Aクラスのリーダー当て。
私はまず、須藤くんを中心とした何人かのメンバーに占有スポットを探して来てもらうようにお願いした。そして丸一日かけて判明したのが、私たちが見つけた占有スポットの殆どがAクラスによって占有されていたということ(残り2割がBクラス)
松下さんの言葉通りだ。
契約を結んだBクラス。全員リタイアしたCクラス。リーダー当てを警戒するのはDクラスのみであるAクラスは、占有スポットを積極的に狙いに行っていたのだ。
だったら後は網を張るだけ。
やり方は綾小路くんが教えてくれた。
木の上。
つまり死角に隠れて相手のリーダーを見つけ出すのだ。
幸いスポットを占有した際にはしっかりと8時間のタイマーが表記される。どのくらいの時間にAクラスのリーダーが来るかは予測しやすい。だから毎日、三宅くんを含めた数人のメンバーに数十分前には潜伏するように頼んでいたのだ。
正直、成功率は半々だと思っていた。
綾小路くんが仕掛けた奇襲が、綾小路くん相手に簡単に通用するとは思えない。綾小路くんが占有スポットを回る固定されたメンバーの一人だったら、この作戦の成功率は大きく下がっていただろう。
綾小路くんの考えは分からないけど、リーダーを見つけられたことも含め運も味方してくれた結果だ。
*
問題はCクラス。
龍園くんの考えだ。
龍園くんが今回の試験を素直に諦めるとは思っていない。
なら、彼の狙いは何なのか。どんな戦略を取って来るのか、熱を持った頭で何時間も考え続けた。
そしてやはり気になるのが、DクラスにいるCクラスの伊吹さんと、BクラスにいるCクラスの男子生徒。
伊吹さんは反抗して殴られたと、龍園くんも殴ったと言ったが、先月の冤罪事件のことを忘れるわけがない。龍園くんは必要であれば暴力を振るう。自作自演を行える人間だ。
平田くんや一部の男子は伊吹さんの腫れた顔に同情的だったが、そのことを身をもって知ってる須藤くんも懐疑的だった。
なら、伊吹さんがDクラスに来た理由は? BクラスにCクラスの生徒がいる理由は?
それはもう一つしか考えられない。リーダー当てを行うため。つまりスパイ。
そこで新たに出てくる一つの疑問。
Cクラスのリーダーは誰なのか。
伊吹さん? それとも、Bクラスにいるもう一人の方?
どちらもあり得そうだが、そのどちらもしっくり来ない。
そこから4日目。
頭を唸らせながら茶柱先生の点呼を受け、近くにいた佐倉さんを見てふと思った。
そういえば、Cクラスの担任である坂上先生はどうしているんだろうと。
Cクラスはリタイアして船の上にいるとはいえ、全員ではない。最低でも2人、伊吹さんとBクラスに一人いる。しかし、たったの一度だって坂上先生が伊吹さんの元に来たことはない。
Cクラスは既に0ポイントだから点呼を取る意味がない?
理由としては妥当かもしれない。
他にも、腕についている腕時計によってDクラスにいるのが分かっているから、安心して放置している?
あり得るかもしれないが、流石に一度も顔を見せないのは無責任だと感じる。それに違和感もある。先月の審議ではCクラスの3人の代わりに殆ど坂上先生が発言していた。坂上先生がいなかったら証言だけでCクラスに勝てていたかもしれない。私情もあるだろうが、行動は間違いなくCクラスの生徒の為だった。
もう一つの考えられる理由。
それは伊吹さんがリーダーではないから。
つまりこの試験においてはCクラスの
私は松下さんと須藤くんに頼み、一之瀬さんの所に行ってくるようにお願いした。
そしたらやはり、Bクラスの方にも一度も坂上先生が来ていないことが判明した。
恐らく3人目がいる。
スパイから情報を得て、試験最終日にリーダーを当てる、Cクラスの『リーダー』が。
……いえ、本当は最初から分かっていた。リーダーがいるとしたら、それは彼しかいないと直感的に理解していた。
だけどまだ確証がない。リスクがある以上、勘だけでリーダーを狙うことは出来ない。
5日目。
軽井沢さんの下着が盗まれる事件が起こる。犯人はCクラスである伊吹さん。
クラスは混乱したが、私としては正直助かった。
今まで大人しかった伊吹さんが行動を起こしてくれたことにより、やっぱり彼女がスパイだったという確信を得られたからだ。
Why done it。
動機はDクラスを混乱させる為。
Dクラスを混乱させて、その後に何がしたかったのか。最終的な目的は?
