五線譜と密造酒 ――1920年のアメリカ世界で、百年先の音楽を弾く   作:生サーモン

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【第16話】恐慌の冬

 窓の下でリンゴを売る男がいた。

 一九三〇年一月。ウォール街の角、去年までは新聞売りの少年が立っていた場所だった。少年はいなくなり、代わりに三十代半ばの男が、木箱を裏返した台の上にリンゴを並べていた。赤い実の一つ一つに、白い息が薄くかかっていた。一つ、五セント。値札は男自身の手書きで、右に少し傾いていた。証券会社のタイプライターを長く叩いていた指の癖だと、レオは知っていた。斜めに文字が寄る癖は、事務員のものだ。

 サルが窓辺に立って、その男を見下ろしていた。

 

「レオ。あいつ、モーの顧客の一人だ」

「モーの」

「ハロルド。フロリダで飛んで、去年もう一度、株で飛んだ。二度目で全部持っていかれた」

 

 サルは声を落とした。落とすほどの声量ではなかったが、恐慌の冬というのは声を落とさせる季節だった。パーク・アベニューの角にはパンを求める列が伸び、アッパー・イーストサイドの空き地には、板とキャンバスと段ボールで組んだ家が並び始めていた。フーバーヴィル。大統領の名を冠した皮肉の村。新聞は毎日、その村の位置を地図に足していた。

 靴磨きの少年も、駅前から消えた。どこへ行ったのかは、誰も追わなかった。

 

(去年の秋に消えた男は、飛び降りた男だ。今年の冬に消えた少年は——飛び降りる前に、消え方を選んだ側だ)

 

 窓の反射に、自分の顔が薄く映った。三十二歳。まだ若い顔立ちに、去年の秋に張り付いた余計な影が、まだ抜けていない。抜ける前に、抜けない別の影が上から重なった。

 振り返ると、事務所の壁の柱時計が、午前十時を打った。ルーが、月次の帳簿を抱えて入ってきた。

 

 

 

 

「レオ。悪化してる」

 

 ルーは、机の前の椅子に座らずに、抱えていた手帳を先に机に置いた。座る前に数字を見せるのが、この一年の彼女の癖になっていた。かつては座ってから数字を出した。恐慌はルーの手順から一段階、削った。

 

「楽譜の売上、前年同月比マイナス四十九パーセント。デパートの楽譜コーナーが五番街で三軒閉まった。私たちが卸していたところの半分。レコードのロイヤリティは三割減。映画音楽はハリウッドがミュージカルに寄せたから、まだ持ってる。全体の月間売上、去年の秋の四千二百ドルから、二千八百ドル」

 

(数字の並べ方が、去年より速い。ルーは恐怖を数字に翻訳する)

 

「二千八百」

「ラジオだけは、伸びてる。NBCが東海岸のネットワークを増やして、うちのラジオ使用料は去年の一・五倍。あなたが去年、ラジオ枠を厚くした分」

 

 ルーはそこで、初めて椅子に座った。座ってから、手帳を一度閉じて、また開いた。ページの端に付箋が三枚貼ってあった。ルーの付箋の色は、緊急度で色分けされていた。赤、黄、青。今日の付箋は、三枚とも赤だった。

 

「もう一つ。ブレナンさん。連絡がない」

「何日」

「一週間。事務所の電話に出ない。秘書からも折り返しがない。うちの営業が二回、二十八番街まで様子を見に行ったけど、扉が閉まってた」

 

(買い切りで俺の曲を二十五ドルで抱いた男が、電話を取らない。あの男が事務所を空けるとしたら、体調で外せない用事、身内の葬儀、あるいは——事務所そのものが、もう、あの男のものではない)

 

 ルーが付箋の三枚目を見て、少し口をつぐんだ。

 

「他社の噂だけど。ブレナン、印刷屋に楽譜の版を差し押さえられたって話」

「版を、差し押さえられた」

「デパートの委託在庫が一斉に返品されて、印刷代の支払いが止まった。印刷屋は自分の首を守るために、次に売れる版を差し押さえて、他社に横流しした。ブレナンの倉庫は、返ってきた楽譜の山と、差し押さえられた分の空きの棚だけ」

「事務所の家賃は」

「三ヶ月滞ってるって。四階のあのビル、大家が別の借り手に見せて回ってるらしい」

 

 ルーが手帳を閉じた。付箋の赤が、閉じた表紙の縁からわずかに覗いていた。

 

「行くのね」

「行く」

「今日」

「午後」

「一人で」

「一人で」

 

 ルーは、二回頷いた。二回目の頷きの方が、少し深かった。付箋の色が赤の日に、ルーはいつも、二回頷いた。

 

 

 

 

