特別試験のテーマは『自由』
・各クラスは1週間無人島で過ごす。
・各クラスに300ポイント支給され、このポイントを使ってマニュアルに載っている様々な物資を入手することが出来る。
・特別試験終了時に、各クラスに残っているポイントの全てがクラスポイントに加算される。
・リタイアでマイナス30ポイント。
・環境を汚染する行為を発見した場合マイナス20ポイント。
・毎日午前8時、午後8時に行う点呼に不在の場合、一人につきマイナス5ポイント。
・他クラスへの暴力行為、略奪行為、器物破損などを行った場合、生徒の所属するクラスは即失格。対象者のプライベートポイントの全没収。
・0ポイントになった際、そこから更にマイナスになることはなく0から変動しない。
これだけのルールだけだと普通(?)だが、勝敗に大きく影響を与えるのはもう一つの追加ルールの方か。
・島の各所にはスポットとされる箇所が幾つか設けられており、占有権と呼ばれるものが存在し、占有したクラスのみ使用できる権利が与えられる。ただし、占有権の効力は8時間のみ。8時間経過すると自動的に権利が取り消される。
・スポットを1度占有するごとに1ポイントのボーナスを得ることが出来るが、暫定的なものであり、試験中に使用することは出来ない。
・スポットを占有するには専用のキーカードが必要である。
・占有スポットは自由に使用でき、他が占有しているスポットを許可無く使用した場合は50ポイントのペナルティを受ける。
・キーカードを使用することが出来るのはリーダーとなった人物に限定される。
・正当な理由無くリーダーを変更することは出来ない。
・7日目の最終日、点呼のタイミングで他クラスのリーダーを言い当てる権利が与えられる。その際、他クラスのリーダーを的中させると、的中させたクラス1つに付き50ポイントを得る。そして逆に言い当たられると代償として50ポイント支払わなければならない。リーダー当てに失敗した場合もまた50ポイント支払わなければならない。
・リーダーを見破られたクラスは、それまでに貯めた占有ポイントのボーナスも全て失う。
他クラスのリーダーを当てに行くハイリスクハイリターンか、堅実にポイントを抑えた無人島生活を送るか。
まあ、リーダー決めも含めてまずは移動だな。
太陽に照らされ続けるだけでも無駄に体力を消費する。
葛城もそれを分かっているようで、クラスメイトに号令をかけ森の中へと移動を始める。
オレは葛城の隣に並ぶ。
「葛城、スポットの目星はついているのか?」
「綾小路、お前は
「途中からだったからな。洞窟と塔ぐらいしか自信がない」
オレの言葉に葛城がフっと笑う。反面、オレと反対側にいる戸塚が「?」となっていた。
「周辺には塔の他にも小屋があった。太陽や雨風は凌げるし拠点としても悪くないはずだ」
「そこら辺の判断は任せる。8時の点呼前には洞窟に戻るから、オレは離れていいか?」
「何をするつもりだ?」
「有栖がリタイア扱いだからな。その分を取り返してくる」
葛城はオレの目をじっと見続けてから「分かった」と許可してくれる。
「私も付いて行く?」
「大丈夫だ。ただ悪いんだが、オレの分の荷物を頼んで良いか?」
「俺が持っといてやるよ」
横から橋本が手を伸ばしオレの荷物を受け取った。真澄が僅かに眉を顰める。
「一応聞くが、俺の手は必要か?」
少し迷ったがその提案も断る。
「もしも龍園が来ていたら教えてくれ。事後報告で構わない。その時は何をしに来たのか内容を教えて欲しい」
そう告げてからオレはAクラスの団体から離れた。
◇
自信があるのは洞窟と塔だけだが、それっぽい目星はいくつか見つけている。
Bクラス、Dクラスと数人で固まって探索している生徒達に見つからないようにしながら、素早く移動を開始する。
折れた大木。自然に折れたものか人の手によるものか。とにかく目立つ。
オレは迷わず深い森の中に足を踏み入れ、そこで不自然な大きさ岩を一つ見つける。見ると、岩に埋め込まれた機械があった。恐らくこれが占有する際の装置ーースポットなのだろう。画面にはまだ何の文字も浮かび上がっていない。
スポットの近くに井戸が一つ。
学校側が用意した島であり試験だ。飲んで確かめる気はないが、恐らく飲み水として問題ないのだろう。
ここのスポットを占有し続ければ、水に関するポイントは殆ど抑えることが出来る。
最低あと一つはスポットを見つけておきたいが…………残念ながら時間切れか。
微かにだが音が聞こえた。自然の、風が草木を揺らした音かもしれないが、オレは念の為に探索を止める。
そして、スポットの装置が覗ける位置にある木を選んで木登りに挑戦する。
初めてなので少しだけ苦戦したが、なるべく高い位置まで登って息を潜めた。
するとオレの第六感は的中したようで、数分と待たずに声が聞こえてくる。
「スポットだ! 一ノ瀬、ここにスポットがあるぞ!」
Bクラスか。
まあ、Dクラスじゃなくて良かったか……?
