ジェダイの掟ですか?そこに無ければ無いですね 作:よくゑたる人
お待たせしました。これまで通り、主人公の名前を変えずに続けていくことを決めました。意見をくださった皆様、本当にありがとうございます
ダ・ヴィンチさんを引き込むためにコルサントへ向かう前、中型輸送船の貸し出しを行っているクライアントから問い合わせを受けた。内容は大型貨物船の貸し出しは予定しているか、というものだった。
昨今の辺境での治安悪化を受け、大企業は私設軍の増設を大きく推し進めている。俺達と契約するクライアントも取引先に増産の依頼を受けているらしいが、一時のコストカットのためにうちの船を使いたいとのことだった。
この事業を開始して数ヶ月、雇い入れた面々の信用もあって順調な滑り出しを見せている。資金的にも大型貨物船で出る利益のパーセンテージはこちらも欲しいので、EFCの面々と集まって話し合いを行った。
中型輸送船三隻で出た利益が二億クレジットなため、その倍以上の積載量を誇る大型輸送船で出る利益は計り知れないものだろう。
結果、全会一致で大型輸送船の購入が決定。一隻当たり98万クレジットであるため、とりあえず2隻を買い付ける。これで諸々の諸経費も含めて146万クレジットの赤字に足を突っ込んだが、件のクライアントは2隻分の追加発注を受けていたため問題はない。
またこの船を買うにあたって、うちが触る売上の割合が2%から2.5%に上がった。つまり上半期と同じように2億クレジットの売り上げがあった場合、うちの報酬は400万から500万に上がるわけだ。いきなり1.25倍の増収…!
合計5隻の輸送船の積荷の売り上げがMAXの13億クレジットまで膨らんだと仮定した場合、3250万クレジットがうちに入ってくる…!
護衛船団に関してもドロイドを増やした結果、運用可能な船が増えたことで安全性も増した。今は改造したCR90コルベットを中心に編成しているが、今回の取引拡大に伴い軍備の拡張も必要になるだろう。
以前から探していた退役軍人の方もグリーグや出向組の軍人達が審査をかけていたため、今は入社候補者が50人ほどいるとも聞いている。
当初はここから更に選別するべきだと考えていたが、この事業拡大に伴う人員の不足は深刻なので、50人全てを雇い入れる予定である。また事務員と技術者もそれぞれ10人ずつ、そしてアストロメク・ドロイドも15体増やした。
そろそろうちの船に関する情報も海賊に回るだろうし、護衛の船団を厚くするに越したことはない。実際に取引相手の話では、取引窓口関係の人間と海賊が繋がり、略奪した物資の利益を分け合っているなんて話を聞くこともある。
だから今後も追加でどんどん人を雇い入れていく予定だ。最終的な目標はエウロピア星系、そして宙域の治安維持組織の規模にまで拡大することだし。
◇
ネウィン・ル・フェはジェダイ・アーカイブに続く道を駆けていた。弟が面倒事に巻き込まれている間、素行のいい姉は特に問題なく修行の日々を重ねていた。
しかし彼女は曲がりなりにもスターウォーズのファンであった少女。その世界を生きているとなると、知的好奇心は無限に湧き続けていた。そのためコルサントにいる間は、常にジェダイ・アーカイブに入り浸って調べ物をする日々。
惑星カミーノの情報などにも目を通しているが、その関心の大部分は銀河市民の民俗史や市井の暮らし、農学に向けられていた。アウター・リムを含め不正と不況、そして埋まることのない格差社会と理不尽に絶望する市民。彼女はその惨状を、家族との旅の中で直接知っていた。
かつてはジェダイがその惨状を救えると希望を抱いていた彼女だったが、残念ながら具体的な進展はなかった。
気付けばジェダイそのものが直接救える民衆の数は限られている事を痛感し、同時に迫りくるシスの陰謀による惨劇を回避する手段を模索する日々。同輩の人々と直接触れ合ったことで情がわいた彼女は、日増しにジェダイ関係者の生存のために時間を使うようになっていく。
それでもジェダイとして、平和の守護者としてのあり方を追及しないわけにもいかない。彼女は自身のもうひとつの原点となった辺境域の惨状と、壊滅が約束されたオーダーの仲間たちの間で揺れ動いていた。
そんな時だった、彼女がジェダイ農業団の存在を明確に意識するようになったのは。当初はその存在も知らなかった彼女は、映画では語られない組織を発見しテンションが少し上がったりもした。
ジェダイ農業団とは、銀河の各地に渡り、その地に適した農作物の生産体制を構築する集団。
ジェダイ・オーダーに属するジェダイは現在1万人程だが、ジェダイになれるポテンシャルを持つフォース・ユーザーが1万人しかいないわけではない。
