Pokemon Legends YAKUZ−A!   作:洋菓子職人II

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この世界のモブトレーナー達は龍が如く風にアレンジさせてもらいます。原作改変ゴリゴリでいきます。


バトルゾーンの強敵!給仕のトウマ!

「ねぇカズマ!歩きながらでいいからそのコイキングについて少し教えてよ! あたし、あんなに強いコイキング、本当に見たことないんだから!」

 

 前を歩くタウニーが、興奮を抑えきれないといった様子で振り返る。カズマはポケットに手を突っ込んだまま、ミアレのそよ風に服をを揺らしながら、低く落ち着いた声でポツリと語り始めた。

 

 「……あいつとは、泥水をすするような過酷な特訓を何度も乗り越えてきた。ただそれだけだ」

 「過酷な特訓って……コイキングでしょ? 普通は『はねる』しかできないじゃない。それをあなた、ヘルガーのパワーを正面から押し返すなんて、どんな育て方をしたらあんな重戦車みたいになるのよ」

 

 タウニーが信じられないといった顔で詰め寄ると、カズマはベルトのボールにそっと手を添え、ふっと遠い目をした。

 

 「世界一高く跳ぶ。……あいつと出会った時、そう誓い合ったのさ。毎日毎日、限界まで重りを背負わせて跳ねさせ、時には目の前に立ち塞がる巨大な岩を、尾ひれのビンタ一発で粉砕するまで特訓した。ゴローニャを振動で吹き飛ばしたりもしたな。あいつのあの錦模様の鱗はな、何千回、何万回と地面に叩きつけられ、それでも立ち上がってきた漢の勲章なんだよ」

 

 カズマの言葉に応えるように、ベルトのボールが「ドクン……」と、誇らしげに熱く脈打った。ボールの中にいるニシキも、あの地獄のような特訓の日々を思い出し、カズマと同夜にで熱い闘志をたぎらせているに違いない。

 

 「岩を粉砕って……。コイキングの特訓の規模じゃないわね。でも、だからこそあんなに強いんだ……。言葉は通じなくても、二人の間には本物の絆があるのね」

 

 タウニーは感心したように深く頷き、カズマとボールを交互に見つめた。

 

 「ああ。あいつは俺の足を引っ張るようなタチじゃねぇし、俺もあいつのプライドを汚すような真似は死んでもしねぇ。あいつはただの魚じゃねぇ、俺の大事な『兄弟分』だ」

 「兄弟分、か。なんだか素敵な関係ね」

 

 タウニーがそう言ってニカッと眩しい笑顔を浮かべた、まさにその時だった。

 

 突如として、ミアレシティの夜空に不気味な紫色の閃光が走った。それと同時に、街の象徴であるプリズムタワーの先端から、眩いグリッド状の光の波がストリート一帯へと急速に広がっていき、カズマ達を赤いホロの壁が囲い込んだ

 

 ギィィィィン……!

 

 奇妙な電子音が鳴り響き、カズマたちが今いる一帯の景観が一変した。通行人たちの賑やかな声は一瞬で消え去り、一部のトレーナーのみが残って周囲の路地裏からは、待ってましたとばかりにガラの悪いトレーナーたちが次々と姿を現した。

 

 「おい、タウニー。これは一体どういうことだ」

 

 カズマはポケットに手を入れたまま、周囲の空気が一瞬にして「血生臭い闘技場」へと変貌したのを肌で察知し、低く鋭い声で尋ねた。

 

 「これ……『ZAロワイヤル』のバトルゾーンよ! 夜のミアレシティの特定のエリアが、最高位のAランクを目指すトレーナー同士の無法地帯になる!…まさか、あたしたちが今いる場所が指定されるなんて!もう、最悪だし!」

 

 タウニーの言葉を証明するように、赤いホロで染まったストリートの各所に、巨大なホログラムの文字が浮かび上がっていた。

 

【 BATTLE ZONE — 

     ―AREA: SOUTH SIDE 】 

 

 「とにかくホテルZまでいくよ!建物内は流石にバトルゾーンの適用外だから安全地帯になっているの。あたしに付いてきて!」

 「分かった!」

 

 カズマは力強く頷きタウニーの後を追いかけた。タウニーの動きに迷いはなかった。彼女はミアレシティ育ちのホテルZ従業員。再開発が進むミアレシティの裏道や抜け道を、誰よりも熟知していた。

 

 「カズマ、こっち! 大通りはランカーだらけだから、ここの足場を登るよ!」

 「本当に合っているのかこの道?」

 「大丈夫!あたしを信じて!」

 

 タウニーが指差したのは、ミアレの都市再開発計画を担う『ラシーヌ工務店』が設置した建築用の足場だった。まだ鉄骨が剥き出しのまま、ビルの壁面に沿って複雑に入り組んだ足場アスレチックが組まれている。

 

 「…分かった。お前を信じるぞ!」

 

 カズマは笑うと、タウニーの後を追って鉄製のハシゴを驚異的な身体能力で駆け上がった。

 