オレはそのまま息を潜めながら会話に耳を傾ける。
まだここをベースキャンプにするかは決めないが、井戸の存在は魅力なので先に占有だけは済ませておこうーーとのことだ。
助かる。蚊とか虫とか鬱陶しいしオレも早くAクラスの元に帰りたい。
そして一之瀬たちは誰がリーダーにするかを話し合いで、事前に決めていたのか「千尋ちゃんお願い」と一之瀬は迷わずに口にした。
その千尋ちゃんとやらは、気負った声で「頑張る」と答える。
一之瀬たちはそのまま、リーダーをどうやったら守れば良いのかの話し合いを始める。人で囲って隠したりと単純だが効果のある意見を出しているが、既に手遅れである。
その後は柴田という男子が星乃宮先生からキーカードを受け取りに行ってから、そのまま千尋ちゃんに手渡される。
これも油断だな。
オレはもう『声』で把握しているが、スポットを占有する時だけ警戒しても意味はない。警戒しているという意識に満足していて真に警戒出来ていないのだ。最初の最初で失敗している。
まあ助かるからいいんだが(2回目)
さてと、降りるか。
「すまない。今から驚かせる」
「え?」
オレは登っていた木から降りて、一之瀬たちの前に姿を現す。
「スポットが占有されたからな。ここに留まればペナルティの恐れもあるし退散させてもらう」
「……っ、ま、待って!?」
Bクラスの誰もが絶句している中、我に返った一之瀬が叫ぶようにオレを呼び止める。
オレはゆっくりと振り返り、一之瀬と向き合う。
長いストロベリーブロンドを持つ美少女。彼女の噂は何度か耳にしたことはあったが、こうして相対するのは初めてか。
Bクラスのリーダー。善人で櫛田に並ぶ人気者。
一之瀬の存在には以前から最低限の興味があり、いつかはきちんと話してみたいと思っていたが、今は流石にそんな和気藹々な空気じゃないな。
「見た、よね……?」
「見てないって言ったら信じるか?」
「にゃ、にゃはは、無理、だね……」
一之瀬の隣で、千尋ちゃんなる女の子が顔面蒼白となり、泣きそうな顔になっている。
他の男子も動揺したり、唇を噛み締めて冷静さを努めようと必死だ。
まあ開始早々、リーダーがバレたらそんな反応になるか。
このままいけばBクラスは50ポイントのマイナスが確定し、これから得ていくであろう占有ポイントも全て失うのだ。モチベーションの低下だって避けられない。
このまま葛城にBクラスのリーダーを報告しに行っても最低限の仕事は果たせるが、もちろんそんなことはしない。
「交渉する気はあるか?」
◇
来た道を戻り洞窟に辿り着くと、クラスメイト達が集まっていた。
何人かが洞窟の中で既に作業をしている。どうやら拠点はここで決まりのようだ。
オレの姿に何人かが気付き、その中で真澄が近付いてくる。
「おかえり、良いタイミングね。今さっき龍園が来たわよ。てか良く来るって分かってたわね」
「もしかしたらと思ってただけだ。場所は?」
「あっち。橋本が葛城と一緒に付いて行った」
指のさされた方向を歩き出し、オレの後ろに真澄が続く。
進むにつれ話し声が聞こえてくる。
「どうだ葛城、悪くない提案だろう?」
