Pokemon Legends YAKUZ−A! 作:洋菓子職人II
という訳で、ススムとワニノコのレベルは現在10以上ということにしてあります。
「先手必勝! 行くよ、ワニノコ! 『バブルこうせん』!」
タウニーの鋭い号令とともに、ワニノコの口から無数の泡の弾丸が勢いよく放たれた。炎タイプにとっては掠めただけでも致命傷になりかねない激しい連射!
「ススム、右だ」
カズマが低く指示を飛ばす。ススムはカズマのロビーでの身のこなしを見ていたかのように、短い足を器用に動かして右へシュッ、とステップを踏んだ。泡の弾丸が、ススムのいた地面を激しく叩く。
「もう一発! 『バブルこうせん』!」
「今度は左だ」
間髪入れずに飛んできた二の矢に対しても、ススムは最小限の動きで左へスライドし、紙一重でかわしてみせた。
「うそ、身軽すぎる……っ!」
タウニーが驚愕するなか、二発の猛攻を完璧に避けたススムの
『どうやワシのプリケツは! 攻撃を避けられて悔しいかぁ、このワニ公!』
激しくお尻を振ってワニノコを激しく煽るススム。しかし、それは絶好の隙を晒すことでもあった。
「あ、チャンス! ワニノコ、そのまま『かみつく』!」
ワニノコが猛烈な勢いで飛びかかり、ススムの突き出されたお尻へとガブリと深々と牙を突き立てた。
「ぶっ、ぶひぃぃぃーーんっ!?」
あまりの痛みにススムの目から火花が飛び散る。ススムは短い足をバタバタとさせ、身体を激しく揺すって振り払おうとするが、ワニノコはガッチリと牙を食い込ませたまま微動だにしない。
「あはは! 残念だったね、カズマ! うちのワニノコは噛み癖がすごくて、一度噛みついたら絶対に離さないんだから!」
タウニーが勝ち誇ったように胸を張る。普通なら絶体絶命、水タイプのポケモンに密着されて噛みつかれているのだから、これ以上の窮地はない。だが、カズマはグレーのジャケットのポケットに手を突っ込んだまま、不敵に口角を上げた。
「……ほう。そう簡単に離さない、か。なら……好都合だな」
「えっ……?」
タウニーがその言葉の真意に気づくより早く、カズマの鋭い怒号が広場に響き渡った。
「ススム! 離さねぇなら、その重りごと叩き潰せ! 『ころがる』だ!」
その命令を聞いた瞬間、お尻を噛まれて涙目になっていたススムの瞳に、再び獰猛な炎が灯った。
『親分の言う通りや! 離さへんのなら、お前もろとも地面にブチのめしたるわ! ワシの命懸けの『赤ん坊のでんぐり返し』、骨の髄まで味わんかいッ!!』
ススムは丸い身体を限界まで丸めると、お尻にワニノコをぶら下げたまま、勢いよく前方に回転を始めた。
ゴロゴロゴロゴロ――ッ!!
「ワ、ワニィっ!?」
硬い地面とススムのプリケツの間に挟まれる形になったワニノコが、凄まじい衝撃に悲鳴を上げる。ススムは回転の勢いをさらに増しながら、お尻に噛みついたワニノコを何度も何度も地面に叩きつけ、凄まじい連続ダメージを与えていく!
『ぎゃはははは! 新入り、めちゃくちゃな戦い方しやがるぜ! 根性入ってんじゃねえか!』
ボールの中からその様子を見ていたニシキも、ススムの予想以上の泥臭さと根性に、大興奮で快哉を叫ぶ。
あまりの激痛に、流石のワニノコもたまらず噛みつくのをやめて離すが、離すタイミングが悪かった。回転の勢いを殺しきれず、ワニノコはそのままホテルの外壁へと激突してしまう。
激突の衝撃と回転による
「やるね、カズマ! だけど、これならどう!?」
タウニーは『バブルこうせん』の泡では相手に届くまで時間がかかると判断し、即座に次の手を打つ。導き出された答えは…
「密度を高めて、速度重視! ワニノコ、『みずでっぽう』!」
「ススム、避けろ!」
カズマが鋭く指示を出すが、『バブルこうせん』を遥かに凌ぐ弾速で放たれた高圧の水流に、『ころがる』で目眩を起こしていたススムは反応しきれなかった。容赦のない『みずでっぽう』が、ススムの小さな身体を正面から捉えて爆発した。
「ぶひぃっ……!」
炎タイプのススムにとって、水タイプの技は効果抜群。たった一発の直撃であっても、ススムを大きく消耗させるには十分すぎる威力を秘めていた。膝をつき、激しく息を切らすススム。
「消耗している今なら避けれないでしょ!これでトドメだよ! ワニノコ、もう一度『バブルこうせん』!」
タウニーが勝利を確信して叫び、無数の泡の弾丸が再びススムへと迫ります。絶体絶命の窮地。しかし、カズマの鋭い脳裏には、この逆境を覆す一瞬の作戦が閃いていた。
「ススム! 逃げるな、正面から迎え撃て! 最大出力の『ひのこ』だ!!」
『…!あい分かった!!!』
ススムは親分の信頼に応えるように一歩も引かず、喉の奥からこれ以上ないほど巨大な火の粉の塊を吐き出しました。迫り来る『バブルこうせん』の大群と、ススムの放った猛烈な『ひのこ』が、空間の真ん中で真っ正面から激突!
