◇
3日目
つまりは夏休み最終日。
今日も今日とてオレは朝から出店の手伝いをやっている。
かき氷の原価率は20%程で安いし、暑い夏だけあって客足も悪くない。かき氷機のレンタル代は十分に稼げているし、茶道部の皆にポイントを振り分けても良いお小遣いになるだろう。
「清隆くん、注文が入りました。2人分お願います」
「分かった。ーーよし、山村頼む」
「はい」
ひよりが注文を取り、オレがかき氷を製造し、山村がシロップを掛けて客に提供する。
最終日は、茶道部1年生トリオで店を回すこととなっている。
「ありがとな、山村。初日も手伝って貰ったのに最終日にもまた来てもらって」
「いえそんな。暇でしたし……新鮮で楽しかったですから」
山村はちょっと照れ臭そうに答える。
「私も出店なんて初めてでわくわくして楽しいです」
ひよりが嬉しそうでオレも嬉しいが、出来ることなら水着になって欲しかったと思わなくもなくもない。
ひよりが水着姿だったら絶対に客足が伸びまくるのと、単純にオレが凄く見たいからである。
「山村も今日は水着じゃないんだな」
初日は森下とプールで泳いでいた為か、競泳水着にラッシュガードという組み合わせだったが、今日はひより同様に黒のTシャツを着ている。逆にラッシュガードを来て水着なのはオレだけだ。
「今日は泳ぐつもりはありませんから。1日手伝わせてもらいます」
「分かった。だけど無理はせず、体調不良や熱中症には気を付けてくれ。勿論、ひよりもな」
「はい」
ひよりと山村が仲良く頷いた。
客が途絶えたので3人で雑談していると、見知った顔が2人やってくる。
有栖と真澄だ。事前に来るとは連絡を受けていたので、オレは2人分のかき氷を作り、そのまま2人を出店の中へと招き入れる。先輩方も居ないし全員顔見知りなので何の問題もない。
「ありがとうございます、清隆くん。かき氷なんていつぶりでしょうかね」
「確かに。アイスはともかく、かき氷は久しぶりね」
かき氷に口を付ける有栖と真澄。つまり、対価を受け取ったことを意味する。
有栖はともかく、真澄という労働力の入手である。……というのは冗談だ。占いの件といいオレの知らないところで真澄は大変な思いをしているはずだし、夏休み最終日ぐらいは労わろう。
「真澄、何か食べたい物とかないか? 沢山奢るぞ」
「突然何なの?」
凄く訝しんだ表情で見られた。
「やっほー、今日もお疲れさまだね、綾小路くん!」
ストロベリーブロンドを持つ美少女が明るい声と共に近付いてくる。
「一之瀬? ……生徒会じゃないよな?」
「うん、今日は友達と遊びに来たの」
一之瀬の後ろにいるBクラスの2人の女子生徒たち。
夏休みの最後はプールで友達との思い出作りか。「羨ましいっ!」と一瞬だけ思ったが、オレも今は友達と一緒だった。人数だって負けてないぞ(どやっ)
「あっちには南雲副会長も来ているよ」
割とどうでもいいが、立場上は可愛い後輩なので視線だけ向けると、確かに居た。バレーボールを手にしており、南雲の周りには数人の男女が集まっている。
「バレーでもやるみたいですね」
椅子に座っていた有栖がすっとオレの隣に並ぶ。そして有栖の言葉通りに、水中バレーが始まった。
「あの……ところで何か注文とかありますか?」
「わわっ、ごめんなさい! えと、じゃあ3人分のジュースをください」
ひよりの言葉に一之瀬は慌てて友達の分のジュースを購入していく。それから「またね」と元気に去って行った。
「一之瀬さんも生徒会に入ったとは聞いていましたが、随分と仲良くなりましたね、清隆くん」
「そうか? 一之瀬は誰にだってあんな感じで普通だと思うが」
確かに昨日は少し話したが、誰かに指摘されるほど仲良くなった覚えはない。
「……そのようですね。いらない勘繰りでしたか」
「でも同じ生徒会ですし、油断は禁物かもしれませんよ」
有栖とひよりがコソコソ何かを話している。
「山村、ちょっと抜けさせてもらうけど大丈夫だよな?」
「は、はい。任せてください」
「監視員役だっけ? 一応はやっているのね」
「全くやらないわけにもいかないからな」
今日は南雲も来ているし、出店に掛かりっきりには出来ない。いちゃもんを付けられない程度には生徒会として働こう。まあ、適当にプール内を歩いていれば良いんだけど。
