流る星に一つの願いを   作:ねむれすねむれす

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第一回月陽招集会議!

 

 それからまた時は過ぎて、オーディションの日程が近づいてきた。前回と同じではあるんだが、オーディションの準備が忙しくて他のみんなのスカウトについて何も手を打つことが出来ていなかった。

 

 焦りがないと言えば嘘にはなる。だけど今の俺は一人じゃない。頼れる相手がいたからこそ、俺も目の前の仕事に集中できた。

 

 今日はそんな頼れるみんなによる作戦会議があるみたいだった。

 

 

『ということで第一回月陽招集会議開幕です!』

 

『わー』

 

『どんどんぱふぱふー』

 

 電話越しにみんなの声が聞こえてくる。俺も念のため会議室を借りて、そこでいつものノートを片手にそれに参加していた。

 

『事前にも話していましたが、今回の議題は牧野さんが月のテンペストとサニーピースのメンバー、つまり、琴乃ちゃん、渚ちゃん、芽衣ちゃん、すずちゃん、私、さくらちゃん、千紗、雫ちゃん、怜ちゃん、遙子さんの十人を星見プロダクションにスカウトするにはどうすればいいか、です』

 

『妙な話よね。自分で自分のスカウトの話をするなんて』

 

『怜ちゃんは、特に対策しなくても、スカウトされる、はず』

 

『……雫、ちょろいって言いたいわけじゃないわよね?』

 

『もちろん怜ちゃんはちょろくない難しい人』

 

『誰が難しいよ!』

 

『やっぱり難しい……』

 

『こほん』

 

 騒ぎ出した二人を沙季が咳払いで止める。賑やかで何よりだ。

 

『雫ちゃんの話はともかく、牧野さんが正しくオーディションを開催し、スカウトをすれば、ここにいる五人、千紗、雫ちゃん、すずちゃん、怜ちゃん、私は問題ないわけです。なのでこの五人の話は今回除きます。牧野さんもそれでいいですか?』

 

「問題ないならそれでいいんだが……。確認なんだが、怜以外は確実にオーディションに来るのか? オーディションに来る経緯を知らないから断定していいものか迷っていたんだが」

 

『そういえばまだお話していませんでしたね。私と千紗は事務所の公式ページからのおしらせでオーディションを見つけているはずです。今回も出していますよね?』

 

「あぁ。出しているな」

 

『だとすれば問題ないかと。すずちゃんはどうですか?』

 

『私は事務所に張り出されたポスターからですわね。今も貼っていますの?』

 

「ちゃんと貼ったよ。そっか、あのポスター役に立っていたのか」

 

『雫ちゃんはどう?』

 

『……私は、元々オーディションに行く気はなかった。アイドル志望じゃ、なかったから』

 

『え? じゃあどうしてオーディションに……』

 

『偶々近くを歩いていたら、遙子さんに連れられた。書類も、そこで書かされた』

 

 確か雫は面接でもマネージャー志望って言ってきたんだっけ。こんなことを言う子は初めてで記憶に残っている。書類も問題なく受理できたはずだ。

 

 ……オーディションのときの書類と言えば確か手違いがあった子はいた気がするけど、誰だったっけ?

 

 ふと、そんなことを思った。四年程度年月が経っているのもあり、記憶が曖昧だ。まぁそれは後ででいいか。

 

『そうだったんですね。それはなんとも運命的と言いますか……』

 

『うん、でも今は遙子さんにも感謝してる。今の青春があるのも、サニーピースに入れたおかげ、だから』

 

「そっか」

 

『じゃあ最後に怜……は大丈夫でしたわね』

 

『私を落ちに使わないでよ! いい空気だったじゃない!』

 

『まぁまぁ。でも、念のため怜ちゃんにも聞いておきたいです』

 

『……大した話じゃないわ。その時期の私は、父に認められたくて現状を打破したいだけだから、よっぽど酷い誘い方じゃない限りスカウトには靡くと思うわ』

 

『やっぱりちょ』

 

『すず?』

 

『何も言ってませんわよ! そうですわよね雫?』

 

『飛び火してきた』

 

『二人とも後で覚えておきなさい』

 

『何も言ってないのに……』

 

『私たちの経緯は以上です。大丈夫ですか?』

 

 公式ページのお知らせページの更新も、事務所前のポスターの貼り出しもすでに完了している。遙子さんの行動は予測はできないが、特に干渉しなければ問題ないはずだ。怜のスカウトにも行く予定だし……。

 

「あぁ、大丈夫みたいだな」

 

『良かったです。じゃあここからが本題なのですが、その他のメンバーをどう集めるかがやはりネックだと思います』

 

「そうだよなぁ」

 

『牧野さんの話を聞くに、みんな何か"変わったこと"があるとのことです。ただそれを牧野さんが正しく判断できていない』

 

「あぁ、それはおそらく俺が麻奈を救ったことに起因する何かだと思う」

 

『確か牧野さんの話だと三年前に麻奈さんは亡くなっていてそれを救った。でしたよね?』

 

「そうだな。麻奈が今まで生きたことによって、みんなに変化が訪れた」

 

