Pokemon Legends YAKUZ−A!   作:洋菓子職人II

10 / 10
はい。本作の癒し(デウロちゃん)が本来ならここが初登場回のつまりでしたが、前々回のオチをつけるために出してしまった。という裏話です。


絶滅危惧種との初遭遇

「あはは! つかまえた……って、またかわされたー!?」

「おい、いい加減にしろタウニー。俺は笑わんぞ」

 

 静かなロビーにタウニーの弾んだ声と、カズマの鋭い衣擦れの音が響く。カズマがポケットに手を突っ込んだまま、見事なスウェーでタウニーの包囲網をすべて無効化していた、その時だった。

 

 「…朝から随分と賑やかで良いな……」

 

 「あ、AZさん! ごめんなさい、朝から騒がしくしちゃって……!」

 

 タウニーは慌ててくすぐりの手を止め、背筋を伸ばして頭を下げた。だが、AZは気にした風もなく、低く温かい声で笑った。

 

 「構わんよ。楽しそうな話が聞こえてきたのでな……。カズマ、タウニーとの会話は聞いていた。ZAロワイヤルに参加してくれるそうだな。感謝する」

「……いや。俺はただ、タウニーへの恩を返したいだけだ」

 

 カズマは姿勢を正し、AZが放つ隠しきれない気高さに、静かな敬意を払いながら応えた。AZは優しく目を細め、開発途中のミアレシティへと視線を向けた。

 

 「今でこそ、この街はポケモンと人で活気にあふれている。だがな……カズマ。其の実、この地は深い悲しみを抱えているのだ」

 

 AZの声が、一瞬だけ、遠い過去を悼むように低く沈んだ。

 「…私は、このミアレの悲しみを解き放ちたい。そのために、きみにはMZ団として、ZAロワイヤルを勝ち上がってほしい。カズマ、そのために昼のミアレ、夜のミアレを歩き、多くのポケモンや人に出会いなさい。きみのその真っ直ぐな魂があれば……きっと新しく、素晴らしい出会いがあるだろう」

 

 カズマは、AZの言葉の裏にある「何か」を鋭く感じ取った。単なる都市の再開発ではない、この街の根底に眠る歴史の重み。だが、カズマのやるべきことは変わらない。

 

 「あぁ。昼だろうが夜だろうが、関係ねぇ。俺の目の届く範囲で、困っている奴がいるなら……この拳で、道を切り拓いてみせるさ」

 

 カズマが力強く頷くと、足元でニシキが『おうよ! 爺さん、俺たちの背中を黙って見てな!』と言いたげに、尾ビレをパシッと床に打ち付けた。

 

 「ふふ、頼もしいね!」

 

 タウニーが二人の様子に満足そうに頷き、再びスマホロトムを構えた。

 

 「あ、そうだカズマ! 最後に、このミアレシティで生き抜く上で一番大事なことを教えてあげる。街中で野生のポケモンに襲われた時の緊急回避……通称『ローリング』っていうんだけどさ――」

 

 タウニーはそこまで言って、ふと動きを止めた。そして、さっきまで自分のくすぐりを、ミリ単位の頭の動き、スウェーだけで完璧に避けていたカズマの圧倒的なスタンスを思い出す。

 

 「……って、カズマのスウェーを見てたら、地面をゴロゴロ転がるローリングなんて、教える必要ないか」

 

 タウニーはがっくりと肩を落とし、呆れたようにため息をついた。

 

 「もー、本当に規格外なんだから! よし、それじゃあプロフィール写真はこれで登録しちゃうからね!」

 

 画面に登録されたのは、タウニーのくすぐりを神業的なスウェーで回避し、ほんのわずかに不敵な笑みを浮かべたような、最高にハードボイルドなカズマの姿だった。

 

 背後のエレベーターの扉がチーンと静かな音を立てて開き、中から一人の少女とヒトデマンが飛び出してきた。

 

 「タウニー! ちょっと朝からうるさ――」

 

 文句を言いかけながらロビーに足を踏み入れた少女の言葉が、ピタリと止まった。彼女の視線の先には、腕を組み、彫刻のような仏頂面で佇むカズマの姿。

 幾多の修羅場を潜り抜けてきた男だけが持つ、顔面凶器とも言える鋭い眼光。そして、グレーのジャケット越しでも一目でわかる、逞しすぎる体格とカタギにはとても見えない圧倒的なオーラ!