 二十八番街の午後は、去年の同じ時刻より、三度、寒かった。

 石畳の上に、うっすらと霜の残りがあった。街路樹の裸の枝が、鉛色の空に細い線を引いていた。ティン・パン・アレーと呼ばれた界隈の窓は、半分が閉じていた。閉じた窓の一つに、大家の張り紙があった。「賃貸」の一文字が、糊の乾き方で、ここ数日以内の張り紙だと分かった。

 ブレナン・ミュージック・パブリッシングの入っている四階建てのビルは、去年の秋には、階段を上がる前に、廊下の突き当たりまで葉巻とインクの匂いが降りてきていた。今日は、階段の五段目の軋みだけが、行きに一度、戻りに一度、鳴りそうな予感の中で先に鳴った。実際には鳴らなかった。踏み板が乾いて、軋みの木部が縮んでいた。

 四階まで上がった。廊下の一番奥、ブレナンの事務所の扉には、封をした紙が斜めに貼られていた。差し押さえの通知だった。

 その隣の事務所の扉が、内側から開いた。二十代の女が、コートの襟を寄せながら出てきた。事務員だと分かった。ここの階に十年勤めた顔ではなかった。

 

「モレッティ・ミュージックの方ですか」

「ええ」

「奥様が、昨日、ハーレムの方の住所を書いた紙を、置いていかれました」

 

 女は、事務所の中に一度戻り、四つに畳んだ紙を持って出てきた。手渡す時、レオの目を一度だけ、まっすぐに見た。近所に暮らす者が、近所に暮らす者を差し向ける目つきだった。

 

「あの人、外に出てないんです」

「奥様は」

「ご実家の方に、しばらく」

 

 女は最後にそれだけ言って、ドアの中に戻った。畳んだ紙を、レオはコートの内側に入れた。父の遺したコートの、裏地の縫い目に「C.M.」の白い糸の印字がある側だった。指先が、糸の結び目の砂粒ほどの高さに触れた。

 階段を降りた。五段目は、やはり鳴らなかった。

 

 

 

 

 イースト・ハーレム。一〇六番街を東に折れて、二筋目の茶色い煉瓦の建物の、四階だった。

 階段の踊り場に、去年の秋には無かった匂いが二つあった。石油ストーブの灯油と、湿った革の匂い。革はコートの革で、灯油はコートの内側を凍らせないための革だった。

 四階の扉を叩いた。中で椅子の脚が擦れる音がした。それから、鍵の落ちる音がして、扉が開いた。

 ブレナンが立っていた。

 六十歳の男が、六十九歳の男に見えた。頬の肉が、ここ半年で削がれていた。目の下の隈は、隈というより、そこにも肌の色があるのだと知らせるための色だった。仕立てのよいスーツは着ていた。だが膝が、蹴り上げの摩擦で、羊毛の光沢を失っていた。二十八番街の階段を、ここ半年、繰り返し上り降りした膝だった。

 

「モレッティ君」

「ブレナンさん」

「……入りたまえ」

 

 部屋は、六畳ほどだった。窓が一つ。ラジエーターが一つ。ラジエーターは冷たかった。灯油ストーブが、部屋の真ん中で低く燃えていた。片側の壁に、額に入った古い楽譜の紙が三枚だけ残っていた。壁の上の日焼けの跡から、少なくとも十枚以上の額が並んでいた場所だと分かった。売った額の輪郭が、壁に残っていた。

 ブレナンは椅子を勧めた。テーブルの上には、湯気の立たない紅茶のカップが二つ、伏せて置いてあった。ブレナンは伏せた片方を起こしかけて、途中で手を止めた。

 止めた手のまま、ベッドの端に腰を下ろした。

 

「……全てを失った、と言えば嘘になる。だが、失うところまで来た」

 

 ブレナンの声は、去年の秋のあの、二階の窓から通りを見下ろす角度で持っていた滑らかさを、失っていた。空気の乾いた、削られた声だった。

 

「デパートの委託在庫が返ってきた。印刷屋への支払いが滞った。印刷屋が版を差し押さえた。版がなければ、次を刷れない。銀行の融資は焦げ付いた。事務所は担保に入っている。このアパートも、あと三ヶ月で出なければならない」

「事業は」

「続けられない。楽譜の売上は、ゼロに近い。私は三十年かけて築いたものを、半年で失った」

 

(一つ、片づける算段の目盛りを頭の中で回した。楽譜の版を叩き売らせて、流通名簿だけを紙で買う。それはできる。だが三十年、電話一本でラジオ局の担当者に繋がる回路は、名簿の紙には書いていない。あの回路は、この男の頭の中に、まだある)

 

 テーブルの端に、ブレナンの葉巻の吸い殻が、灰皿ではなく、皿の上に載せてあった。灰皿は、既に売ったのだと分かった。皿の縁は、白い陶器で、細かい花柄が入っていた。ブレナン夫人の食器だった。夫人は既に、実家に戻していた。