ジェダイ訓練生からパダワンになれなかった者の多くは、ジェダイ奉仕団と呼ばれる組織に参加することになっている。ここに入るのはジェダイになるには集中力に欠けると判断された者など、様々な理由でパダワンに選ばれなかった人々が集まってくる。
ある意味ではジェダイの落伍者の集まりと蔑む輩もいる。だがその本質でいえば、ジェダイ奉仕団の方が銀河市民の日常の生活に貢献しているといえるだろう。ジェダイ農業団も、そんな奉仕団に区分される組織のひとつである。
ネウィンの場合は直ぐにマスターが見つかったため意識する機会はなかったが、ここに来て彼らの道が一気に魅力的に感じるようになっていた。実際にパダワンやナイトになっても、ジェダイ奉仕団への移籍を志願する者は多くいる。
ジェダイの道に失望した者や、戦いを好まない者、より多くの人々のためになると考え移籍する者。動機は様々だが、ジェダイ内でも多くの尊敬を勝ち取っている組織がジェダイ奉仕団という組織だ。
その理念や活動について知ったネウィンは、ジェダイ・オーダー以外でフォースを用い、銀河市民に尽くす組織があることを初めて知った。
元々は平和な日本で生まれ育った少女。ここが好きな世界はいっても、それはあくまでフィクションとしてのお話。実際に生き抜くために努力を重ねていた彼女は、次第に心が擦り減っていた。
そこに加え、以前までは弟に対するシス関係の恐怖でストレスは更に強かった。その逆境を乗り越えてジェダイになったネウィンでも、流石に心の疲れが目立ち始めていた。
自分の理想とするジェダイの姿と、実際には辺境の市民に対して無力なジェダイ。その現状を変える手段も浮かばず、考えることから逃げるように修行に打ち込み、その傍らで打開するための知識を求めジェダイ・アーカイブに通っていた。
そんな折に出会ったのが、ジェダイ農業団だったわけだ。
◇
周りの子供達は、皆ジェダイを目指している。
この人のパダワンになりたいだとか、こんな事をやりたいだとか。そんなことを互いに披露し合っている。
僕は目的があってここに来た。でも、別にジェダイになりたい訳ではない。だからクランの子達との会話は、少し入りにくい。
それに、僕は自分がパダワンになれることを知っている。あの人と出会えれば、僕はパダワンにしてもらえるんだ。視たから知ってる。
でも、ひとつだけ辛いことがあるんだ。それは、いつマスターに出会えるのか分からないこと。僕が視たマスターは、途中まで全く容姿に変化がない。
だからあと何年ここで待てばいいのか、それが全くわからない。先が全て視えるのに、マスターの容姿のせいで時系列が特定できない。ずっと同じ場所に2人でいるだけなんだもの。
この点に関してだけは、僕はマスターを憎んでいるかもしれない。本当に勘弁してほしいよ、まったく。
◇
レオナルド・ダ・ヴィンチは少々…いや、かなりの変わり者である。
初めてみた時には、彼女が素晴らしい人物になるだろうと確信していた。だからこそ、自分の手で導ければと思いパダワンとしたのだ。
結果は散々なものだった。彼女は本来なら、モルガン・ル・フェと同時にジェダイ・ナイトになるはずだった逸材。儂の弟弟子の息子と、自分の弟子が同時に最年少のジェダイ・ナイトに…。
一瞬、そんな夢を見たこともあった。
だが、彼女はあっさりとジェダイを辞めた。どうやら儂の知らぬ間に、ジェダイ・テンプルの研究者達と繋がりを持っていたようだ。
以前から好奇心旺盛だった彼女は、ジェダイとしての道を究めることに関心を示さなかった。より正確には、関心はあっても最優先ではなかったともいうべきだろう。
そのまま彼女は儂にパダワンを辞めると告げ、翌日には手続きを済ませて転向となった。
正直、彼女の決断は今ならば理解できるものだ。だが当時の私にとっては、この先のジェダイの道を守るための変革者に据えられる人員の流出が何よりも痛かった。自分の指導が及ばなかったと考え、久しぶりに落ち込んだものだ。
だが時間が経つにつれ、自分の育てた弟子の性質を考えれば考えるほど、その道に進むのは明白だったといえる。ここで初めて、私は自分がジェダイの道のみに固執しすぎていた事に気が付いた。
王位を蹴ってまで続けたジェダイ。数百年の時を経て、どうやら自分は固まりつつあったらしい。
そう気付くと、自ずと考えに変化が訪れた。ジェダイはいつしか元老院との間に上下関係が確立されてしまい、その立場は平和の守護者から法の守護者に変わりつつある。
自分もそんな変調に深く関わっていた人間だった。
だからこそ、私は思うのだ。再びジェダイ・オーダーを独立した組織に戻さねばなるまい。共和国の政治に直接関わるのではなく、その暴走の抑止力と市民を守る平和の象徴とならねばなるまい。