スパイなのだから当然、リーダーを見つけ出すことだ。
なら望み通り、Dクラスのリーダーを教えてあげましょう。
私は初日から
テントに集まっていた彼らにも協力してもらい、一時的にDクラスの空気を悪くした。流石に全く疑わないのは怪しいので、幸村くんに釘を刺してもらうことを忘れない。
そして6日目。
私は警戒する素振りを見せながら積極的に動く。その後で軽井沢さんと一芝居打ち、キーカードを落として焦ったフリをしておく。伊吹さんが見えるように、立ち位置を調整してしっかりと。
それから少しして、伊吹さんが姿を消した。
そこからは最後の詰め。
松下さんを通して、小野寺さんには既に頼み事を済ませている。
もしかしたら伊吹さんがDクラスから離れて行くかもしれないから、その時はこっそりと尾行し誰と会うのかだけを確かめて来て欲しいと。
その時に念押ししたのが、尾行がバレていけないこと。
会話は聞かなくていい。ただ、顔だけ確認出来れば良いと。
伊吹さんが逃げた先で会う人物は、恐らく『龍園くん』だということも。
そして小野寺さんは、見事に伊吹さんと龍園くんが一緒にいる場面を目撃することに成功したのだ。
「いやぁー、距離を離し過ぎたせいで何度か見失いかけたけど、雨のおかげで助かったよ。足跡がなかったら危なかった」
私たちの賛辞を受け、小野寺さんはそう言って照れ臭そうに笑っていた。
これで私たちDクラスは、AクラスとCクラスのリーダーを特定した。Bクラスも含めれば、全クラスだ。
「堀北さん、もう良いよね」
平田くんが笑顔で私に確認を取って来る。
私は「もちろん」と即答した。
「皆、聞いてくれ! 昨日の、軽井沢さんの下着のことなんだけどーー」
平田くんが私の代わりに、犯人が伊吹さんであり、目的はCクラスがDクラスを混乱させる為に行ったことだと説明した。
それを聞き、男子達は疑いが晴れて良かったと安堵している。しかし、全員じゃない。
「ほらぁ! やっぱり俺たちじゃなかっただろ犯人は!」
山内くんのように、あらぬ疑いを掛けて来た女子を責め立てる男子も数人いる。伊吹さんに関しては山内くんが勝手に連れて来たわけだけども……。
まあ彼らの怒る理由も分かるが、せっかくの雰囲気をここに来て台無しにされるわけにもいかない。私は口を挟もうとするが、その前にーー。
「ごめんなさい!!」
篠原さんが頭を下げて謝った。
山内くんも含め、誰もが虚を突かれたように驚く。
「その、私もごめん……。ちょっと冷静じゃなかったというか、感情だけで言い過ぎた」
そして軽井沢さんも罰の悪そうな顔で、篠原さんと一緒に謝罪する。
「いや、篠原が謝る必要はないっていうか……いきなり下着を盗まれたら、そりゃあ女子は俺たちを疑ったり怒ったりするのは当然だよなって……」
「あぁ、被害者である軽井沢が冷静じゃなくなるのも仕方がない」
それを見た池くんと幸村くんが、彼女たちの意を汲み、肩を持つ。
「池くん……」
「あ~、とにかくさ! どっちも悪くなかったってことで良いだろ!」
「その通りだよ。男女がどうとかじゃなくて、Cクラスの嫌がらせなんだしね」
池くんが恥ずかしさを誤魔化すように大きな声を上げ、松下さんが改めてどちらも悪くなかったと話をまとめる。その発言に平田くんと櫛田さんの追撃も入り、一瞬だけ崩れかけたクラスの空気は再び明るく持ち直した。
ある程度クラスの盛り上がりが落ち着いたところで、私は初日に熱があることを伝えたメンバーと、昨日にテントの中で話し合ったメンバーを集める。
「私はリタイアするわ。ずっと熱があったし、そろそろ限界だから」
初日。私はある追加ルールを聞いて、一つの疑問を抱いた。
『正当な理由無くリーダーを変更できない』
熱があるのは私が体調管理を怠ったから。それにリタイアすればマイナス30ポイント。
普通なら意地でもリタイアしないで頑張るところだが、私はこの追加ルールがリーダー当てに関わることで利用出来ないかと考えた。
他クラスには綾小路くんや龍園くんのように油断出来ない相手がいる。
もしもDクラスのリーダーがバレた時、マイナス50ポイントと占有ポイントを失うのはあまりにも痛手だ。
