ようこそAクラスの教室へ   作:yadooo

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19話:2巻エピローグ

 山村と共に生徒会室に入ると、生徒会長である堀北学と生徒会書記である橘茜が待っていた。

 生徒会長はオレと、その背後にいる山村に目を向ける。その鋭い眼光を向けられ山村の肩が震えた。山村の為にもさっさと終わらせて解放させよう。

 

「前に言いましたが、彼女がオレの()()()です。事情も知っています」

 

え?

 

「他言無用ではなかったか?」

 

「それはお互い様では? それに山村にも他言無用を約束させています」

 

 オレが隣にいる橘書記を見ながら言うと、生徒会長はどこか納得した様子で頷いている。

 

「というか茶番は止めて、彼女の為にも早く報酬をください」

 

えぇ?

 

「分かっている。ーー山村美紀、今回の騒動。学校の秩序を守ったことに関し生徒会からも協力に感謝する」

 

 生徒会長は携帯を操作して山村にポイントを送る。

 山村は恐る恐るといった様子で携帯を開いて、その送られたポイントを見た。

 

「さ、30っ!?」

 

「不服か?」

 

「え、え、えぇっ!?」

 

 山村は答えず、オレと生徒会長を交互に見ながら驚愕している。

 

「山村。何度も言うが今回の件は助かった。これは山村が頑張った報酬だから遠慮なく貰ってくれ」

 

「お、お、多すぎますよっ」

 

「30万だ。そこまで多くない。今のAクラスなら3カ月で手に入るポイントだ」

 

「き、金銭感覚おかしくないですかぁ!?」

 

 ……かもしれないな。

 

 取り敢えずオレは混乱している山村に「今日はありがとう。また明日」と帰るように促す。散々オレに付き合って既にキャパオーバーだったのだろう。山村は逃げるような早歩きで生徒会室から出て行った。

 

 残されたのはオレと生徒会メンバーの計3人。

 

「最終確認だ、綾小路。本当に条件を吞むんだな?」

 

「今更ですね。嫌だったらとっくの前に断わってますよ」

 

 生徒会長は小さく笑い、携帯を操作してオレにポイントを送ってくれる。

 

 

 300万ポイント。

 

 

 我ながら、よくここまでの報酬を学校側が出してくれたと思う。

 それだけ今回の冤罪事件を重く見てくれたのか、オレの脅しが効いたのか、それとも……。

 

「ようこそ『生徒会』へ。歓迎しよう、綾小路」

 

「よろしくお願いしますね。綾小路『書記』」

 

「まぁ、よろしくお願いします」

 

 学校側か生徒会側か、どっちかにしろオレのことを随分と高く買ってくれているのか……。

 

 だがこれも渡りに船。普通の部活動とは違い、生徒会に入れば生徒会ならではの恩恵がきっとあるはずだ。面倒な気持ちもあるが、オレはオレの為にも生徒会を利用させて貰おう。

 

 

 他の生徒会メンバーとの挨拶は明日ということになり、この日は解散。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 オレは一人静かな廊下を歩いていると、視線の先には紫がかった黒髪のやや長めのヘアースタイルの男子生徒が壁に凭れかかっていた。

 

「よぉ。今回の件、黒幕はお前か?」

 

黒幕(首謀者)はお前だろ……。

 

「事件を解決に導いたのは間違いなく鈴音やBクラスの一之瀬だ。だが、結末を操作したのがオレなのは否定しない」

 

「石崎達を退学にさせないでおいてやるってか?」

 

「ああ、実際にその通りになっただろ?」

 

 鈴音にはそれっぽいことを言ったが、Cクラスの生徒が退学しようがオレは別にどっちでも良かった。鈴音がどちらを選ぼうとも影響を受けるのはDクラスであり、Aクラス(オレ)には直接的に影響はないからだ。

 ただ、今回はオレ個人の為に退学を回避させただけである。

 

「クラスポイントは後で取り返せるだろうが、失った駒は取り返せないからな」

 

「ならあんな特攻じみた真似をさせてやるなよ……」

 

 須藤が暴力を振るっていたならまだしも、冤罪がバレた時のリスクがあまりにも大き過ぎである。

 

「それで目的はなんだ? どうして椎名に伝言を頼んでわざわざ俺に伝えた。お前等Aクラスからしたら退学にさせたほうが有益だったはずだ」

 

「お前に媚びを売っておこうと思ってな」

 

「あ?」

 

