デイジーはあの後すぐにハンター訓練場に入校し、モンスターハンターとしての訓練を順調に進めていた。
自分の決意を父に伝えたときに、パパガイは反対することなくディズの熱意を後押ししてくれたのだ。
ヴァリオンとシンバもハンターライセンスを取得すると言うデイジーに多少驚きはしたものの、彼らなりにディズの成長を手伝っていた。
訓練が終わると、デイジーはルルリアの部屋に立ち寄るのがいつしか日課になっていた。
そして相変わらず眠り続ける友の介助をしていく。
誰に礼を言われるということではない。
ディズ自身が純粋にルルリアの助けになりたかったのだ。
今日も訓練を終えてきた。
砂漠地帯に生息する【砂竜ドスガレオス】を単独狩猟するという暑苦しい課題をこなし、教官の判子をもらってその足でルルの部屋に向かった。なんだかいつにも増して混み合っているアパートの入口をくぐり、なんだかいつも以上に騒がしいロビー、階段、廊下を抜けた。
ルルリアの部屋のドアをノックする。
返事がないのはわかっているが、一応礼儀だと思う。
『はーい』
こんこん、と自分の拳が立てた軽やかな音に続いて中から返事がある。
デイジーは息を呑んだ。
まさか、ルルリアが目覚めたのか?ちょっとあせりながらドアを開けると、部屋の中で四人の女の子が飾りつけをしていた。
「…え?」
状況について行けてないデイジーに、エリーが「やっほー」と手を振る。
彼女の手には花瓶が納まり、ピンク色のガーベラとかすみ草が生けられている。
その花瓶をナツミが持ってきたレース編みのクロスがかけられたサイドテーブルにのせて、彼女は「よし」と頷いた。
窓枠にはナツメが張り付き、ライムグリーンのカーテンを取り付けているところだった。
脚立をナツミが支えながら、取り付け場所をのんびりと指示している。
ベッドではマイカがその敷布を取替えている最中。
彼女は手馴れた様子でシーツを取替え、ついでにかけ布団のカバーも外した。
足元においてある袋からリーフ柄の爽やかな色のベッドカバーを取り出すといそいそとベッドメークを仕上げていく。
昨日まではなかったロッキングチェアに、この部屋の主であるルルリアが納まっている。
相変わらず意識は無いようだが、そのゆらゆら揺れる椅子が生み出す波に気持ちよさそうに身を任せていた。
彼女たちは何度か見たことがある、ルルリアと同じ猟団の仲間たちだ。
工房にも来てくれたことがあるのではないか。
それはいいが、なぜ急に?と、ビックリして固まっているデイジーに、エリーが声を掛ける。
「あたし達だってサ、このコ気になってたンさ」
ほっぺたをぽりぽりと掻きながら、照れたように経緯を話す彼女に、ディズはなんだか嬉しくなってくる。
狩りに対してのみ生き、他のことにはストイックでリアリストなのがモンスターハンターだと思っていた。
だけどこうやって仲間を思って『ハンターとは関係ない事』をしてくれる連中だっているのだ。
これは俄然、ライセンス取得にむけてやる気が出てきた。
ルルリアの力になるのだ、という思いに加えて、自分も猟団に所属したい、という気持ちが芽生える。
あの何もなかったルルリアの部屋に小ぢんまりとしたテーブルセットが増えている。
飾り棚が置かれていた。
本棚が据えられ、中にハードカバーの書籍が数冊積み上げられてある。
床には毛足の長い、ガウシカの毛皮が使われたラグが敷かれている。
たった一日で、殺風景だったルルリアの部屋は見事に改装されていた。
取りあえず、ローナとボルドーとアシュレーとユゥナが一番目だったのが良かった。
ドアを開けたとたんにボルドーが踵を返す。
ローナが苦笑いしながらその後に続き、アシュレーも肩をすくめながら着た道を戻り、ユゥナも含み笑いで自分の部屋に向かった。
数刻後、四人は調度品をいくつか抱えて戻って来る。
ローナ団長は絵を持ち込んだ。
なんだか高そうな雰囲気が漂うその静物画を壁に掛けると、ユゥナは自分の持ち込んだラグを床に広げる。
ボルドーがロッキングチェアを部屋の隅に遠慮がちに置き、アシュレーがなぜか少女趣味全開の花の形のランプを箪笥の上に置いた。
それを見ていた次の組も続き、お見舞い隊は当初の目的を変え、リフォーム隊となっていったのだった