「ふむ……」
「待てよ葛城。良いか悪いかは兎も角、リーダーとはいえお前一人で勝手に決めるのは許さないぜ」
龍園、葛城、橋本の3人。どうやら葛城の持つ紙の内容についての話らしい。
オレの姿に気付いた橋本がニっと笑う。
「戻ったか、綾小路」
「たった今な。良かったら見せてくれないか、それ?」
葛城から受けっとったA4用紙。
オレと一緒に真澄も横からその内容を確認する。
・①CクラスはAクラスに対し、200ポイント相当分の物品を購入し譲渡する。
購入する物品は、Aクラスが自由に指定できる。
・②Cクラスは、BクラスとDクラスのリーダーが誰であるかを探り、得た情報をすべてAクラスに伝える。
・③Cクラスが契約①②を遂行した際、Aクラス生徒(坂柳は除く)は龍園翔に毎月2万のプライベートポイントを譲渡する。この契約は龍園翔がこの学校を卒業するまで継続する。
「これは……どうなの?」
内容を読み終えた真澄がオレを見る。葛城も橋本も龍園もオレを見ている。
凄い見られているな……。
「どうだ綾小路? 上手くいけば300ポイントも増やすことが出来る。悪くねえ提案だろ?」
「まあ、数字だけ見ればな」
リーダー当てはともかく、200ポイントの物資提供の効果は大きいが。
「①と②はともかく、③に関してはAクラス全員のポイントに関わるからな。一度持ち帰って皆からも話を聞くべきだとオレは思うぞ」
「この場で決めねえと?」
「この場で決めろと急かしてくるならオレは絶対に断わるが、葛城はどうする?」
「龍園、この話は一度持ち帰らせてもらう」
葛城の言葉にオレも続く。
「そんなに待たせるつもりはない。30分以内に戻って来るつもりだが、お前はどこで待っているつもりだ? スポットを見つけているならそこまで行っても良いが」
「はっ、なら特別にここで待っておいてやるよ。だが、30分以上経っても来なかったら、そん時は……
龍園は挑発するようなニヤつきでオレを見る。
「お前こそきちんと待っていろよ」
オレ、真澄、葛城、橋本は龍園に背を向けて歩き出す。
「葛城、悪いが龍園との交渉を任せてくれないか?」
「何か考えがあるのか?」
「このままの契約内容は論外だが、①の内容は悪くない」
「そりゃまあ、そうだろうな」
考えるまでもなく当然だと橋本が声を出す。真澄も口には出さないが同じような顔をしている。
「問題なのは③の内容だ。3年間の永続はありえない。いくら何でも暴利だ。今のCクラスに、龍園にそこまでの
「どういう意味だ?」
「その話は後でするとして、取り敢えずはクラスの皆に聞こう、200ポイントの為にいくらまで払えるか」
オレ達はクラスメイト達を集めて洞窟の中に入る。探索に出ている生徒たちも居たが、橋本が中心となり積極的に呼び戻してくれた。
「山村」
「は、はい」
びくっとしないで欲しい。
今回は無茶ぶりしないから安心してくれ。
「悪いが、入口付近から外を見張っていてくれないか? 龍園でも他の生徒でも、誰か来たら手を上げるなり合図してくれ」
「分かりました」
ほっとした様子で山村が頷く。
な、今回は普通だろ?
