」

 

「ではモルガン、受けてもらえるか?だ」

 

「その前にダ・ヴィンチさんと2人で話をする時間を頂いても?」

 

「私と?」

 

「当然じゃな。では話が終わった時に連絡をくれ」

 

「はい、ありがとうございます」

 

そのまま研究室から出ていくマスターランシセス。室内には俺とダ・ヴィンチさん、そして起動されていないドロイド数体だけが残った。

 

「それで、私に話ってなんだい?」

 

「元はジェダイのパダワンだったんですよね」

 

「そうだね。辞めた理由でも聞きたいのかい?」

 

「それもありますが、何に辞めるほどに好奇心を突き動かされたのか気になって」

 

「潔癖なジェダイでは、私の知りたい事は知れなかったってだけだよ。何をするにも戒律がうるさいからね。だから優先順位の高い自分の好奇心を優先したってだけだよ」

 

 

 

 

 

 

ダ・ヴィンチさんとはあれから2時間程二人で話し込み、その日は一旦解散した。

 

それから彼女と個人的に親交を深めるため、暇がある時にコルサントの研究室に通うようにした。数ヶ月ほど時間がかかったが、最終的には彼女は信頼できる相手だと判断した。これまで自分の関わった中でも相当独特なジェダイ関係者だったが、その考え方は個人的には非常に好ましいものだと思った。

 

彼女には今度改めて潤沢な資金を提供するには時間がかかってしまうと正直に伝えようと思う。ただ過去視を交渉に出せば、彼女の関心を買えるのではないかと考えている。俺の過去視を用いた共同の研究・開発を持ちかけ、会社が軌道に乗って資金提供をする余裕が出来るまでの稼ぎたい。

 

可能であれば二人で過去のテクノロジーの再現などを行いたいが、それにはテレパシーで過去視を映像化する必要がある。今のところはマスタードゥークーとしかやってこなかったので、他のフォース・ユーザーでも可能か試すいい機会にもなると思う。

 

あとは周辺がキナ臭いため、彼女が協力者になった場合はフォース・ユーザーとしての訓練を再開してもらえたらなぁ、とも思っている。元パダワンであるため最低限の護身は可能だと思うが、それでも実力が未知数な部分も含めて少々怖くはある。せっかくの協力者なのだから、つまらないことで亡くなられても困る。

 

今はまだ互いの事を探り合っている状態のため、具体的な協力関係の構築には至っていない。だが向こうも少なからず俺の話に関心があるようなので、このまま持っている手札でも十分引き込むことは可能だと思う。

 

個人的に彼女が相手であれば会社の本来の目的であるエウロピア星系の治安維持と、その延長線上にある軍拡関係の話もしていいのではないかと思っている。マスターランシセスからダ・ヴィンチさんに軍関係の話が流れていないのは確認済みなので、今後協力関係が結べたらタイミングを見て切り出してみるのも手だ。

 

というか打ち明けないと開発を行う際にややこしいので、ある意味話さないって選択肢はないんだが…。全てを打ち明けて身内に引き込む程信頼できるのか、そこの見極めにかなり時間がかかった。

 

マスターランシセスにも好きにしていいとのお墨付きをもらっているので、今後はダ・ヴィンチさんと研究や開発祭りの日々を送れたらなぁって思っている。今までは初老の爺さんとラボ籠りだったので、あんな美人と研究できるってだけでモチベーションが上がる。

 

動機が不純?俺は17になのにまともな異性との関わりが妹弟子だけなんだぞ。せっかく連絡先を交換しても忙しくて会いにいく暇もないし。その点、同じ空間で一緒に研究出来る機会がどれだけ尊いか…。君達には理解できるかね?

 

彼女をこっち側に抱き込むのは、色んな意味で最優先事項になったんだよ。

 

これで彼女が過去視に関心を向けず振られた場合、俺は大人しくカリス*2さんに連絡して泣きつくわ。そのためだけに休みを取る自信だってある。それだけ重要なんだよ。

 

そんなわけで、今日もコルサントに向かうとするか…。

 

そういえばあの人ってジェダイ農業団研究所にも籍があるらしいが、何かの間違いでそっちからも人を抜けないかな…?無人惑星で農耕が可能な土地があるから、そこで食糧の生産とかやりたいんだよなぁ。

 

 

 

 

 

 

ジェダイオーダーにまた一人、フォース感応者の子供が連れてこられた。未だ幼児である彼女は、ジェダイ・ナイトの腕の中で巨大なジェダイ・テンプルを見上げた。

 

この幼児には一つの目的があった。あの日のジェダイを見つけ、彼の弟子になること。それが彼女がジェダイオーダーに来た理由だった。未来視を駆使し、意図的にジェダイに発見されるように仕向けた末に到着したコルサント。

 

ついにあの日のジェダイに会える!そんな希望を胸に抱き、彼女はテンプルに迎え入れられた。未来視や種族由来の特性で子供離れした自我と思考力を有する彼女は、直ぐにイニシエイト・トライアルに受かった。正式にクランに配属され、ジェダイ・イニシエイトとして訓練を積む日々。

 

その間にも彼女はテンプル内を歩き回り、件のジェダイの捜索を行った。

 

その人物の痕跡はすぐに見つかった。自分が助けられた例の海賊騒動に関係する問題があり、どうやら除名の一歩手前まで話が進んでいたとの噂を聞きつけた。

 

遂に見つけた!そう思ったのも束の間。件のジェダイは全くジェダイ・テンプルに滞在することがなかったのだ。そんな事を知らない彼女は、いくら探しても見つからない!どうして!

そんな癇癪を起こし、痺れを切らしてジェダイ・マスター質問した時だった。

 

彼が年に2日程しかジェダイ・テンプルに滞在しないと知ったのは。

 

子龍は生まれて初めて泣いた。

 

 

 

*1
レーネ・コスタナ、サイフォ=ディアス、クワイ=ガン・ジン

*2
3話の酒場のお姉さん





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