流る星に一つの願いを   作:ねむれすねむれす

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不思議な国の長瀬琴乃

 

 八月三日。私たち月のテンペストと、サニーピースの合同ライブがあった翌日。

 

 みんなはオフだったこともあって、実家に帰ってのんびりしたり、どこかに遊びに行ったりしているらしい。渚も今日は誕生日ということもあり、朝に散々祝ってもらった後、実家に顔出しに行ってくるって言っていた。

 

 そんな中、私、長瀬琴乃は、星見プロダクションの事務所に来ていた。理由は一つだ。

 

「補習のための宿題って何……」

 

 月のテンペストはつい最近BIG4になったばかりだ。そのおかげで仕事がたくさん入って来て、特にリーダーである自分自身への仕事はいつにも増して多かった。それは嬉しいことだし別に構わないのだが、学校に行ける日数が格段に減ってしまった。具体的には夏期補習を受ける必要があるくらいにまで。

 

 牧野さんが学校側と色々やり取りを行ってくれて、夏期補習の日程もなるべく減らすことはできたが、その対価がこのプリントの束だ。夏休みの宿題とは別にたくさん宿題が積み重ねられていた。

 

「ちょっとだけ休憩……」

 

 気が付けばもうお昼だ。朝からずっと宿題続きだったから、さすがに疲れが出てきた。立ち上がりぐっと伸びをして辺りを見渡す。

 

「あれ、誰もいなくなってる」

 

 ついさっきまで牧野さんもさとみさんもここにいたはずだ。二人とも仕事で出ていったんだろうか。

 

「一人の事務所ってなんだか新鮮かも……」

 

 いつも賑やかだったり、牧野さんのタイピングの音が響いているから、それらが何もなくてエアコンの音と自分だけの音しか響かないというのは、ちょっぴりワクワクする。

 

 せっかくなので、事務所の中を周ってみることにした。置物だったり、飾ってある雑誌だったり、普段気にしていなかったものを手に取って見つめてみる。ヘンテコなものや、興味深いものもあって意外と面白い。

 

「……牧野さんのデスクもちょっとだけ」

 

 なんとなく魔が差してしまった。見ちゃいけないものを見る気はないが、普段牧野さんが使っているデスクに何が置いてあるか気になってしまった。そっと、牧野さんのデスクに近づき、そこに置いてあるものを見る。

 

「パソコンと、メモ紙と、書類……お仕事関係ばかりだ。というか、これスマートフォン……。牧野さん置き忘れていったのかな」

 

 牧野さんがいつも使っているスマートフォンが机に置きっぱなしだった。さすがに不用心だ。後で注意しておこう。

 

「こっちには本立てもあるんだ。へー、ビジネス関係の書籍と……あ、これ沙季が牧野さんに渡した片付けに関する本だ。後は……あれ?」

 

 本立てに見覚えのある本が見えた。水色で可愛らしい装丁の小さな本。いや、これは本じゃない。これって。

 

「……お姉ちゃんの日記?」

 

 今も自分の部屋にあって、何度も見返した日記。だから一目でわかった。

 

「でも三冊もある。……なんでだろう」

 

 別にお姉ちゃんの日記の装丁はオーダーメイドというわけじゃない。市販品だ。たまたま同じになることだってあるだろう。でも、なぜだかどうしても気になってしまって、それを手に取る。

 

「……ちょっとだけ、ちょっとだけだから」

 

 もしかしてお仕事で使っているのかもしれない。それか牧野さんのプライベート用の日記なのかもしれない。ちょっとだけ罪悪感を抱えつつそれを開いた。その最初のページには。

 

 "今日から4月!

  ということで日記も新しくしたよ!

  せっかくだし新しい日記帳にしようかなーなんて考えていたんだけどまた同じの買っちゃった

  いつのまにか愛ちゃくがわいちゃってるのかもね

  ……決められなかったわけじゃないよ?"

 

「えっ」

 

 一目見てわかった。お姉ちゃんの、長瀬麻奈の字だ。気が付けば他のページも捲っていた。

 

 "ランキング一桁の相手とライブバトルってことでいつも以上に牧野くんがピリピリしてる

  誰が相手でも変わらないとおもうんだけどなー"

 

 "今日はやっとあの曲をお披露目できた!

  驚いた牧野くんの姿が見れてよかった!

  三枝さんはやるじゃないかって顔していたけどこっそり涙拭っていたの見えてたからなー

  遙子ちゃんと一緒に歌えたし、嬉しいって言ってくれたしさいっこうのステージだった!

  アイドルってやっぱり楽しいね!

  私たちの気持ち、きっと伝わったよね!"

 

 "バレンタインデー!

  今年は遙子ちゃんに教えてもらって手作りしたんだー

  遙子ちゃんと、三枝さんと、牧野くんと琴乃の分も!

  牧野くんは美味しいよって褒めてくれたけど、ちゃんと思い伝わっているのかなぁ 怪しい

  琴乃はすねた様子だったけど受け取ってくれた 食べてくれているとうれしいな"

 

 "今日はなんとBIG4のあの人たちと同じ番組で共演しちゃった!

  さすがの貫禄だったね 上には上がいるんだなー 私もいつかあんな感じになるのかな?

  でも私は私らしくいたいね 長瀬麻奈は長瀬麻奈なので!"

 

 間違いない。これはお姉ちゃんの、長瀬麻奈の日記だ。しかも書かれている年月日がお姉ちゃんのNEXTVENUSグランプリの翌年だ。なんだろうこれ。

 

「……もしかして牧野さんが想像で書いてた? でもこの字は明らかにお姉ちゃんの字だし、お姉ちゃんしか知らないこともあるし……」

 

 考えれば考えるほどわからない。何か手がかりがないか、ページを捲っていると、ふとあるページが引っかかった。

 

 "星見市ってなんだか変な噂があるみたい

  流れ星にお願い事をすると一つだけ叶えてくれるって

  私が願い事をするならなんだろう

  あ、思いついた 今日食べたショートケーキ×2のカロリーが無くなりますように"

 

 ……最後の文章はともかく、星見市の流れ星の話は私もどこかで読んだことがある。確か、"流るお星さまは一つだけお願いを叶える。お願いが大きいほど、遠くの空にとどく"だっけ。

 

 もしこの話が本当なら、この日記も願いを叶えてもらった先であった出来事なんだろうか。お姉ちゃんの生きた世界が見たい、なんて願いが叶って、この日記をもらったんだろうか。

 

 だとするなら、私も願えば、お星さまに届くのかな。

 

「"どうしてこの日記がここにあるのかを知りたい"」

 

 目を瞑り、強く願う。遠くの空の流るお星さまに届くように。

 

「……なんて、そんなはずはないよね」

 

 第一、ここは星見市じゃないし、夜でもない。そう思い別のページを開こうとして、気づいた。ページを捲る指が徐々に透け始めている。

 

「えっ!? な、なにこれ!?」

 

 指だけじゃない。手に腕に、体までも徐々に透け始める。慌てて声を出そうにも、私の喉はすでに声を通さない。

 

 やがて視界までも薄れていき、そして。

 

 私は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

「琴乃ちゃん、朝だよー」

「うっ、ん……」

 

 瞼を刺すようなお日様の光と、聞いたことのある柔らかい声に、私はゆっくりと意識が戻ってきた。瞼を擦り、そっと目を開くと、徐々に目の前にある顔の輪郭がはっきり見えてきて。

 

「わっ!」

「あはは、起きた?」

 

 私の目の前には渚の顔があった。つい驚いて素っ頓狂な声を上げてしまう。

 

「もう渚、びっくりするじゃない……。というか、勝手に部屋に入らないでよ」

「ふふ、久しぶりに琴乃ちゃんの寝顔が見たくなって」

「久しぶり、というかよく見てるでしょ。この間だって楽屋で……ってあれ?」

 

 渚に愚痴を零していて、はたと気づいた。あんな所に机なんて置いてあったっけ?