「ひよりも任せて良いよな?」
「任せてください、清隆くん」
むんっと胸を張るひより。微笑ましく可愛い。
発言を撤回して出店に居座りたくなったが、その誘惑を頑張って振り切る。
オレの隣に並ぶ有栖と真澄。
「有栖はともかく、真澄は泳がないのか?」
大勢の生徒が水着姿でこの場に居る。前回と違いこの状況なら水着に着替えたって自然だし、わざわざ男子達も鼻の下を伸ばしてジロジロ見て来ないだろう。
「最初から水着は持ってきていないし泳ぐ気はないわね」
もしかしてカナヅチかと一瞬思ったが、プール授業にはしっかりと出ていたことを思い出す。単純に面倒臭いだけか、それとも有栖から目が離せないかのどちらかか。まあ真澄が泳がないと言った以上はどうでもいいか。
「綾小路くん?」
名前を呼ばれたので振り返ると、つい最近髪を切った短髪の鈴音が居た。恰好は白いビキニというシンプルな水着姿だ。
「鈴音か。一人……じゃなさそうだな」
「ええ」
鈴音の後ろに3人の女子がオレ達の方を見ている。
話したことはないが名前は知っている。松下、佐藤、篠原だ。軽井沢の姿はない。
「……そうか、ついに鈴音にも友達が出来たのか……」
鈴音が誘ったのか、誘われたのかは分からないが、誰かと一緒にプールに来ているという光景。
凄く感慨深い。ホロリと来てしまいそうだ。
「その腹立たしい顔を止めてもらっても良いかしら。殺意が湧いてくるから」
相変わらず物騒すぎる。
だがしかし、友達が居て人目の多いこの場所で犯行に及ぶことはないだろう。……ないよな?
「真澄さん、何か前より気安い……仲良くなってませんか?」
「知らないわよ……」
ん、何が知らないんだ?
そう聞き返すよりも前に歓声が聞こえて来た。何事かと顔を向けると、南雲たち上級生が行っている水中バレーがどうやら大盛り上がりしているらしい。
「流石といったところかしら。上級生だけあってレベルが高いわね」
「会長だけでなく、南雲副会長の方も文武両道のようです」
南雲が優れた運動神経を発揮して鋭いスパイクを叩き込む。得点が入り、キャーっと黄色い歓声が上がった。プール内では他の試合も行われているが、殆どのギャラリーが南雲以外に見向きもしていない。
一応挨拶だけはしておこうと思ったが、これはタイミングを見た方が良さそうだ。下手に絡まれても面倒臭い。
「あれが南雲雅。兄さんの……」
オレの背後で鈴音が何かを呟いたが良く聞き取れなかった。
まあどうでもいいか。鈴音の背後に居るDクラス3人の視線も気になってきたし、そろそろ離れよう。
「堀北さん……だよね? わぁ、一気に髪を短くしたね! 凄く似合ってるよ!」
先程別れたはずの一之瀬が再び姿を現した。しかも一之瀬含めた女子3名の他にも、3人の男子生徒が追加されている。1人は神崎であり、もう1人は柴田だ。
一之瀬はそのまま鈴音と話し始める。相変わらずの社交性だ。
「ちょっと待ちなさい、綾小路くん」
「ん」
鈴音と一之瀬を横目に移動しようとしたら呼び止められた。
「これから一之瀬さん達Bクラスと水中バレーをすることになったの」
「? そうか」
「見て分からないの? 私たちは4人で、一之瀬さん達Bクラスは6人。しかも男子も居るのよ」
「見たら分かるが……オレも参加しろってことか?」
「当然でしょ」
当然ではない。人数が不足しているならBクラスから男子が1人移動すれば良いだけだ。
「少し待ってください、堀北さん。
「たっか」
「綾小路くんは私に色々な貸しがあるはずよ。それを清算してもらうわ」
鈴音に貸しなんてあったか?
……もしかして、生徒会長の件や橘との焼肉の件のことを言ってる? え、まだ根に持ってるのか?
「いや待て、それでも5対6だ。オレが参加する必要性を感じない」
「神室さん、お願い出来るかしら?」
「清隆くんだけでなく真澄さんまでとは……強欲ですね堀北さん。2人合わせてレンタル料は1時間50万ポイントですよ」
「そもそも水着を持ってきていないわよ」
「そう……、なら5対5で良いかしら、一之瀬さん」
「オッケー!」
オッケーではないのだが、強制的にA&DクラスvsBクラスの水中バレーが始まりを告げた。
いや、数は同じになっても向こうは男子が2人だぞ。普通にズルくないか?