 

「ブレナンさん」

「何だ」

「あなたの楽譜事業を、買いません」

 

 ブレナンが顔を上げた。膝の摩擦の光沢を失った布地が、視線を持ち上げる分だけ、微かに軋んだ気がした。

 

「買いません。だが、一緒にやりましょう」

「……一緒に」

「あなたの流通網の経験と、俺のラジオのカタログを合わせる。楽譜が下がっても、ラジオ使用料は上がっている。あなたの経験で、俺のカタログを東海岸のラジオ局に売る。給料は、俺が払う。楽譜事業の負債は、俺が肩代わりする」

 

 言い切ってから、レオは湯気の立たないカップを一度、見た。ブレナンも同じカップを見た。二人とも、湯気を待つ目つきだった。

 しばらく、ブレナンは何も言わなかった。ラジエーターは、鳴らなかった。灯油ストーブの、細い燃焼の音だけが、二人の間にあった。

 

「モレッティ君」

「はい」

「私は、君の曲を25ドルで買い叩いた。その私を、君は助けるのか」

 

 ブレナンの声は、擦り切れた側の声だった。だが、擦り切れた側の下に、擦り切れていない一枚がまだ残っていた。三十年、業界の若い作曲家の来訪を、二階の窓から通りを見下ろす角度で計ってきた男の、その角度の下側だった。

 

「助けるんじゃなく、雇います」

「雇う」

「あんたの三十年の人脈は、俺一人では手に入らない。ラジオの時代に、それが要る。あんたを潰してカタログだけ拾うより、あんたごと味方につけた方が、俺の事業は強くなる」

 

 レオは、ブレナンの目を一度だけ、まっすぐに見た。

 

「25ドルのことは忘れていません。だが、恨みで判断するほど暇じゃない」

 

 ブレナンが黙った。長い沈黙だった。窓の外で、冬の風が煉瓦の間を通り抜けた。イースト・ハーレムの通りを、薄手のコートの男が二人、歩いていく足音がした。足音は、通りの東の側で消えた。西の側では、その足音のあとに、何も来なかった。

 

「……モレッティ君」

「はい」

「……君は、あの時から、私が見えなかったものを見ていたんだな」

 

 言い終わってから、ブレナンは自分の膝の擦り切れを、指で軽く撫でた。その手は、擦り切れた布地の摩擦を、確かめる手ではなかった。何かの、これから起こる商談の、感触を確かめる手だった。三十年、契約の握手の前に、この男が卓の下でしていた癖の手だった。

 

「版権を自分で握る。ラジオに賭ける。私は楽譜を安く仕入れて高く売る、それしか知らなかった。君は——業界ごと、変わる方に張っていた」

 

 レオは答えなかった。ここで答えれば、次の一言はブレナンから出ない。三十年の男の、次の一言を、待った。

 

「モレッティ君。条件を聞かせてくれ」

 

 背筋が、伸びた。半年間、四階のこの部屋で、この男の身体が受け入れていた角度が、一段、上に戻った。

 

「あなたの楽譜事業の負債、四万五千ドル。俺が肩代わりする。給料は、月五百ドル。契約期間は三年。三年後にあなたが独立したければ、独立していい。その時は、俺のカタログの一部を、あなたに販売代理店として扱ってもらう」

「月五百ドル。私は昨年、月二千五百ドルの生活をしていた。今はゼロだ。……月五百ドルは、有り難い」

「そしてもう一つ。あなたが持っている楽譜のカタログ、約二百曲。その権利は、あなたが持ち続けていい。俺は買い取らない。あなたが独立した時に、自分の柱にすればいい」

 

 ブレナンが、一度、目を伏せた。テーブルの、湯気の立たないカップの縁の花柄を、指の先で軽く撫でた。夫人が実家に戻る時に、置いていったカップだった。

 

「……モレッティ君。本当に、それでいいのか。私のカタログを買い叩けるのに」

「カタログだけ抜いても、あんたの人脈はついてこない。あんたが自分のカタログを持ったまま、俺の事業で働く。その方が、双方の数字が伸びる」

 

 ブレナンが、両手をテーブルに置いた。手のひらは下に向けていた。三十年、契約書の手前で握った握手が、この置き方の直後に、上に返す動きから始まる、その一動作前の置き方だった。

 だが、ブレナンは手を返さなかった。返す代わりに、右手を先に上げて、レオの手を握った。乾いた、三十年、楽譜と電話とインクの匂いに触れてきた手だった。震えていた。

 震えは、レオの掌の側にも、少しだけ伝わった。

 

「……ありがとう、モレッティ君」

「ビジネスです」

 