 

 ……いや机だけじゃない。クローゼットも、姿見も、テレビも、それどころか部屋の間取り自体変わっている。というかこの置き方は見覚えがある。もしかしてここは。

 

「星見寮?」

「そうだよ?」

 

 目の前にいた渚が不思議そうに答えた。

 

 星見寮に置いていた私物の家具は全て東京寮に持っていったはずだ。ならここに置いてあるものは一体なんだろう。それに確かに昨日星見寮に泊まったけど、宿題をするために事務所に行ったはずだ。なのに私はなんで星見寮にいるんだろう?

 

「ねぇ渚。私なんで星見寮にいるの?」

「なんでって、昨日ここで眠ったからじゃない?」

「それはそうなんだけど、私朝から出掛けてなかったっけ?」

「朝から? 琴乃ちゃんは私が起こしに来るまでずっと寝ていたよ」

「あれ?」

 

 もしかして起きて事務所に行って宿題していたのが夢だった? それだったら少し嫌かも。だってまた宿題しないといけないし。

 

「琴乃ちゃん、どうかしたの?」

「ううん、なんでもない。ちょっと夢を見ただけみたい」

 

 そう思って起き上がろうとして。

 

「いやいや待った。じゃあこの部屋はなんなの?」

「琴乃ちゃんの部屋だよ。……琴乃ちゃんもしかして頭打った?」

「打ってない。打ってないから、じりじりと寄ってこないで」

 

 何やら目の色を変えて迫ってきた渚を押し留める。全く、油断も隙もない。

 

 ……なんで部屋が戻っているかはわからないけど、ここに居ても仕方ないか。

 

「琴乃ちゃん、起きるの?」

「うん、顔洗ってくる」

 

 渚にそう告げ、部屋を後にしようとして。

 

「……あれ、渚、カチューシャ変えた?」

「え? ううん、変えてないよ」

「……そうだっけ?」

 

 渚の赤茶色の髪を留めている水色のカチューシャを見て私は首を傾げた。

 

 

 朝の支度を終え、リビングに行くと遙子さんの姿があった。遙子さんは私の顔を見て洗い物の手を止め、ラップを掛けて置いていた皿に手を伸ばす。

 

「琴乃ちゃん、渚ちゃん、おはよう。サンドウィッチ作っておいたけど食べる?」

「おはようございます。食べます」

「私も一緒に食べようかな」

 

 渚と隣同士で席に着き、サンドウィッチを手にする。中身はレタスだった。ふわふわとしたパンとレタスのシャキシャキとした食感が口いっぱいに広がる。

 

「琴乃ちゃん、今日はどうするの?」

「私は宿題しないといけないから事務所に行く予定」

「宿題? そんなに出てたっけ?」

「夏期補習のための宿題。……渚はちゃんと学校行けてたからないだろうけど」

「夏期補習? まだ夏は終わってないよ?」

「そうだけどもう夏休みでしょ」

「違うよ?」

 

 渚がスマートフォンを取り出しそこからカレンダーを開く。私に向けられた画面を確認すると、そこに書かれていた日付は七月十二日だった。

 

「え!?」

 

 慌てて自分のスマートフォンでも確認するが、日付は変わらない。それどころか、年さえ一年遅かった。

 

「な、なんで……」

 

 ドッキリというのを一番に考えたが、渚がそんなドッキリをしてくるはずがない。とはいえ、過去に戻るなんてあり得ないことのはずだ。それなのになんで……。

 

 チリリンと風鈴の音が響く。その音に思わず顔を上げると、心配そうにこちらを覗いている渚と目が合った。

 

「琴乃ちゃん、本当に大丈夫?」

「……心配かけてごめん」

 

 渚に相談しようか悩んだが、相談するにもまず状況を整理する必要がある。

 

「渚、一応確認なんだけど、今日って私オフよね?」

「うん。月ストもサニピもみんなオフになっているよ」

「わかった。ありがとう」

 

 食べ終わった皿をシンクに返しておき、遙子さんにごちそうさまと告げる。

 

「琴乃ちゃん、どこか出掛けるの?」

「うん、ちょっと調べたいことがあって」

「私もついて行っちゃだめ?」

「それは……」

 

 渚のことは好きだし、ついてきてくれるのは嬉しい。だけどなぜだか、これは一人で調べないといけない気がした。

 

「ごめん……」

「そっか。わかった。行ってらっしゃい琴乃ちゃん」

「うん、行ってきます」

 

 渚と遙子さんに手を振って、星見寮を出る。ここから出るのは今日で二回目のはずなのに、なぜだかとても懐かしい気分だった。

 

 

「わ、やっぱり前のままだ」

 

 寮から向かった先は事務所……東京の方ではなく星見市の事務所だ。私が去年までに通っていた事務所だけど、活動拠点を東京に移動するにあたって、こっちの事務所は解約して空きになっていたはずだ。なのに、私の目の前には星見プロダクションの看板がしっかり掛けられている。

 

「……でもなんだか前よりちょっと派手というか、キラキラしているような……気のせいかな」

 

 記憶にあるのは去年のものだから正しく思い出せない。……まぁ気にするほどのものでもないかな。

 

「失礼します」

 

 疑問を頭から振り払い、ビルの入り口を潜る。もうこの時点でこの世界が過去のものだってことはなんとなく理解できていた。だから事務所に入っても過去と同じものがあるはず……そのつもりだった。

 

「あ、あれ!?」

 

 事務所に入って気づいたのはオフィスの綺麗さだった。段ボールは変わらず置いてあるが、きちんと整理がされ、物が整頓されている。

 

 空いた場所には私たちのポスターやグッズも綺麗に飾られて、オフィスの景観を彩っていた。前までは売れない小さな事務所って感じだったのが、売れてる小さな事務所くらいまでにはランクアップしていた。

 

「も、もしかして間違えた!? い、いやでも私たちのポスターもあるし……」

 

 よく見ればなぜかお姉ちゃん、長瀬麻奈のポスターもある。というかお姉ちゃんのあんなポスターあったっけ?