「あー……、取り敢えずよろしく」
「よろしくね、綾小路くん」「よ、よろしくお願いします」「よ、よろしく」
唐突にDクラスの中に放り込まれるオレ。松下、佐藤、篠原の順に言葉を返してくれる。松下はともかく、他2人の表情がとても硬い。いや、オレだって緊張しているし当然のことだとは思うけど。
「綾小路くん、負けた方が相手側の昼食代を負担することになったわ。負けたらあなたに全額出してもらうことになるから、よろしく頼むわよ」
「よろしく頼まれない。いや、何でだよっ」
Aクラスのオレが参加しているだけでもおかしいのに、暴君かコイツは。
「干支の試験で各クラスから50万ポイントずつ奪い取ってるでしょ? それぐらい楽に支払えるはずよ」
「ふざけんな、それを言うなら全員に50万が行き渡るはずだろ」
「ケチ臭いわね」
舌打ちしやがった。ワザと負けてやろうか?
「堀北さん、楽しそうだね」「これイチャついてない?」「え、これが!?」
「いっくよー!」
オレと鈴音がガンを飛ばし合っていると、一之瀬がサーブを打ち上げる。
緩やかな放物線を描いて飛んできたボールを松下が打ち上げる。それに対し「わわっ」と佐藤が不格好ながらトスでボールを繋げた。
そのボールが丁度オレの頭上に上がって来る。
ボールを見上げながら、先程の南雲プレーを脳内で再生させる。
取り敢えず、高く飛んで強くボールを叩きつければ良いんだよな? 一之瀬はサーブを手の平で打っていたし、スパイクも同じような手の形で多分いけるはずだ。
「わっ」
高く飛んで一之瀬と柴田の間を狙ってボールを叩き込むと、狙い通りの鋭い弾道が水上に着弾した。我ながら良いスパイクだったと思う。ビギナーズラックだとしても、今の感覚を忘れないようにしておこう。
「やるねぇ、綾小路くん。でも簡単には負けてられないよ」
ボールをこちらに投げ渡しながら笑う一之瀬。
篠原が「えい」と山なりのボールを打ち上げる。それをBクラスが綺麗にボールを繋いでいき、最後に柴田がスパイクを打ち込む。
それを鈴音がギリギリでボールを打ち上げる。
「綾小路くん!」
角度が悪かったボールだが、それを松下が上手くカバーし、再びオレにトスが上がった。
なので先ほどの再現を繰り返す。狙うコースだけを変え、誰もいない隙間にボールを叩き込んだ。
「凄いね、綾小路くん。もしかして経験者?」
「松下が良い感じにボールを上げてくれたおかげだ。それと初心者だから過度な期待はしないでくれ」
「え?」
その言葉に松下だけでなく鈴音、一之瀬達の視線も集まった。そんな変なことを言った覚えはないが。
「そうなの? あの動きで?」
「スパイクは高く飛んで強く打つだけで良いからな。そんな難しくなかった」
「なるほど……?」
曖昧な感じで松下が頷く。
篠原がサーブを打ち、Bクラスはトスを繋いで最後に柴田がスパイクを打った。狙いはオレ。
両手を添えてレシーブの形を作りながらボールを受けてみるが、ボールは明後日の方向へと飛んでいった。「いえーい」とBクラスではハイタッチが行われる。
「ふざけてるの?」
「だから初心者だって言っただろ」
「あ、本当だったんだね……」
嘘をつく理由も特にないしな。
その後も試合が続き、Bクラスが優勢のままで1セット目を取った。
初心者であるオレが防御の穴なのは勿論、佐藤、篠原の運動能力もそこまで高いものではない。対してBクラスは男子が神崎、柴田と2人おり、一之瀬はともかく、麻子ちゃんと呼ばれている網倉麻子の運動能力もなかなか高い。総合力で負けているのだから当然の帰結でもあった。
1セット目で最後のミスをした佐藤が申し訳なさそうに謝る。
「ご、ごめんなさい」
「気にすることはないわ。悪いのは全部綾小路くんだから」
「おい」
「それに、負けても綾小路くんが全額支払ってくれるから気負う必要もないわ。気負わず頑張りましょう」
他者を気遣えるのは良いことだと思うが、その気遣いをオレにも少しは分けて欲しい。
「清隆くん」
顔を上げると、オレ達の試合を観戦していた有栖と目が合う。
「遊びとはいえ、簡単に負けることは許しませんよ」
「いや、遊びなら別に負けても良いだろ」
「…………それもそうですね。負けても良いですよ、清隆くん」
「良くないわ」
背後から脇腹に手刀が突き刺さった。痛い。
2セット目が始まる。
柴田が打ったサーブがオレ目掛けて飛んでくる。
1セットは散々だったが、流石に『学習』させてもらった。腕の位置とボールの回転に気を付けながらボールを打ち上げる。
「やれば出来るじゃない」
威力を殺し綺麗に打ち上がったボールを鈴音がトスで繋ぎ、最後に松下がスパイクを決めた。
ようやく守備でも貢献出来るようになって来たので、その後も佐藤や篠原のカバーも積極的に行いながら、隙を見てスパイクを叩き込み点を稼ぐ。
「あ、綾小路くんが、ありがとう」
「気にするな。今は味方同士だろ?」
「う、うん」
佐藤が零したボールを拾い上げながら、ボールの行方を目で追う。戦況は五分。守備が出来るようになってようやく均衡か。たった一人の差とはいえ、男子が多いはやはりズルいのでは?
