Pokemon Legends YAKUZ−A!   作:洋菓子職人II

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 どうしよう…思ったよりも筆が進んで文字数が増えてしまった。あとぶっちゃけ最後のセリフが書きたかっただけでもある。


ミアレ駅前での決戦

 

 ミアレ駅へ無事到着したカズマは改札を通りミアレシティの大通りへ踏み出した、その瞬間だった。

 

 「おい、待てやゴラァ!」

 

 低くドスの効いた声が、華やかな都会の喧騒を切り裂いた。振り返ると、そこには先ほど列車内でカズマに手首を捻り上げられたチンピラ二人組が、さらにガラの悪い大男を連れて下卑た笑いをしていた。

 

 大男は、肩にゴールドのチェーンを巻き、紫色の派手なジャケットを羽織っている。いかにもこのグループを締め上げている「兄貴分」といった風貌だ。男はカズマの前にずいと立ちはだかると、指の骨をボキボキと鳴らした

 

 「うちの弟分が、車内で随分と『世話』になったそうじゃねえか。俺は優しいから一応聞くが…お前か?」

 

 カズマはポケットに手を突っ込んだまま、眉ひとつ動かさずに男を見据えた。

 

 「……だったら何だ。公共の場で身の程知らずに暴れてたから、少しばかり躾をしてやっただけだ」

 「口の減らねえ野郎だ。だがな、ここはカロス地方、ミアレシティだ。ケジメは拳じゃなく、ポケモンバトルでつけてもらう!」

 

 兄貴分の男が、ベルトからひときわ大きなモンスターボールを引き抜いた。

 

 ◆

 

 チンピラリーダーのエイジが勝負を仕掛けてきた!

 

 「出てこい、ヘルガー! こいつの生意気なツラを噛み砕いてやれ!」

 

 白い光の中から現れたのは、頭部に不気味な湾曲した角を持ち、骨のような装飾を身に纏った漆黒のポケモン「ヘルガー」だった。喉の奥からチリチリと黒い炎を漏らしながら、地獄の番犬のごとき咆哮を上げる。その威嚇のオーラに、周囲の通行人は悲鳴を上げて遠ざかった。

 

 カズマはふっと口元を不敵に歪めると、ベルトから相棒のは入っているボールを取り外した。

 

 「いいだろう。売られた喧嘩だ……。買うぞ、ニシキ!」

 

 カチリとボタンを押すと、光の中からコイキングのニシキが現れた。石畳の上に着地したニシキは、一般的なコイキングのように間抜けに跳ねることはしない。尾ひれを器用に使い、どっしりとカズマの隣に並び立った。その目は鋭く据わっており、目の前のヘルガーを真っ向から睨みつけている。

 

 それを見た兄貴分の男は、一瞬だけ呆気に取られたように目を見開いた。だが次の瞬間、その下卑た顔に強欲な笑みが浮かび上がる。

 

 「……おいおいおい、待ちやがれ。その錦模様のコイキングはホップタウンじゃねえと釣れねえレアなコイキングじゃねえか!」

 

 男はニシキの鱗を舐めるように見つめ、下唇を濡らした。

 

 「知っているのか?」

 「当たり前だ。そいつはカロスじゃ逆立ちしたって見つからねえホップタウン固有のコイキング。 どっかのコレクターにでも売れば数十万、いや数百万単位の金になる!ああそうだな…ここならサビ組なんかに売りつけてもいいかもしれねぇなぁ…へへへ…!」

 

 男はヘルガーの前に一歩踏み出し、ニシキを指差して大声で笑った。

 

 「カッカッカ! いいぜ、勝負してやる! だがなぁ…俺が勝ったらケジメの代わりにその錦模様のコイキングを置いていってもらうぜ! お前みたいなカスにそんな宝の持ち腐れは要らねえんだよ!」

 「兄貴、さすがです! あんな魚、さっさと分捕っちゃってください!」

 

 背後で腰巾着の不良どもが囃し立てる。その言葉を聞いた瞬間、ニシキの据わった目がさらに冷たく、鋭く据わった。

 

 『俺を金目のレア物扱いか……。おいカズマ、この犬っころ、俺に料理させろ』

 

 言葉には出さずとも、ニシキの全身から怒りのオーラが立ち上っているのを、カズマは確かに感じ取っていた。

 

 カズマはポケットに手を突っ込んだまま、地響きのような低い声で言い放つ。

 

