Pokemon Legends YAKUZ−A!   作:洋菓子職人II

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なんか文字数なんか気にしない方が良いですかね?個人的には長くても4000文字位が読み終わる時間とかが丁度いい気がするんですけどねぇ…
結果約6500文字になってしまった…


原点回帰!給仕のトウマとの決着!

「……くっ、ジ、ギィィィッ!?」

 

 ハサミの根元を撃ち抜かれたブロスターが、苦悶の声を上げてその場に激しくのたうち回る。自慢の瑠璃色の甲殻からは排気しきれない蒸気が激しく吹き出し、あれほど巨大だった右鋏は力なく地面に投げ出されていた。

 

 「あ……っ、ブロスター……!」

 

 その姿を見た瞬間、トウマの顔から先ほどまでの薄笑いも、戦闘狂としての歪んだ悦びも、そのすべてが完全に消え失せた。

 なりふり構わず、這いつくばるようにしてブロスターのもとへ駆け寄ると白い手袋の手を伸ばし、痛みに震える相棒の甲殻を痛切な面持ちで抱きしめた。その瞳には、紛れもない動揺と、身を切られるような痛痛しさが宿っていた。

 

 「おい、トウマ」

 

 トウマがハッと顔を上げ、乱れた髪の隙間からカズマを睨みつける。

 

 「……何のつもりですか。敗者を哀れみに来たのですか? それとも、ただのコイキングに負けたわたしを、笑いに――」

 「お前と、そのブロスターは……昔からそんな関係だったのか?」

 

 カズマの唐突な問いに、トウマの言葉がピタリと止まった。

 

 「……何、を……」

 「お前はさっきから、そのポケモンのことを『最高級の食材』だの『完璧な兵器』だの、格好ばかりを並べ立てて語りやがった。だが……違ぇだろ!」

 

 カズマは一歩、強く地面を踏みしめ、その鋭い眼光をトウマの胸の奥へと突き刺した。カズマの背中から立ち上る青いオーラが、トウマの迷いを吹き飛ばすように熱く揺らめく。

 

 「今、お前がそいつに向けてる目は、そんな安い言葉で片付けられるもんじゃねぇ。本当にただの『物』だと思ってるなら、そいつが傷ついたぐらいで、そんなに心を痛めるわけがねぇんだよ!」

 

 『……そうだぜ。俺たちにはそいつの叫びは『ブロォオ』とか『シギィィ』としか聞こえねぇ。だけどなぁ……お前には、そいつが今どれだけ痛がって、どれだけお前を頼りにしてるか、ちゃんと聞こえてるはずだろ。お前がそんなツラしてたら、背中を預けて戦ってる相棒(そいつ)が一番惨めじゃねえか……!』

 

 ニシキがアスファルトをピチピチと叩き、トウマとブロスターを真っ直ぐに見据える。その目は、先ほどまでの濁った殺意ではなく、戦う漢としての真摯な光を宿していた。

 

 「……」

 

 トウマは言葉を失い、ただ呆然とカズマを見上げた。カズマの剥き出しの言葉が、彼の胸の奥に眠っていた、分厚い錆を強引に引き剥がしていく。

 

 (昔から、そんな関係だったのか……?)

 

 カズマの問いが、トウマの脳裏の記憶を、濁流のように巻き戻した。

 

 思い出すのは、華やかなミアレシティの夜の裏側。薄暗い橋の下で、ボロ布のような服をまとい、飢えと寒さに震えていたみすぼらしい少年の頃の自分だ。料理人になる夢を笑われ、誰からも見向きもされなかった孤独な日々。

 

 そんな自分の前に、泥まみれで現れたのが…一匹の普通よりも小さなウデッポウだった。大きく立派なハサミを持つブロスターとは程遠い、まるでただの『川海老』のように小さく、貧相な姿。周囲の人間からも「そんなゴミクズみたいなポケモン、食材にもなりゃしない」と嘲笑われていた存在。

 

 誰も認めてくれない一人と一匹。だからこそ、あの雨の日の夜に自分たちは惹かれ合い、トウマは小さなウデッポウを抱きしめて、涙を流しながら誓い合ったのだ。

 

――俺たちは、絶対にここで終わらない。

――お前を世界一美味そうで、誰もがひれ伏すくらい『高級な、凄いやつ』にしてやる。だから、俺を世界一の料理人にしてくれ!

 

 互いに泥水をすすり、必死に這い上がってきた。ウデッポウは自分の成長に合わせるように進化し、トウマもまた、レストラン・ド・キワミで『給仕』のトップへと上り詰めた。

 

 目標は、確かに果たしたはずだった…

 

 だが……いつしかトウマは、手に入れた『格』や『高級』という言葉の重みに縛られ、その看板を守るための虚栄心に呑まれてしまっていた。ニシキを「食材の価値もないゴミ」と見下したあの言葉は、かつて自分たちが最も言われて悔しかった、あの時の罵倒そのものではないか!