「綾小路くん、決めなさい」
はいはい……。
2セット目を何とか勝ち取り、3セット目も接戦の末に辛勝。
「にゃぶーっ、悔しい!」と一之瀬や柴田達が割と本気で悔しそうに唸っていた。
「良くやったわ、綾小路くん」
「本当にな。我ながら頑張ったと思う」
後半は水中コートの半分は動き回っていた気がする。こちとら初心者だぞ。
まあ、人生初めての水中バレーを十分に堪能出来たので良かったが。
「Bクラスから奢ってもらえるのだから良いでしょ」
「それは当然として、お前からも有栖や真澄にも何か奢ってやってくれ。迷わ……いや、レンタル料ってことで良いだろ?」
「……まあ、2人分ぐらいなら良いわ」
「ついでに、ひよりと山村にも頼む」
「それは自分で奢りなさいよ」
ちっ。
プールから上がり有栖と真澄の元に戻ると、有栖はニッコリと見事に作った笑顔を浮かべていた。「どうした」と問いかけるより前に、有栖はオレの手を抓ってくる。
「清隆くん、私は負けても良いと言いましたよね?」
「……確かに言ったが、別に勝てるなら勝っても問題ないはずだろ?」
万が一にでも奢らされる心配もなくなるし。
「他の方には、あまりカッコいい姿を見せないでください……」
有栖がぽつりと呟く。今日は比較的に小声が多いな。周囲の喧噪に紛れてあんま聞き取れないんだが。
「あまり実力を発揮し過ぎればDクラス、Bクラスの警戒も強まるでしょう?」
「まあ、そうかもな……?」
有栖の視線の追うと佐藤と目が合った。すると佐藤はビクっと肩を震わせ、慌ててオレから目を逸らす。同時にオレの腕を抓る有栖の手に力が入った。あの、そろそろ痛いんだが……。
「真澄さん、どう思います?」
「知らないわよ。けど、綾小路が注目を集めるなんて今更じゃないの?」
「仕方がないこととはいえ、困りましたね」
有栖が溜息を吐く。
何の話かイマイチ把握し切れないから口を挟みづらい。
さりげなく腕を引くが、有栖の手から解放されることはなかった。
◇
「よぉ、綾小路。店は繁盛しているか?」
「お疲れ様です、南雲副会長。見ての通り今のお客さんは目の前にしか居ませんね」
お昼を過ぎた午後の時間に、南雲が出店に顔を出した。ひよりを後ろに下げオレが対応する。
「話には聞いていたが、生徒会の活動と出店を同時にやるとはな。部活の掛け持ちもそうだが、不真面目な奴だ」
「生徒会長から許可は下りてますし問題ないですよ」
「その生徒会長も10月になったら交代することになる。俺は茶道物の掛け持ちを認める気はないぜ?」
「そうなったら普通に生徒会辞めますけど」
「即答かよ。相変わらず可愛げのない後輩だ」
「オレにそういうのを求めるだけ無駄ですよ。それに、可愛げは一之瀬が居れば十分でしょう」
「ハッ、確かにな。今更お前に媚びを売られても気持ち悪いだけだ」
気分が害するわけでもなく南雲は笑う。相変わらず『退屈』していそうな先輩である。
だから何となく、南雲が言いそうなことも検討がついた。
「綾小路。さっき帆波達とバレーをやっていただろ? 今度は俺と勝負しようぜ?」
「嫌です。見たら分かりますよね? こう見えて掛け持ちで働いているんですよ」
「少しの間だけ、綾小路を借りて行っても良いよな?」
南雲はオレを無視して、後ろに居るひよりと山村に言葉を投げかける。山村はビクリと驚き、ひよりは無言でオレの目を見てくる。取り敢えずは何も言わないでくれと、目で伝えておく。
「上級生……しかも生徒会副会長に言われて『嫌』と正面から断れる下級生はいません。あんまり彼女達を驚かせないでやってください」
「お前はたった今俺に『嫌』と言ったけどな」