 言い切ってから、レオは自分の言葉の重さを、掌の温度で確かめた。

 あの日、二階の事務所で、椅子の背もたれを軋ませた男が、今、震える手で、こちらの手を握っている。前世の癖で、次の言葉が頭の裏に浮かんだ。「効率」で切れば、この男は切れる。人脈は名簿で写せる、と言い切ってしまえば、書類の上では成立する。だが、その効率で切ってきた前世の会議室に、レオはもう戻らない。前世の深夜のオフィスの、霞んだ画面の光が、今この掌の温度に、押されて、少しだけ遠のいた。

 

(数字の先の温度が見えるようになった。それが変わったということだ)

 

 立ち上がった。ドアに手をかける前に、ブレナンが一言、付け足した。

 

「月曜、事務所に行く。何時からだ」

「九時から。あなたの席は、俺の隣に用意する」

 

 扉を閉めて、四階の廊下に出た。灯油の匂いは、四階の踊り場までは降りていなかった。三階の踊り場を過ぎたところで、下から、女の声が上がってきた。子供に何かを言い聞かせる声だった。声はイタリア語ではなかったし、ドイツ語でもなかった。この街の、どこかの家の、母親の声だった。

 

 

 

 

 外に出た。空は鉛色のままだった。

 二十八番街から、七番街を渡ってミッドタウンに戻る途中、四月のマンハッタンは、束の間の光を集めていた。ダウ平均が二百九十四ドルまで戻った、と朝刊が書いた。ウォール街の新聞売りは戻ってこなかったが、レストランの窓越しに、久しぶりに笑う男たちが見えた。

 

(騙し上げだ。ここからもう一段、落ちる。年までは覚えていないが、方角だけは覚えている。今の回復に乗る者は、全員、次の底で拾われる)

 

 その角を折れて、地下の店の階段を降りた。アンジェロの店だった。

 鉄の扉を押すと、去年までのこの扉の反対側にあった、密造ジンの甘い匂いが、今日は薄かった。代わりに、樽の中で寝かせた別の匂いがした。もう少し澄んだ、こちらの舌の側にきちんと届く酒精の匂いだった。

 アンジェロがカウンターの内側に立っていた。五十四歳。マッシモの影が消えてから、頬の色が戻っていた。

 

「レオ。座れ」

「客が増えたな」

「増えた。恐慌のせいだ、と言えば聞こえは悪いが、実際その通りだ。値の張る店に行けなくなった連中が、うちの階段を降りてくる」

 

 カウンターの奥に、酒瓶が並んでいた。マッシモの組織を通していた頃の、細長い緑の瓶ではなかった。少し茶色の混じった、瓶の底の厚い酒瓶だった。仕入れの経路が変わった、と一目で分かった。

 

「マッシモが消えてから、仕入れ値が下がった。上前を撥ねられていた分が、そのまま値段に落ちる。安くしても、儲けが出る」

「良かった」

「レオ」

「なんだ」

「相談がある」

 

 アンジェロが、カウンターの内側から、店の奥の壁を一度、目で示した。奥の壁は、ここ一年で、二度塗り直されていた。塗り直された壁には、次の絵を掛ける釘の穴が、まだ空いていなかった。

 

「禁酒法は、いつまでも続かない気がする。世の中の空気が、去年の秋から、微妙に変わった。合法の酒が戻ってきたら、地下の店は終わる」

 

(廃止は、たしかあと三年ほどで来る。正確な年月は覚えていない。だがアンジェロは、新聞と客の顔で、方角を先に読んだ)

 

「合法のバーに切り替える気か」

「切り替える。地下のままだと、合法の店に客を持っていかれる。だが最初から合法で開ければ、質のいい酒を、もっと安く出せる」

「資金は」

「マッシモが消えてからの貯金で、多くは間に合う。だが、店を大きくしたい。厨房を広げて、舞台を作って、生の音楽を入れたい。そのぶんの改装費が、俺一人では届かない」

「俺の出資が要る」

「要る。利益は折半。俺は経営、お前は出資と音楽。二人の合弁だ」

 

 アンジェロは、カウンターの下から、鉛筆で書いた見積書を出した。厨房の拡張、舞台の柱の補強、椅子とテーブルの入れ替え。数字は五千ドルだった。五千ドルの見積書に、アンジェロの職人らしい、雑に見える整った字が並んでいた。

 

「五千ドル。出す」

「本当か」

「金を出す価値がある。それだけだ」

「お前は昔からそう言うな」

 

 アンジェロが、笑った。笑い皺の位置が、去年の秋のこの店で笑った時と、少しだけ違った。マッシモの影に押されていた分の皺が、消えていた。その代わりに、経営者の皺が、目尻に一本、新しく増えていた。

 

(マッシモを倒した夜、俺が数えていたのは、帳簿の上の数字だけだった。だがこの店の、この皺の変化は、帳簿には載らない。載らないものを見る目を、俺はこの半年で、少しずつ、覚え始めている)