でも逆にリーダーを他クラスに誤認出来れば? 相手にマイナス50ポイントのダメージを与えることが出来る。でもワザとバラすのはそれはそれで怪しい。あくまで一つの保険として考えて、私は茶柱先生に質問した。
リーダーがリタイアした時はどうなるのかを。
新しいリーダーが選ばれるのか。占有スポットの扱いはどうなるのか。占有ポイントは獲得出来たままでいられるのか。
結論としては、問題なし。
リーダーがリタイアしたら、代わりに新しいリーダーが選ばれることが判明。
後はCクラスに、龍園くんにリーダーを誤認してもらったまま、私が体調不良でリタイアすれば良い。
実際に熱が治らなくて辛いのも事実だ。テントの中で他の人より多く休ませてもらったが、やはりちゃんと安静に出来る環境じゃないし薬もないので熱が治らない。
今の私なら正当な理由でリタイア出来るだろう。
「荷物を取って来るわ」
「ちょ、それぐらいこっちでやるって」
そう言って軽井沢さんと篠原さんがテントの中に入っていく。
「平田くん、松下さん。後のことはよろしく頼むわ。くれぐれも、最後まで油断なくね」
「分かってるよ、堀北さん。頭上にはきちんと注意しておく」
松下さんの冗談に須藤くんが笑う。私も少しだけ気が軽くなった。
「ええ、気を付けて」
夜8時の点呼が終わってから、茶柱先生に体調不良でリタイアすることを告げる。
茶柱先生は私の顔を見てから頷いた。
新しいキーカードの発行は、教員たちの設置したテントの場所でしか行えないということで、私と茶柱先生。平田くんと須藤くんの4人で弱くなっていく雨の中を移動する。
浅橋の近くに設置されたテント。
その中で待機している数名の教員。
「堀北、担架は必要か?」
「ここまで来たら流石に大丈夫です」
茶柱先生から傘を受け取り、私は明かりが灯された船を見る。
歩いて数分もしない。
平田くんと須藤くんが新しいキーカードを受け取り、それをポケットを隠したのを確認した後で、私は茶柱先生と共に船に向かって歩き出す。
「堀北さん!」
平田くんに呼ばれたので振り返ると、彼は私に向かって深く頭を下げた。
「ありがとう! 堀北さんのおかげで、今回の試験は皆で無事に乗り越えることが出来た!」
「…………まだ明日もあるわ。私はここでリタイアだから、私の代わりにDクラスのことは任せたわよ、平田くん。それと須藤くんもね」
「俺はおまけかよっ」
須藤くんはそう言って笑みを浮かべる。
平田くんも釣られるように笑う。
「うん、任せて欲しい」
そう、力強く言った。
◇ ◆ ◇
「お疲れ様です、堀北さん」
「……椎名さん?」
出入口を歩いて直ぐのロビーに、椎名さんが立っていた。
椎名さんだけじゃなく、隣には坂柳さんもいる。
「やはり体調は優れていなかったようですね。リタイアですか?」
「え、えぇ、そうよ。気付いていたの?」
「はい」
椎名さんがそう言って穏やかに微笑む。
私は何故かそれを見て、熱とは別の動悸が心臓に走ったのを感じた。
「Dクラスのリーダーは、堀北さんで
「ッ!?」
私の動揺に、椎名さんではなく隣にいた坂柳さんがクスリと笑う。
「ど、どうして分かったの?」
「堀北さんがリタイアしたからですよ」
椎名さんが当然のように答える。
動悸が納まらない。熱とは別の冷や汗が流れ始めているのを感じる。
落ち着きなさい。
私がリーダーだとバレていたとしても何の問題もない。私はリタイアし、新しいリーダーは既に別の相手だ。今は平田くんがキーカードを持っているが、それもリーダーを誤認させる為である。確率では38分の1。
いくら何でもーーーー。
「大丈夫ですよ。Cクラスは……いえ、どこのクラスもDクラスのリーダーを当てることは出来ないでしょうから」
「っ、そうね」
「ですが、契約によって
「そ、れは……どういう意味…………?」
喉がカラカラと乾くのを感じる。
椎名さんは穏やかな表情のまま。坂柳さんは口角を上げて楽しそうにしている。
そして、私の胸にある『
「よぉ、鈴音。お前もリタイアか?」
「ッ!!?」
髪が乱れ無精ひげを生やし、服をボロボロに汚した龍園くんが、不敵に笑った。
「どう、して、あなたは……っ!」
「クク、昨日から何も飲み食いしてなくてなぁ。色々と限界だったから体調不良でリタイアさせてもらったのさ」
ッ!?