故に儂は軍備拡張を願うのだ。
その点では、モルガンの思惑は非常にいいものだ。現代のジェダイにしては異端な彼であれば、ダ・ヴィンチとも打ち解けることができるだろう。
その二人が協力すれば、きっとジェダイの道は拓かれるだろう。儂はそう信じている。
◇
コマリ・ヴォサの朝は早い。ジェダイ・マスターのドゥークーの新たなパダワンである彼女は、マスターの期待を裏切らないために修行に没頭していた。一度は途絶えたかと思ったジェダイの道も、ドゥークーのおかげで繋げることが出来た。
幼少期からジェダイ・テンプルの中で育った彼女にとって、オーダーの規則に縛られないドゥークーとの生活は新鮮だった。その気質故にオーダーで馴染めなかった彼女は、常に周囲を見返すためにジェダイになることを心の支えに生きていた。その危うさは却って彼女への危惧を強めることになったが、幼い彼女にそこまで想定することなんてできるはずもなかった。
だからこそ、自分の全てであった狭い世界を破壊した師に対しては篤い尊敬を抱いていた。
マスターとの修行の日々の中で、彼女は自身の兄弟子達と何度か対面していた。一番機会が多かったのはクワイ=ガン・ジンであり、ラエル・アヴェロスにもパダワンになった際に挨拶に行った。
この二人はコマリの知らないジェダイ達であったが、ドゥークーの門下で唯一知っている人物と対面する機会は早々には巡ってこなかった。その人物はモルガン・ル・フェ。当時パダワンですらなかったコマリも、除名が叫ばれた彼のことを知っていた。
彼女にとっては特別関心を抱く人物でもなかったが、ドゥークーに師事するようになってからは、彼に関係する騒動や問題について考えるようになっていた。マスターのドゥークーもジェダイとしては規則に囚われない型破りな人物であるため、弟子のモルガンも同程度に型破りである可能性がある。その点が災いして騒動になったのではないか、というのがコマリの考えだった。
自分なら、あんな大ごとになるようなヘマはしない。そんな傲りも少しあったかもしれない。
だがモルガンの名前が修行の中で出てくることは決してなかった。コマリには彼のことを質問する程の関心もなく、同時に師弟関係が悪い可能性も考えた。
そして、今日も朝の修行のルーティンを熟そうとした時だった。マスタードゥークーの姿がホロクロンに映し出され、遠出をすると告げられたのだ。
この遠出を機に、コマリは兄弟子を深く恨むことになる。
◇
コマリ・ヴォサは非常に優れたフォース・ユーザーである。そのポテンシャルは傷心中のドゥークーの傷を癒し、指導者としての道を再び歩ませるほどのものだった。
そのポテンシャルと要領の良さから、常にトップをひた走り続けたコマリ・ヴォサ。その気質のせいで長くパダワンとなれない不遇の日々を過ごしたが、それでもなおオーダー屈指の才人であることには変わりなかった。
最後は実力で道を勝ち取った少女。それがコマリ・ヴォサだ。
そんな彼女は今、人生で初めての感情に襲われていた。
それは、嫉妬だった。
気付かぬうちにマスターに対して特別な感情を抱いていた彼女は、ドゥークーがモルガンに対してみせる、自分へのものとは違う側面に嫉妬していた。
2人はダークサイド研究で子弟を通り越した関係に発展しているため仕方ないのだが、そんな事情をコマリが知るはずもない。嫉妬で暴走するようなことはなかったが、修行でモルガンが相手となる際は「ボコボコ」にしてやろうと思っていた。
モルガンの外見が同年代、もしくは少し自分よりも下に見えていたのが災いしたといえる。
結果は惨敗。彼女がこれまでの人生が経験したことがない程の敗北を強いられ、嫉妬と同時に自尊心まで深く傷つけられることになってしまった。
そんなコマリの心を癒したのは、マスタードゥークーであった。彼女が最初に心配したのは、彼に失望されることだった。敗北したことで見捨てられるのでは、一瞬でもそう疑ってしまった。
当然ながらドゥークーが彼女を見捨てることはなく、彼女に対して普段と変わらない態度で接していた。それどころか、コマリのことをよく褒めたのだ。
コマリは一瞬でも疑ったことを深く恥じ、マスターへの信頼を更に強めていった。ドゥークーも想定以上にモルガンに喰らいつくコマリの健闘ぶりを喜び、新たな弟子の更なる成長を夢想した。
彼女の中に芽生えつつある想いに気付きながらも、その想いすらもコマリの成長に利用するとドゥークーは決めていた。
それが、彼女を強くすると信じて。
腰痛が酷くなったり、間が悪いことに私生活が忙しくなってきたので更新の頻度がかなり落ちると思います。
一応話の構想はオーダー66後のものまではあるので、ゆっくり時間をかけて書き進めていく予定です。