モンスターハンターオルタナティブ   作:雨垂夜詩乃

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047 浮かぶスイカ

 

「あら、ルルちゃん。おはようございますですわぁ♪」

 

工房のカウンターの前には荊琴がいて職人たちと装備談義に花を咲かせている。

遠方の職人技に興味があるのか、話題は彼女の装備している武具についての色気のない話ではあったが。

 

「あ、荊姉だ。おっはぁ♪」

「…おはようございます」

 

ルルとディズに懐っこい笑顔を返し、彼女はその手に持っていたヘルムをかぶってみせる。

とても嬉しそうな表情と声で「最高ですわぁ、素敵ですわぁ♪」と繰り返す荊琴が装備したのは【ガブラスフェイク】しかも彼女の白い【フェルムメイル】にあわせて本来黒い蛇竜の皮を白く染め上げたスペシャル仕様だ。

 

小型の飛竜であるガブラスのその上あごから頭部、首部をそのまま兜にしてしまうパパガイのセンスもアレだが、ソレを喜んでかぶる荊琴の嗜好もアレだとデイジーは思う。

デカい蛇が歩いているようにしか見えない。

正直、自分とは趣味が合わないと思う……の、だが……。

 

「おおお!荊姉!かっくぃいいッ!いいなぁ……いいなぁ……ルルもほしい!それほしい!」

 

これだよ。

このルルリアってヤツのセンスも今ひとつ、分からない。

「貸すだけですよ?あげませんよ、絶対に」と荊琴に念を押されつつそのガブラスフェイクスペシャルを頭に乗せてご満悦のルルリアを見て、小さくため息をこぼすデイジーだった。

 

「食事は?」と言うガブラスに「ついさっき済ませた」と答え、ルルリアはこれからイャン=クックをいじめに行くという予定をガブラスに伝える。

「荊姉も一緒にいく?」というルルリアの誘いに、ガブラスは珍しく乗ってこない。

 

「それよりも、皆で水浴びにいきませんこと?」

 

ガブラスが嬉しそうに提案する。

「依頼を見に行くのは午後からでもよろしくないですか?」と続ける彼女を見て、ルルは一度デイジーを振りかえる。

約束したのはディズの方が先だ。

ルルリアは今の荊琴の申し出に対する決定権を無言でディズにゆだねた。

 

実はデイジーとしてもルルリアの体に興味があった。

以前、ルルリアが昏睡していたときに確認した【角のような突起】の元凶であろう【龍化】の影響を確かめておきたかったのだ。

ルルリアには悪いが、デイジーは彼女に内緒でヴァリオンを問い詰め、ルルの秘密を聞き出していたのだった。

 

しぶしぶ話してくれた彼の話をにわかには信じられなかったが、ヴァンの背に残る傷跡や自分の目で確認した【龍角】によってその話が与太ではないことは理解できた。

後は、ルルリア自身をどう援護出来るか、それが彼女にとって大きな目的になっていたのだ。

「水浴び、か。そうね。いいかも。行こうか、ルル」

 

ほぼ確実に却下するだろうと思っていたルルリアはそのディズの返事に少し驚くも、頷きを返しガブラスにも笑みを向けるのだった。

 

 

三人分のタオルや着替えを確保し、一向は樹海の中の湖に向かう。

鬱蒼とした、という表現すら生ぬるい深さの樹海は希少鉱石の産出場であり、珍しい虫や植物類も豊富に生息している。

時折、非常に珍しい白い眠鳥が発見される他、棘竜エスピナスの生息も確認されている奥深いフィールドである。

とはいえ、ハンターたちにとってそこは庭みたいなもので、樹海中ほどにある澄んだ水を湛えた湖はある種の憩いの場として重宝されていた。

 

「ここは素敵ですわねぇ…ちょっと掘ればこんなに暖かい温泉が湧き出るのですから」

 

ガブラスフェイクを脱いだ荊琴が湖畔の砂浜を掘り返す。

そこから染み出てくるのは普通の水ではなく、やや熱めのお湯がじわりと滲み出す。

火山地帯から延びている地下水脈があるのかどうか分からないが、この場所だけお湯が湧き出しているのだ。

それを湖の清水と混ぜ合わせ、彼女たちは即席の温泉を作り上げた。

 

「……ぬかった」

 

デイジーが心底失敗したという顔をする。

彼女の前ではルルリアと荊琴が何の恥じらいも無く装備を脱ぎ、早くも産まれたままの姿になっている。

その二人を見て、ディズは敗北感を感じずにはいられなかった。

自分の所持するモノが貧相に見えて仕方が無いホド、お二人にぶら下がっている乳房は迫力がある。

水浴びってことは、当然、裸になるわけで……デイジーは静かに落ち込んだ。

 

「はぁ、朝から湯浴みって、贅沢だねぇ……」

「そうですわねぇ……」

 

既に湯に浸かってご満悦の二人。

双方ともにスタイルの良し悪しなど全く気にしない性格をしているのが救いと言えば救い、残酷と言えば残酷であった。

遠慮がちに脱衣して彼女たちに加わるデイジー。

とにかく、目的はルルリアのボディチェックなのだ。

 

「……なんだ、アレ」

 

視線を気づかれないようにルルの体に向けると、信じられないことにそのおっぱいが湯面に浮いているではないか。

思わずあからさまに荊琴の方に目を向けると、更に強烈な浮力を放っている丸いモノが見えた。

そして自分の胸元にそのような現象があるはずもなく、デイジーはかなりのショックを受けるのだった。

 

「いや、乳の大きさだけでは価値は決まらんがな」

「ああ、それはホンマそうやね」

 