『なるほど。知っている範囲で構いませんので、一つずつ言っていただけますか?』

 

「もちろんだ。まずさくらに関してだが、麻奈の心臓がさくらに移植されていない。手術の時期が変わってしまったからか、リハビリがまだ終わってなく退院できていない」

 

『え?』

 

「ん、すず、どうかしたか?」

 

『な、なんでもありませんわ!』

 

 電話口で小さくすずが怒られているのが聞こえてくる。どうしたんだろう。

 

「次に遙子さんだが、これはどちらかというと俺が原因なのだが、今までよりソロアイドルとして活躍できている。それは嬉しいんだが、そのせいでグループに入るのを躊躇してしまっているみたいだ」

 

『……なるほど』

 

「次に琴乃だが、姉である麻奈が生きている影響で周囲からのやっかみが強くなっているみたいだ。長瀬麻奈の妹として見られることを嫌がっていたな。通っている学校も星見高校から市外のものに変わっているみたいだった」

 

『星見高校から……』

 

「気になるところあったか?」

 

『いえ、大丈夫です。続けて構いません』

 

「じゃあ渚だが、おそらく琴乃と学校が違うことが大きな変わったことだろうな。少し寂しそうに見えた」

 

『性格は同じでしたか?』

 

「あぁそこは問題なかったよ。俺の知っている渚だった」

 

『なるほど』

 

「最後は芽衣だな。……正直、芽衣に関してはよく分からない。なんでスカウトに失敗したかが見当がついていない」

 

『えっと、麻奈さんが生きていた影響で何か大きな変化があったわけではないのでしょうか?』

 

「そんな感じでもなかったな。少なくとも性格が変わったりとか何か思い悩んでいることがあったりとかそういった感じじゃなかった。……あ、でも」

 

『何かありましたか?』

 

「スカウトしたときに一つだけ違う点があったんだが……。まぁこれはたぶん違うとは思うんだけど」

 

『一応話してもらえますか?』

 

「……えっと、信じてもらえるかわからないんだけど、最初のスカウトのときは麻奈の幽霊がいたんだ」

 

『ゆ、幽霊?』

 

『ほ、ほんとですか!?』

 

 電話越しに千紗が興奮しているのはわかる。幽霊といっても死霊とかそういった感じのものだと思うけど。

 

「まぁ荒唐無稽な話だからこれは信じなくても」

 

『信じますよ。牧野さん』

 

『まぁタイムリープなんてことが起きているのに今更信じる信じないもないですよ』

 

「……ありがとう」

 

『ち、ちなみにその麻奈さんの幽霊はどのように』

 

『千紗、その話は後でね。とにかく、話はわかりました。麻奈さんの幽霊がいる、いないの違いはあったんですね』

 

「あぁ、そうだな」

 

 芽衣が幽霊を見える話は伏せておいた。俺が容易に話すことじゃないしな。

 

『確かに情報がこれだけだと何もわかりませんね』

 

「もう少し強くアタックするべきだったかもしれないな……」

 

 前回は一回の失敗で凹みすぎていた。遙子さんの件も立て続けにあったとはいえ落ち込みすぎた。

 

『牧野や私たちではわからないのであれば、直接聞きに行くのはダメですの? 芽衣たちそこに居るじゃありませんの』

 

『さすがにデリケートな話ですので……』

 

『すずちゃん、デリカシー』

 

『わ、私だってわかっていますわよ! ただこれは一大事だと思ったまでで』

 

『……確かにすずちゃんの言うことも一理あります。どうしてもわからないときは聞きに行くべきでしょうね。ですが最終手段です』

 

 過去のこととはいえ、自分の内心を明かすのは心理的ハードルがある。自分から話すならともかく、人に聞かれるのはあまり心地よくはないだろう。

 

『状況はわかりました。ここからはその対策を……』

 

 沙季がそこまで口にして、電話がぷつりと切れた。この切れ方は見たことがある。電話に出れない相手がやってきたときの切れ方だ。

 

 少しだけ待っていると、今度は千紗から電話があったのでそれに出る。風の音がわずかに聞こえてくる。外から電話しているらしい。

 

『ごめんなさい。部屋でコソコソしているのがみんなにバレてしまったみたいで……』

 

「部屋にやってきたってことか」

 

『はい……。私はなんとか隙を見て逃げ出したんですけど、お姉ちゃんは捕まってしまって……』

 

「もしかして揉めてるのか?」

 

『いえ、そうじゃないんですけど、みんなで逃げ出したので追いかけっこみたいな状態になってまして……』

 

「あんまり騒ぎすぎないようにな」

 

『はい。なのであの、今は私から作戦についてお話させてもらいますね。みんなで事前に話し合ったことがありましたので』

 

「わかった」

 

『はい、ではまず……』

 

 それから一つ一つ、千紗から作戦を伝えてもらった。丁度最後の作戦が伝えられると同時、すずの叫び声とともに電話が切れた。誰か来たのだろう。

 

 東京寮の様子は気になるには気になるが、今の俺は目の前のことが優先だ。頑張るしかない。

 

 

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