モンスターハンターオルタナティブ   作:雨垂夜詩乃

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043 謎多き時

 

がちん、がちんと両方の銃槍に弾丸を込めたルルリアは自ら両脇に抱えた二挺のガンランスを構えリオレイアの鼻先にその刃の切先を突きつけた。

既に起き上がって地面をその力強い爪で蹴り、威嚇行動をしているレイアの口からは火球が放たれる前触れの黒煙が漏れ、この気の強い雌火竜がまだやる気満々なのを示していた。

レイアの口腔から吐き出される直径二メートル近い火球をルルリアはサイドステップとダッキングでかわして行く。

そしてレイアの攻撃が止んだ一瞬の隙を突いて彼女はトライファイアの銃剣をその下腹に突き入れる。

二回的確に急所に突き、大きくその刃を振り上げる。

傷口が広がり、レイアが苦しそうな声を上げた。

 

気づくと周囲にピンク色の霧が広がっている。

今のところ視界に影響は無いが「これ以上濃くなると距離感が狂うな」と口の中でつぶやきつつ今しがた切り裂いたレイアの腹の中に右腕に抱えていたデッドウィングスペシャルをバイアネットどころかバレルごと突込み、竜撃砲のトリガーを引く。

 

ぐじり、と傷跡から鮮血が洩れ、レイアは悶絶する。

そして次の瞬間、体内に突き入れられた真紅のガンランスから放たれた爆発は哀れな雌火竜に断末の声を上げさせる事無くその命を奪う。

内部から破裂したその無残な姿は事を起こしたルルリア本人ですら直視したくないほど凄惨なものだった。

 

周囲に広がる異様なモヤはどんどんと濃くなり、ルルリアを緊張させる。

シンバはこのガスにやられたのだろうか。

だとすると、荊琴が危ないのではないか?はた、と気づき彼女はレウスの相手をしているはずの荊琴の元に走った。

 

右の腕にかかえたデッドウィングスペシャルの廃熱機関から放出される冷却剤が白く帯を引いてルルの足跡に続く。

はたしてさっきまでレウスとやり合っていた場所に着てみると、やはり荊琴もシンバと同じように洞窟の壁に寄りかかり寝息を立てている。

だがさすが凄腕ハンター、その大剣ローゼンクラフトがリオレウスの背中に突き立てられ、レウスは既に息絶えていた。

 

それを確認し、ルルリアは深くため息をつく。

なんだかとても疲れた。

やっぱりガード武器なんて使うものじゃない。

自分にはやはり太刀が一番しっくり来る。

そう考え、両腕に抱えたトライファイアとデッドゥイングそれぞれに視線を走らせる。

レイアの血肉に塗れてちょっと酷い状態だけど、まぁ、たまには目先を変えてみるのも面白かったかも、とも思う。

 

「……でも、あたし眠くないのは……なんで?」

 

泉のあっち端とこっち端で眠りこけるシンバと荊琴を見て不思議に思う。

このピンク色のガスが原因なのは間違いない。

だけど、いくら自分が鈍いとはいえ、睡眠ガス(?)が効果無いってのは、ちょっと人として無いだろう。

二挺のガンランスにこびりついた血糊を泉の水で拭いながら「あたしってそういう空気も読めないのかなぁ」と一人でつぶやいてみる。

 

ふと、目を上げた先に。

ルルリアは何か、得体の知れないモノを見る。

 

シルエットは四足の獣。

うすい銀蒼のたてがみをなびかせ、目立つ二本の角をこめかみから後ろに伸ばしている。

その瞳は怒気をはらんだ金の玉髄。

泉の対岸でその大きな体の狼は低い唸り声で咽を鳴らし、じっと此方をうかがっていた。

 

見たことのないモンスター。

飛竜系ではなく、獣系の姿。

その威風堂々とした立ち姿は爬虫類には無い独特の威厳が感じられる。

だが、ルルはその眼光が気に入らない。その刺すような視線を放つ『金色の瞳』がアレに被る。

予期せずに自身が抱えるトラウマを思い出し、彼女は舌打ちする。

 

湧き出る清水が湖面に波紋を広げ、視線を交わす一人と一頭の像を揺らし続ける。

ルルリアはトライファイアのグリップを握りなおした。

あの蒼い狼の脚力は、この泉の幅くらいは軽く跳躍してくるだろう。

シンバも荊琴も未だに戦闘不能、殺り合うとしたら自分しかいない。

 

視線を対岸の獣に向けたまま、竜撃砲のカートリッジをゆっくりと装填する。

レイアと違ってかなり俊敏な動きをすると思われる。

自分の脳内に刻まれた、父母の遺したモンスターデータをどうほじくり返しても該当するヤツがいない。

つくづく太刀を装備してこなかったことが悔やまれる。

無双刀であればどんな相手とでもやり合える自信があるのだが……。

 

だがその蒼い毛並みの獣は、戦闘状態のスウィッチを入れたルルリアにいきなり興味をなくしたかのように目の光を和らげ、くるりときびすを返して茂みの奥に消えてゆく。

ぱきぱきと枯れ枝を踏み鳴らし、自らの存在を隠すことなく森の中に消え行くシルエットをルルは黙って見送ることしかできない。

彼女は狩猟対象でもないものをわざわざ引きとめてまで仲間を危険に晒すこともないだろうと自分に言い聞かせ、無視されたという癪に障る事実を飲み込んだ。

 

とりあえず、今しがた出会った未知のモンスターのことは自分の胸にしまっておくことにして、ルルはギルドネコを呼び出す笛を吹く。

 

が、一向にネコたちは姿を現さない。

 

はた、と思い立ち、ルルは自分がシールドで蓋をしたネコ穴を覗き込んでみる。

そこにはマタタビに泥酔した泥棒ネコ【メラルー】とギルドネコ【アイルー】の入り混じったネコ玉が出来上がり、もふもふした毛皮が折り重なって柔らかそうな敷物が出来上がっていた。

 

その状況を見て、ルルリアはひとつ「へちょッ」とウソくさいくしゃみをする。

そしてげんなりした顔でその穴の中に音爆弾をひとつ無造作に放り込んだ。

爆発したソレが放った甲高い音に肝をつぶしたネコたちがバケツをひっくり返したような大騒ぎを始めたのは言うまでもない。

 

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