 

 「わたしは……なんて愚かなことを……!」

 

 トウマの手袋の手が、激しく震える。かつての純粋な誓いを忘れ、相棒をただの『高級な道具』としてしか語れなくなっていた自分。そんな歪んだ自分に付き合わせ、一番傷つけていたのは、他でもない目の前のブロスターだった。

 

 『……トウマ……』

 「…!ブロスター…!」

 ハサミの痛みに耐えながら、ブロスターが優しく、トウマの震える手をその小さな左鋏で包み込んだ。

 

 『…トウマ…おいらはな、高級なメニューになんかならなくたって、お前と一緒にいられれば、それだけでずっと…ずーっと凄いやつになれたんだ…だから…もう格好つけるのはやめようぜ。おいら達は…相棒なんだからよ…』

 

 その目は、昔のあの日、自分を信じてくれたトウマを見つめていた、あの時のウデッポウの瞳のままだった。

 

 「すまない……すまない、ブロスター……! わたしが、間違っていた……!」

 

 トウマの目から、大粒の涙が溢れ落ち、白い手袋を濡らした。彼は慇懃無礼な給仕としての仮面を完全にかなぐり捨て、相棒の身体を強く、強く抱きしめた。

 

 「トウマ。そいつは、お前の虚栄心を満たすための飾りじゃねぇ」

 

 カズマは静かに腕を解き、拳を握り直した。

 

 「本当にお前がそのブロスターの痛みを分かってやれるなら……相棒だってんのなら…格好つけるのはもうやめろ。お前自身の本当の言葉で、そいつを導いてみせろ」

 

 トウマは涙を拭うと、愛おしそうに相棒の甲殻に触れた。しかし、その直後、彼の瞳に強い葛藤の光が走る。痛みに耐えてなお立ち上がろうとするブロスターの身体は、右鋏の根元から今もパチパチと苦しげな火花を散らしているのだ。

 

 「……ありがとうございます、カズマ様。ポイントなどという安いもののために、わたしは一番大切なものを失うところでした」

 

 トウマの答えは決まっていた。これ以上、ブロスターが傷つく姿は見たくない。かつての誓いを取り戻したからこそ、トウマの心に相棒への強い保護欲が生まれていた。トウマは小さく息を吐くと、カズマに向かって静かに両手を上げた。

 

 「カズマ様。この勝負、わたしの――」

 「――シ、ギィィィァッッ!!」

 

 トウマが「降参」の言葉を口にしようとしたその瞬間、それを遮るように、ブロスターが大地を揺るがすような咆哮を上げた。痛む右鋏を無理やり持ち上げ、残された左鋏で激しく地面を叩く。複眼はトウマを睨みつけ、戦いを続けるという意志が宿っていた。

 

 『ふざけるな、トウマ! そいつは言った!トウマ自身の()()の言葉で、おいらを導いてみせろって!おいらはまだ倒れちゃいない! おいらはまだ…まだ戦える!』

 「ブロスター……お前、まだ戦うつもりなのか……?」

 『当たり前だ!』

 

 カズマたちの耳には、ただのポケモンの猛々しい鳴き声にしか聞こえない。だが、トウマの心には、相棒の魂の叫びがダイレクトに突き刺さっていた。

 

 傷ついた相棒を守るために退くことが優しさだと思っていた。だが、それは違った。ここで引くことは、命がけで自分に答えようとしてくれているブロスターの『誇り』を、再び踏みにじる行為に他ならない。本当にこいつを相棒と呼ぶなら…いや違う、自分がこいつの相棒だというのならば!その覚悟を!共に背負って戦い抜くことこそが、トレーナーとしての義務なのだ!

 

 「シギャアァ……!」

 

 ブロスターはトウマに言葉を伝えると、再びその鋭い眼光をカズマとニシキへと向け、低く唸り声を上げた。その全身から、美しい瑠璃色の闘気が爆発的に噴き上がっていく。

 

 カズマとニシキは、その一連のやり取りを黙って見つめていた。手を出して遮ることも、無粋な言葉を挟むこともしない。ただ腕を組み、灰色のスーツを夜風に揺らしながら、トウマが引き出すであろう「本当の言葉」を静かに待っている。

 

 「……フッ、そうだな」

 

 トウマは自嘲気味に笑うと、乱れた髪を乱暴にかき上げた。その瞳から、給仕としての冷徹な色は完全に消え失せ、かつて泥水の底で牙を剥いていた少年の野生が蘇る。

 