 

 カウンターの上で、アンジェロが握手を求めた。マッシモを撃退したあの日、アンジェロがレオの手を握った時と、同じ手だった。だが今日の掌は、あの日より、乾いていた。乾き方が、店の主のものだった。

 

 

 

 

 五月。

 モーの事務所の階段を上がった。ウォール街の一角、七階建ての古いビルの、三階だった。

 応接室のドアを開けると、去年の秋にあった革張りのソファが、消えていた。代わりに、木の椅子が二脚、簡素な卓を挟んで置かれていた。壁の額に入った写真——若い頃のモーが、NYSEの取引フロアで両手を上げて叫んでいる、白黒の一枚——も、消えていた。売ったのか、質に入れたのか。壁の日焼けの跡が、額の輪郭を残していた。

 モーが、デスクの向こうから立ち上がった。五十五歳の男が、六十歳の男に見えた。目の下の隈は、ブレナンのそれと同じ深さだった。だが背筋は、伸びていた。

 

「レオ。来てくれたか」

「モー。元気そうだ」

「元気じゃない。だが、生きている」

 

 レオは椅子に座った。デスクの端の、去年まで懐中時計が置かれていたチェスト——モーの父の懐中時計が、船から下りた一八八〇年から数えて五十年、その上に載っていた場所——には、今日、時計がなかった。空いたスペースが、木目の色の違いで残っていた。日光の当たり方で、時計の底の丸みの輪郭が、木目の色に薄く焼き付いていた。

 

「時計は」

「お前に預けてある」

「そうだったな」

「レオ。今日は、何をしに来た」

「二つ。俺のポートフォリオの相談と、お前の状況を聞きに」

「お前は今、現金と国債しか持っていない。何を相談することがある」

「底値で、優良株を拾いたい。来年の夏頃に。その準備を、お前に頼みたい」

 

 モーが、目を細めた。三十年、証券の口座を回してきた男の、目の細め方だった。

 

「来年の夏か。市場はまだ下がる、と読んでいるのか」

「まだ下がる。だが来年の中盤に、底を打つ。その時に、優良株を大量に買う」

「根拠は」

「一九〇七年の恐慌でも、底打ちまで一年半かかった。今回の規模なら、来年の中盤あたりだ。歴史は繰り返す、とまでは言わない。だが、方角の目盛りは、大きく外さない」

 

 モーは、椅子の背もたれに一度、体を預けた。それから、体を前に戻した。

 

「一九〇七年の類推か。俺もあの恐慌を知っている。あの時、俺は二十九歳で、まだ人の口座で回していた。あの底の来かたを、今でも覚えている。……規模は違う。だが、方角は近い」

 

 モーが、指を組んだ。組んだ手の甲の血管が、去年の秋より、細くなっていた。

 

「去年の秋のお前の読みは、正確だった。俺の三十年の経験より、お前の分析の方が、方角を先に読んだ。だから今度も、信じる。来年の夏まで、お前の口座を回し続ける」

「頼む」

「もう一つ。俺の方からも頼みがある」

「なんだ」

「事務員が、先月辞めた。給料が払えなくなって、俺が辞めさせた。事務は、俺一人では回らない。ルーさんに、帳簿の整理を、月に何日か、手伝ってもらえないか」

「聞いてみる。たぶん、大丈夫だ」

「ありがとう」

 

 モーが、窓の外を見た。ウォール街の春の光は、鉛色の空を斜めに割って、通りに斜めの帯を落としていた。帯の中を歩く人影は、去年の秋の半分だった。

 

「レオ」

「なんだ」

「俺の親父はな、一八八〇年に、ドイツから船に乗って、ハンブルクの港からニューヨークに来た。持っていたのは、あの懐中時計と、ポケットの中の三マルクだけだった。時計職人だった。ロウワー・イーストサイドの掃除夫から始めて、食料品店をやり、息子を学校に行かせた。俺は、その息子だ。俺はこの国で這い上がった。市場は嘘をつかない、と信じていた」

 

 モーは、一度、指を組み替えた。

 

「だが市場は、去年の秋に嘘をついた。……あるいは、俺が、嘘を信じていただけだ」

「モー。お前は市場を信じた。それは間違いじゃない。ただ、今回の市場は、誰が読んでも、狂っていた」

「……お前は優しく言ってくれる。だが俺は、自分の間違いを、認めなければならない。三十年のプライドを捨てて、ゼロから始める。……それが、親父が船に乗った時の気分だったのかもしれない」

 

 レオは黙って、モーの指の組み替えを、もう一度、見た。あの日、暴落の翌週、質屋の前で、モーの手が懐中時計の鎖を握り締めた指の形と、同じ組み方だった。

 