「椎名は学力が高いし戦力として当てにするなとは言わない。本人の意思次第だが、彼女をお前の言う『駒』として役立たせようがそれは自由だ」

 

「自由も何も椎名は俺のクラスで、駒だ。テメェにあれこれ言われる筋合いはねえ」

 

「オレの望みは一つ。オレと椎名の付き合いを、()()()()()

 

「クク、面白れぇことを言うじゃねえか。何だお前、やっぱり椎名の奴に惚れてんのか?」

 

 わざわざ答えるつもりはない。

 オレが椎名をどう想おうが、これからする話の内容は変わらないからだ。

 

「お前が椎名を()()しない限り、()()()ぐらいは用意してやる」

 

「ハッ、どんな見返りを用意してくれるって? ポイントでもくれんのか?」  

 

「Cクラスの3人を退学にさせないでやっただろ。それに過去問だって提供したはずだ」

 

「足りねえ。もっとだ。天下のAクラス様に居ながらその程度のことしか出来ねえのか?」

 

「既に十分だと思うが、流石にオレ個人の事情でクラスを完全に裏切れないからな。どんな見返りを期待しているかは知らないが、スパイの真似事もする気はない」

 

 チッと舌打ちが返って来る。 

 

「どういう訳かお前は確信しているようだ。俺がいずれ椎名を利用しお前を脅すと。Aクラスを裏切るように仕向けるとな」

 

「驚くべきことか?」

 

 

 Cクラスが須藤に仕掛けた冤罪事件。

 鈴音にも言ったが、オレは須藤から話を聞かされた時は割と本気で驚いたのだ。

 まさか本当に、こんな事を仕掛けてくる奴が同学年に居たということに。

 

 リターンがあることは認めるが、冤罪である以上はやはりバレた時のリスクが目立つ。どれほどの勝算があったかは知らないが、それを承知で自作自演まで行って学校に訴えたのだ。しかも、実行犯は別の人物にやらせて自分が退学するリスクを減らせる立ち位置でだ(リーダーとしては正しいが)

 

 狡猾で大胆。そして容赦のない戦略が取れる男だ。

 鈴音が真っ当なら、コイツは攻撃的過ぎる。

「バレなきゃ犯罪じゃない」の精神の持ち主であり、暴力すらも平然と扱える人間。

 

 そんな奴が、オレと椎名の付き合いに口を挟まないはずがない。

 そう遠くない内に必ず、椎名を利用してオレを脅してくることは簡単に想像がつく。

 

 Aクラスに上がりたいなら勝手にやってろとは思う。卑怯な手段を取るのも別に構わない。リスク管理が出来ているなら十分に有効な戦略だしな。

 ただしそれは『オレと椎名を巻き込まない』のが前提条件である。

 

 

「もし断ったら? あるいは、お前の見返りに納得せず、椎名を使って強く脅したらどうする」

 

「ふむ?」

 

 例えば「椎名を退学にさせたくなければ従え」とかか?

 敢えて考えないようにしていたその可能性を想像して……、オレは考えるのを放棄した。

 

「さあな。オレにも分からない」

 

「なに?」

 

「その時が実際に来なければ、オレが何を想い、お前に何をするのかオレ自身にも分からない」

 

 悲しむのか、怒るのか、動揺するのか、それとも何も思わないのか。

 あるいはーー椎名を切り捨ててしまうのか。

 そして今は面倒臭いが勝っている目の前のコイツに、オレがどんなリアクションを起こすのかも、何もかもが分かっていない。

 

 未知。

 

 これはこれで、好奇心が刺激されるな。

 

「クク、クククク、本当に面白れぇな。お前といい鈴音といい、この学校は退屈しなさそうだ」

 

 一人で勝手に笑った後でオレの横に立つ。

 

「Dクラス、Bクラスを潰したら、次はお前等Aクラスだ。せいぜい首を洗って待ってな、綾小路」

 

 Cクラスのリーダー。

 龍園翔はそう言って去って行った。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 翌日。

 生徒会から全学年に、主に1年生に向けての声明が出された。

 CクラスとDクラスの、今回の騒動に関することだ。

 

 内容を要約すると。

 

『クラスを勝たせたいという気持ちは分かるが、やり方を考えろ。もし今回のような悪辣な手段を用いてそれが発覚した場合、次は問答無用で退学にするぞ』である。

 