「オレは嫌だと断れる人間なので。パワハラには屈しませんよ」
「……可愛げが無さ過ぎるのも問題だな」
「あはははははっ!」
南雲の呟きに、彼の後ろに居たひまわりの髪飾りを付けた女子生徒が声を上げて笑う。
「いやー、雅を相手に正面から言い返せる後輩が居るんだね。生意気だけど、良い後輩じゃない」
「なずな、お前は何を言っているんだ?」
「ごめんね、綾小路くん。雅が邪魔しちゃって。これ、友達の分も含めてかき氷を6つくれないかな?」
「ありがとうございます。今準備しますね」
助かるし、注文もしてくれるなんて良い先輩だ。
南雲と近しい距離に居るようだし後で名前でも確認しておこう。2年生は南雲に殆ど支配されているとのことだが、彼女は『どちら側』か。場合によっては情報源の一つとして使えれば儲けものだ。
「び、びっくりしました……」
去って行く南雲達の姿を見ながら山村がほっと一息吐く。
特に威圧感を放っていたわけでもないが、相手はやはり上級生で生徒会の一員。気弱な山村には要らない緊張感を与えていたようだ。
「山村もひよりも黙っていてくれて助かった」
もし「どうぞ、どうぞ」なんて許可を出されていたら今頃は南雲とバレーでも興じていたかもしれない。それは、今のオレにとって都合の悪い展開だった。
「それは良いんですけど、清隆くん。もしかして、副会長さんに目を付けらえてますか?」
じーっとひよりがオレの目を見つめてくる。
「まあ、ちょっとだけ目を付けられてるかもしれない」
「ちょっと?」
「大分……」
期末テストでは南雲から100万プライベートポイントを巻き上げているし、それがなくとも生徒会長から推薦された(ということになっている)オレに一定の興味を抱いていた。
「それでも、ひよりが心配することにはならない」
少なくとも今直ぐは。
「清隆くんのことだから大丈夫だと信じていますが…………モテモテですね」
「南雲にモテても全く嬉しくない」
「女の子相手ならどうなんですか?」
「そりゃあ、オレも男だしな」……なんて間抜けな発言を
「周りがオレをどう思っているかは分からないが、オレにとってはひより達が一番だ」
「
「ひよりが一番だ」
「ふふ、嬉しいですが、言わせてしまいましたね」
オレはひよりに近付き、彼女の小さい右手を両手で握った。
「前に言ったかもしれないが、ひよりとはずっと仲良くしたい。一緒に居たいと思っている。言わされたつもりはない。オレの
「あ、ありがとう、ございます」
握った手からぐんぐんと熱が伝わって来る。ひよりはオレの視線から逃れるように目を泳がせ、最後には俯いて顔を隠した。垂れた横髪の隙間から真っ赤に染まった耳を覗かせている。
オレも普通に恥ずかしいが、しっかりと伝わってくれだろうか?
「あのぉ、お客さんが来ました……」
「ひゃっ、す、すみません!」
こちらに顔を向けていないが耳が赤くしている山村。トマトのように赤くなったひより。
オレも、体感温度が上昇しているのはきっと気のせいではないだろう。
……夏だなぁ。
◇ ◆ ◇
夕焼けに染まる空も、徐々にだが暗くなっていく。
出店と生徒会の活動も無事に終わった。
ひより、有栖、真澄。それと一緒に最後まで出店を手伝ってくれた山村の5人で外食も済ませた。
後は明日から始まる2学期に備えて、部屋でのんびり過ごして眠るだけだ。
そう思っていたオレにチャットが届いた。
『今から部屋に行くから』
◇須藤健
・原作では池、山内と共に『犯罪行為』を行うが、この世界線の須藤は「流石にヤバイだろ」と陰で2人を止めている。堀北をプールに誘えなかったからという理由の一つである。
◇堀北鈴音。
・松下達にプールに誘われ、