「……俺をナメるのは構わねぇ。だがニシキをただの金づるだとナメたこと……そのツラごと、叩き直してやる。いくぞ、ニシキ!」

「ハッ! 吠えてろ雑魚が! ヘルガー!『かみくだく』で終わらせろ!!」

 

 ヘルガーが凄まじい速度で突進し、牙を剥いてニシキの脳頭頂部めがけて襲いかかる。

 

 「かわすな!真っ向から『たいあたり』で迎え撃て!」

 

 カズマの鋭い怒号が響いた。その瞬間、ニシキの強靭な尾ひれが石畳を爆裂させた。バキィン!と凄まじい風切り音と共に、ニシキは地面を滑るようにして、ヘルガーの胸元へ向かって弾丸のごとく突進し…

 

 「ピチィィィッ!!」ドゴォォン!!!

 

 衝撃波が周囲に広がる。ヘルガーの牙が届くより早く、ニシキの重戦車のような『たいあたり』がヘルガーの胸元にクリーンヒットしたのだ。あまりの質量と突進力に、ヘルガーの巨体が真後ろへ何メートルも吹き飛び、駅前の案内看板にドシャァァン!と激突した。

 

 「な、何ぃッ!? ヘルガーのパワーを押し返すコイキングだと!?」

 

 兄貴分の男が唖然として目を見開く。

 

 「ピチピチッ!ピチッ!」

 「生憎ニシキの機嫌がまだ直っていなくてな…。残酷だがもう一発技を受けてもらうぞ!ニシキ!空へ登るぞ……『とびはねる』!」

 

 カズマの指示に、ニシキの魂が激しく共鳴した!ニシキは一度深く身を沈めると、ミアレの空高くへと弾丸のように垂直跳躍した。雲に届かんばかりの超高度。太陽の光を浴びて、その美しい錦模様が黄金色に輝く!

 

 「落ちろ!ニシキィッ!!」

 

 空中で反転したニシキが、限界まで加速しながら落下してくる!

 

 「…っ…!逃げろ!ヘルガー!!!」

 

 ドシャァァン!!!

 

 超高度から放たれたニシキの『とびはねる』が、起き上がろうとしたヘルガーの背へと炸裂した。駅前の石畳にバリバリとヒビが入り、激しい土煙が舞い上がる。ヘルガーは悲鳴をあげる暇もなく、一撃で目を回して気絶した。

 

 「バ、バカな! 俺のヘルガーが、たかがコイキング一匹に……!?」

 「よくやったニシキ。最高の『跳ね』だったぜ!」

 

 カズマがポケットに手を突っ込み、ゆっくりと兄貴分の男へと歩み寄ると、16歳の少年とは思えない覇気が周囲を圧倒した。

 

 「……さて。お前の自慢のポケモンが寝ちまったようだが、まだ続けるか? 望むなら、次は俺が直接相手をしてやってもいいんだぞ?」

 

 冷徹な眼光に射すくめられ、一瞬は恐怖に顔を歪めたエイジだったが、背後の弟分の手前、このまま逃げ出すわけにはいかなかった。何より、目の前のカズマはまだ自分より遥かに小柄な青年なのだ。

 

 「……ふ、ふざけんじゃねえぞこのガキがァ! ポケモンが負けたからって、この俺が引き下がると思ってんのか!てめえが売った喧嘩だ……! このエイジ様が、生身の拳でその生意気なツラ、叩き割ってやるわぁッ!」

 「…大人しく逃げ帰れば痛い目に遭わずに済んだものを…買って後悔するなよ!」

 

 ◆

 

 チンピラリーダー・エイジ

 

 エイジは頭に血が上り、完全に理性を失った大振りな右ストレートを放ち、力任せにカズマへ殴りかかってきた。シンプルで凶暴な一撃!

 

 「オラァッ!」

 

 だが、カズマの瞳は冷徹なまま、その軌道を完全に見切っていた。一歩も引かない。エイジの拳が顔面の数センチ手前に迫った瞬間、カズマは上半身を鋭く右へ傾けるスウェーバックを敢行。エイジの拳は、カズマの右頬を掠めるようにして虚空を切った。

 

 「なっ……!?」

 力任せに突っ込んだエイジの身体が、勢い余って前方へ大きく前のめりになる。その隙を逃すカズマではなかった。流れるような動きでエイジの空振った右腕を左手で軽くいなし、完全に無防備になったエイジの脇腹へと、鋭く踏み込む。

 

 「これで終わりだ……ッ!」

 

 引き絞った右拳を、エイジの鳩尾へと容赦なく突き出す。体重移動と腰の回転が完璧に連動した、鋭く、重い、渾身のカウンター!