 

「何がなにやら……」

「琴乃ちゃん!」

「わっ!」

 

 理由のわからないことばかりで混乱していると、後ろから声が掛かる。振り向くとそこにはさくらの姿があった。

 

「さくら、びっくりするじゃない」

「えへへ、ごめんね。……それよりも琴乃ちゃん何で事務所に? 牧野さんなら今日は夜になるまで帰ってこないって言ってたよ」

「あ、違うの。ただ……えっと」

 

 事務所に来れば何か手掛かりがあるかもくらいだったから返答に困ってしまう。言葉を探して、なんとか絞り出す。

 

「……色んなところ見てみたいなって」

 

 なんだそれ。自分でもそう思った。

 

「探検してるってこと? 丁度私も色んなところ見てみたいって思ってたんだ! 一緒に行かない?」

「うーん……」

 

 渚を断ったばかりに答えづらい。どう答えようか迷っているうちにさくらは徐々にしゅんとしていき、上目遣いになっていく。

 

「ダメ、かな?」

「……いいよ」

「やった!」

 

 つい了承してしまった。さくらのそれ、ズルだ。

 

「じゃあ早速探検開始だね! まずは牧野さんのデスクから!」

「ちょっと!」

 

 そう言って駆けていったさくらの後を追う。牧野さんのデスクを見るのも今日で二回目だ。でも今回は不可抗力だから仕方ない。うん。

 

「パソコンと、メモ用紙と、書類と、本と……」

 

 なんだか変わらないレパートリーだ。変わらないなぁ牧野さんも。

 

「後……これは?」

「……もしかして日記!?」

 

 さくらが取り出したのはピンク色の装丁のノートだった。期待していたものとは違うが、手掛かりになるかもしれない。

 

「開いてみる?」

「……ちょっとだけ」

 

 さくらからノートを借り少しだけ中身を見てみる。中には色々と文章が書いていたが、ビジネス用の書き方で日記ではない。というよりこれは。

 

「日誌かな……」

 

 私たちの日々の仕事の成果が丁寧に纏められていた。牧野さんも大概、几帳面な性格だ。

 

「えー! 遙子ちゃんってこんなお仕事もしてたんだ! すごい!」

「……あんまり見ちゃダメだよさくら」

「あ、ごめん。……でも面白いよ! これとか!」

 

 さくらが開いたページには遙子さんがソロ時代していたらしいお仕事が書かれていた。なぜか芸人に混ざってマグロ漁に行かされていた。何しているんだろう。

 

「遙子ちゃんってソロでも活躍していたんだね」

「そう……だっけ?」

 

 記憶にある遙子さんは、ソロだとあんまりお仕事が来なかったって言っていた記憶がある。雫がネットで検索したときにもあまりヒットしなかったはずだ。

 

「……」

「どうしたの?」

「ううん、何でもない。別の場所行こう」

 

 

 さくらを連れ向かった先は星見プロのレッスンスタジオだ。東京のスタジオに比べれば随分と小さいがデビュー前からここでレッスンしてきて思い入れ深い場所でもある。

 

「失礼します」

 

 明かりが点いていたから誰かが入っているのはわかっていた。声を掛け、私はドアを開く。

 

「ワン、トゥ、スリ、フォ、ここでターン」

「はっ、ふぅ、ほっ、がっ、だっ……む、無理ですわー! ターンが間に合いませんわ!」

「その前のステップに力を入れすぎ。もう少し……あ」

 

 レッスン着姿の怜と目が合う。その傍にはバランスを崩し床に倒れているすずの姿もあった。

 

「琴乃とさくらも自主練?」

「あ、違うの。私たちはちょっと探検してて……」

「探検……?」

「うん! 色んなところを見て回りたいなって!」

「……まぁ私は構わないけど、今、すずの自主練に付き合っている最中だから邪魔はしないでよ」

「はーい」

 

 レッスン室の隅で二人のレッスンを見させてもらう。この頃ならまだデビューしてそんな月日も経ってない。ダンス経験者の怜の動きはともかく、すずの動きはまだまだだった。

 

 にしても……。

 

「怜ってこんなに怖かったっけ……」

「レッスン中の怜ちゃんはこんな感じだよ」

 

 すずが振りを間違えたり、遅れたりするたびに全部指摘されてる。さすがに今の私でも怖いかも……。

 

「すずちゃんも最近よく頑張ってるよね。やっぱり麻奈ちゃんの影響かな?」

「お姉ちゃんの?」

「うん、麻奈ちゃんのライブを見てから、私もあのようなライブを! って張り切ってた」

 

 過去のライブ映像を見て、ということかな。すずらしいや。

 

「というか、待った。麻奈"ちゃん"?」

「えっと?」

 

 さくらは何を聞かれたか分かっていないようで疑問符を浮かべる。さくらってお姉ちゃんのことさん付けで呼んでなかったっけ?

 

「?」

 

 さくらをじっと見つめていると、ちょこんと首を傾げた。可愛い……じゃなくて、さくらが気にしてないのなら別にいい。私としても悪い気はしないし。

 

「で、できましたわーーーーーーーー!!!」

 

 そうこうしているうちに、自主練で使用していた曲を通しで踊れたようですずが喜びの声を上げていた。ずっと見ていた怜も嬉しそうだ。

 

「すず、おめでとう」

「おめでとう、すずちゃん!」

「ふふん、私の手に掛かればこの程度お茶の子さいさいですわね」

「ふーん、じゃあ次はもっとレベルが高いのを踊ろっか」

「え」

 

 すずの表情が固まり、助けを求めるように顔がこっちに向き始める。

 

「……じゃあ私たちはこれで」

「琴乃! さくら! 逃げないでくださいまし!」

 

 ごめんねすず。でもすずなら出来ると思う。頑張れ。

 

 心の中で応援しながら私たちはレッスンスタジオを後にした。

 

 

「んー! 気持ちいいー!」

「そうだね。風が心地良い……」

 

 事務所ではこれ以上何も見つかりそうになかったため、浜辺の辺りまで来ていた。この辺りは海の公園と言って、綺麗な海と砂浜が一望できる場所だ。朝方よく走っていた場所でもあったっけ。

 

「あれ?」

 

 懐かしさに浸っていると、視界の隅に何かが映る。目を凝らしてみると、釣り針を垂らしている雫の姿と、その隣でタモを握りしめている芽衣の姿があった。

 

「なんだか珍しい組み合わせだね?」

「うん、行ってみよっか」

 

 そっちに足を運ぶと、二人も私たちの姿に気づいたようで手を振ってくれた。

 

「琴乃ちゃん、さくらちゃん、おっはよー! デート?」

「ち、違うわよ! ただちょっと二人で探検してただけ」

「そうなんだ。芽衣は今、雫ちゃんと魚釣りしてたー!」

「そのわりには網しか持ってないみたいだけど……」

「雫ちゃんが釣り上げたお魚捕まえる役!」

「……芽衣がいいならそれで構わないけど……雫? さっきから無言だけど、どうし」

「しっ! 来た!!!」

 

 雫が垂らしていた糸がピンと張って徐々に伸ばされていく。それを目に雫は竿を立てると、ゆっくりとリールを巻き始める。

 

「芽衣ちゃん!」

「まっかせてー!」

 

 やがて魚の動きが弱まって来たところを狙って一気に引き上げる。

 

 糸に引かれ、バシャンッと水しぶきを上げて大きなお魚が現れた。それを待ち構えていた芽衣が勢いよくタモを振りかぶり。

 

「そりゃーーー!!!」

 