仲良く湯浴み中の女性たちを、案外近くの樹上から覗く人影があった。

彼らのいる場所からは三人を満遍なく見渡せ、それぞれの特徴が良くわかるのだった。

 

ルルリアはその小柄な体に不似合いな乳を装備しているのは周知の事実。

だがそれは決してアンバランスなわけではない。

ハンターとして鍛えられ、締まった筋肉と少女らしい柔らかさは彼女にしか与えられなかった珠玉の宝だった。

いくつか残るモンスターから受けた傷も良い意味でのアクセント。

その強気で一本気な狩猟に対する性格を表して一種の対比的な色気をかもし出しているのだった。

ロリィタテイストの強いツーテールを解かれ、水分を含み玉肌に張り付く銀糸もまたルルリアのトレードマークだ。

ファッションには関心の低い彼女は髪の手入れもゾンザイだ。

それでもツヤツヤとして柔らかさを失わないキレイな髪は自由奔放なルルリアを象徴して自然な魅力に溢れている。

 

「妹さん、カワイイですなぁ」

「う、うむ。まぁ、な」

 

細身の男が、がっしりした男に話しかける。

その言葉に、少々釈然としないものカンジながらも同意した。

いや、しかし、いつのまにルルリアはあんなに女性らしくなっていたのだろう。

ついこの間までただのガキだったのに、いやいやどうしてしっかりと成長しているじゃないか。

 

「しかし、キミの相棒もイイ女だな」

「んふふ、そうですやろ?」

 

「自慢の彼女ですわ」と続け、あごをさすりつつニヤリと笑う風牙。

臆面も無く言い切る彼に、話題を振ったヴァリオンも、この男は自分の女の裸体を他の男に見られてもいいのか?と内心苦笑する。

だが、彼のその心中を察したように振り向き、風影はさらにニンマリと笑みを深めた。

 

「ヴァンさん、自分の彼女さんと妹さんの裸。ボクが見てもええのですか?」

「ぐ、ゴホっ、彼女って、ディズはそんな」

 

急にツッコまれ、ヴァンはむせる。

だがすぐに自分たちの状況を思い出し、気配を殺す事に専念した。

くつくつと含み笑いを続ける風牙に渋い目線を投げ「からかうなよ」と答えた。

 

「まぁまぁ、隠さんでもええじゃないですか。こないだ、デイジーさんをお部屋にお持ち帰りされたの、見ましたよぉ?」

 

これ以上なく粘っこい笑みを向ける風牙に「見られてたのか…しまったなぁ」と頭をガリガリかくヴァリオン。

その顔は赤くなり全く締まらない。

照れ隠しなのか、右手で顔をごしごしとこすり眼下の温泉に視線を落とすヴァン。

そこではデイジーがルルリアの肩にある傷をなぞり、その経緯を聞き出しているところだった。

 

ディズのうなじが目に入る。

湯の熱に当てられほんのりと上気した彼女の肌を見ていると、あの時の感触が蘇ってくる。

まさか童貞を十四も年下の女性にささげるとは思ってもいなかったが、その時に感じた初めての女性に感動したのもつかの間、彼はデイジーも初めてだったことを知り大いに焦ったのだった。

しかしお互いを気遣いあうウチにコツをつかめたのか、それから段々と大胆になってくるデイジーの乱れ方も手伝ってヴァリオンも遠慮なく彼女を求めるようになっていた。

つい昨日も二人で夕食をご馳走様した後自然にヴァリオンの部屋についてきたデイジーをごちそうさましたばかりである。

自分の腕の中で必死に声を堪えるデイジーの艶姿を思い出してしまいヴァンは今下でルルや荊琴とじゃれ合っているディズを直視出来なくなってしまうのだった。

 

まさか頭上から覗かれているとはつゆしらず、デイジーとルルリアはお湯の中で子犬のように戯れていた。

ディズは水浴びに来た本来の目的を忘れ、ルルリアから教わった手を使った水鉄砲のやりかたに夢中になっている。

なかなか上手く水が出なくて悪戦苦闘する彼女の顔にルルが見せ付けるようにしぶきを飛ばす。

「ほれほれ早く撃ち返してみ♪」とピュッピュ連射するルルリアに対して、ディズが水鉄砲をあきらめ手のひらで多めにすくったお湯をルルの顔面にぶっかける。

 

「わぷっ……ずりぃぞ、ディズ」

「ふん、あんたがせせこましいのよ♪」

 

にやけ顔にいきなり浴びせられたしぶきをモロに受け、ルルが嬉しそうに反撃を開始する。

やれやれと呆れ顔の荊琴を尻目にお互いに立ち上がってばしゃばしゃと暴れ始めてしまった。

「あーあー、ガキですなぁ…止めなくていいのですか?」

「オレがか?」

 

くふふ、と笑う風牙に「この性悪め」と一刺しを返しヴァンは広く伸びた枝をつたって樹海の出口に向かう。

随分と長居してしまった。

これ以上ここに留まっていたらルルやディズはともかく、カンの良い荊琴に気づかれる。

そうなったら後でナニを言われるか、たまった物ではない。

 

きゃあきゃあと水かけ遊びがヒートアップする二人を横目で見ながら、荊琴はちらりと樹上に視線を向ける。

ヴァンは去ったようだが、風牙が未だに影のようにひっそりと梢に佇んでいる。

だがその眼光は女達の裸体に向けて艶づいたモノでは無く、冷ややかで無感情なモノに変わっていた。

ふと彼の唇が小さく動き、その後直ぐに風牙は樹影に同化する。

 

「……始めるのですね」

 

自分の口の中だけでつぶやき、荊琴はその指令を実行する算段を開始するのだった。

自分たちがココに来た『本当の理由』…。

 

『選ビ定メル者』としての任務。

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