「モー。お前は、這い上がれる」

「……そうだな。這い上がる。懐中時計を、必ず、買い戻す」

「金は要らない。時計は、お前の父の記憶だ。俺は預かっているだけだ」

「……分かっている」

 

 立ち上がって、握手をした。三十年、証券の口座を回してきた手は、震えていた。だが、温かかった。ブレナンの震えとは、震え方の周期が違った。ブレナンの震えは、擦り切れた側の震えだった。モーの震えは、まだ、次の底を掘る側の震えだった。

 

(モーは這い上がる。来年の夏、俺が底値の注文を出す時、モーの震えは、その注文票の上で止まる)

 

 

 

 

 秋。

 パールが、事務所に来た。

 帽子を被ったまま、ソファに座った。座り方が、去年の秋のこの事務所での座り方と、違った。膝の閉じ方が、閉じすぎない側に、少しだけ、開いていた。ヴィクターとの専属契約書を手にした頃の、膝の閉じ方ではなかった。

 

「レオ。あたしの盤、全部消えた」

 

 パールは、まず、そう言った。

 

「ヴィクターのレース部門が、清算された。あたしの専属契約は、違約金ゼロで解除された。店頭の盤は返品されて、溶かされて、別のプラスチックに作り直される。あたしの声が乗った盤が、別の何かに、なる」

 

 パールの声は、悔しさの底を、一度、通過した後の声だった。通過してから、次に何をするかを、既に決めた側の声だった。

 

「でも、NBCの生放送で、来月からレギュラーが決まった。週二回。あんたが書いた曲を、電波に乗せる」

「そうか」

「レコードの夢は、消えた。でも、ラジオが、残った。あんたが一年前に選んだ道を、あたしは、今、歩いてる」

 

(一年前、レコード契約を止めろとは言えなかった。根拠を渡せなかったからだ。渡せない代わりに、ラジオの枠を、俺は先に取っておいた。ラジオの枠は、パールが盤を失った日に、パールの舞台になる)

 

「パール。来月のレギュラーに向けて、新曲を一曲書いた。聴いてくれ」

 

 グランドピアノの前に座って、楽譜を立てた。両手を鍵盤に置いた。左手が四分音符でAbから始まる循環の型を叩いた。右手が、その上に旋律の最初の四音を置いた。

 パールが、首を傾げた。

 

「……アフラット・メジャー? あたしの持ち曲、全部、エフ・メジャーかジー・マイナーだったのに」

「お前の声の一番響く帯域は、エフラットの四番からアフラットの四番の間だ。レコードの時は、エフ・メジャーで、それで十分だった。レコードの盤は、広い帯域を刻める。だがラジオのスピーカーは、違う」

「違う?」

「ラジオのスピーカーは、低域が弱い。高域も、途中で落ちる。一番よく再生するのは、真ん中の帯域だ。三百から三千ヘルツ。おおむね、話し声より少し高い辺りから、口笛の芯までの範囲」

「三百から、三千」

「お前の声の響きの芯を、その範囲のど真ん中に、置きたい。エフ・メジャーだと、お前の声の一番いいところが、少しだけ、低い方に落ちる。半音三つ分、上げてアフラット・メジャーにすると、声の芯が、ラジオのスピーカーの得意な帯域に、ぴたりと収まる」

 

(前世のDAWには、パラメトリック・イコライザーがあった。特定の周波数帯を持ち上げたり削ったりできる、細い刃物のような道具。ボーカルの「おいしい帯域」を二デシベル持ち上げて、不要な低域をカットする。五秒で終わる作業だ。この時代にはない。だが、キーを変えれば、声の基音と倍音の分布が、物理的にシフトする。キーが、イコライザーの代わりになる)

 

「お前がアフラットで歌えば、ラジオのスピーカーを通した時に、声がリスナーの耳に、一番はっきり届く」

 

 パールは、しばらく、レオを見ていた。ソファの膝の閉じ方が、その間に、もう少しだけ、開いた。

 

「……レオ。あんた、なぜ、そんなことまで考えるの。作曲家で、そこまでスピーカーを考える人、あたし、見たことない」

「自分の曲を、いろんなスピーカーで聴き比べた。ラジオの箱型のやつ、映画館の大きなホーン。どの帯域が抜けるか、実験した」

「実験、ね」

 

 パールは、その一言を、少しだけ、口の端で笑った。笑い方が、去年の秋の、ヴィクターの契約書を前にしていた頃のそれと、違った。

 

「あんた、作曲家のくせに、技師みたいなことをする。あたしの声の帯域なんて、あたし自身が、考えたこと、なかった」

「お前は、歌えばいい。声がどう届くかは、俺が設計する」

「……設計、か。あたしの、声を、設計するのね」

「声じゃない。届け方だ。お前の声は、そのままでいい。その声が一番よく届くように、周りを整える」

 