「じゃあリーダーはっ!?」
「ああ、当然ながらリーダーは変更した。お前と一緒だ、鈴音」
その言葉に全身から血の気が引き、思わず膝が崩れそうになる。
「堀北さん、大丈夫ですか?」
椎名さんが私に肩を貸すように近付いてくるが、私はそれを拒み自分の意志で何とか立ち続ける。
「罠、だったのね……!」
どうしてっ!
どうして私は考えなかったの!? 疑わなかったの!?
私がリーダーを誤認させリタイアするという作戦を、龍園くんもまた取ってくるかもしれないという可能性を!!
いくら後悔しようと時間は巻き戻らない。
不敵に笑う彼を止める術を、私はもう持っていなかった。
「ククク、お前なら気付いてくれると思ってたぜ」
◇ ◆ ◇ ◇ ◆ ◇
契約した以上、仲良しこよしの無人島生活を送るポイントはない。0ポイント作戦もスパイを送り込むのも決定事項だ。
Aクラス……いや、綾小路に完封され、俺は必死に作戦を練り直した。
そして俺が注目したのは『正当な理由無くリーダーを変更できない』という追加ルール。
この追加ルールで相手のポイントを失わせることが出来るんじゃないかと。
まずはBクラス。
金田を通してワザと俺の戦略をバラし、Bクラスにリーダー当てを失敗させる。
その為に金田には友好的にBクラスの連中と接するように命令する。あのお人好し集団なら成功率は高いだろう。こっちのリーダー当てが成功すれば、これでBクラスはマイナス100ポイントも失うことになる。
問題はDクラス。
一之瀬と違い、鈴音は恐らく簡単にはいかねえ。
先月の事件もある。伊吹が戦略をバラしてもそれが罠なんじゃないかと疑って掛かって来るはずだ。
こちらから教えるのは下策か。
ならばどうすれば良いいのか。どうすれば鈴音は俺がリーダーだと、潜伏していることに自ら気付くことが出来るのか。
「龍園くん」
「…………何だ?」
「堀北さんなら気付いてくれますよ」
「根拠は?」
「清隆くんが堀北さんのことを気に掛けているからです」
「あ?」
「それに、そこまで難しく考える必要はないと思います。伊吹さんが簡単にリーダーを見つけられるとは限りませんし、場合によってはアクションを起こす必要もありますよね?」
「……はっ、確かにな」
Dクラスに何かしらのトラブルが起きて、真っ先に疑われるのは伊吹だろう。そこから俺の存在に気付かないようじゃ、アイツはその程度の相手だったってことだ。逆に裏の裏を突いて俺の作戦を見破ってくるなら、それも面白れぇ。
その後は当初の予定通りだ。
伊吹と金田をスパイとして送り込み、バカンスを楽しむ。
挑発も行ったし、しっかりとBクラスとDクラスの偵察もやって来た。
その際に椎名が鈴音と何かを話し、水を渡していた。
「龍園くん。もしかしたら堀北さんは風邪を引いているのかもしれません」
「何故そう思った」
「顔色がどこか悪そうでしたし、この暑い中で長袖を着ていてファスナーもしっかりと上まで上げていましたから」
「…………」
その言葉に俺は思考を回す。
鈴音が本当に風邪を引いていたとしてリタイアしない理由。それはマイナス30ポイントを嫌っているから。妥当な、むしろ理由はそれしかないだろう。
だが、それを『絶対』だと決めつけていいのか。
1%でも『別』の理由がないと言い切れるのか。
もしかしたら鈴音も……いや、Bクラスさえも俺と同じように考える可能性があることを考慮しなくてはならない。リーダーを変更され、リーダー当てを失敗させられる可能性が決してゼロではないことを。