 見事にお魚を捕まえた。

 

「「おー!!」」

 

 思わずさくらと一緒に感嘆の声が漏れた。

 

「おっきなお魚だー! ブリ?」

「違う。これは……」

 

 雫の説明を芽衣はおー、おー? とよく分かってなさそうに耳にしていた。私もよく分からなかったけど、とにかくレアなお魚だってことはよくわかった。

 

「今日のご飯楽しみだね!」

「うん、あれ、でも今日の夕食当番って……」

「誰だっけ?」

 

 雫がじっと芽衣を見つめていた。あぁ今日は芽衣なんだ。

 

「……事情を説明して遙子さんに手伝ってもらおう」

「うん、それがいい。私も手伝う」

 

 よく分かってなさげな芽衣を横目に私と雫は頷きあう。遙子さんには手間をかけてしまうのは申し訳ないけど。

 

「そういえば、さくらちゃん病院大丈夫だった?」

「病院?」

「うん、今日は朝から定期検診だったんだ。検査も何とも無かったよ。レッスンも問題なし!」

 

 そっか。心臓の……。さくらは普段元気いっぱいで辛い表情を見せないからつい忘れそうになってしまう。

 

「無理しないでね」

「うん、ありがとう」

 

 それから二人とは手を振って別れた。雫はもう少し釣りを楽しむらしく、芽衣もそれに付き合うみたいだった。芽衣は今度はタモじゃなく釣り竿を握っていて、雫に使い方を教わっていた。楽しそうで何よりだけど、怪我しないようにだけ気をつけてほしいな。

 

 

「次はどこ行く?」

「そうね……」

 

 過去に戻った手掛かりは今のところ一つも見つかってない。このままやみくもに探しても見つからない気がしていた。となると、やっぱり鍵になりそうなものは……。

 

「あ、琴乃ちゃんとさくらちゃん、おはようございます」

「あ、沙季と千紗。おはよう」

「おはよう、琴乃ちゃん、さくらちゃん」

「おはよう!」

 

 海の公園を後にして、通りを歩いていると沙季と千紗が近くの建物から出てきた。というかここは……。

 

「図書館?」

「はい、気になった本は買うことが多いのですが、何分学生の身ですので……」

 

 アイドルとして間もないしお金がそんなあるわけじゃない。私もアイドルのライブ行き過ぎて金欠になった覚えがあるからすごく共感できる。

 

「それに図書館って楽しいんですよ。書店にはない古い本も、それこそ、ここにしかないようなものもたくさんあるんです!」

「そ、そうなんだ」

「はい! ぜひとも琴乃ちゃんも行ってみてくださいね。地理や歴史の本だけじゃなく、文学や大衆小説、絵本もたくさんありますから」

 

 あ、そっか。図書館だからそういうのもあるんだ。渚が好きな小説もいっぱいあるのかな。

 

「今度行ってみようかな」

「ぜひ!」

「千紗ちゃんは何を借りてたの?」

「私は裁縫の本と、これかな」

 

 そう言って千紗はブックバッグからおぞましい見た目の本を取り出す。

 

「映画の方が好きなんだけど、ご本でもたまに読むんだよ」

「そ、そうなんだ……」

 

 千紗が好きな映画は私にはちょっと難易度が高かった。というか、夜眠れなくなったから二度と見たくない。

 

「これ何て読むの? こうせんときつ……?」

黄泉戸喫(よもつへぐい)ですね。死者の国で竈で煮炊きした食物を食べることを指します。日本神話でイザナミが黄泉の国の食べものを食べてしまい現世に帰れなくなった話が有名ですね」

「へぇ……」

「大衆小説では別の世界に行ってしまった人が黄泉戸喫の影響で帰れなくなった、というのもよく目にしますね。厳密には黄泉の国ではないので正しくはないのですが、そういう意味で使われることも多い言葉です」

「……え」

 

 ご飯を食べたら帰れなくなる? ……私、朝ご飯食べちゃったんだけど。

 

「この小説ではその黄泉戸喫をテーマにしていて……あれ、琴乃ちゃん?」

「琴乃ちゃん、顔が青いけど大丈夫!?」

「だ、だいじょうぶ……だいじょうぶだよね?」

「ふぃ、フィクションだから! 大丈夫だよ!」

「うん、大丈夫! 私たちがついているよ!」

 

 さくらと沙季と千紗に慰められる。どうやらホラー小説を見て怖がってたと勘違いされたらしい。そんな怖がりじゃないからなんかむっとしてしまうけど、黄泉戸喫の話は今の私の境遇を考えるとかなり怖い。

 

「ごめんなさい。私が話してしまったばかりに……」

「沙季のせいじゃないから。謝らないで」

 

 本当なら怖いが千紗の言った通りフィクションだ。あまり気にしすぎても良くない。

 

「そうだ! さっき雫ちゃんたちと会ったんだけどこんな大きなお魚釣り上げてたんだよ! きっと今日はご馳走だね!」

「楽しみ、だね!」

「そうですね。夕飯が楽しみです!」

 

 ……気を使わせてしまったかな。ついついごめんと言い出してしまいそうになるけど、その言葉は押し留める。

 

「楽しみだね。……私はちょっと用事があるから、食べれないかもしれないけど」

「えーそうなの!?」

「うん」

「じゃあまたいつかみんなで一緒に食べようね!」

「うん、いつか」

 

 今より未来を思い出す。みんなで雫が釣ったお魚を食べた機会はいっぱいあった。また食べれたらいいな。

 

「それでは私たちはこれで失礼しますね」

「またね」

「うん! また!」

「じゃあね」

 

 

「次はどこに行こっか? 商店街の方か、ちょっと戻ることになるけど高台でも楽しそう!」

「行きたい場所があるかな」

「いいね! どこに行きたいの?」

「私の実家」

 

 過去に戻った理由、その原因はやっぱり私が最後に見たあの日記が関係しているのだと思う。そして私が願った願い事も。

 

 なら鍵となるのはやっぱりあの時に見たお姉ちゃんの日記だ。過去の世界において牧野さんのデスクにないのなら、もしかするとお姉ちゃんの部屋のどこかに隠されているのかもしれない。

 

「そっか。そこまでは私もついていけないかなぁ」

「付き合ってもらったのにごめんね」

「ううん、私がしたかったことだから気にしないで」

 

 さくらはそう言ってその場に立ち止まる。私はそんなさくらを正面から見つめた。

 

「琴乃ちゃん、今日はありがとう! ()()()()()会おうね!」

「うん、またね」

 

 さくらと手を振って別れる。実家はすぐそこだ。私は少しだけ早足にそこへ向かった。

 

 

 長瀬家は自慢じゃないけどちょっとだけ周りより大きな家だ。両親が音楽関係の仕事ということもあり、防音設備には気を使った結果こうなったらしい。

 

 実家の鍵は鞄に入っていた。ドアの鍵を開け、そっと開きながら声を上げる。

 

「ただいまー」

「おかえり」

 

 母親の声だ。今日はお休みだったらしい。そして。

 

「おかえり琴乃!」

「…………え」

 

 もう一つ声が響いた。お父さんの声じゃない。もっと若く、女の子特有の高く、そして優しい声。

 

 思わず玄関で固まっていると、やがて足音が近づいてきて彼女が目の前に現れた。

 

「聞いてよ琴乃。私せっかくオフなのに……ってあれ、どうかした?」

 

 長い黒髪に左側でちょこんの結んだ髪型。丸みを帯びた可愛いらしい顔に、青空のような優しい目。

 

 彼女は不思議そうにちょこんと首を傾げていた。

 

「……間違えました」

「ちょっと何も間違えてないよ!」

 

 帰る家を間違えたのだろう。玄関を後にしようとして、腕を彼女に掴まれる。

 

「どうしたの琴乃。もしかしてお姉ちゃんの顔忘れちゃった?」

「忘れてない。忘れるわけないけど……」

 

 長瀬麻奈はすでに亡くなっているはずだ。過去に戻ったとはいえ、この時点だとそれは変わりない。

 

 なら目の前にいるこの人は誰?