 これでCクラスをーー龍園の動きをどれぐらい阻害出来るかは分からないが、他の生徒には十分な抑止になるだろう。いくら龍園が命令を下そうが、退学の危機のある作戦を実行する生徒は出てこないはずだ、多分。

 

 

 

 

「綾小路くんは生徒会に入ったんですね」

 

「良く入れたわね、あんた」

 

 続けて神室は「意外性あり過ぎ。似合わない」とわざわざ口にしてくれる。オレも同じ気持ちだから文句はないが。

 

「色々と成り行きでな。今日の放課後に早速顔合わせだ」

 

「ふぅん。てか、生徒会に入ったなら茶道部とチェス部は辞めたの?」

 

 幽霊部員とはいえ、美術部だった神室も知っていたか。

 部活紹介時に生徒会長が話していたようだが(オレは聞いていなかった)、どうやら生徒会と部活の掛け持ちは()()受け付けていなかったらしい。

 生徒会長はオレに茶道部を辞めろと、後出しで迫ってきたのだ。

 ふざけている。あってないようなチェス部は兎も角、茶道部までどうして辞めなければならないのか。茶道部は運動部に比べ活動日数も少ないので掛け持ちは出来る。絶対に辞めないと固辞した。そしたら生徒会を優先させるのを条件に、部活動の掛け持ちを許されたのだ。

 山村の件でも学んだが、意外とゴリ押しは効くものである。

 

 そう答えると、神室が呆れたような表情で「へぇー凄いわね」と棒読みで褒めてくれた。

 

「放課後に過ごせる時間が減るのは残念に思いますが、これが綾小路くんの為になるなら仕方がありませんね。生徒会、頑張ってください」

 

 坂柳はそう言って意味深な視線を送って来る。

 流石の坂柳もオレが何故生徒会に入るのを承諾したのか、その狙いまでは分かっていないとは思うが……、もしかしたら本当にバレてるとか?

 バレても別に困ることはないが、エスパーだったら怖い。

 

 

 

 

「1年Aクラスの綾小路清隆です。若輩者ですが、よろしくお願いします」

 

 3-A 生徒会長、堀北学。

 3-A 生徒会書記、橘茜。

 

 2ーA 生徒会副会長、南雲雅

 2-A 生徒会書記、溝脇

 2-B 生徒会書記、桐山生叶。

 

 そして生徒会書記のオレで計6人(書記多いな)

 

 顔合わせをしてから早速雑務を押し付けられ、橘に指導されながら仕事を覚えさせられる。

 「綾小路くんは仕事の飲み込みが早いですね」と橘が褒めてくれるが、その分「ならこの仕事も覚えちゃいましょう」と仕事が増えていく。

 

 これは、時間制か……? 

 どれだけ仕事を急いでこなそうが、時間が来るまで絶対に仕事が終わらないやつか……?

 

 

 それからきっちり2時間。

 オレはたっぷりと雑務をこなして生徒会の活動を終える。

 「やりますねぇ!」と橘がジュースを奢ってくれた。

 生徒会の紅一点。橘茜は結構親しみやすい先輩だった。

 

 ただ、それはそれとして生徒会活動はとても大変だなぁと感想を抱いた。ダル。

 




◇龍園翔。
・支給されるポイントの変動、過去問の件などで、椎名を通じて綾小路・坂柳の存在はきちんと把握している。綾小路と坂柳もまた、椎名から龍園の名前だけは聞いていた。ただ椎名から詳しく聞き出そうという真似はしていない。クラスが違うからこそ線引きはしっかりとしている。
 お互いにコンタクトを取り接触したのは今回が初。


◇一之瀬帆波
・お互いに名前は知っているし廊下で稀にすれ違ったりと顔も知っているが、原作と違い未だに接触はなし。鈴音の話を聞いたり、後日には生徒会に加入したことを又聞きしたことにより、一層の興味を抱くようになるーーーが、常に椎名や坂柳が一緒に居るので話し掛けることは出来ていない。
 因みに白波千尋の告白イベントはしっかりと発生しており、代役を立てられていないので、断りはしたがちょっぴり(?)気まずい思いをしている。


◇山村美紀
・CクラスとDクラスの事件に全く関係のないはずなのに、綾小路によって巻き込まれた完全なる『被害者』。月火水と、とても刺激的なことを体験していてとっくにキャパオーバー。度胸はついたが、早く休日が来てベッドに寝込みたいと思っている。


・一応、真面目に生徒会の活動はしているが基本的にやる気はない。それでも優秀なので作業効率は良いし仕事も早い。
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