 

 「ひ、ひゃああああああああっ!?」

 『へ、へあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?』

 

 少女は悲鳴を上げ、ヒトデマンは何処かのウルトラなマンが出しそうな声を上げて、まるで恐ろしいポケモンに遭遇したかのように、その場に飛び上がってAZの背後に隠れた。

 

 「ちょっとデウロ、いきなり大声出して何よ! 朝からうるさいのはデウロの方じゃない!」

 

 タウニーが容赦なく文句を言い返すと、デウロと呼ばれた少女はAZの膝越しに恐る恐るカズマを見つめながら、素直にシュンと頭を下げた。

 

「うぅ……ごめんなさい。でも、あまりにも凄みがある人がいたからびっくりしちゃって……」

 

 デウロはトトト、とAZの影から這い出ると、AZを見あげながら純粋な疑問を投げかけた。

 

 「あの……AZさん。この人…… ホテルのお客さんなんですか?」

 

 問われたAZさんは、穏やかに頭を揺らし、カズマの肩に視線を送った。

 

 「いや、ただの客ではないぞ、デウロ。カズマは今日から、我らがMZ団の新メンバーとして力を貸してくれることになったのだ」

 

 「えっ、MZ団の新メンバー!?」

 

 デウロは丸い目をパチクリとさせ、もう一度カズマを見上げた。今度は怯えた様子は一切なく、むしろプロのダンサーを目指す者特有の、旺盛な好奇心と度胸がその瞳に宿っている。

 

 「あぁ。カズマだ。……見た目で怖がらせちまったようだな、すまねぇ」

 「ううん、ううん! こちらこそ、いきなり叫んじゃってごめんなさい!」

 

 デウロはぶんぶんと首を横に振ると、カズマの前に一歩踏み出し、ダンサーらしくピシッと背筋を伸ばして、ハキハキとした笑顔で胸を張った。

 

 「わたしはデウロ! プロのダンサーを目指して、このミアレシティに来ました! ……えっと、それから、クロワッサンが大好きです!」

 

 最後の言葉に少しだけ照れくさそうに笑うデウロの姿を見て、カズマはフッと小さく口角を上げた。その無邪気で真っ直ぐな自己紹介は、派手なミアレシティの中に咲く、一枚の可憐な花のようにロビーの空気を和ませていく。

 

 『へえ、ダンサーのお姉ちゃんか! 動きのキレが良さそうじゃねえか。おいカズマ、ミアレの一等地で美味いクロワッサンが食える店、この子に教えてもらおうぜ!』

 

 (お前は食うことしか考えてねぇのか…?)

 

 足元では、ニシキが床の上をご機嫌に跳ね、新しく増えた仲間の登場を歓迎するように、尾ビレをパシャパシャと元気よく打ち鳴らすのだった。

 

 デウロのハキハキとした自己紹介が終わり、ロビーの空気が和んだところで、タウニーが待ってましたとばかりに拳をギュッと握りしめた。

 

 「よし、自己紹介も済んだし……カズマ、次はあたしとポケモン勝負しようよ! 昨日はドタバタ続きでまともに出来なかったし、あたしもずっと戦いたかったんだよね!」

 

 カズマが不敵に口角を上げると、背後からAZが低く温かい笑い声を響かせた。

 

 「ポケモン勝負はよいぞ。どんなポケモンを使い、どう戦うかで、互いの人となりが見えてくるものだ。

……それに、カズマ。実は、このホテルZに来てから……いや、きみと出会ってから、きみの仲間になりたがっているポケモンが近くにいるのだ」

 

 「何……? 仲間になりたがっているポケモンだと?」

 

 カズマが訝しげに眉をひそめる。腰のボールの中にいるニシキも、その言葉に反応して「あん? 新入り候補か?」と言いたげに、ボールの中でゴソゴソと身をよじった。

 

 「それは一体、どんなポケモンなんだ?」

 「誰なのかは、外に出てタウニーと勝負をする前に、自ずと分かるはずだ。楽しみにしているといい」

「……そうか。なら、まずは外へ出るのが先だな」

 