 

「ちょっと確認させて」

「うん」

「名前は?」

「長瀬麻奈!」

「年齢は?」

「十七歳です!」

「お邪魔しました」

「冗談だよー! 二十二!」

 

 踵を返そうとした私の腕をもう一度取られる。……声も反応もどう見てもお姉ちゃんだ。でも……。

 

「最後の確認。これ持ってる?」

 

 鞄に大事に仕舞っていたそれを取り出す。ビーズで出来たネックレス。その中心には星のブローチが輝く。

 

「持っているよ。ほら」

 

 そう言って彼女は首元の服を緩め、それを見せてくる。

 

 私のと瓜二つのネックレスだった。

 

「……そっか」

 

 お姉ちゃんなんだ。

 

「わっ!」

 

 気がつけば私はお姉ちゃんの胸に飛び込んでいた。優しい春風のような香りがふわりと舞う。温かいお姉ちゃんの体温が直に伝わってくる。

 

「よしよし」

 

 頭にぽんっと手が置かれ私の頭をそっと撫でる。子供扱いされているようで嫌なはずなんだけど、今だけはそれが純粋に嬉しかった。

 

「……落ち着いた?」

「うん……突然ごめん」

 

 名残惜しかったけど、ずっと抱きついてはいられない。お姉ちゃんとはそっと離れた。いつの間にか目元に浮かんでいた涙も払いのける。

 

「琴乃、この後時間ある?」

「うん、あるよ」

「私の部屋に来てくれない?」

「お姉ちゃんの部屋に?」

 

 元々私が向かおうとしていたところもお姉ちゃんの部屋だ。願ってもない誘いだ。

 

「ダメかな?」

「ううん、大丈夫」

「よかった。じゃあ先に行ってるね!」

 

 そう言ってお姉ちゃんは来た時と同じようにさっと駆けていく。

 

「私も行かないと」

 

 手洗いをさっと済まし、泣いて乱れた髪を整えた後、私はお姉ちゃんの部屋へと向かった。

 

 

「あれ……」

 

 お姉ちゃんの部屋にたどり着いて一番に思ったのが、物が増えているということだった。知らないメイク道具や長瀬麻奈のグッズもある。配置は変わってないから辛うじてお姉ちゃんの部屋だと分かるが、似ている別人の部屋だと言われても驚かないと思う。

 

「三年前より色々増えたでしょ。私も整理しないとなーとは思っているんだけどね」

 

 中々片付けする暇もなくてね、とお姉ちゃんは小さくぼやいた。お姉ちゃんはいつも忙しそうだったしそれはわかる。でもその発言って。

 

「……お姉ちゃん、気づいてるの?」

「うん、分かっているよ。今の琴乃って未来から来たんでしょ?」

「っ!」

 

 思わずお姉ちゃんの目を見つめてしまう。お姉ちゃんは変わらず優しい目のままだった。

 

「正確には未来じゃないんだけどね。私が三年前に亡くなった世界の未来」

「……世界が違う?」

「そうだよ。この世界は私が生きた世界。そして私含めた星見プロダクションのみんなが揃った世界だよ」

 

 ……お姉ちゃんが生きている星見プロダクション。なんだか夢のような響きだ。そんな世界があったら私も幸せだろうな。

 

「……これもまた正確じゃないんだけどね。話すと長くなるしそういうものだと思って欲しいかな」

「わかった」

 

 ここが過去じゃなくて別の世界線の過去だとすれば、今までの出来事も納得ができた。渚のヘアバンドも、遙子さんのソロ時代のお仕事についても、全部別の世界線だったから、なんだろう。

 

「……あれ、それじゃあお姉ちゃんはなんでそのことを知っているの?」

「そこもまた事情があるんだけど……これのおかげかな」

 

 そう言ってお姉ちゃんは一冊のノートを取り出す。どこにでもありそうなノートだけど……。

 

「ここにね。別の世界の……今の琴乃が生きた世界について書かれているんだ」

「え、なにそのノート」

「ふふ、私の宝物かなぁ」

 

 そう言いのけると、お姉ちゃんは大切にそのノートの表面をなぞる。なんだか私が見たことがない色っぽい表情だ。

 

「だから琴乃の事もすぐにわかった。だって私が知っている琴乃よりも凛々しい表情しているから」

「そ、そう?」

「でもすぐ照れちゃうところとかは変わってないね。安心した」

「て、照れてないけど」

「そういったところもかな」

「うぅ、そ、そういうところは言わなくていいから!」

 

 目を細めて笑みを浮かべる表情はいつものお姉ちゃんだ。けど、なんか前よりからかい上手になっている気がする。これもお姉ちゃんが生きて"変わったこと"なのかな。

 

「琴乃はどうしてここに来たの?」

 

 私がそんなことを考えていると、お姉ちゃんはそう尋ねてきた。お姉ちゃんの部屋を訪ねた理由じゃなくて、この世界に来た理由を聞かれているんだろう。

 

「……私もよく分かってないんだけど、私の世界でお姉ちゃんの日記を見つけて、なんでこれがここにあるのか知りたいって願ったら、いつの間にかここにいた」

「あー願っちゃったか。……ちなみにその日記って三冊あった?」

「うん、あったよ」

「よかった。ちゃんとお土産は持って帰れたんだね」

「お土産?」

「ううん、こっちの話。それより、琴乃がこの世界に来たのは流るお星さまに願ったからだよ」

「流るお星さま?」

「うん、小さい頃に琴乃と一緒に読んだよね。……ちょっと待っててね」

 

 そう言ってお姉ちゃんは部屋の本立てを漁る。やがてそこから一冊の絵本を取り出した。その絵本のタイトルは。

 

「"流る星に一つの願いを"」

「うん、もしかして覚えてた?」

「……今思い出した」

「そっか。私も最近まで忘れちゃっていたんだけどね」

 

 お姉ちゃんはその絵本を開きページを捲っていく。優しいタッチで描かれた子ども向けの絵本だ。なんだか温かい気持ちになれる。

 

「ここだよ」

 

 開かれたページは、絵本の中の少女が夜空に流れるお星さまに願うシーンだった。そのページの文字に目を通すとこんな言葉があった。

 

「"流るお星さまは一つだけお願いを叶える。お願いが大きいほど、遠くの空にとどく"」

 

