ブイズたちと逝くヒロアカ世界   作:炭水化物は飲み物

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ブイズシリーズの作品で自家発電しようかなって。


ポケモンセンターの朝は天変地異と共に

「──ちょっとお兄ちゃん! またリビングが粉々に吹き飛んだ〜! ボクの、ボクの大切な配信機材が木っ端微塵なんだけどー!?」

 

 

 朝起きたら実家が半壊していた。お労しや。

 というか二階の廊下がない。お父さんの書斎が概念ごと消滅している。昨日マッマが買ってきた観葉植物にいたっては、何故か上空3メートルでカチコチに凍結(物理)していた。

 

 で、俺のベッドの足元ではサンダースとグレイシアが無言のリアルファイト(威圧)を繰り広げている。

 

 

 バチバチバチッ!!! 

 

 ピキピキピキィィィン!!! 

 

 

「…………」

 

 

 布団の中で3秒だけブレストした結果、天才の俺は導き出した。

 

 

「今日も元気で偉いなぁ(全肯定)」

 

「情緒どうなってんの!??!?」

 

 

 部屋の扉をサイコキネシス(物理)で破壊して突っ込んできたのは俺の妹。

 見てくれよこのギザ歯。マグネット型の髪飾り。画面映えの暴力みたいな顔面。前世のワイなら5秒でスマホ構えてTwitter(現X)に流してたし、今のワイでも限界拝みを捧げるレベルだ。

 

 

「リアル〜〜〜〜!! (尊死)」

 

「朝から神格化しないで!? あと家! 家見て! また半分消し飛んでるから!」

 

「大丈夫だ。うちのポケセン(実家)機能なら1秒後に全回復する」

 

「耐久力に甘えるな!!!」

 

 

 ズドォォォォォンッ!!! 

 

 

 その瞬間、リビングから弱体化オールマイトが100%超えでスマッシュしたんか? ってレベルの轟音が響いた。

 炎が舞い、冷気が走り、桃色のリボンが殺傷圏内で家具を薙ぎ倒す。普通の家庭ならプロヒーローか警察を呼ぶが、我が家においてはこれが「おはよう」のサインである。あの子たちの愛の重さが大災害クラス。オタクとしては大歓喜(語弊)

 

 

「主様、朝のお水です」

 

「ありがとう。気が利くなぁ」

 

「いえ。主様の体内に入れるなら、本望です」

 

「言い方」

 

 

 妹が真顔になった。俺はコップを受け取った。

 

 

「……ねえお兄ちゃん。あの子たちのこれ、客観的に見て完全に度を越した執着っていうか、ただの精神ホラーに片足突っ込んでると思うんだけど」

 

「失礼な、純愛だよ(特級)」

 

「どこがの!?!? 完全に歪みきってる〜〜〜〜っ!!」

 

 

 妹の至極真っ当な正論(クリティカルヒット)が朝の我が家にこだまする。

 だが、俺の鋭いオタクの眼光(きけんよち)は誤魔化せない。妹の『電脳神域』のバロメーターに、【お兄ちゃんと結婚したい】というブラコン文字がエラーテロップで出力されかかっているのを。健気か? 尊死させる気か? 

 

 机の上ではエーフィが「妹君の一手先も、主様の脳内の気持ち悪い妄想も、すべてお見通しです」と言わんばかりのクールな瞳で俺を見下ろしていた。

 

 

「やめろエーフィ。その目は俺に効く」

 

「効いてるなら反省してよ!」

 

 

 カオス。我が家は三百六十五日、二十四時間、常にこの調子でカオスを極めている。

 

 事の始まりは、四歳のある日だった。

 この『僕のヒーローアカデミア』という、下手をすれば明日ヴィランに路地裏で刺されて死にま〜す、みたいな理不尽極まる物騒な世界で、俺の個性が発現した。

 

 俺の個性は『ブイズ』。

 できることは至ってシンプル。前世の愛すべき相棒たちを、コストゼロで、二十四時間無制限に召喚する。

 

 通常の召喚系個性にあるような、持続時間や燃費の問題はほとんどない。

 ただし、外の世界で五匹以上出すと、脳が割れるような頭痛がする。必殺技『ポケモンフィールド』なんて使った日には、脳が限界を超えて後遺症で死にかけるらしい。

 

 

 

 でも、そんなのは簡単な話だ。五匹以上出さなきゃいい。

 そして何より、この実家の中だけは、その全てのルールがないなってる!!! 

