「う、わぁぁ……あっ!!」
シンバは跳ね起きる。
リオレイアの鋭い牙が自分の眼前に迫り、あわや食い殺される……というところで、目が覚めた。
まったく、寝覚めが悪い夢だ。
レイアの突進ごときは盾を使って防げばよいのだが、夢の中の自分はなぜかシールドを装備していなかった。
アレだ。
ルルのヤツが『シールドいらなーい』と何度も繰り返すからだ。
「ち、くしょう……イヤな夢だ。ったく、ルルがあんなこ、と……どこだ?ここ」
いつのまにかベッドに寝ていた。
さっきまで森丘の洞窟の中でリオ夫婦と戦っていたのではないか?周囲を見まわしてみても見覚えの無い部屋だ。
自分の入院中に誰か模様替えしてくれたのかしら?と考える。
そういやルルリアの部屋を【リューシェ】の連中が改装したとか言っていた。
あの殺風景な部屋がどれだけ立派になったのか、近々見に行ってみようか。
「んぅ……さむ、いよ……シンバ」
「あ、ああ。ごめん」
となりで寝ていたルルリアがもぞもぞと動いて、シンバが跳ね除けたかけ布団を手繰り寄せる。
そのまま、それにくるまってまた寝息を立て始めた。
「……え゛?」
なぜ、よこにコイツが、寝ている?
朝の爽やかな陽光がライムグリーンのカーテンの隙間から射し込み、ルルリアのやわらかな銀髪を照らし、その艶でエンジェルリングを作る。
すぅすぅと穏やかに寝ている彼女と正反対に、シンバの思考は乱れてまとまらない。
だって、なんにも覚えていないのだ!!
「な、なな、なん……で?」
きょときょとと周囲を確認し、他に誰かいないか思わず確認してしまう。
ベッドの足元に置かれた箪笥に見覚えがある。
アレはルルの持ち物のハズ……ということは、ここが改装されたルルリアの部屋なのか。
本棚やらテーブルセットやら、かなり物が増えている。
ベッドも先の古いシングルじゃない、ゆったりとしたセミダブルサイズのものだ。
うん。
いい部屋にしてもらった。
よかったな、ルル。
シンバはベッドに半身を起こし、彼女の部屋の変わりようにうんうんと頷きながら現実逃避を続ける。
そうでもしてないと、横に転がっている布団の膨らみが気になって、気になって……。
すやすやと寝息をたてる彼女はまさしく無防備の極み。
隣に男がいるというのに、この安心しきった寝姿は一体どういうことなのか。
くしゃくしゃに寝癖がついた髪に目を走らせる。
こういうところは本当に無頓着なヤツだ。
それはヴァンの影響が強い。
女の子は身だしなみに気をつかうものなんじゃないのか?
「そういうのも教えてやんなきゃダメだろ!」とここにはいないヴァリオンに向かって突っ込みを入れてみる。
「ん、んぅ……ふぁ」
ルルリアがごろんと寝返りをうつ。
その動きで肩まで掛かっていたかけ布団がはだけ、その小麦色の肌面積が増える。
彼女は寝間着、所謂ところのパジャマというモノは着ていない。
肌着、所謂ところのシャツ、それも襟ぐりの広く開いたタンクトップをお召しになられている。
普段ガルーダベストに申し訳程度しか隠されていないのでそれなりに見慣れているはずなのに……どうしてこう、その白く薄い防具に守られただけでルルリアの凶器の破壊力が跳ね上がるのだろう。
鎖骨も露な広く開いた胸元にはクッキリと谷間が刻まれ、もう少し、ほんのもう数センチで先端が…。
「い、いや。俺はナニを考えているンだ。落ち着け。うん」
思考が危ない方向に傾き始め、シンバは自分を戒める。
とりあえず、除名されたとはいえ、自分はあのヒューマの流派で学んできた男。
寝ている女性に対していかがわしい視線を走らせるなんて、もってのほかだ。
「うむ。俺は……パンツもシャツも着ている。着衣に乱れは無い。大丈夫だ」
