流る星に一つの願いを   作:ねむれすねむれす

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ちょっとだけのお別れ

 

「どうして、どうしてなの牧野くん! 私そんなに悪い事した!?」

「そんなに嫌なら断っても……」

「そういうこと言っているわけじゃありません」

「難しいな……」

 

 三枝さんの話には俺も呼ばれ、麻奈と二人で話を聞いた。三枝さん曰く。

 

『麻奈のライブが海外の著名なプロデューサーの目に留まってな。ある番組に出演してくれないかと打診が来ている。同時に複数のステージでライブのオファーも来た。出るか?』

 

 だそうだ。麻奈としては海外ということでしばらく悩んでいたみたいだが、自分の歌を待っている人がいるなら、と首を縦に振った。

 

 麻奈の仕事のスケジュール的には問題ない。ただ、俺が今進めている星見プロの新人オーディションの日程とは確実に被る。つまり。

 

「あーあ、私もオーディション見たかったー。私が直々に審査してあげようかなぁって思っていたのに」

「元から参加させる気なかったからな」

「いじわる」

 

 端的に言えば、麻奈は拗ねた。俺としても麻奈と一緒に立っている姿が見たかったのは事実だが、またとない機会を潰すわけにはいかない。それに星見プロにいるなら会う機会は確実にあるだろうから。

 

「でも牧野くん。歌とかダンスとかわかる? 評価できる?」

「わかるよ。だって目の前で一流のものを何度も見せられてきているから」

「確かにそうだ」

「謙遜しろよ」

 

 麻奈は自信気にふふんと笑って、言葉を続ける。

 

「私のパフォーマンスを参考にするのはいいけど、比べちゃダメだからね。初めは誰だって未熟なんだから」

「それもわかっているよ。麻奈だっていっぱい頑張ってたもんな」

「そこまでわかっているならよろしい。面接官になることを許可しましょう」

「なんで面接官になるのに麻奈の許可が必要なんだよ」

「牧野くんの担当アイドルなので!」

「……」

 

 麻奈のおちゃらけた性格も今に始まったことじゃない。ある程度聞き流しておく。

 

「ともかく、オーディションのことは俺に任せてくれ。麻奈は海外での番組とライブを頑張ること」

「はーい」

「さっきの話でもあったが、海外に行っている間は三枝さんが面倒を見てくれるみたいだから、何かあれば頼ってほしい。オーディションの際は一時的に帰ってくるみたいだけど、それ以外なら相手してくれると思う」

「了解であります!」

「……はぁ。最後にだ。何かあったら俺にも連絡してくれ。あまり頼りにはならないかもしれないけど、相談くらいには乗れると思うから」

「牧野くんは頼りになるよ。ありがとね」

「いつでも頼ってくれ。それと……海外ライブ、楽しんできて。俺も後でライブ映像見るから」

「うん! アイドル長瀬麻奈として、最高のパフォーマンスをしてくるよ!」

 

 そう言って、麻奈はいつものようなアイドルとしての抜群の笑顔を浮かべた。俺の好きな長瀬麻奈の表情だ。

 

 それから数週間後、麻奈は日本での仕事を一通り終え、海外へと向かった。海外の仕事が終わるまで麻奈はしばらく帰ってこない。それが少しだけ寂しいけど、俺も寂しがっている場合じゃない。オーディションを成功させるためにも、今までに増して仕事に取り組んだ。

 

 そして、ようやくその日がやってきた。

 

 

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