 これだ。お姉ちゃんの日記を読んで思い出した言葉はこの本に書いてあったんだ。

 

「でもこれに何の関係が?」

「実はね。ここに書いてあることって嘘じゃないんだよ」

「嘘じゃない……?」

 

 そうなると、つまり。

 

「本当に願いが叶うってこと!?」

「うん、そうみたい。……まぁ願いの叶え方に癖はあるみたいだけどね」

「えぇ?」

 

 にわかには信じ難い話だ。確かに流れ星に願い事をすると願いが叶うって話はあるけど、あくまで願掛けみたいなものだと思っているし……。

 

「疑うのも無理はないよ。……でも実際琴乃はここにいるでしょ?」

「それは……確かに」

 

 私の"どうしてこの日記がここにあるのかを知りたい"という願いが叶って私はお姉ちゃんが生きている世界に来た。願い事が叶った以外に理由は考えられない。

 

 だったらこの世界に来て、お姉ちゃんに会ったのは……。

 

「ダメ。待って琴乃。その先はまだ考えないで」

「どうして?」

「それを知っちゃうと琴乃は願いを叶えたことになるから」

「……あ、そっか」

 

 私の願いは日記があった理由を知りたいだ。それを知ってしまうと願いは終わってしまう。でも……。

 

「大丈夫だよ。私は琴乃が帰らなくちゃいけないことも知っているし、それを引き留める気はないよ。でもせっかくあっちの世界の琴乃に会えたんだから、手伝ってほしいことがあったの」

「手伝ってほしいこと?」

「うん。ちょっとわからないことがあって」

 

 今の私だからこそわかること、となるとやっぱり元の世界のことなんだろうな。でも私も全て知っているわけじゃないし、わかる内容だったらいいけど……。

 

 そんな不安を抱えている私とは反対に、お姉ちゃんは平然とした様子でノートを開く。ノートに書かれた字はなんだか見覚えがあった。

 

「実はね。ちょっと前に牧野くんがこっちの世界に来ていたんだ。このノートはそのときに書いていたノートなんだけどね。ここがちょっとわからなくて」

 

 ……なんだかさらっと重要なことを話された気がする。気にしてしまうと駄目なんだろう。今は無視だ。

 

「ちゃんと聞いてる?」

「聞いてるよ」

「そう?」

 

 お姉ちゃんが開いたページは無理やり貼りなおした後がある最初のページだった。そのページには牧野さんがタイムリープした件について概要が纏められていた。それと。

 

「"未来からスマートフォンを持ち込めている"?」

「うん、ここがわからないんだよね」

 

 私としては色々とツッコミどころが多いノートなんだけど、それは今は置いておくとして、なぜ未来からスマートフォンを持ち込めていることがわからないんだろう?

 

「願いを届けた時に持っていたものだからじゃないの?」

「私もそう思っていたんだけど、これを見て」

 

 お姉ちゃんは再び絵本を手に取り、私に見せる。願いを届けた次のページだ。

 

「"目がさめると、わっ大変! お気に入りのバッグもお母さんからもらったくつも、着ていたお洋服もなくなっていました"」

「……こんな破廉恥な絵本だったんだ。子供に読ませていいのこれ」

「そこじゃないよ! 大事なのは持っていたものが全て無くなっているってこと」

 

 ……確かにそうだ。となると。

 

「お姉ちゃんがわからないことって、牧野さんがスマートフォンを持ち込めている理由?」

「うん、そうなんだよね」

 

 流る星の願い事は、持ち物の持ち込みはできない。なのに牧野さんは未来のスマートフォンを持ち込めていた。シンプルに考えるなら……。

 

「他の誰かが願ったってことかな?」

「私もそう思っている」

 

 別の世界に行ってしまった牧野さんにスマートフォンを渡した人物がいる。でもそれって、牧野さんが別の世界に行ったことを知っている人しかわからないことだよね?

 

「……誰だろう」

 

 少なくとも私はそんなこと一切知らなかった。タイムリープした日付を見るに、八月二日のライブ後の出来事みたいだけど、その間に知ることができた人っていたのかな?

 

「……」

「琴乃もわからない?」

「……うん、わからない。ごめん」

「謝らないで。でも仕方ないね。それならもうやることは一つだ」

 

 そう言ってお姉ちゃんはどこからともなく眼鏡を取り出し装着すると、眼鏡をくいっと上げ自信気に口を開く。

 

「見せてあげる。この世に解けない謎なんて塵一つもないってことを!」

「なにそれ」

「琴乃もやるの。ほら眼鏡あるから」

「えぇ?」

 

 渡されたのはお姉ちゃんとお揃いの黒フレームの伊達メガネ。なんでこんなの持っているんだか。仕方ないので私もそれを付ける。……ちょっぴり頭が良くなった気がする。

 

「いくよ。琴乃」

「うん」

「「真実はいつも一つ!」」

 

 

「とはいえ、どう探したらいいか、私はもうわからないんだよね……」

 

 お姉ちゃんはこの世界でも色々と探してみて、それでもわからなかったから私を頼ったのだろう。だとするなら、この世界の住民ではない私ならわかることがあるかもしれない。

 

「ノート見てもいい?」

「うん」

 

 お姉ちゃんから渡してもらったノートを一つ一つ目を通していく。私のことはもちろん、みんなのことが事細かに書かれている。なんだか個人情報を見ているようで罪悪感が湧くけど、今はそれを気にしている場合じゃないよね。

 

「一回目のタイムリープ……」

「うん、牧野くんって二回世界をめぐっているみたいなんだよね。一回目はみんなが揃わなかったみたい」

 

 お姉ちゃんの言葉通り、一回目の世界では私たちを揃えることはできなかったみたいだ。それぞれのスカウトの失敗が書いてあって、結果的に沙季、千紗、雫、怜、すずの五人だけが揃った。

 

「……あれ?」

「何か気になるところがあった?」

「ここ、なんだけど」

 

 そのページには未来から持ち込んだスマートフォンに入っていた楽曲が消え始めている、と書かれていた。スカウトに失敗し、未来が変わっているからかもしれない、とも。

 

「変じゃない?」

「どうして?」

「だって、このスマートフォン。私の世界から持ち込んだもの、なんだよね? だとすればこの世界の未来が変わっても影響はないはずよね?」

「確かに!」

 

 私のいた世界とこの世界は全くの別物だ。本来交わることがない。ならば、この世界で何があろうが、元の世界の物に影響が出るのは変だ。でも実際に影響が出ていた。それはつまり。

 

「私の世界のスマートフォンじゃない?」

「……そうかもね」

 

 そうなると話が変わってくる。私の世界の誰かが願ったから未来の牧野さんのスマートフォンが届けられたと思っていた。でも、私の世界が関係しないのなら。

 

「この世界における未来のスマートフォンだったってことかな……」

 

 でもそうなるとまた話がややこしいことになってくる。この世界における未来の誰かが願ったってことだから。

 

「……琴乃って実は私より頭いい?」

「どうしたのお姉ちゃん?」

「ううん、なんでもない。続き考えよ」

 