ナニが大丈夫なのか自分でも良くわからないが、シンバは未だにぐるぐると纏まらない頭をむやみに回転させ、状況を理解しようとしていた。
なにかの勢いでルルリアと【そういうコト】をヤッてしまった可能性も捨てきれない。
とりあえず、確認しないことには始まらない。
ナニが始まらないのか、やっぱりよくわからないが、ルルのナニかも確認しないといけないだろう。
とシンバのオーバーヒートした脳みそは答えをはじき出す。
ごくり、と唾液を飲み込む音が妙に耳に届く。
シンバはそろそろとルルリアの体を覆う布団に手を伸ばし、その端っこを摘み上げた。
彼女は横向きでこちらに可愛らしい寝顔を晒している。
もうその寝顔を見れただけでも幸せを感じてしまうだろう。
半開きになった薄紅の唇の端にヨダレの跡が残っている。
激レアではないか。
ボックス買いしないと出てこないスーパーレアなんじゃないの?この画。
普段なら。
普段なら満足する。
ここで、満足する。
だが、今、シンバの本能はその先の【行動】を命令している。
かけ布団を掴んだ左手に力が入る。
その腕を徐々に持ち上げていくシンバ。
それと同時に頭を下げ、かけ布団とシーツの間に起きる空気の対流を極力無くす努力をする。
持ち上げられた布団の奥に、ルルの着ている白いタンクトップの全てがうっすらと見える。
そのシャツはシーツとの摩擦でいくらかずり上がって、へそが丸見えだ。
いやさ、ルルリアのへそなんざさんざ見飽きている。
ハズ、なのに、どうして今、自分は物凄く興奮しているのだろう。
ルルリアはまったく目覚める気配は無い。
相変わらずくぅくぅと軽いいびきをかいている。
時々、口をむにゃむにゃと動かして本気の寝入り方……だと思う。
シンバは、ルルを慎重に観察し「…うん、もう少し確認しないとダメだな」とつぶやき、左手にさらに力を込める。
先ほどより幾分大胆に布団を持ち上げると、へその下に【キチンと】穿かれたパンティが確認できた。
飾り気の無い、純白のショーツ。
そのややローライズなアンダーウェアは一見するとなんの変哲も無いただのパンツだ。
素材もおそらく普通のコットンだろう。
だが、なんだろう。
この胸の高鳴りは。
シンバは自分の鼻息が勢いを増しているのに気づく。
だが、それがどうした!こんなものを見せられて、なんとも思わないなんて逆にルルリアに失礼なんじゃないのか!?
ぐびり、と再度生唾を飲み込む。
既にシンバの思考はスケベモードにシフトされているようだ。
ヒューマ師匠から教わった禁欲的な教えはどこかに吹っ飛んでしまったようだ。
彼はまず【覗く】か【つつく】か、それとも【揉む】かと真剣に悩む。
確かにどれも魅力的だ。
だが、そう長考してはいられない。
いくらルルの眠りが深かろうが、大概こういう時にカンが働くのが女という生き物だろう。
コイツの目が覚める前に、いろいろ堪能させていただこうではないか。
そう決めたシンバは、今日のこの降って沸いたチャンスをルルリアの胸に重点を置くことに決める。
左手に持ち上げていたお布団を、そうっと下げてルルリアの腰あたりに掛ける。
太ももやパンツが見えなくなるのは惜しいが、そこはぐっと堪えることにして彼は自由になった両手を獲物に向けた。
いざこういう機会が訪れてみれば、ルルが自分のサイズより大きめの服を好むのは幸いだった。
外力を加えても摩擦係数が上がりにくい。
シンバの左人差し指が慎重に動き、彼の得意なガンランスの刃の先がモンスターの弱点を的確に攻撃するようにルルリアのタンクトップのスリーヴをとらえ、ゆっくりと下げてゆく。
横向きに寝ている彼女の肩口からズラされたしろい布きれがじわり、じわり、とルルの二の腕を滑ってゆく。
シンバの冷静な観察眼は、ルルリアの左肘手前までなら袖を通せることを見切る。
「その手前、までだな…」