これ以上の無様は晒せない。もしもの為に、何らかの対策が必要だ。
「龍園くん、私たちは今日でリタイアしますよね?」
椎名の言葉に俺は思わず舌打ちを零す。
リタイアした者が試験に戻ることは出来ない。だが、船の上から合図を送ることは出来る。それを禁じるようなルールはどこにも書いていない。
一日に一度、船のデッキで誰かがリタイアしたかを知らせる。リタイアしていた際は、そいつの名前も一緒に紙に書く。俺はそれを双眼鏡で確認する。
とはいえ6日目、7日目までは、リーダーがリタイアしないことは予想出来ていた。
リーダーを変更するということはリーダーがバレたことを意味する。なら直前まで相手を誤認させるようにリタイアを引き延ばすはずだからだ。
6日目に、金田がBクラスに俺が潜伏していることをバラした。
お人好し連中はそれを信じているようだと金田は言った。それだけでなく、リーダーの特定もきちんと終わらせていた。
Dクラス。
伊吹には金田と違い、ある条件になったらオレの元に戻って来るように命じている。
一つはリーダーが分かった時。そしてもう一つは7日目の早朝になったら、結果に関わらず戻って来いと。
その伊吹が、6日目の午後に戻って来た。リーダーが分かったのだ。Dクラスの元から消えたCクラスの生徒。これで鈴音が俺の存在に気付かないようなら期待外れだが、恐らくその心配はないだろう。Dクラスのリーダーが鈴音本人だったからだ。
偶然なのか、初めから狙っていたのか、どちらにせよ鈴音は万が一に備えていたのだ。
クク、やるじゃねえか。
だが、備えていたのは俺も同じ。その万が一は潰させてもらうがな。
教員が待機しているテントから離れた位置で身を隠す。
そしたら予想通り、鈴音が船の中に戻っていく姿を確認出来た。
後は伊吹に双眼鏡とトランシーバーを渡し、事前の指示通りに動くように命令する。
「そして俺は、こうして体調不良によって船に戻って来たのさ」
正当な理由がどの程度のものか分からなかったから、6日目、7日目に備えて丸一日は飲み食いしなかった。そしてこの汚れた見た目も相まってか、割とあっさりリタイアすることが出来た。
「っ……!」
鈴音は悔しそうに唇を噛み締めながら拳を握り締めている。
その姿に一定の愉悦と満足感を得られるが、心の底から味わうことが出来ない。
理由は当然、
Dクラスには、鈴音には勝てたが、初日で与えられたダメージが癒えることはない。
この試験は間違いなくAクラスの一人勝ち。
俺がBクラスとDクラスを上回ろうと、やってることはただの下位争いだ。
勝利とは程遠い。何よりプライドが認めない。
必ずだ。
いつか必ず奴を潰す。
□
「ハァ、皆さんが羨ましいですね」
坂柳が言葉通り、心底羨ましそうに溜息を吐く。
堀北、椎名、龍園の3人が、彼女に対して視線を吸い寄せられた。
可憐な少女には似つかわしくはない、されど、今の彼女には相応しい獰猛さで、ウフフと嗤う。
「私も早く、あなた達と一緒に遊びたいです」
◇スーパー堀北。
・だがしかし……龍園に一杯食わされた。
◇伊吹澪
・原作ではリタイアしているが、この世界線ではリタイア出来ず野宿を強いられる。意気揚々とリタイアする龍園に殺意を覚えていた。
◇雨
・Aクラスを油断させたり伊吹の足跡を残したりと恵みの雨だった。ただ、恵み過ぎたのかもしれない。
◇椎名ひより
・怖くないよ。
◇坂柳有栖
・ゴゴゴゴゴ(暇過ぎますね)