 

 

 結論、さ”い”こ”う”!!!! 

 

 

 なつき度と親密度がカンストしすぎて、愛の重さが大災害クラスになっているのだ。オタクとしては大歓喜である。

 普通なら精神を病むレベルの異常な執着も、監視の目も、俺からすれば極上のご褒美でしかない。

 この子たちの重すぎる愛に、ドロドロに束縛されるために、俺は生まれてきたと言っても過言ではない。

 

 

「知るかそんなもん! 6Vの最強ブイズたちに愛されてるんだから、人生お釣りが出るくらい最高だろ!!」

 

「誰に言ってるの?」

 

「世界に」

 

「世界に喧嘩売らないで??」

 

 

 テレビの向こうでは平和の象徴()が今日もマッチョメンしている。

 そんな世界に転生した俺の結論はただ一つ。

 

 

「あの子たちにドロドロに愛されて最高!! もうヒロアカ原作なんて知らねええええ!!」

 

「お兄ちゃん、そういうところだ!!」

 

 

 チュドォォォォン!!! (本日n回目の爆発)

 

 

 その背後で、またリビングが爆発した。

 ブースターが炎の中からこちらを見て、申し訳なさそうに尻尾を揺らしている。俺は親指を立てた。

 

 

「今日も一日、いい日になりそうだ」

 

 

 妹が、遠い目をした。

 

 

「雄英、受かる前から不安しかない……」

 

 

 そう。これは、俺が最高の相棒たちと一緒に、ヒーロー社会を好き勝手に歩いていく話である。

 なお、本人にヒーローになる自覚はあまりない。あるのは、推しと相棒への愛だけだ。

 

 それでも俺の精神は、すでに神の領域に達していた。

 

 

「いや〜、今日も我が家の子たちと妹は世界一可愛いな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──お兄ちゃん? 頼むからそれ以上あの子たちの凶気(あいいじょう)を肯定しないでほしいんだけど」

 

 

 妹がガチで脳が腐りかけた人間を見るような目でワイを凝視している。お労しや。だがすまないナンジャモ、俺の心はもうとっくに救済(キャパオーバー)されているんだ。

 

 前世の俺は、一言で言えば人生のすべてをポケモンに捧げた限界オタクだった。

 仕事? 睡眠? 社交? そんなリソースがあるなら画面を血眼で睨みつけ、孵化余りのタマゴを爆破する作業に費やすべきだろ、という危険思想。なかでも最推しはナンジャモ。画面の向こうで「おはこんハロチャオ!」と叫ぶ彼女にガチ恋し、スパチャを投げ、グッズを買い漁るのが生きがいだった。

 

 そして、それと同時に俺が魂を削り、脳のシナプスを焼き切る勢いで愛を注いでいたのが、今目の前で実家を更地にしているブイズ(あの子たち)だった。

 

 

「懐かしいなぁ……。お前たちの個体値をすべて『さいこう』にするために、俺がどれだけの夜を徹したか……」

 

 

 イーブイ、シャワーズ、サンダース、ブースター、エーフィ、ブラッキー、リーフィア、グレイシア、ニンフィア。

 合計種族値525という美しくも鋭い専門家集団。それを9種すべて、ミリ単位の妥協もなく、攻撃から素早さ、耐久にいたるまで完璧な『6V』へと叩き上げたあの狂気の日々。なつき度をカンストさせ、理想の技構成を覚え込ませ、リボンをつけまくり、俺の脳内カルテにはあの子たちの努力値配分が今でも完璧に刻まれている。

 

 あの子たちが俺に向ける「なつき度カンストゆえの異常な執着」は、俺が前世で注いだ歪んだ愛の、100%返ってきた等価交換なのだ。

 だからこそ、この『僕のヒーローアカデミア』とかいう理不尽極まる超人社会に転生し、自分の個性が『ブイズ』だと知った瞬間、俺は神に感謝した。

 

 

「前世の俺の努力値が、今世の個性として結実するとか、どんな神ゲーだよ……。しかも妹のガワが最推しのナンジャモとか、俺の前世の徳が高すぎたな」

 

「お兄ちゃん、さっきから何言ってるのか分かんないし、目が完全にイカれたカルト宗教の教祖様になってる〜〜!」

 