 「泥臭い真似はしない、スマートに美しく仕留める……。そんな薄っぺらいルールに()は縛られてた。…悪かったな、ブロスター…」

 『…トウマ…!』

 

 トウマは白い手袋を躊躇なく引き剥がし、地面に投げ捨てた。素手を固く握り締め、ドンと構えるニシキと、その後ろに立つカズマを真っ直ぐに見据える。

 

 「待たせたな、カズマさん。あんたのお陰で俺は昔の自分を思い出すことが出来た…礼を言うぜ」

 「…………」

 「お礼といっちゃあれだが、あんたが望んでいた言葉を今、ここで伝えよう」

 

 トウマは大きく息を吸い込むと、夜のミアレシティに響き渡る声で咆哮した。

 

 「この勝負、勝つのは俺たちだ!」

 

 トウマの宣言を聞いたカズマとニシキは既に戦闘態勢に入っていた…

 

 「さっきまでは汚れるのを嫌って『みずはどう』ばかり撃たせていた。だが、もうそんな格好(カタ)はいらねぇ! 右の鋏が撃てなくなったのは寧ろ好都合……真っ正面からぶち当たるだけだ! 俺たちの原点(すべて)をぶつけて勝つ!!」

「――シ、ギィィィッッ!!」

 

 ブロスターが咆哮し、右鋏を天に掲げた。トウマはまだ技の指示を出していない。だがブロスターにはトウマが次に出す技が分かっていた。遠距離の『みずのはどう』ではない、残されたすべてのエネルギーを限界まで充填し、鉄塊をも容易く一撃で粉砕する破壊のハンマー――『クラブハンマー』の構えをとる!

 

 カズマはそのトウマの変貌を、ニヤリと不敵な笑みで受け止めた。灰色のスーツの袖を軽くまくり、相棒へと叫ぶ。

 

 「いいツラになったな、トウマ。……行くぞ、ニシキ! 相手は本気で俺たちを獲りに来てる。これまでの傷を全部、その身体に乗せて……全力で応えてやれ!」

 『おうよカズマァァァッ!! 待ってたぜ、この瞬間(とき)をよォ! 泥水の底から這い上がってきた意地、どっちが本物か、ハッキリ白黒つけようじゃねえかッ!!』

 

 ニシキのウロコが、限界を超えた怒りと闘志で文字通り真っ赤に爆発した。これまでの回避戦で蓄積した疲労とダメージにより、体力が限界まで削られたその状態こそが、コイキング最大の切り札――『じたばた』の威力を、天を衝くほどの破壊力へと跳ね上げる!

 

 両者の間を静寂が支配する…ニシキとブロスター、互いに深いダメージを負っている状態、次の一撃で勝負が決まる…

 

 

 

 

 

 

 

 「ブロスター!『クラブハンマー』ぁぁッ!!」

 「ニシキッ! 『じたばた』だぁぁぁッッ!!」

 

 トウマとカズマ、二人の漢の激しい怒号が同時に夜の空気を引き裂いた!

 

 ミサイルのように地面を滑走し、爆弾のような回転を伴って飛び出すニシキ!それを大砲のような巨大な右鋏で叩き潰そうと振り下ろすブロスター!互いに一歩も退かない、不条理なほどに純粋な力と力の正面衝突!

 

 ゴガァァァァァァンッッッ!!!!

 

 直撃の凄まじい衝撃波が円状に吹き荒れ、周囲のラシーヌ工務店の鉄骨がまとめてバキバキと音を立てて吹き飛んでいく。

 

 『うおぉぉぉ!!!おいら達は…負けねぇ!!!』

 

 激突の中心で、ニシキの『じたばた』とブロスターの『クラブハンマー』が真っ向から火花を散らす。しかし、お互いにダメージは限界。一瞬でも気を抜いた方が消し飛ぶ極限のラリーの中、ブロスターの右鋏から泥水の底から這い上がってきた執念の重圧がさらに一段、ニシキへとのしかかった。

 

 (……く、そが……っ!)

 

 ニシキのウロコが悲鳴を上げる。ただでさえこれまでの回避戦で満身創痍だったその肉体に、ブロスターの渾身の物理重撃が容赦なくめり込んでいく。ジリジリと押し込まれ、視界が白く霞み、意識が遠のきそうになる。

 

 『ここまで、かよ……。カズマ……、俺は……』

 

 ニシキの心が折れかけた、まさにその瞬間だった。

 

 「――ニシキィィィィィッッ!! 立てぇぇぇッッ!!」

 

 夜のミアレシティを震わせる、カズマの割れんばかりの怒号が響き渡った。それは指示でも命令でもない。かつて何度も死線を共に潜り抜けてきた、唯一無二の兄弟分の()を呼び覚ます、カズマの()の咆哮だった。

 

 その声が、ニシキの遠のきかけた意識のド頭を、強烈に引っ叩いて呼び戻した。丸い瞳の奥に、濁った、それでいてかつてないほどに純粋な爆発的闘志が再点火する。彼らには…これで十分なのだ。どんなに辛くて逃げ出したくなる状況であったとしても…この言葉だけで…彼らは戦えるようになる!

