ようこそAクラスの教室へ   作:yadooo

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原作6巻
50話:ペーパーシャッフル


 10月中旬。

 次期の生徒会を担うメンバーを決める総選挙が行われた……が、生徒会長ーー3年の堀北学が立候補するわけではないし、南雲の対抗馬は誰も出なかった。なので信任投票によって南雲が新たな生徒会長となった。

 

 全校生徒を体育館に集め、新旧生徒会の交代式がやってくる。

 

「約2年、生徒会を率いて来られたことを誇りに思うと同時に感謝します。ありがとうございました」

 

 あまりにも短い挨拶だ。まあ長々と話されるよりは全然マシだが。

 粛々と後退して元の位置に戻る堀北兄。

 それと入れ替わるように壇上に立つ南雲は、自己紹介と共に礼儀正しい就任の挨拶を行う。

 普段のチャラい感じがあまりしない。違和感が強く、もしかして別人かなと一瞬だけ思ったが、穏やかだった空気を変えて、薄く小さい笑みを浮かべる南雲を見てきちんと本人だったと再確認した。

 

 南雲は宣言する。

 生徒会役員の任期を在学中無期限化。

 総選挙の制度と生徒会役員の規定人数制限を撤廃。

 不適格な生徒会役員の投票による除名制度。

 

 まさか卒業するギリギリまで独裁者になり続けたいのだろうか?

 イエスマンだけ固めて好き放題出来るぞ、これ。

 

「私はこれからの学校作りとして……まずは歴代の生徒会が守ってきた、こうあるべきという学校の姿を全て壊していくつもりです。本来なら、今すぐにでも私の考える新体制として動き出したいところなんですが、残念ながらそうもいきません。新米生徒会長には色々としがらみも多いもので」

 

 南雲は堀北兄を見て、オレを見た。だがすぐに在校生たちへ振り返る。

 

「近々、大革命を起こすことを約束します。実力ある生徒はとことん上に、実力のない生徒はとことん下に。この学校を真の実力至上主義の学校に変えていきますので、どうぞよろしくお願いします!」

 

 <新生徒会メンバー>

 2-A 生徒会長、南雲雅

 2-B 生徒会副会長、桐山生叶。 

 2ーA 生徒会書記、溝脇

 2-A 生徒会書記、殿河

 1-A 生徒会書記、綾小路清隆。

 1-C 生徒会書記、一之瀬帆波

 

 

 

 

 

  ◇ ◇ ◇

 

 

「清隆くんって本当に美味しそうに食べるよね」

 

 食後にアイスデザートを食べているオレを見ながら、同じくカップアイスを食べながら桔梗は言う。

 

「実際、美味しいからな」

 

「美味しいのはまぁ、否定しないけど。毎日アイスばっか食べてて飽きないの?」

 

 同じのばかり食べ続けていれば飽きるだろうが、毎日違う種類のアイスをローテーションさせながら食べてるから全然だ。

 

「やっぱりそれも学校に行ってなかったのと同様の理由?」

 

「ん? まあな。アイスを食べたのは高育(ここ)に来てから初めてだ」

 

「本当にどんな生活を送ってたんだか、凄く気になるけどちょっと怖いよ」

 

 ホラー要素はないし怖くはないが、まぁ簡単に話したり言いふらす内容でもない。

 

「まあいいや。…………ところで綾小路くんさ。体育祭の借り物競争で、私のことを友達だって言ったでしょ」

 

「あの時は助かった。桔梗のおかげで友達10人というお題を見事に達成することが出来た。改めてありがとう」

 

 入学して約半年ほどで、このオレが友達10人という高難易度のお題をクリア出来たのだ。我ながら感慨深い。

 

「変なところでピュアなのやめてくれないかなぁ」

 

 桔梗がオレから視線を逸らしながら何かを呟いたが、喜びを再度噛み締めていたせいで聞き逃した。悪いがもう一度言ってくれ。

 

「とにかく、清隆くんがあんな大勢のいる前で私のことを友達って言ったせいで、私は変に注目を浴びるようになったの」

 

「それは悪……い? いや、注目を浴びるのは嫌いじゃないんだろ?」

 

「それはまあね。優越感を感じられたのは悪くなかったけど、でも変(・)にって言ったよね? 綾小路くんと友達だって知られたことでやっかみを買うかもしれないでしょ」

 

「……すまん。意味が分からない」

 

 オレと友達でやっかみを買うってオレは疫病神か何かか?