 

 妹のドン引きの悲鳴すら、俺の耳には至高のBGMだった。

 

 

「よし、とりあえずあの子たち 。実家が完全に修復されたところで、朝ごはんにしよう!」

 

「よしじゃないけど????」

 

 

 俺がパチンと指を鳴らすと、それまで火花を散らし、冷気を放ち、リボンを振り回していた最強最悪の9匹が一瞬で動きを止めた 。「主様がそうおっしゃるなら」とばかりに、あれだけの天変地異がピタッと止まる 。この絶対ブレーキこそ、なつき度MAXの証拠である 。

 

 リビングの食タップについた瞬間、俺の全身は一瞬で「モフモフの刑」に処された 。

 

 

「主様、冷えたお水もお気に召さないなら、次は私のハイドロポンプでお体の中をすべて水浸しに……」

 

「シャワーズ、言い方が物騒だからやめようね。お水ありがとう」

 

 

 HP特化の限界突破シャワーズが、おっとりとした現実感のない笑顔で俺にコップを差し出しながら、どさくさに紛れて俺の太ももにどろりと溶けるように絡みついてくる。

 

 シャワーズは「お体の中から一つになりたい」とか言って愛の質量が重い。でも、俺がお風呂に入っているときは湯船に溶けて待っていたり、暑い日はひんやり冷たい水に化けて俺の首筋を包み込んでくれたりで、かまってちゃんのやり方が最高に可愛い。結婚したい。

 

 

「主様、トーストの焼き加減はいかがですか? ほんの少しでも気に入らない箇所があれば、そのパンを焼いたトースターごと、世界を3000°で焼き尽くして灰にしますね……あついです……私の愛……本来なら私がこの身で抱きしめて温めてあげて、それを食べさせ挙げたかったんですけど……えへへ、想像するだけで……えへへ」

 

「ブースター、トーストめちゃくちゃ美味いから落ち着いてね。俺が燃え尽きて*1せいなるはいになっちゃうからね」

 

 

 ブースターは「他のお喋りは全部灰にする」とか言って愛の質量が重い。でも、俺が寝ているときもふかふかの首毛を俺の顔の横に押し当てて天然のあったかクッションになってくれたり、寒い日に一歩後ろから健気に俺の服の裾をくわえて付いてきたりで、かまってちゃんのやり方が最高に可愛い。結婚したい。

 

 

「主様ぁ、ニンフィアのリボン、解いちゃダメですよ? ほら、あーん。主様の口元を汚す不届きな卵焼きは、わたしがリボンで急所を穿孔して、跡形もなく咀嚼(しょうしゃく)のお手伝いをしてあげますからねぇ」

 

「ありがとうニンフィア、でも俺の手が完全に拘束されてるからちょっと食べにくいかな。あと目が笑ってないから怖いよ??」

 

 

 ニンフィアは「私以外のことを考えると胸が苦しくなる呪い」とか言って愛の質量が重い。でも、俺がゲームをしているときはリボン状の触角を俺の腕に巻き付けて手元をわざと邪魔してきたり、目が合うと「ぶいっ♪」とあざとく首を傾げて抱きついてきたりで、かまってちゃんのやり方が最高に可愛い。結婚したい。

 

 

「主様。今日のスープの温度は完璧。エーフィが空気の流れを数手先まで読んで、主様が猫舌を発動する確率をゼロに予測しておいたわ。だから……早く褒めて、ボクの胸に顔を埋めて……サイコパワーが切れちゃう……てんこがす滅亡の光を発動しちゃうよ……!!」

 

「エーフィ、今日のスープも良い温度加減でおいしいよ。ありがとう。でも予測の使い方がニッチすぎるし、抱きつく力が強い。あといつZワザ覚えたのかな。それとなんで使えるのかな」

 

 

 エーフィは「あなたの嘘も明日会う人間もすべて予知して消す」とか言って愛の質量が重い。でも、俺が勉強しているときはノートの上にわざわざ飛び乗って香箱座りをして読書を全力妨害してきたり、寝落ちしそうな俺の頭を額の玉のサイコパワーで優しく支えてくれたりで、かまってちゃんのやり方が最高に可愛い。結婚したい。

 

 