 なぜか項垂れているお姉ちゃんを見つつ、思考はそのままにページを捲る。

 

「未来の私たちとの電話……」

「未来のスマートフォンから繋がったみたいだね。たぶんこれは、一回目の世界の沙季ちゃんたちが願ったからじゃないかな」

「うん、私もそう思う。スペシャルライブステージでの沙季たちの様子見てもそんな感じするし」

 

 きっと沙季は流る星の願い事についてどこかで知っていたのだろう。だから、願いを叶えてもらうためにみんなと想いを剥き出しにしたライブを行った。その結果、もう一度過去に戻ることができ、この世界における未来の私たちと電話が通じるようになった。

 

「でもそうなると、願いを叶えた人物は一回目の世界ではないみたいだね」

「どうして?」

「月ストとサニピができてないから。楽曲もそこにないよね?」

「あ、そっか」

 

 未来のスマートフォンには私たちの楽曲がそのまま入っていた。私たちが揃ってない世界においてそれはあり得ないんだ。

 

「だから残りは二回目の世界だけど……」

 

 ページを捲り、牧野さんの旅路を確認していく。……うん、間違いない。

 

「この世界も分岐しているんだよ」

「それはわかってた。私が生きている世界と亡くなった世界でしょ?」

「うん」

 

 正確には、私たちがデビューした翌日にお姉ちゃんが亡くなった世界と、その日生きた世界。二つに分かれている。

 

「だからこの二つの世界のどちらかなんだけど……」

 

 電話が通じていたのは亡くなった世界だ。ならそっちの世界が正解と見えなくないけど、流る星がどう願いを叶えているのか、そして願い主がどう願ったのかがわからない以上、断定ができない。どうしたらいいんだろう……。

 

「琴乃、そういうときは一旦後回しに別の謎から解いていった方がいいよ。新しいことを知ってわかることもあるから」

「わかった。……というか、お姉ちゃんも考えてよ」

「考えてるよー!」

 

 ほんとかな……?

 

「でも、そうなると誰の願いだったってところに戻ってくるよね」

「そうだね。それでいて牧野さんの事情を知っている人物になる」

「うーん、でも電話越しでみんな話しているから、未来の私たちはみんな牧野さんの事情は知っている……誰かなんて割り出せないんじゃない?」

「……ううん、そうでもないかも」

 

 お姉ちゃんはそう言うと、なぜか自分のスマートフォンを取り出した。

 

「私は今、スマートフォンを持ってる」

「そうだね」

「琴乃は私を見て、スマートフォンを持ってないって思う?」

「いや、思わないけど……だって持ってるし」

「そういうことだよ」

「そういうことって……あ!」

 

 私も思いついた。未来の私たちはスマートフォンを通じて電話しているんだ。なら未来の私たちが過去の牧野さんがスマートフォンを持ってないなんて思いもするだろうか。

 

「そっか。じゃあ未来の私たちでもないんだ」

「うん、少なくともあの時点の琴乃たちではないかな」

「じゃあ誰だろう。……過去の時点で未来の事を知っている人っていたかな」

「過去の時点で未来の事を知っている人……。あ、そっか。そういうことだったんだ」

「お姉ちゃん何かわかったの?」

「うん、わかっちゃった」

 

 お姉ちゃんはペラペラとページを捲っていく。私の世界のみんなのことが記載されているページじゃなくて、牧野さんの旅路が書かれている方。その一ページを開く。

 

「未来の事を知っている……ううん、察することができる人は一人だけいるんだ」

「……もしかして」

 

「さくらちゃん、だよ」

 

 ページに書かれていたのは、未来のさくらと今のさくらが会話したということ。会話のすべてが書かれているわけじゃないし、牧野さんの記載によると過去のさくらは未来の自分と話したことは気づいていない様子だったとも書かれている。

 

 でも、本当にそうだったのだろうか。私の知っているさくらは、普段は天然だけど肝心なところではかなり鋭い。芽衣みたいに直感ってわけじゃないけど、それを知ることができる情報さえあれば、物事の本質を見抜いてることが多い気がする。そんなさくらなら、未来の事を察して同時に願うことができるんじゃないだろうか。

 

「そっか。さくらが願っていたんだ……」

 

 今日お話しして、一緒に各地を巡ったさくらを思い返す。"またいつか会おうね"って言葉。もしかして私の事もどこかで気づいていたのかな。

 

「たぶんね。そして、願いごとに関してもきっとわかる」

「そうなの?」

「うん、琴乃、しっかり考えてみて」

 

 ……未来のスマートフォンには未来の、いや、牧野さんが知っている全ての星見プロの曲が全て入っていた。それは今のさくらには知ることができないものだろう。だとすれば、さくらの願いは単にスマートフォンを送るなんてことじゃない。

 

 同時に私が今体験していることでもある流る星の願いは、叶え方に癖がある。直接的にそれを叶えるんじゃなくて、叶えられる状況下に持っていき、本人が自分自身の手によってそれを叶えるタイプだ。

 

 そして。

 

「流る星は一つしか願い事を叶えられない」

 

 絵本にはそう書いてある。世界が変わってもそれは変わらないと。

 

「うん、そうだね。だから今の私はもう願いは叶えられない。……ちなみに向こうの私が願った願いは"牧野くんと一緒に生きていたい"だったよ」

 

 ……向こうの私、つまり亡くなったお姉ちゃんの願いがそうだったのだろう。でもすでに亡くなっているから曲解して願いが叶えられることになった。その叶え方は今までのお姉ちゃんとの会話で理解できた。きっと牧野さんがこの世界に呼ばれたのだろう。

 

 ならば、さくらの願いの叶え方も違う方向で叶えたはずだ。本人が気づくようなやり方で、同時に正しい叶え方で。

 

 牧野さんに未来のスマートフォン渡し、みんなを揃えるきっかけを、お姉ちゃんを救うきっかけになった願い。それは。

 

「"私たちのこと、忘れないでください"」

 

 忘れさせないために、牧野さんに未来のデータがあるスマートフォンを送った。だけど、流る星はまたここで悪戯をしたんだと思う。"私たち"が今、牧野さんがいる世界の私たちになるように。

 

 だから一回目の世界で曲が消えたんだ。"私たち"が変わってしまったから。

 

「そっか。そういうことだったんだ」

 

 謎は全て解けた。私の言葉を聞いて、お姉ちゃんは納得がいったように小さく頷いた。それから窓の外を見つめる。優しい瞳で、遠くの誰かを見つめるように。

 

「お姉ちゃん……」

 

 お姉ちゃんはどんな想いでこの世界で生きていたんだろう。この世界の住民じゃない牧野さんのことをどう想っていたんだろう。……私にはわからない、でも。

 

「牧野さんはお姉ちゃんのことも絶対忘れないと思う。……もちろん、私も」

「うん、ありがとう。……ずっともやもやしていたことも晴れてよかったよ」

 

 ……そっか。お姉ちゃんはずっと一人でこの謎を解いていたんだ。内容も信じられないことだから、誰に相談したらいいかもわからずに。

 

「にしてもびっくりだよね。こんなたくさんの願いでこの世界が出来上がったなんて」

「そうだね。奇跡の連続だよね」

 