猛烈な熱と大量の水が交わった瞬間、あたり一面に激しい『水蒸気爆発』が巻き起こる。ロビー前の広場は一瞬にして濃密な白い煙に包まれ、お互いの姿が完全に視界から遮断された。
「キャッ!? なにも見えない……!」
タウニーが煙に視界を奪われて動揺するなか、カズマの眼光だけは、煙の向こうの戦場を正確に見据えていた。
「ススム! 迷うな、まっすぐ突き進め! 『ころがる』だ!!」
『押忍!漢ススム、前しか見えねええええ!!』
カズマの迷いのない声に導かれ、ススムは再び丸い身体を弾丸のように回転させ、白い煙の中を一直線に爆走し始めた!視界の利かないワニノコは、煙を引き裂いて突進してくるススムに気づくことすらできない!
ドガァァァンッ!!
「ワ、ワニァァッ!?」
凄まじい衝撃音とともに、ススムの巨躯がワニノコを正面からぺしゃんこに轢き潰した。さらにススムは回転の勢いのまま、倒れ込んだワニノコを見下ろすように飛び上がる!
「トドメだ、落とせ! 『ひのこ』!!」
『これで、こんがり焼き上がりじゃぁぁい!!』
至近距離から放たれた渾身の火の粉が、ワニノコに炸裂。爆炎が晴れたとき、そこには目をぐるぐると回し、完全に戦闘不能となったワニノコの姿があった。
『おおお! 完璧に決まったじゃねえか! ナイスバトルだ、ススム!』
ボールの中でその一部始終を見守っていたニシキが、後輩の見事な逆転劇に、己のことのように快哉を叫んで大喜びしていた。
「…お疲れ様。よく頑張ったね、ワニノコ。ゆっくり休んでね。………あはは、完敗だよ。 相性の不利を水蒸気爆発でひっくり返すなんて、カズマってば本当に戦い慣れてるんだから!意外と頭良いんだね?」
カズマはグレーのジャケットのポケットに手を突っ込んだまま、ふっと視線をタウニーの足元へと向けます。そこには、まだ戦闘を行っていない、頭の葉っぱをおっとりと揺らしたチコリータが残っていた。
「タウニー、そっちのチコリータは戦わないのか? まだ勝負はついてねぇぞ?」
「戦わないよ! だって、ニシキは昨日のトウマのブロスターとの戦いで、まだダメージが残ってるんでしょ? ススムを休ませるために、そんな状態のニシキを戦わせるわけにはいかないじゃない。トレーナーなら、ポケモンの体調を一番に考えなきゃダメだよ!」
タウニーの真っ直ぐな正論に、カズマは「……あぁ。そうだったな、すまねぇ」と、自分の不手際を素直に認めました。
「それにしてもさ!」
タウニーはすぐに表情を輝かせると、地面でハァハァと誇らしげに鼻の穴から火の粉を散らしているススムの元へ駆け寄った。
「カズマとススム、出会ったばかりなのに相性はバッチリじゃない! カズマの的確な指示も凄いし、それに応えて真っ直ぐ突き進むススムも最高にカッコよかったよ!」
『やろ? 親分の指示なら、ワシ、例え火の中水の中森の中スカートの中…は流石にアカンか。まぁ、どこへでも飛び込みますわ!』
タウニーに褒めちぎられ、ススムは嬉しそうに自慢のプリケツをぷりぷりと振って大喜びする。
その光景を、カズマの腰のボールから勝手に出てきたニシキが、じっと見つめていた。ニシキは胸ビレをせわしなく動かし、床の上でパタパタと小さく跳ねながら、明らかに面白くなさそうな顔でそっぽを向いた。
『……ケッ、なーにが相性バッチリだ。ちょっと勝ったからって調子に乗りやがって。カズマの隣は俺の特等席なんだよ。……おいカズマ、昨日のトウマ戦の時は、俺のことそんなに褒めてくれなかったじゃねえか。俺だって、体調が万全なら、あのワニ公くらい一撃で……ぶつぶつ……』
あからさまにいじけて嫉妬しているニシキの様子に、カズマは小さく口角を上げました。カズマはどっしりとしゃがみ込み、いじける相棒の丸い頭を、大きな手で不器用ながらも力強く、何度も撫でてやります。
「気にするな、ニシキ。お前が昨日、あのブロスター相手に身体を張ってくれたから、今の俺たちがあるんだ。お前は俺の、最高の相棒だ」
『……っ! ――ふ、フン! 分かってりゃいいんだよ、分かってりゃ! 次のバトルは俺が全部かっさらってやるからな!』
カズマの言葉一言で、ニシキの瞳には一瞬で現金な輝きが戻り、嬉しさを隠しきれない様子で尾ビレをパタパタと大きく揺らすのでした。
「うん!勝負をしてカズマの実力もよーく分かったし! とりあえず、最寄りの『ポケモンセンター・ベール』でポケモンたちを回復してもらいにいこう!」
次回
道を塞ぐ大岩を生身で粉砕!
ポケモンセンター・ベールにて不穏な噂が…
時速150kmのモンスターボールが野生のポケモン達に振り注ぐ!
の3本立てで執筆します。