「主様……(ガタガタ震えながら裾を掴む)。今日のオムレツの形、俺の形に似せて焼いた。主様、俺と同一化して……? 俺の顔、主様に似てくるくらい主様のことが、さいこうに好きだから……」

 

「イーブイ、あとで抱き着いて一緒に寝てあげるから今は我慢してね。あと気弱でおとなしいのに言ってることの境界線が完全に溶けてるよ。俺まで溶けそう☆」

 

 

 イーブイは「何に進化するかあなたが決めて、おんな狐の属性にいつでもなる」とか言って愛の質量が重い。でも、俺がソファーに座ると真っ先に膝の上に飛び乗ってきてお腹を上に向けてへそ天で撫でるのを催促してきたり、俺の口調を真似して後ろをとことこ付いてきたりで、かまってちゃんのやり方が最高に可愛い。結婚したい。

 

 

「主様、このハーブティーをどうぞ。主様にストレスを与える有象無象のクラスメイトやヴィランは、私が笑顔のまま尾の刃で綺麗に『剪定(排除)』してお庭の肥料にしておきますから、安心して召し上がってくださいね」

 

「リーフィア、誰を肥料にするつもりなんだい。あと年齢(季節)によって香りが変わる体臭のせいで、嗅覚から脳が麻痺しそうなんだけど」

 

 

 リーフィアは「あなたと自分だけの世界のために害虫を笑顔で剪定する」とか言って愛の質量が重い。でも、俺が疲れて帰ってきたときは澄んだ空気と極上の青葉の香りを全身から放って俺を包み込んでくれたり、お昼寝のときに日向ぼっこしながら俺の腕を枕にしてすやすや眠ったりで、かまってちゃんのやり方が最高に可愛い。結婚したい。

 

 

「……主様。動かないで。お兄ちゃんの体温、高くて不愉快。他の()を見て脳の温度が上がってる。冷たくしてあげるから、マイナス60度の冷気でそのまま綺麗な氷像になって、ずっとボクの部屋にいて」

 

「グレイシア、気持ちはすんごくうれしいけど、今は朝食だからまだ待ってね。あと右腕に冷酷な美少女顔でしがみついたまま俺を物理的にフリーズさせようとしないで。普通に凍死しちゃう♡」

 

 

 グレイシアは「空間ごと凍らせてあなたを永久保存の氷像にする」とか言って愛の質量が重い。でも、俺が他のことを見てそっぽを向いていると無言で俺の顎を肉球でクイッと自分の方へ向けさせてきたり、寝ているときに俺の布団の隙間に冷たい鼻先を突っ込んで潜り込んできたりで、かまってちゃんのやり方が最高に可愛い。結婚したい。

 

 

「……主様、外は危ない。ヒーローもヴィランもお前を狙っている。だから今日の雄英の授業はサボれ。私がこの影と月の波動で出入口を完全封鎖して、お前を一生この暗闇の中に監禁して護ってやる……」

 

「ブラッキー、守ってくれるのはうれしいよ、ありがとう。でも無言で俺の椅子の後ろを陣取って、全人類をゴミを見るような目で見張りながら威圧のオーラを放つのをやめなさい??」

 

 

 ブラッキーは「外の世界からお前を隔離して部屋に夜間監禁する」とか言って愛の質量が重い。でも、俺が夜中にふと目を覚ますと暗闇の中で輪模様をほのかに優しく光らせながらずっと俺の顔を見守ってくれていたり、俺が撫でた瞬間だけ「ふにゃ……」と耳を完全に後ろに寝かせるヒコーキ耳になって甘えてきたりで、かまってちゃんのやり方が最高に可愛い。結婚したい。

 

 

「主様っ! なんでみんなばっかりおねだりしてるんですか!? 私の電撃の毛並み、まだ今日の分のブラッシングをしてもらっていません! 早く! 今すぐ私だけに細胞の電気を一気に増幅させてビリビリさせてくださいっ!!」

 

「サンダース、あとでちゃんとブラッシングして気持ちよくしてあげるからね。今はご飯食べてるから机を振動のスパークでガタガタ揺らしちゃだめだよ」

 

 

 サンダースは「他のやつを見てたら感情100万ボルトで頭がショートして自傷する」とか言って愛の質量が重い。でも、俺が「おいで」と手を広げた瞬間だけマッハの超速度で胸に飛び込んできて猫みたいに喉をゴロゴロ鳴らしたり、かまってほしくて俺のキーボードを打つ手の前にわざわざお座りして邪魔してきたりで、かまってちゃんのやり方が最高に可愛い。結婚したい。

 

 

 

 結論。

 

 

全員、愛が重い!!!!! 