 カズマはそう言って歩き出そうとしたが、ふと足を止め、先ほど自己紹介をしてくれたデウロの方へと視線を向けた。

 

 「デウロ。お前はこの後、何か予定はあるのか?」

 

 デウロはそう言うと、カズマの逞しい体躯をまじまじと見つめ、人懐っこい笑顔を浮かべた。

 

 「カズマさんのバトルも見たかったけど、それはまた今度のお楽しみ! タウニー、カズマさん、勝負がんばってね! 」

 

 デウロが元気よく手を振った瞬間、カズマは「……あぁ」と短く応え、それから思い出したように付け加えた。

 

 「デウロ。……カズマ、でいい。さん付けはしなくていい」

 「え? でも、カズマさんってすごく大人っぽくて強そうだし……」

 

 不思議そうに小首を傾げるデウロに、カズマはグレーのジャケットの襟元に手をやり、少しだけバツが悪そうに視線を逸らした。

 

「こんななりだが……一応、これでもまだ16だ」

「じゅ、じゅうろくぅっ!?」

 

 デウロは文字通りひっくり返りそうなほど目を丸くした。タウニーも横で「えええええっ!?」と絶叫している。

 幾多の修羅場を潜り抜けてきたとしか思えない顔面凶器の仏頂面と、カタギに見えない圧倒的な風格。それがまさか、自分たちとほとんど変わらない十代の少年だとは、夢にも思わなかったのだ。

 

 「あはは……うそ、見えなさすぎる……!」

 

 デウロはすぐにケラケラと弾けたように笑うと、プロの卵らしい度胸で、すぐに言葉を切り替えた。

 

 「わかった! じゃあカズマ! 勝負がんばってね! わたしも練習がんばってくる!」

 

 軽快なステップでロビーを駆け抜けていくデウロの背中を、カズマは静かに見送った。

 

 床の上で器用にバランスを取りながら、ニシキは丸い目をパチクリとさせ、去っていったデウロのいた扉の方をじっと見つめている。

 

 『おいおいおい、カズマ、聞いたか今の? ……ぶはっ、十六歳ってバラした時のお姉ちゃんの顔、最高だったな! ……いや、そうじゃねえ!』

 

 ニシキはハァハァと息を荒くしながら、感心したように尾ビレを左右に揺らした。

 

 『お前さ、その凶悪なツラと体格のせいで、普通なら同年代の奴らからはビビられて『カズマさん』だの『カズマの兄貴』だの呼ばれるのがオチだろ? 本気でお前を呼び捨てにするタマなんて、そうそういねえよ。

 なのにさ……タウニーの姉ちゃんも、今のデウロちゃんも、出会って早々あっさりと『カズマ』って呼び捨てにしやがった。……ミアレの女子ってのは、どいつもこいつも肝が据わってやがんなぁ!』

 

 言葉にはならないが、その尾ビレの小気味いいパタパタという動きには、新しい街の女の子たちの度胸の良さに、すっかり感心して面白がっているニシキの性格が、ありありと表れていた。カズマは相棒のそんな気配を察し、フッと低く笑う。

 

 「……あぁ。良い面構えの奴らだ。嫌いじゃねぇな」

 

 カズマはニシキを腕に抱え上げると、モンスターボールへと戻した。驚きの年齢詐称?疑惑も解け、ロビーの空気はすっかり明るくなった。タウニーはまだ少し信じられないといった様子でカズマの顔を見つめていたが、すぐに楽しそうに笑って玄関の扉を押し開けた。

 

 「よし! それじゃあ行こう、カズマ! あたしたちの初勝負、絶対に負けないからね!」




ゲットするのは御三家です。
ポカブ・ワニノコ・チコリータのどれかになります。
ゲットの理由は龍が如くのとあるキャラクターの容姿とぴったり重なるからです。さぁ!
三匹のうちどれをゲットするのか!はたまたゲットする理由になった龍が如くのキャラとは誰なのか?!
答え合わせは明日の午後9時の予定!
乞うご期待!
あ、ゲットした御三家の性格もニシキ同様、龍が如くのキャラになります。
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