 タウニーの機転と、ラシーヌ工務店の設置した足場を利用した空中ルートのおかげで、一度も戦闘狂のトレーナーたちに見つかることなく、二人はホテルZのすぐ近くへとたどり着き、地上へと飛び降りた。

 

 「見えた! あそこがホテルZの入り口よ!」

 

 タウニーが息を切らしながら、目と鼻の先にあるホテルを指差した。あそこの出口になっているのホロを抜ければバトルゾーンの適用外となる安全地帯だ。

 

 「ふぅ……! ここを曲がればホテルのエントランスよ。もう安全……」

 

 「——夜のミアレシティへようこそ、お客様」

 

 しかし、その安堵は一瞬で打ち砕かれた。

 

 ホテルZの真ん前にあるホロの出入り口、まるでそこに立つことが最初から決まっていたかのように、一人の男が優雅に立ちはだかっていた。

 

 男は、この無法の夜にはあまりにも不釣り合いな、仕立ての良いタキシードに身を包んだウェイターだった。男の目はカズマたちが路地から出てくるのを完全に捉えており、獲物を待つ鷹のように鋭く据わっていた。

 

 「——お楽しみの所申し訳ありませんが…そこまでにしてもらいましょうか」

 

 冷徹で気品のある声が、カズマたちの足を強制的に止めさせた。男は恭しく一礼しながらも、その口元には冷酷な笑みを刻んでいる。

 

 「夜のミアレシティ・ディナータイムへようこそ。この『ZAロワイヤル』のバトルゾーンに足を踏み入れ、ラシーヌ工務店の足場を伝ってここまで逃げてこられるとは、なかなか骨のあるお客様だ。ですが、ホテルZという安全地帯へ逃げ込もうなど、少々見通しが甘いと言わざるを得ませんね」

 

 男はそこで一度言葉を区切ると、身に纏うタキシードの皺を伸ばすように、そっと胸元に手を当てた。その一連の動作はどこまでも美しく、洗練されているプロの所作。取り乱す様子など微塵も見せず、静かに、そして確実に退路を断つその佇まいは、まるで高級レストランの席へ客を誘導するかのよう…

 

 「…ディナータイムのお代は…お二人の手持ちのポイント全て、とさせていただきましょうか」

 「待って!あたしはともかくカズマは参加者じゃないし!」

 

 しかし、ウェイターの男は冷酷な微笑を崩さぬまま、静かに首を横に振った。

 

 「おやおや、お嬢様。この『夜のミアレシティ』においてはゾーンに足を踏み入れた者すべてが等しくゲームの対象、つまりはお客様なのです。エントリーの有無など、この無法の宴の前では何の意味も持ちませんよ」

 

 慇懃無礼という言葉がこれほど似合う男もいない。丁寧な言葉遣いとは裏腹に、その目に宿る光はどこまでも冷酷で、カズマたちを完全に「カモ」として追い詰めるための計算に満ちている。

 

 「チッ……。上品なツラして、やってることはチンピラと変わらねぇな。生憎と俺はお前に払ってやるお代は持ち合わせてねぇ…」

 

 カズマが冷たく言い放つと、ウェイターの男はピクリと眉を動かし、深くため息をついた。

 

「…だがな…俺にはナメられたまま引き下がる大人しさの方が持ち合わせちゃいねぇ…!この喧嘩(ディナータイム)…買うぜ!」

 

 カズマの腹の底から響くような咆哮を正面から浴びたウェイターは、その場から一歩も引かなかった。それどころか、彼は無表情をわずかに崩し、冷酷な笑みを湛えたままスッと口角を上げた。

 

 「……素晴らしい。やはり『夜のミアレシティ』に迷い込むお客様はそうでなくては。その無謀な威勢、お代の代わりにたっぷりと楽しませていただきましょう」

 

 男の瞳の奥に、狂気にも似た戦闘狂としての歪んだ悦びがギラリと灯る。カズマは男の不気味な笑みを真っ向から睨み返し、ベルトからニシキの入ったボールを引き抜いた。

 

 「カズマ、気をつけて! このウェイター、さっきの強奪犯より明らかに強いよ!」

 

 男は懐から流れるような手付きで、艶のあるモンスターボールを取り出した。

 

 「夜の静寂(しじま)を彩るは、敗者が流す血の涙。……レストラン・ド・キワミ所属、ZAロワイヤルOランク、給仕のトウマ…以後お見知りおきを」

 「レストランだか極みだか知らねぇが、上品なツラしてカタギを脅す外道に名乗るほどの高尚な名前はねぇ。……だが、どうしてもケジメをつけたいってんなら教えてやる! 俺はカズマ!都市再開発計画中のミアレシティに観光で来ただけの…」

 

「ただの観光客だ!」




未だかつて序盤のウェイトレス戦をこんな美化というかアレンジ(別人)させる人間がいただろうか…。龍が如く風にアレンジしようとするとどうしてもポケモン感が薄れる気がする…
 因みに昔の厨二病の自分を思い出しながら書いたせいか結構気に入ってしまっている。
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