「今年も恒例の交流会の時期になりました。我が団にも二人のお客さんが来られました。西方の国から情報と戦技の交流の為においで下さいました。えーと、『フウガ』さんと『ケイキン』さんです」
団長がそれぞれを紹介する。
『フウガ』と呼ばれた男性。
ややすると細身に見える体つきだが、それと裏腹にバネの秘められていそうな滑らかな仕草で周りの団員たちに礼をする。
人懐こい笑顔を持った、なんともハンターらしくない雰囲気だ。
周囲に愛想笑いを振りまく彼に、ヴァンはなんとなく……確信は無いのだが、なんとなく危険なニオイを感じていた。
『ケイキン』と名乗った女性を、酔っ払ってまだ頬が赤いままのルルリアが射るような眼つきで睨んでいる。
いかんせん、その視線は気になったが取り合えず、ルルはもう酒に戻らなそうなので拘束を解いたデイジー。
だが、次の瞬間、ルルリアは弦から解き放たれた矢のようにケイキンに向かって走った。
ディズが止める間もなく、客人の目の前にたどり着いたルルリアはいきなりケイキンのその胸をわしっ、と掴み捏ね回した。
周囲があっけにとられている最中、ルルは何かを確かめるようにケイキンの乳をまさぐる。
そして次いでおもむろに、自分の乳をも鷲掴む。
しばらく、自分のおっぱいをぐにぐにといじったあと、ルルはケイキンに向かって一言。
「ドロー、ってことでひとつ」
と言い放った。
途端に“ごんッ”っという重い音が響き、ルルリアがその場にうずくまって頭を抱えた。
ヴァリオンがフウガとケイキンに向かって深々とその頭を下げている。
謝罪するそのついでにルルの頭をもう二、三発叩きつつ。
そんな彼に寛大なゲスト二人は笑顔を返し、周囲の緊張はほぐれてゆく。
「ボクらもいろんなとこ回りましたけど、挨拶の直ぐ後にケーキンが胸、揉まれたんは初めてやね」
「面白いもの見せてもらいました」と、くつくつ含み笑いするフウガ。
その口調は確かにこの周辺では聞きなれないもので、遠方からの空気を感じさせた。
胸をいじくられた当のケイキンさんはというと、今の出来事など全く意に介していない様子で、頭をさすっているルルリアと同じ目線にしゃがみこんでいた。
「ヴァンのヤツ、本気でぶったね……父さんにもぶたれたことないのに……」とぶつぶつ言うルルリアは、ふと自分を覗き込むケイキンに気づく。
とりあえず、愛想笑いでも返しておこう。
ドロー、とは言ったが、あの乳は強敵だ。
もしかしたら負けているかもしれない。
そのルルの引きつった笑いに、にっこりと笑顔を返し、ケイキンはその上品な口調でルルに言う。
「こう、ですわ。こう」
「こう」といいながら、彼女は両の二の腕で自らの爆乳をさらに寄せる。
彼女がまとっているのは白く輝く鎧。
とはいえ、その胸元はなぜかオープンでその魅惑の谷間がむっちりと強調されている。
それをさらに寄せて上げる、と当然、その胸が持つ凶器度は跳ね上がり、そこに居合わせた野郎共、なんとボルドーまでが【その部分】にごくりと硬い唾液を飲み込んだ。
「え、こ、こう?」
そのケイキンの思いっきりな自然さに吊られ、ルルリアも同じように二の腕で自らの乳を寄せる。
むにゅん、とガルーダベストの中身がたわみ、ルルの胸に深いクレヴァスが生まれる。
肩を閉じるのに一生懸命になりすぎてお尻を突き出し、必然的に内またになってしまう。
そしておっぱいと同時にその小顔もやや上がり気味になり、あごから細い首のラインが露になる。
どこからどうみても、女性の持てる武器をフルに使ったセクシーアピール度満点なポーズであった。
今までのアホっ娘なエロさではなく、意図的に作り出されたいやらしさ……艶っぽさ。
それはルルリアの新たな魅力……なのだろうか?
とりあえず本人は自分の姿の破壊力をわかっていない。
きっと後で部屋に帰ってこのポーズを姿見で復習したときに、ルルリアは新たな力を自覚するのだろう。
やっかい極まりない。
「すばらしいですわぁ♪とってもセクシーですのよぉ♪」
ルルの取ったそのポーズはケイキン的に完璧だったのだろう。
満面の笑顔を浮かべ、顔の前で小さく拍手までしている。
その横でフウガが鼻血を押さえ、GJサインの親指を力強く打ち立てていた。
「「あー……ゴホンッ」」
ローナとデイジーがワザとらしい咳払いを幾度かする。
その行為に、はっと我に返ったボルドーが周囲に激を飛ばした。
「と、とりあえず、これから闘技演習に入る!深酒した者はメゼポルタ広場を50周してこい!」
そのボルドーの声に殆どの団員がぞろぞろと出口に向かう。
これから広場でダラダラと酒気を抜くマラソンが始まるのか。
「どうせ闘技演習するならいいじゃんか」とぶつくさ言う声もちらほら聞かれるが、酒が入ったままモンスターの前に立つことが如何に自殺行為か、それは皆わかっているので強い文句は出無いのだった。
団員が広場の迷惑を顧みず、列になってぞろぞろと走っている。
ほぼ全てのヤツはやる気が無い。
だが、止まろうものなら【団長より団長らしい】ボルドーの説教が待っている。
それを皆知っているので一生懸命汗をかこうとしていた。
ギルドガールたちがクスクスと笑いをかみ殺し、食材屋や調合屋の店主たちも暖かい目でこのイベントを見守っていた。
毎年、この交流会の時期になるとどこの猟団でも同じような事が行われるものだ。
ゲストに迎えられるのはみな各地で【凄腕ハンター】としての名高い者達ばかり。
自国に戻ってこちらの話を笑い話にされてはモンスターハンターとしての面子にかかわる。
ボルドーのその無言の思いは皆の共通のものでもあった。
段々と足並みが揃ってきた団員たちの集団マラソンを見ながら、ローナはちょっと離れたところにいるデイジーににこりと笑いかけた。
「色々、頑張ったみたいだね。入団届け、しっかりと受け付けましたよ。ディズ。これからもルルのこと、よろしくお願いするね」
と、穏やかに語る団長に、いくらかほっとするデイジーだった。
これで、ようやく自分もルルリアと同じ立場。一緒に、頑張っていきたいな、と負けん気の強い彼女にしてはかわいい事を思うのだった。
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