ホテルZのゴミ   作:三笠みくら

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はじまり

 

電車に揺られながら、色んなことを考える。これからどうしようとか、そもそも生きていけるのかとか。

 

 

「きみ、ずいぶんひどい顔ね」

 

 

気がつくと、目の前に知らない女の人が座っていた。金髪が鮮やかだ。

 

 

「まあ、色々あって」

 

「ミアレには観光…ってわけじゃなさそうね」

 

「この身一つで来たので、正直どうすればいいか分からないです」

 

「そう……じゃあいいこと教えてあげる。ミアレに着いたらマチエール、って人を頼りなさい。ミアレでも有数の探偵だからね、貴方の役に立ってくれるはず」

 

「…ありがとう、ございます」

 

「いいのよ、ただの気まぐれだから。それじゃあ私はこれで。……ああ、言い忘れてた」

 

 

女性は、ロングヘアをふわりとたなびかせて言った。

 

 

「セレナの紹介、って言ったらきっと話を聞いてくれるわ。頑張って」

 

 

女性は電車を降りていった。セレナという人だったのか。……どこかで聞いたことがあるような?

 

 

そんなことを考えているうちに、電車はあっという間にミアレシティにたどり着いた。スマホロトムのマップ機能を頼りに、マチエールという人を探す。やがて、ルージュ5番地にあるハンサムハウスという場所にやってきた。

 

……本当にここで合っているのか?なんか不安になってきたぞ。

 

 

「もこお?どうしたのそんな慌てて……あれ?依頼人さん?」

 

「ふんにゃ!」

 

「えっと…あなたがマチエールさん、ですか?」

 

「うん、そうだよー。ミアレで探偵やってます。あなたは…観光客というには身軽だね?」

 

「色々あって、ミアレに出てきました。セレナさんから、あなたを頼るといいって」

 

「セレナが……?わかった、話をしよう。中に入って」

 

 

大きなソファに座ると、ニャスパーがコーヒーをエスパーパワーで持ってきてくれた。マチエールさんは僕の目の前に座って、まるで品定めするように僕のことを見ている。

 

 

「それで、ミアレにやってきた理由は何かな?」

 

「端的に言うと、身寄りがなくなったんです」

 

「……そっか」

 

「もともとはミアレの田舎に住んでたんですけど、ちょっと住み続けるのが難しくて。幸い両親の残したお金はあったので、それを持ってミアレに出てきました」

 

「そっか、大変だったね。本当はもっと色々あったんだろうけど、それ以上は聞かないでおくよ。なるほど、それであたしを頼ってくれたんだ」

 

「いきなりすみません、こんな身寄りのない子供の話」

 

「いいよ、あたしも昔はそうだったから。それであなたのことだけど……そうだなぁ、ホテルZに行くのがいいかな」

 

「ホテルZ?」

 

「うん、あたしの知り合いが経営してるホテルなんだけど……まあとにかく行ってみよう!」

 

 

マチエールさんに引っ張られながら、ミアレを歩く。街中にポケモンがいてなんだか新鮮だ、田舎では草むらにしかいなかったからな。やがて、路地の奥にある古いホテルにたどり着いた。

 

 

「ここがホテルZだよ、結構大きいよね」

 

「ここにマチエールさんの知り合いが?」

 

「そう、お邪魔しまーす」

 

 

ホテルの中に入ると、大きなおじいさんが僕たちを出迎えた。そして黒い花のフラエッテ。フラエッテって、体青かったっけ。

 

 

「久しいな、マチエール。そちらの少年は?」

 

「久しぶり、AZさん。彼はキョウヤ。」

 

「初めまして、キョウヤです……」

 

「初めまして、キョウヤ。私はAZ、このホテルのオーナーだ。そして彼女はフラエッテ、私の相棒だ」

 

「きゅるる」

 

 

AZさんにマチエールさんが僕の事情を説明する。正直自分で話すのは疲れるのでこれは助かる。

 

 

「……そうか、事情はわかった。キョウヤ、キミさえ良ければこのホテルで暮らすといい」

 

「そんなあっさり……いいんですか?」

 

「もちろん。このホテルは私の終の住処。若人の助けになれば、それ以上に嬉しいことはない」

 

「よかったね、キョウヤ!あ、あとホテルZで暮らすなら…」

 

「たっだいまーー!!」

 

 

バーンと扉が開かれて、明るそうな女の子が入ってきた。

 

 

「あれ?マチエールさんと……だれ?」

 

「お疲れ、タウニー。彼はキョウヤ、今日からホテルZで暮らす男の子だよ」

 

「えっ?どういうこと?ちょっと事態が飲み込めないんだけど……」

 

「彼もMZ団の皆と同じく行くあてのない子なのだ、どうか面倒を見てやってくれ」

 

「初めまして、キョウヤです。まあ色々あってミアレにバッグひとつで飛び込んできました」

 

「そっか、そういうことならOK!あたしはタウニー。よろしくね、キョウヤ!」

 

「よろしく、タウニー」

 

 

タウニーが手を差し出してくる。握手のつもりなのだろうけど…正直母さんを埋めた手で誰かに触れたくないな。

 

 

「……?」

 

「そうだ、キョウヤはポケモン連れてる?」

 

「一応連れてますけど…それが何か?」

 

「いやあ、ミアレは色々あってポケモン連れてないとちょっと危ないからねー。ちなみにどんな子連れてるの?」

 

「……出ておいで」

 

 

モンスターボールから出てきたのは……色違いの、青いラルトス。すぐに僕の足に隠れてしまった。

 

 

「わあ、ラルトス!それも色違いの……かわいいね!」

 

「すご!あたし色違いとか初めて見た!」

 

「そうですね…でもこの子は、色違いなことが理由で群れを追い出されたんです。だからあまりいい思い出ではないのかも」

 

「そっか……」

 

 

 

話をしていると、急に視界が揺らいだ。頭も痛い。そういえば一睡もしてないんだった。

 

 

「おっと、疲れているようだな。ルームキーを渡すから、部屋で休むといい」

 

「ありがとう、ございます……」

 

 

エレベーターで2階に上がり、202号室に入る。部屋に入ってバッグを置き、自販機で買ったおいしいみずを流し込む。

 

 

「ラルトス……疲れたよ」

 

「るら……」

 

「これから大丈夫かな、僕も母さんみたいに……」

 

「るら!」

 

「はは、冗談だよ。僕は少なくとも自分で死を選ばない」

 

 

ラルトスが足に抱きついてくる。青い光が彼女を包み、やがてキルリアが姿を見せた。

 

 

「ラルトス……いやキルリア、僕とこれからも一緒にいてくれる?」

 

「らる!」

 

 

キルリアを抱きしめる。若干ひんやりしているけど、それでも温もりは感じる。そのままベッドに横になり、泥のように眠った。

 

どうか、静かに生きられますよう。

 




キョウヤ
色々あって荒んでる。

ラルトス→キルリア ♀
特性:トレース 性格:れいせい
キョウヤの相棒。キョウヤが子供の頃に、道で倒れているのを保護した。それ以降彼に懐いている。

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