 

 

 

「愛の質量がやぶれたせかいレベル……! だが、それがたまらん……!!」

 

「もうボク、この光景を見ながら朝ごはん食べるの、精神衛生上限界だ……ある意味でも限界だ……」

 

 

 向かいの席で、ガワがナンジャモの妹が、完全に目が据わった状態でトーストを齧っている 。

 

 ──そう。俺にあの子たちのヤンデレっぷりも、妹がナンジャモのガワをしている尊さも120%満喫している 。だが、俺はまだ気づいていなかった 。

 妹の『電脳神域』のバロメーターが怒りで引き絞られている本当の理由が、単にあの子たちの天変地異に巻き込まれたからだけではなく、「ボクだって一人の女の子としてお兄ちゃんに甘えたいのに!!」という、隠しきれない極上の独占欲によるものだということを 。

 俺にその激重な本音がバレる寸前だとも知らず、俺はただの「配信機材を壊された妹の怒り」として呑気に拝んでいた 。知ったのはあと少し先。実にオタクの不覚である

 

 そんな阿鼻叫喚の朝食風景の中、遅れてリビングにやってきた我が家の両親は、完全にこの「世界のバグ」に適応していた。

 

 

「あらあら〜。今日も朝からリビングの壁紙がリフォーム(爆破)されてたみたいだけど、ご飯の前に直って良かったわねぇ。今日の観葉植物、ちょっと冷凍保存されてシャキッとしてるかしら?」

 

 

 母さんがトースターから焼き上がったパンを取り出しながら、上空に浮いていた氷漬けの植物を見上げてのんびりとボケをかます。母さんの個性は『環境適応・遺伝撹乱(カメレオン・ジーン)』。周囲の環境に自分の性質を最適化する能力だが、完全にこの狂った家庭環境に精神ごと最適化(スルー)しきっている。あの子たちの過剰な適応能力とヤンデレ遺伝子は、間違いなくこの母親譲りだ。

 

 

「ははは、みんな今日も仲が良いなぁ。お兄ちゃんが大好きで結構結構。やっぱり家族が一番賑やかなのが一番だよ」

 

 

 父さんが新聞を広げながら、サンダースとグレイシアに挟まれて身動きの取れない俺を見て、実に温かい、ひたすらお優しい聖母のような目で微笑んでいる。父さんの個性は『群体具現(エントポス)』。自身の精神から眷属をエネルギー消費なしで実体化させる個性だ。俺の「ノーコスト常時召喚」の器は完全に父親譲りなのだが、その器が前世のオタクの記憶とチャネリングしてこんな特級災害級の愛の結晶を生み出すとは、父さんも夢にも思っていないだろう。

 

 

「お父さんもお母さんも、あの子たちのこれを『仲良し』で済ませるのガチでやめてほしいんだけど〜〜〜〜!?」

 

 

 妹がトーストを噛みちぎりながら叫ぶ。

 ヤンデレなブイズたちと、結婚したい本音を必死に我慢している(が俺にはまだバレていない)最推しの妹。そしてそれを受け流す最強の両親。

 世界一湿度が高くて、世界一危険で、世界一幸せな俺の『聖域(ハッピーライフ)』。

 

 世間じゃ、ヴィランだの平和の象徴だの原作だのが騒がしいらしいが、俺の知ったことではない。

 もし、俺のこの最幸のモフモフ&ナンジャモ楽園を邪魔しにくる不届き者がいるなら、この実家(ポケモンセンター)に誘い込んでやる。

 そして九匹全員の全力と、妹の電脳ノイズで、塵一つ残さずお掃除してお星様にしてやる。

 

 重すぎる愛の包囲網。最強のヤンデレたちの視線。妹の隠しきれない(でもまだ気づいてない)独占欲。

 それら全部に全力で、ドロドロに束縛されながら、限界オタクの俺は今日も最高にハッピーな悲鳴をあげるのだった。

*1
手持ちのポケモン全員を一瞬で「全回復(HP&PP満タン)」させる、ポケモン界最強クラスの超チート級・特効薬アイテム。ポケカ友達にカード破られた時は泣きそうになった

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