 

 『……ハッ、応よカズマァァァッ!! 誰が、ここで、終われるかってんだよォォォッ!!』

 

 死線の底から、ニシキは再び『じたばた』の肉体に極限の力を込めた。体力が消え入る寸前、まさに首の皮一枚残ったこの極限状態こそが!『じたばた』の威力を、最大にまで引き上げる最高の条件なのだ!

真っ赤に燃え上がるニシキの暴威が、ブロスターの『クラブハンマー』を、その圧倒的な「漢の意地」で真っ向から押し返し始めた!

 

 「(っそ)だろ……!? あの状態から、さらに出力が上がったっていうのかよ!?」

 

 トウマが戦慄する。ニシキが血の涙を流さんばかりに目を血走らせ、最後の力を尾ビレに込めて、さらに激しくじたばたと暴れ狂う。その執念が…

 

 ピキ……ッ!!!

 

 ついにブロスターの鉄壁を完全に上回った。

 

 「――っあ―――」

 

 ピキッ…パキっ…ッ!!!

 

 トウマの目が見開かれる。ニシキの限界突破した打撃の連続に耐えかね、ブロスターの右鋏、そして身体を包んでいた自慢の「瑠璃色の甲殻」のあちこちに、無数のひび割れが走り…

 

 そして――次の瞬間…

 

 パキィィィィン……ッ!!!

 

 ガラスが弾け飛ぶような音と共に、最高の美と謳われた装甲が、粉々に砕け散って夜空へと舞った。

 

 「ジッ……ギッ……」

 

 装甲を砕かれ、全力を出し切ったブロスターの巨体が前のめりにアスファルトへと崩れ落ちる。その目はぐるぐるとして、完全に戦闘不能となっていた。

 

 同時に、『はねる』気力すら使い果たしたニシキもまた、激しい呼吸を荒げながら静かに地面へと着地した。その錦模様の身体には無数の傷が刻まれていたが、その瞳には、勝利した者としての誇るべき光が確かに宿っていた。

 

 トウマは静かに膝をつき、砕けた装甲の破片の中に横たわるブロスターを優しく抱き上げた。

 

 「…よく頑張ったな…ブロスター…。」

 

 その顔に悔し涙はなく、全力を尽くした漢としての、どこか清々しい笑みが浮かんでいた。そして静かにブロスターをモンスターボールに戻した…

 

 「…負けましたよ。カズマさん、ニシキさん。……最高のフルコースを、ありがとうございました」

「いや、礼を言うのは俺たちの方だ。…最高のディナータイムだったぜ…お代を払いたくなるほど、な」

 

 その言葉を聞いた瞬間、トウマはハッとしたように目を見開いた。そして、今度は歪んだ狂気でも虚栄でもない、極めて洗練された、本物のプロフェッショナルとしての給仕の笑みをその口元に湛えた。トウマはすっと立ち上がると、乱れた衣服を完璧な動作で整え、深く、優雅に一礼する。

 

 「おやおや、お客様。とんでもないことを。……お代なら、既にいただいておりますよ」

 

 トウマは顔を上げ、自身の胸元をそっと叩いた。

 

 「これほど脳髄を揺さぶる最高のスパイスを味わわせていただいたのです。これ以上の贅沢はありません。……ですが、どうしてもお代をお支払いになりたいとおっしゃるのなら…」

 

 トウマはそっと上着の内ポケットに手を伸ばし、一枚の美しく装飾された漆黒のカードを取り出した。そこには金色で『レストラン・ド・キワミ』の紋章が刻まれている。トウマはそれを両手で丁寧にカズマへと差し出した。

 

 「こちらは我が店の『特別招待状』でございます。…次に会うときは、夜のバトルゾーンなどではなく……我がレストランの本店にて。その時は、本当の最高級のフルコースでもてなすと、お約束いたしましょう…」

 

 カズマは差し出された漆黒の招待状を、大きな手でがっしりと受け取った。

 

 「ああ。……楽しみにしているぞ」

 「ええ。またのご来店を、心よりお待ちしております」




次回!
ホテル前での騒ぎにフラエッテ姐さんぶち切れる!
怒りの「はめつのひかり」がミアレの空を照らす!
カズマ、AZさんに割とガチでビビる!
の豪華3本立てで執筆します!乞うご期待!
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