 パールは、立ち上がった。帽子を被り直した。ソファから立つ時に、膝の閉じ方が、初めて、開いた側に戻った。

 

「レオ。ありがとう。あんたが一年前に、レコードよりラジオだ、と言った時、あたしは、怒った。でも、今は分かる」

「盤は溶かされる。だが、電波は、消えない」

「……そうね。溶けない」

 

 扉の外に、パールの靴の音が、廊下の突き当たりまで、乾いた三拍子で響いた。廊下の突き当たりで、その音は、止まらずに、階段の踊り場の方へ、続いていった。

 

 

 

 

 十二月。

 バンク・オブ・ユナイテッド・ステーツが破綻した、と朝刊の見出しが伝えた。

 預金者の列が、支店の前の歩道に、五列で並んでいた。子供を抱いた女、山高帽を斜めに被った男、コートの内側から皺の寄った預金証書を出す老婦人。列は、支店の角を折れて、次の街区の三分の一まで続いていた。新聞は「預金四十億ドル凍結」と一面で書いた。

 

 ルーが、事務所の窓辺で、その紙面を折り畳んだ。

 

「レオ。私たちの預金は」

「大丈夫だ。三行に分けている。チェース、ナショナル・シティ、バンク・オブ・マンハッタン。破綻した銀行には、預金をしていない」

「なぜ、分けていたの」

「去年の秋に、各行の自己資本比率を、モーに調べさせた。小口預金に依存している銀行は、取り付け騒ぎに弱い。分散の理由は、その一つだけだ」

 

(一本足はよくない。前世のオフィスで、資金繰りの担当者から、耳にたこができるほど聞いた言葉だ。この身体の耳が、その言葉を、この時代のこの窓辺に、そのまま持ってきた)

 

 ルーは、二回、頷いた。今日の頷きは、二回目の方が、深かった。

 

「CFOとして、あなたのその慎重さには、感謝する。私たちの会社の現金は、無傷」

 

 その日の夕方、月次の資産台帳を、締めた。

 

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 レオナルド・モレッティ 資産台帳

 1930年12月末

 

 【資産】

  現金              $200,000

  銀行預金(三行分散)      $1,500,000

   (チェース、ナショナル・シティ、バンク・オブ・マンハッタン)

  米国債             $240,000

  音楽事業資産          $80,000

   (版権カタログ72曲+ブレナンカタログ200曲の販売代理、

    グランドピアノ2台、事務所設備)

  アンジェロの店出資金      $5,000

  モーの懐中時計(預かり)    $0(評価額なし)

 

 【負債】

  ブレナンの旧事業負債肩代わり  $45,000(支払済)

 

 【月間収入】

  ASCAP演奏権料  $2,400/月(ブレナンの人脈で配分ランク上昇)

  レコード版権料  $200/月(レコード縮小で激減)

  映画音楽契約料  $650/月

  楽譜売上     $150/月(ブレナン流通網で下落停止)

  ラジオ局供給料  $600/月(NBC系ネットワーク拡大)

  演奏料      $100/月

  米国債利子    $600/月

  合計       $4,700/月

 

 【月間支出】

  家賃(パーク・アベニュー) $200

  食費            $50

  サル給与          $350/月

  ルー報酬          $220/月

  クリフ報酬         $160/月

  ブレナン給与        $500/月

  ゴールドバーグ楽譜店    $30/月

  印刷・郵送費        $30/月

  事務費・通信費       $40/月

  雑費            $50/月

  合計            $1,630/月

 

 【純資産】約$2,000,000

  (現金・預金$1,700,000 + 米国債$240,000

   + 音楽事業資産$80,000 + 出資$5,000 − 負債処理$45,000 + 諸調整)

  前章比: +$48,000(恐慌下でもラジオ・ASCAP・映画で維持)

——————————————————————

 

 鉛筆を置いた。前章比の欄の、プラス四万八千の数字を、外側から一度、眺めた。恐慌の中で、周囲の全員が資産を削られている中で、俺だけがわずかに増やした。それも、仲間の全員を連れて。ブレナンを味方に取り込み、アンジェロを合法の側に押し上げ、モーの底の震えに口座を預け、パールの声をラジオの帯域に合わせ直した。

 この一年で、片づけたことを、指先で数えられる。

 

 卓上の電話が、鳴った。ブレナンからだった。

 

「モレッティ君。ASCAPの理事の一人から、返事が来た。来年度の配分ランクが、確定で一段階、上がる。君のカタログの実績が、正式に評価された。来年度の分配金は、三割増える見込みだ」

「ブレナンさん、ありがとうございます」

「……いや。ありがとうは、俺の方だ。君に拾われなければ、私は今頃、リンゴを売っていた」

 