 お姉ちゃんの"牧野くんと一緒に生きていたい"という願いで牧野さんがこの世界に呼ばれて、さくらの"私たちのこと、忘れないでください"という願いが牧野さんに未来のスマートフォンを与えた。一度は私たちは揃わなかったけど、沙季たちの願いによってもう一度過去に戻され、同時に"頼ってほしい"という願いで未来の沙季たちと話せるようになった。そして戻った世界で今度は私たち全員を揃えて、牧野さんは牧野さん自身の願いで元の世界に帰った。

 

 奇跡の連続……というより、流る星にずっと振り回されているといってもいいかな。

 

「でも、まぁ、私は嬉しかったかな。牧野くんがあんなに想ってくれているってわかって」

「想ってくれている? なにかあったの?」

「ふふ、内緒。でも牧野くんと一緒に歌えたことは自慢しちゃおっかな」

「……いや、別にそれはいいけど」

「なんで!?」

 

 だって私も一緒に歌ったことあるし。あ、でもお姉ちゃんだけ特別扱いされているのはちょっとズルいかも。

 

 でも、いっか。お姉ちゃん、牧野さんのこと好きみたいだし、お姉ちゃんの特別を守るのも妹としての役目かな。

 

「琴乃はもう帰っちゃうんでしょ?」

「……うん」

 

 私の願いは"どうしてこの日記がここにあるのかを知りたい"だ。知りたかったことはここまでの話でもう察することができる。

 

「じゃあこれ持っていってくれない?」

 

 そう言ってお姉ちゃんが取り出したのは一枚の紙……いや日記の一ページだ。そこに描かれていたのは。

 

「これ、私たちのっ!」

「そうだよ。長瀬麻奈と月のテンペストとサニーピースで歌ったときのこと。書く暇が無くて渡せなかったんだ」

 

 十一人の少女がステージ衣装で手を繋げあって描かれたページ。そして一言だけ、夢が叶った! と書いてあった。

 

「……大事に持って帰るね」

「お願いね。願い事の範疇だしちゃんと持って帰れると思うから」

「うん」

 

 大切に、それを抱き締める。ずっと手放さないように。

 

「じゃあ今度こそお別れかなー」

「……そうだね」

「ふふ、なに泣きそうになってるの」

「……泣いてないもん」

「じゃあそういうことにしてあげる」

 

 そう言って、お姉ちゃんは私をそっと抱きしめた。……ほんと温かいなぁ。ずっとここに居たい。でもダメだってこともわかっている。

 

「琴乃、これからもアイドル頑張れ」

「うん、お姉ちゃんなんてすぐ追い越すから」

「お、言うねぇ。絶対に負けてあげないから」

 

 私はお姉ちゃんと見つめ合って、そしてお互いに笑みを浮かべた。なんだかとても楽しい気分だ。

 

「もう言っていい?」

「うん、大丈夫」

「そっか! じゃあ言うね」

 

 そして、お姉ちゃんはその言葉を口にする。私たちのお別れの言葉を。

 

「私の日記が牧野くんの元にあった理由、それは"私が牧野くんに生きた証としてプレゼントしたから"だよ」

「やっぱりそうだったんだ」

 

 私がぽつりと呟くや否や、来た時と同じように手足が徐々に薄くなっていく。日記のページだけは手放さないようにぎゅっと握りしめる。

 

「琴乃!」

 

 消えゆく最中、お姉ちゃんは最後に私の名前を呼んだ。

 

「大好き!」

 

 優しくて温かいお姉ちゃんの笑みが瞳に映り込む。私も咄嗟に叫んだ。

 

「私も大好き! お姉ちゃんの妹でよかったよ!」

 

 喉も消えかけて言葉はうまく出せなかった。でも、きっと届いているんだろう。だってこんなにもお姉ちゃんは温かい笑みを浮かべているんだから。

 

 徐々に意識が薄れていく。温かさに浸りながら、私の意識は微睡みに落ちた。

 

 

 

 

 

 

「うっ……ん……」

 

 ゴーというエアコンが回る音ともに、私は目が覚めた。瞼を擦り、ゆっくりと起き上がると、目の前にパソコンの画面があった。

 

「あれ」

 

 それだけじゃない。たくさんのメモ用紙や書類や本立てもある。というかここって。

 

「牧野さんのデスク!?」

 

 慌ててそこから飛びのく。こんなところで寝ちゃっていたの私!? というか涎ついているし!

 

 近くにあったティッシュペーパーで、机についていた涎の跡を拭き取る。周りを見渡すが誰もいない。よかった。恥ずかしいところ見られるとこだった。

 

 いやいやそんなことはどうでもいい。それよりも。

 

「……ちゃんと帰れたんだ」

 

 私が最初に意識を失ったときと同じ場所だ。事務所の休憩室の机には私の宿題も積んである。

 

「よかった。これも無事だ」

 

 私の手元には日記の一ページもちゃんと握っていた。内容が消えたり汚れたりもしていない。ほんとによかった。

 

 一人安堵していると、事務所の入り口がガチャリと開かれた。そこから現れたのは。

 

「お疲れ、琴乃。丁度休憩か?」

「お疲れ様です、牧野さん。はい、ちょっとだけ」

「そっか。休憩も大事だからな」

「はい。……その、手に持っているのはなんですか?」

「あ、えっと……」

 

 牧野さんは手に大きめの袋を持っていた。中には箱状の何かが見えた。

 

「……みんなには内緒だぞ? 実はいつも頑張ってるみんなのために有名店のケーキを買ってきていたんだ。ほら、昨日のライブも大成功だっただろ? そのお祝いも兼ねてな」

 

 牧野さんは箱を少しだけ開き、中身を見せてくる。中にはたくさんのショートケーキが並んでいた。桃がたくさん乗っていたり、ミルクレープだったり、なぜかわたあめが乗っているケーキもある。

 

「すごく美味しそうです!」

「それはよかった。後で寮に持っていくから、みんなで食べてくれ」

「はい!」

 

 あれだけあれば一人二つは食べられそうだ。でも、カロリーとかも考えると一気に食べ過ぎてもよくないし……。というか。

 

「牧野さん、なんで笑っているんですか。また子ども扱いですか?」

「いや、そうじゃないよ。ただ楽しそうでよかったって」

 

 そういうのを子ども扱いって言うんだけど……。でも、まぁいいかな。今日はこっちだってお返しはあるんだから。

 

「牧野さん」

「ん?」

「これ、忘れ物です」

「……これって」

 

 私は握っていた日記の一ページを牧野さんに渡す。牧野さんは目を丸くしてそれを見つめていた。それがなんだかおかしくて笑みが浮かぶ。

 

「それと、後一つ」

 

 牧野さんは驚きが収まってない表情で私を見つめる。そんな牧野さんに、私はそっと微笑み言葉を紡ぐ。

 

 

 

「おかえりなさい」 

 

 

 

 牧野さんはひとしきり驚いた後、ふっと小さく笑みを浮かべ、言葉を返した。

 

 

 

「ただいま」

 

 

 

 







 これにて終幕となります。

 ここまで見届けてくれて、ありがとうございました。

 あとがきを活動報告の方に記載しています。
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