 そんな疑問を持つオレに桔梗はワザとらしく溜息を吐く。

 

「清隆くんはもっと自分が有名人だって自覚した方が良いよ。特に最後のリレー。あれだけの走りを見せておいて目立たないわけないじゃん」

 

「たかが足が速いだけだろ?」

 

「さ(・)れ(・)ど(・)、だよ。そしてテストで満点取れるぐらい勉強も出来る。どうせ今回の中間テストだって満点を取ってるんでしょ」

 

 中間テストの結果が発表されるのは明日だが、まあ特に手を抜かず普通に受けたから満点だろうな。

 

「クラスの女の子から清隆くんが気になっている子がちらほら居んの。それで、私に紹介して欲しいって頼んで来んのよ」

 

 言葉尻が少し荒くなる。

 

「そして、私は優しくて皆から好かれるクラスで人気者なの。これがどういう意味か分かる?」

 

 なるほど。いくら面倒だと感じても断れないと、そう言いたいのか。

 

 面倒臭いのは御免だが、同時に知り合いが増えるのは素直に歓迎出来る。その中にはいずれ友達になる相手が含まれているかもしれないしな。

 だが、それを馬鹿正直に伝える必要はないし、今はそんな可(・)能(・)性(・)よりも目の前の友達(桔梗)の方が大事だ。

 

 桔梗がオレと友達であることによって、彼女の欲が満たされ役に立てているならオレ(友達)としても悪い気分ではない。しかし、オレの存在によって桔梗に無駄な負担(ストレス)を掛けることもまた望んでいない。

 

「どうしたら良い? 何かオレに出来ることはあるか?」

 

「…………こっち来て」

 

 食べ終わったカップアイスを置き、桔梗はベッドに座るように促す。

 大人しく従うと、桔梗は横向きの状態でオレの膝の上に頭を乗っけて来た。

 

「…………こんなんで良いのか?」

 

「物足りないって言うなら特別に頭を撫でても良いよ。ただし、優しくね」

 

 いや、そういう意味じゃ……まあいいか。

 

 オレは緊張しながら桔梗の頭をゆっくりと撫でる。

 男であるオレの髪質とは全く違う。指通しが良く、柔らかくてサラサラだ。逆にオレの手で髪を痛めてしまわないか心配になってくる。

 

「……どうだ?」

 

「まあ、悪くないんじゃない」

 

 頬を赤くしながらぶっきらぼうに答えてくる。それから携帯を取り出し、ちょくちょく鳴っているチャットに返信をし始めた。

 

「オレも本を読んで良いか?」

 

「良いけど、止めないでね」

 

「いや、片手で読書は厳しいぞ?」

  

「なら諦めて」

 

「……せめてテレビぐらいは点けさせてくれ」

 

 オレは基本的に最低限の連絡でしかチャットを使用しない。何か伝えたい内容があっても会って話した方が楽だと思ってしまう。そんなオレと違い、桔梗には沢山チャットでやり取りする相手が居て、それなのに早く返信しないといけないなどの特有のルールもあって本当に大変そうだ。

 忙しなく携帯を操作しているそんな桔梗を労わるように(クイズ番組を見ながらだが)長い時間彼女の頭を撫で続けた。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 中間テストの結果発表がされた後。

 各教科の先生から繰り返し聞かされていた通り8科目の小テストの実施が告知される。

 

「小テストは全100問で100点満点となっているが、その内容は中学3年生レベルの問題で成績には一切影響しない。0点だろうと100点だろうと取って構わない」

 

 点数が影響しないと聞かされた時点で、大半が『次』を予想出来ただろう。

 

「この小テストの結果を基に『クラス内の誰かと2人1組のペア』を作ってもらう。そしてそのペアは一蓮托生で期末テストに挑んでもらう」

 

 真嶋先生は期末テストのルールを説明する。

 

・試験科目は8科目各100点満点、各科目50問の合計400問。

・全科目に最低ボーダーの60点が設けられており、60点未満が1つでもあれば2人とも退学(この60点はペア2人の合計点を示す)

・総合点もペアの合計で定められ、例年の必要総合点は700点前後。これを下回っても2人とも退学となる。

 

 これが例年行われているペーパーシャッフルと呼ばれる”特別試験”の内容のようだ。

 例年1組か2組の退学者を出しているそうだが、学力の高いAクラスなら問題ないだろう。ペアということもあり、もしも片方が低い点を取ったとしても、もう片方でフォローが可能だ。

 それで、シャッフル要素は?

 

「肝心のペアの決定方法は小テストの結果が出た後に発表する」

 

 すぐに教えないということは即ち、教えることでペアの相手を変えることが出来る、という事実を内包している可能性が極めて高い。まあ、誰とペアを組もうとAクラスなら何の問題もないわけだが。

 

「期末テストで出題される問題だが、それはお前達が作成し、その問題を所属するクラス以外の3クラスの1つへと割り当てられる。つまり、他のクラスに対して『攻撃』を仕掛けるということだ。迎え撃つクラスは『防衛』する形となる。自分たちのクラスの総合点と、相手クラスの総合点を比べ、勝ったクラスが負けたクラスから50ポイントを得ることが出来る」

 

 これがシャッフル要素か。

 因みに、2クラスがお互いを攻撃し、直接対決となった場合はクラスポイントは一度に100ポイント変動するようだ。 

 

「作り上げた問題は我々教員が厳正かつ公平なチェックを行う。指導要領を超えたり、出題内容から解答が出来ない問題はその都度修正してもらうことになる。そのチェックを繰り返し、問題文とその解答を作成し完成してもらう」

 