 ウォール街の角のリンゴ売りの男の、右に少し傾いた「五セント」の値札が、頭の裏に浮かんだ。ブレナンの手書きの、ばらけない綺麗な字と、傾く方角は同じだった。

 

「……お互い様です。あの25ドルが、俺をここまで連れてきた」

 

 電話を切った。窓の外を見た。マンハッタンの冬。フーバーヴィルの板とキャンバスの家々の屋根が、街区の空き地に、細かい格子模様を作っていた。その手前のパーク・アベニューの角には、パンを求める列が、去年より、少し長く伸びていた。だが、この事務所の窓には、灯りが点いていた。灯りは、事務所の四つの窓の全てに点いていた。

 

 

 

 

 仕事が引けた。

 ブレナンは、月曜から一週間の予定を、レオの隣の机の上に置いて、コートを取って出た。ルーは、モーの事務所に月三日行く件の合意書を、封筒に入れて、明日の朝の卓上に置いてから出た。サルは、ブルックリンの家に、ロザリアと子供たちのもとへ帰った。ロザリアが焼くローストの、火の入り方を、電話で細く尋ねる声が、廊下の突き当たりで、少しだけ聞こえた。

 誰もいなくなった事務所で、レオはグランドピアノの前に、座った。

 鍵盤の蓋を開けた。

 象牙の白鍵は、この一年、ブレナンとの打ち合わせで、二百七十二曲の分解と組み直しを繰り返した鍵盤だった。ダンスホール版のイントロを十六小節、ラジオ版のイントロを四小節、その差分を、右手でも左手でも、何百回も比較した鍵盤だった。

 試しに、何も考えずに、指を落とした。

 Cmaj7、Fmaj7、Bm7♭5、E7、Am7。

 ジャズのターンアラウンドの、四小節。指の腹が、その四小節の窪みを、迷わずになぞった。二百七十二曲の、どの曲にも入っている、標準の回路だった。

 次に、少しだけ、外に出ようとした。頭の裏で、前世のDTMの画面が、一瞬だけ、浮かんだ。学生の頃、音大の練習室で、夜通しさらった鍵盤の感触が、指の腹に、砂粒ほどの高さで残っていた。あの頃、コード進行の設計図を書き殴っていた、余白の紙の匂い。

 匂いを、指先まで、下ろそうとした。

 だが、出てくる音は、二百七十二曲の文法の内側だった。歌い出しは八小節以内。イントロは四小節。サビは覚えやすい。中域が抜ける。全部、商品の設計図の音だった。

 右手を止めた。

 左手が、二拍だけ、遅れてから、止まった。

 鍵盤の窪みに、指を残したまま、しばらく、動かさなかった。

 

(一日中、二百七十二曲を分解した。どの曲が売れるか、どの版がラジオに乗るか、どのキーが誰の声に合うか。得意だ。誰よりも上手い。だが、いざ自分のために、と鍵盤の前に座ると、売り物の音しか、出てこない)

 

 窓の外で、電車が一度、遠くを通り過ぎた。

 ピアノの蓋を、閉めた。閉める前に、蓋の縁を、指で一度、撫でた。二百七十二曲を仕分けた指の腹が、蓋の木目の中に、いつの間にか、小さな摩耗の跡を刻んでいた。摩耗の跡は、ダンスホール版の楽譜を捲る動作の位置と、ラジオ版の楽譜を捲る動作の位置に、二つ、並んでいた。

 自分のための音を刻んだ跡は、蓋の縁には、一つも、なかった。

 その事実に、気づかないふりを、した。気づかないふりを、しなくてもいいような気もした。だが今夜は、しないでおいた。ブレナンを味方に取り込み、アンジェロを合法の側に押し上げ、モーの底の震えを口座で受け止め、パールの声をラジオの帯域に合わせ直した。それだけで、一日の締めとしては、多い方だった。

 コートを取って、ドアに向かった。

 父の遺したコートの、裏地の縫い目に「C.M.」の白い糸の印字が、指先に触れた。糸の結び目の、砂粒ほどの高さが、この一年、何度、指の腹に触れたか、数え切れない数だった。

 ドアに手をかけて、一度だけ、ピアノの方を振り返った。閉じた蓋の木目の摩耗の跡が、事務所の灯りの下で、二つ、並んで見えた。

 ドアを開けた。

 パーク・アベニューの冬の風が、廊下の突き当たりまで、細く上がってきていた。フーバーヴィルの側の空気ではなく、この事務所の側の空気だった。

 

(一九三〇年が終わる。一九三一年が来る。レコードは壊れる。ラジオは伸びる。俺の版権は、恐慌の中で、輝きを増す)

 

 鍵をかけた。錠前の落ちる音は、いつも通り、乾いていた。

 だが、その乾いた音の裏側で、閉じたピアノの蓋の木目の二つの摩耗の跡が、まだ、消えずに、残っていた。

 

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