オレは葛城の傍まで行く。葛城は契約内容の書かれた紙を持ちながらクラスメイトを見ながら声を上げる。
「皆に聞いて欲しい。つい先ほど、Cクラスの龍園と呼ばれる生徒から取引を持ち掛けられた。200ポイント相当分の物品を購入し譲渡する代わりに、Aクラスから幾らかのプライベートポイントを支払って欲しいとの内容だ」
③の内容を馬鹿正直に伝える必要はない。誰が何と言おうが、オレは永続2万は絶対に認めないからだ。葛城たちにもまだ理由を伝えていないが、②も不要なので除外する。葛城には今の内容で話すように頼んだ。
「それで皆に聞きたい。200ポイントの為に、一人幾らまでポイントを支払えるか。Aクラス全体で幾らで支払って良いのかを」
葛城の言葉にざわざわと喧噪が広がる。
言うまでもなく、この試験で200ポイント相当の物資提供は大きい。ポイントに余裕があれば無理に我慢してポイントを節約する必要もない。1週間の無人島生活をゆとりを持って取り組めるだろう。そしてポイント残った分だけクラスポイントが増えるのだ。
その価値にいくらまで支払えるか。
クラスメイト達は頭を捻らせる。
その中で戸塚が声を上げる。
「葛城さんは、どのくらいのポイントを支払うのが妥当だと思っているんですか?」
葛城は一度だけオレを見た後に、自らの考えを述べる。
「
200cl=2万pr。
2万pr×40人で80万pr。80万pr×6カ月で480万pr。
額だけ聞けば大きいが、半年以上経てば元が取れる。
一月に10万近くのポイントをもらっているオレ達Aクラスの財力なら、今すぐ一括で簡単に支払える額でもある。
「流石に安くないか?」「妥当だろ」「相手が納得するのか?」などとクラスメイトの声が上がる。安く済むならそれに越したことはない。概ね、葛城に賛成する意見が上がる。
まあ、個人的には普通に
「綾小路くんは、どれくらの額が妥当だと思っているんですか?」
クラスメイトが納得し口を閉じ始めた隙間を狙うかのように少女の声が差し込まれた。
白石だ。
彼女は微笑みながらオレを見ている。
あー……。
オレは葛城を見る。
「龍園と交渉するのはお前だ、綾小路。お前の正直な意見を聞かせてくれ」
「320万」
それでもまだ高いが、オレと椎名の為だ。
◇
「待たせたな、龍園」
「おせぇ。いつまで待たせんだ」
「30分も経っていない。せいぜい20分ぐらいだろ」
龍園は鼻を鳴らし、オレと葛城の背後を見る。
「また雑魚2人を引き連れてAクラス様は随分と余裕そうだな」
「……」
「悪いな龍園。好奇心が刺激されて来ちまった」
仏頂面の真澄と軽薄な笑みを浮かべる橋本。
オレと葛城。真澄と橋本。
オレはどっちでも良かったが、葛城は止めなかったのでこうして4人で龍園と対峙する結果となった。
「龍園、先ほどの契約書の内容に手を加えさせてもらった。この条件ならば契約しよう」
葛城はそう言って龍園に契約書を手渡す。
その契約書に目を通した龍園は、殺気を飛ばして低い声で唸った。
さて、交渉でもするか。
・一之瀬帆波とファーストコンタクト。
綾小路。Bクラスの印象は悪い(試験とは分かっているけども感情と理性は別だし仕方ないね!)
◇龍園の持って来た契約内容と葛城。
・原作と違って内ゲバしていないし、無理をしてでも手柄を立てる必要はないので葛城も慎重だった。 ただやはり、ポイント200分の物資と他クラスのリーダー当てに関しては魅力的なので「どうしようかなぁ」とは頭を悩ませていた。綾小路が来なくとも、この場ですぐに契約を結ぶ気はなく持ち帰るつもりではいた。