 

 ドゴンッ!!!

 

 鈍く、重い衝撃音が大通りに響き渡る。カズマの拳がエイジの腹部に深く沈み込む。エイジは「ぶほっ……!」と口から盛大に唾を吐き出し、その目は一瞬で白目を剥いた。

 

 カズマが静かに拳を引くと、エイジの巨体は糸が切れた人形のように、その場にドサリと崩れ落ちた。ピクリとも動かない。完全な一撃KOだった。

 

 「ひ、ひえぇぇぇーっ! 兄貴が一撃で殺されたァーッ!!」

 

 残された腰巾着のチンピラ二人組は、腰を抜かしてガタガタと震え上がった。気を失ったエイジを抱えて今すぐ逃げ出そうとする二人。だが、カズマの低く冷徹な声が、彼らの足をその場に縫い付けた。

 

 「…おい。動くな」

 「「ひっ……!」」

 

 カズマはポケットから自分のスマホロトムを取り出し、画面を操作しながら冷たい視線を不良どもに向けた。

 

 「そいつを連れて逃げられると思うなよ。……さっき、そこの大将ははっきりと口にしたな。俺のニシキを見て『勝ったら置いていってもらう』と」

「そ、それはバトルの賭けで……」

「カロス地方の法律に『バトルの勝敗によるポケモンの強制強奪』を認める条文でもあるのか? あァ?」

 

 カズマの鋭い眼光に射すくめられ、チンピラどもは完全に言葉を失う。

 

 「ただのチンピラの喧嘩なら、俺も拳一つで手打ちにしてやるつもりだった。だがな、他人の大切な相棒を無理やり分捕ろうってのは、明確な『ポケモン強奪未遂』の重罪だ。……こいつには余罪もありそうだな。勿論テメェらもだ」

 

 ジュンサーさんの電話番号が結局分からなかったカズマはスマホロトムに警察に電話するように指示した

 

 「…ロトロトロト…ああ、もしもし。ミアレ警察か。ミアレ駅前でポケモン強奪未遂の現行犯を三人、今ここでシめて拘束してある。早く連れて行ってくれ」

「け、警察を呼んだだとォ!?」

 

 チンピラどもは絶望に顔を青ざめさせた。まさか生身でヤクザ顔負けの暴力を振るってきた青年が、これほど冷静に法律に則って警察を呼び出すとは思わなかったのだ。

 

 数分後、サイレンの音と共に警察のパトカーが到着し、お馴染みのジュンサーさんが数人の警察官を引き連れて息を切らせて駆けつけてきた。

 

 「ポケモン強奪未遂の通報はあなた!?……って、一体何があったの、この惨状は!」

 

 ジュンサーさんが見たのは、石畳の上に白目を剥いて転がっている男と、その傍らでガタガタと震えながら正座している二人の不良。そして、何食わぬ顔で埃を払っている青年、カズマの姿だった。

 

 ジュンサーさんの姿を見た瞬間、恐怖で正座していた子分の一人が、パッと妙案が浮かび顔を輝かせた。カズマの圧倒的な恐怖から逃れるため、警察という「わずかな希望」に全力ですがりついたのだ。子分は涙目になりながら、エイジの遺体を指差して絶叫した。

 

 「じゅ、ジュンサーさん! 助けてください! 警察組織の力で、このバケモノを今すぐ逮捕してくださいッ!」

 「えっ!? なに、どうしたの!?」

 「こ、この男がポケモンバトルで兄貴のヘルガーをボコボコにした挙げ句、生身の拳で兄貴を殴り殺したんです! 兄貴はもう息をしていません! 殺人の現行犯ですッ!!」

「なんですって!?」

 「…成る程な…その手にでたか…」

 

 ジュンサーさんは驚愕し、バッとカズマに向けて鋭い警戒の視線を向けた。背後の警察官たちも一斉に腰のモンスターボールに手をかける。

 

 「お兄さん……! どんな事情があれ、生身の人間に致命傷を負わせるなんて言い訳できないわ! 大人しくお縄につきなさい!」

 

 一瞬にして「殺人犯」の容疑をかけられ、周囲を包囲されるカズマ。しかし、カズマは慌てることなく、胸を張ってジュンサーさんの目を真っ向から見据えた

 

 「俺は誓って殺しはやってません」




 「はねろコイキング」知ってますか?そのアプリでは錦模様のコイキングが釣れるんです。
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