 テストまで残り1カ月ほどで、合計で400問の作成。

 1人で問題を作ろうとすれば大変そうで、人数を増やせばその分問題のクオリティにバラつきが出るだろう。学校に提出後修正、変更なども考慮すると、早いペースで作っていく必要もありそうだ。

 その後もテスト作成の補足がされ、最後に。

 

「気になるであろう、相手のクラスがどこなのか……だが、それに関しては単純明快だ。希望するクラスを生徒側が1つ指名し私が上に報告する。その際に別のクラスと希望が被っていた場合には、代表者を呼び出してクジ引きを行う。逆に被っていなかった場合には、そのまま確定となる。どこのクラスを指名するかは慎重に考えるように。ーーーー以上だ」

 

 そう真嶋先生は締めくくり、今日の授業は全て終了となった。

 

 そして教室から出て行ったタイミングで、葛城が教壇に上がりクラスでの話し合い(作戦会議)が始まる。

 

 *

 

 期末テストにおけるペアの決定方法。いうなればその法則性だが、別にオレや有栖が口を挟まずとも葛城を中心に真田や森下など何人かは違和感に気付き、そして答えを導き出していた。

 「勉強しか出来ない頭でっかちではないようですね」と有栖がにこやかにしている。

 

・小テストが成績に反映されず0点でも構わないこと。

・総合点のボーダーラインがまだ確定していないこと。

・小テストの後でペアが決定すること。

・例年同じ試験が行われていること。つまり上級生に確認すればすぐに答えが分かるのを、わざわざ先生が隠す理由。それは法則性を見つけ出すことが前提条件ではないかということ。

・しかし、例年1組か2組の退学者しか出ていない点から、最悪法則性を見抜けなかったとしても壊滅的な結果にはならないのではということ。

 

 要約すると『ペアの法則性を見抜けなかったとしても、期末試験への深刻な被害は出ないようになっている』だ。

 ならどんなペアの組み合わせなら、そうならないか。

 答えはシンプルで、『高得点を得た者と低得点を得た者がペアを組む』だ。

 これなら法則性に気付かずにペアを組むことになってもバランスの取れた組み合わせになる。間違っても成績の悪い者同士がペアを組み悲惨な目に遭うことはないだろう。

 

 最後に葛城達からオレと有栖の方に確認を取られたので「それで間違ってないはずだ」と返しておいた。

 

「まあ、ペア決めに関しては俺達のクラスではそこまで心配することは無いだろう」

 

 殆どの生徒が同意するように頷くのを見ながら葛城は続ける。

 

「なら次にどこのクラスを『攻撃』するかだが、Dクラスで指名しよう」

 

 確実に勝てる相手を狙う。堅実で何も間違っていないし、クラスメイト達も「それで問題なし」という空気が流れている。

 しかし、それに待ったをかける者がいた。

 隣人の有栖だ。

 

「あまりにも堅実でつま……ここはCクラス(一之瀬クラス)を狙うべきでしょう」

 

「何故だ坂柳? 俺達に劣らずCクラスの学力は高い。万が一に敗北する可能性だってあるんだぞ」

 

「だからこそのCクラスです。今回の特別試験、普通にやれば学力の高い私たちのクラスとCクラスが有利でしょう。相手側も恐らくそう思っている。そんな勝ちを拾えると思っている試験で、敗北してしまえば、Cクラスは大きなダメージを負うことになるでしょう」

 

 攻撃的な意見だ。

 だが、勝てばCクラスに対してはポイント以上に精神的なダメージを与えられるのは間違いない。

 

「それに、私と清隆くんが居るんです。負けることはあり得ませんよ。あなた達が足を引っ張ると言うなら別ですが」

 

 何故挑発的な発言をするのか……。いや、発破を掛けているのか? どのみち、クラスメイトの何人かの目の色が変わった。

 

「綾小路はどう考える?」

 

「オレか? 葛城の堅実な考えも有栖の攻めの考えも両方理解出来るし、正直どちらでも構わない。普通に多数決で良いんじゃないか?」

 

「清隆くんは私の味方をしてくれないんですね」

 

「あー……、因みにオレはCクラスを狙う派だ」

 

「多数決を取るぞ」

 

 そんなこんなで多数決が行われた。

 17対23。

 狙うはCクラス(一之瀬クラス)。有栖の案が採用されることとなった。

 

 

 *

 

「綾小路、坂柳」

 

 話し合いが終わり、教室を出ようとするオレ達を葛城が呼び止める。

 

「お前達2人にテスト問題の作成を頼みたいと思っているんだが、構わないか?」

 

 おお、面倒臭いっ。

 

 




◇櫛田桔梗
・綾小路をクラスの女子に紹介したくない。しかし、自分のキャラ的に紹介せざるを得ないというジレンマ(ストレス)。ただ、それを綾小路が察してくれ、自分のケアに回ってくれているので結果としてプラスになっている。

もっと登場して絡んで欲しいと思うキャラは?(参考程度に)

  • 椎名ひより
  • 坂柳有栖
  • 神室真澄
  • 堀北鈴音
  • 櫛田桔梗
  • 山村美紀
  • 森下藍
  • その他
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